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「真珠湾の夕日は?」
「何回かあるよ。」

‐‐いや・・・空からは?

「あははwないよ。連れてってくれるの?あのプロペラの戦闘機で?」

「何だ、見てたんだ。」
「うん。」
夕陽が沈む。
気付けばもうそんな時間。

いつの間にか僕は、彼女の専属ガイド。
「でも見れるなら見てみたいな・・・」
「じゃあ、ホントに行きますか?」
「え?」
「200$かかるよ?それでもいいなら。」
「・・・うん♪行く♪」
「じゃあ今回だけ、半額。」
「ありがと♪」

観光客向けのセスナを飛ばす会社が、空港にある。
そこに僕の友人がいて、電話をしたこう返ってきた。

‐‐お前が操縦するなら、50でいい。

相変わらずがめつい奴だ。
金はきっちり取る。


それでも、可能な限りお客様のご希望に沿える形をとるのが僕の仕事。
と言っても、持ちかけたのは僕だが。

此方に来て、小型飛行機の免許を何故か取るように言われた。
いつか約に立つと言われもう4年。
約に立つ時が来た。

「じゃあ、行きますか。」
「うん♪」

スロットルを全開にすると、滑るように加速する飛行機。
そして機首を上げ、離陸。
もう既にここからでも充分綺麗だ。

「島をぐるっと一周して、真珠湾に入るよ。」
「ゼロ戦が通ったコース?」
「そうなるね。ミズーリも見えるよ。」
「綺麗・・・。」

夕陽を受け、彼女の瞳は輝いていた。
ここで君のほうが綺麗だなんてクサイ台詞をはけるほど、僕にそんな余裕はない。

--私ね、夕暮れ時が一番好きなんだ。

言葉の調子は違えど、昔同じ事を聞いた。

「夕陽が沈む時って、なんか落ち着くし・・・
それに、どんなつらい事があっても癒されるから・・・。」

「・・・そっか。」

--どんなにつらい事がありましても、夕陽とジュン様が傍にいらっしゃれば私は平気ですわ。

そう言えば、こんな日だっただろうか。
いや、もっと空気が澄んでいた。

思えばこっちに来てからは、冬の冷たい空気が織り成す幻想的な夕日を見ていない。
元々冬は好きじゃなかった。
寒い。眠い。朝布団から出たくない。
僕の冬に対するイメージはとてもよくないものだった。

だが、いつからか冬の夕日を見てからはそんな考えも少し変わった気がする。

あれから大分たった。
僕は冬らしい冬を忘れている。

そう、ここは常夏の島。
澄んだ冷たい空気など、感じれるものではない。

「・・・」
言葉を発することなく、ゼロ戦の侵入コースをなぞって行く。

「奇襲だ~♪」
沈黙を破ったのは、彼女の方だった。
子供みたいに無邪気にはしゃいで、楽しそうにしている。

「じゃあ、行くよ。」


僕はスロットルを上げ、機首を少し下に傾けた。

そして・・・

操縦桿を思いっきり手前に引っ張り、機首を一気に上に向けさせる。

「え?え?え?」

彼女は、驚いていた。
それはそれはもうこっちとしてはおいしいリアクションを取ってくれる。

「どう?宙返りした気分は?」
「ジェットコースターのアレとはまた違う感じ。凄かった。」
「それはよかった。」
「よかったの?」
「こっちとしてはそういう回答は嬉しいからw」
「あはは♪あ、あれがアリゾナ?」
彼女が指を指した方向には、戦艦があった。

60年以上も前に多くのクルーとともに海に沈んだ、その戦艦。
今も、当時と変わらぬまま。
その場所だけ、時計の針は止まっている。

夕陽の光が反射し、とても神秘的だった。

「ありがとね・・・ホントに。」
「いいよ。僕から誘ったんだし。」
「それと・・・。」


「ん?」
「お願い・・・聞いてくれる?」
「何?」

--帰国するまで、毎日こんな風に案内してくれる?

また、突拍子も無いことを言われた。
それでも、最初の衝撃に比べたら何のことは無い。

(そう言えば、あいつもよく突拍子も無い事言ってたな・・・)

--ジュン様、明日から3日間付いて来て下さいますか?

二つ返事で了承したら、
「明日の始発に間に合うように駅でお待ちしております。」
と言われドタバタしたのを今もはっきり覚えている。

あの時、ケータイを忘れて誰とも連絡がとれなかった。
僕は少し困ったが、彼女はとても嬉しそうにしていた。
彼女は、意図的にケータイを持ってこなかったらしい。

始発に乗り、田舎へと向かった。
海が見たい。そう彼女が言ったから、海が見えるまでずっと・・・

結局終着駅にたどり着くまで、海は見えなかった。
幸い、終点は海の近く。
そこから歩いて海岸に向かい、その日はそこで過した。


「ジュン様・・どうしょうか?」
恥ずかしそうにしていた彼女。
僕はその姿に釘付けになっていたのは、言うまでもない。

純白のビキニ。

--もう、何もいりません。ご馳走様。

そんな言葉を口に出していたようだった。
その言葉を聞いて彼女は何故か、笑顔を僕に向けてくれた。

太陽がとても眩しかった記憶がある。
名も無い海岸での出来事。

高校3年の、あの夏は2度と戻らない。

「・・・もしもーし?」

「・・・おーい?」

「え?あ?ごめん。」
「いいけど・・・考え事?」
「まぁ・・・そんなとこかな?」
「隣に女乗っけてそれはダメだよ。」
「ごめんごめん。」
「むぅ・・・。あ、お願いの答え聞いてなかった。」
「それさ、ちょっと時間くれる?夜に上司に掛け合ってみるから。」
「うん。わかった♪」


Request for landing.
--Cleared for landing.

地上に戻ると、日はすっかり落ち西の空に残像が残るだけ。
東の空は、もう暗い。

「ご夕食の方は、どうなさいますか?」
「ん~、任せていい?」
「そう言えば、ポリネシアンダンスショーは見た?」
「次見たら3回目になる。流石にもういいかもw」
「じゃあ・・・馬鹿やってみる?」
「何?」
「吉○家。」
「本気?」
「冗談w」
「とりあえず、ホテルで済ませたいかな。」
「バイキングかそうじゃないかは?」
「バイキングはいい。朝ご飯みたいだし。」
「お酒は?」
「ワイン・・・がいいかな?」
「かしこまりました。では、海が目の前に広がるレストランで。」

バリ・バイ・ザ・シー

僕の頭の中に、このレストランが浮かんだ。

ワインがいいならココ!
なんとも陳腐な考えである。


それでも、お客様に楽しんでもらうのが僕の仕事。
とは言え食事代まで経費で出るわけが無い。勿論自腹だ。

一瞬ベジータを呼ぼうかとも思ったが、そんなことはできない。

--思い出して、しまうから。

ただそれだけ。
それでも僕は彼女を案内する事を、心から楽しんでいる。

ガイドとしては、冥利に尽きるものだ。

その晩、上司に掛け合ってみたら何故かすんなりOKが出て、
彼女にそのことを伝えるととても嬉しそうにしていた。

やっぱり、似てる。

「もう少し飲みたいから、付き合って?」
「うん。いいよ。」

昨日ベジータと笹塚とで飲んだバー。
ハワイアンバンドが演奏する中、シックな雰囲気で呑める。

一応、僕のお気に入りだ。

「明日は、どこに連れてってくれる?」

彼女は、もう明日の事を考えている。


「どこがいい?それと、今日は如何でしたか?」
「楽しかった♪だから明日もお願いね♪」

彼女は、本当に嬉しそうだった。
人はこんなにも喜びを表現できるものなのか。

僕は感心した。

「明日の予定は、明日決めればいいんじゃないかな?計画性全く無しってのもいいよ。」
「ガイドが言う事じゃないねw」
「不良ガイドですからw」
「あはwホントにw」

僕も楽しかった。
楽しかった。

でも、

どうしても重なる影。

厭なものだ。

僕は、薔薇水晶を見ていない。
そんな気がして、ならなかった。

Phase2-Pearl-
Fin

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