ホワイトデー
モテナイ男性にはただの普通の日
強かな女性には高価なお返しが期待できる日
恋人達にとってはちょっと特別な日
勿論この二人にとっても……
その日、蒼星石は朝から忙しかった
学校に着いてからずっとホワイトデーのお返しを配り続けているからだ
登校してまず三年の先輩から始まり
休憩時間事に各学年各クラスを駆けずり回り
一人一人手渡しでお返しして行った
姉の翠星石から言わせれば
「ホワイトデーは女が男にお返しを貰う日です。
女が女にお返しするなんて間違ってるです。」
との事だが真面目な蒼星石は
「折角の好意なんだからキチンとお返ししないと。」
と言って貰った子全員分のお返しを用意していた
きっとそういった所が男女問わず人気がある理由なのであろう
しかし蒼星石も女の子
バレンタインにチョコレートを渡した相手がいるし
その相手からのお返しにも期待している
(JUN君、放課後、家に来てくれって言ってたけど。どんなお返しだろう?)
(他の子達には飴と刺繍入りのハンカチだったっけ。)
(僕のもハンカチかな。)
(でも、僕は一様JUN君の恋人な訳だし他の子とは違うかも。)
自ら想像した恋人と言う単語に赤くなる蒼星石
普段は周りから凛々しいと言われる彼女もこう言う所はやはり年頃の女の子である
(うん、早くお返し配ってJUN君の家に行こう!)
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放課後かしら~
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JUNの家に来た蒼星石は彼の部屋に案内されていた
(JUN君まだかなー)
JUNは蒼星石を部屋に案内すると準備があると言って部屋から出て行った
(準備って何だろ?)
「お待たせー。」
JUNがドアから顔だけ出している
「蒼星石へのお返しはこれだ!」
JUNは勢い良く持って来た物を蒼星石の前に掲げた
『ピンクのフリフリの服~』
ピシ
蒼星石にひびが入る音がした
「えっと…服だね……。」
「そうだよ。蒼星石の為に作ったんだぜ。」
満面の笑顔のJUN
逆に引きつった笑顔の蒼星石
「あ、ありがとう。」
「早速着てみて。」
「え!これ着るの!?僕が!?」
「当たり前じゃん。蒼星石の為に作ったんだから。ほら。」
お手製の服を差し出すJUN
引きつった顔でそれを受け取る蒼星石
「う、うん。」
「じゃあ、廊下にいるから着たら教えて。」
部屋を出て行くJUN
一人残されて立ち尽くす蒼星石
(……どうしよう。)
彼からのプレゼントがこれとは……
(こんなの僕似合わないのに……)
「まーだー。」
「ちょっと待ってー。」
(とりあえず着ないといけないのかな……)
「はあ。」
ため息は吐きつつもしっかりと着る辺り律儀である
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「あのー着替えたけど……。絶対笑っちゃ駄目だよ……。」
「笑ったりしないよ。」
「じゃあ、入って良いよ。」
勢い良くドアを開けるJUN
目の前には彼の作った服を着る蒼星石
「う~僕こう言う服似合わないんだけどな~。」
「……。」
「はずかしよ~。」
「……。」
「何か言ってよ。JUN君……。」
「最高だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
「!!!」
突然JUNが叫んだ
「蒼かぁいいよぉぉぉ。」
蒼星石に飛び掛り頬擦りするJUN
「ちょっとJUN君!キャラ間違ってる!」
「かぁぁぁいいぃぃぃぃ。」
「ちょっと落ち着いて!」
JUNが落ち着くのに十分掛かった
「いやー、堪能した。」
「うープレゼントは嬉しかったけど。あの服はもう着ないからね。」
ちょっとむくれている蒼星石
「ごめんごめん。普段と違う蒼星石が見てみたかったんだ。」
「僕はあんな感じの服似合わないのに、無理矢理。」
「似合ってたって。」
「もう知らない。JUN君の馬鹿。」
完全にむくれてJUNから顔を背ける蒼星石
「ごめんなさい。悪ふざけが過ぎました。」
「フンッだ。」
へそを曲げた蒼星石はJUNの話など聞く気が無いらしい
「ごめん。反省してます。」
「もう知らない。」
「うー、ごめんよ。お詫びにこれあげるから。」
そう言って引き出しから紙袋を取り出すJUN
「…何それ?」
「開けて見て。」
ラッピングされた紙袋を開けてみると中には真っ白なワンピースが入っていた
「これって……。」
「ごめんな。これが本当のお返し。」
真っ白なワンピースはJUNのお手製らしい
「良かったら着てみて。」
「…いやだ。」
「えーお願いだよ。折角蒼星石の為に作ったんだし。」
「これだけじゃ、まだ僕の機嫌は直んない。」
「……じゃあ、どうしたら?」
困り果てたJUNが聞くと
「……次の日曜日どこか連れて行ってくれるなら、その時着てあげる。」
「わかりました。何処へでも連れて行きます。」
「……お昼はJUN君の奢りね。」
「う!分かりました。何でも奢ります。」
「なら機嫌直してあげる。」
「ありがとうございます。じゃあ、早速この服を……。」
「だーめ、日曜までお預け。」
「殺生な~。生殺し~。」
「僕に恥ずかしい格好させた罰だよ。」
「……似合ってたのに。」
「何か言った?」
「何でもありません。」
「もう。……そっちの服もまた気が向いたら着てあげる。」
「まじで!やった!」
「気が向いたらね。」
こうしてホワイトデーはすぎていく……