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あのトンデモロボとの戦闘後、僕と真紅はリムジンでホーリエの足元まで
やって来た青年、真紅と闘った少女に付き従っていた彼の誘導で
とてつもなくでかい格納庫までやって来ていた。
そこは遙か地底深く、街中にビルを割ってできた地下エレベータを
2回乗り継いでようやく辿り着いたような場所でまさしく地下基地と
いうに相応しい場所だった。
「でかい………」
たどり着いたその格納庫、コクピットから出た僕はあたりを見回して
口を大きく開け呆気に取られるしかなかった。
そこは簡単にホーリエが何体も格納できるだけのスペースを擁しており、
余りの広さのせいで格納庫の端まで明かりが届かないほどなのだ。
「桜田様、真紅様、僕はお嬢様たちを向こうのドッグにお運びしますので
 皆様はここのカタパルトをお使いください」
大声で下から声をかけてくる執事さん。僕はそれにうなずく事で答え、
彼を見送る。
満身創痍のマキナを乗せたカタパルトが僕らの前を通り過ぎて
暗がりの方へ運ばれていく。
「なあ真紅、ここは良いからお前の妹に会ってこいよ」
「え?」
僕は何の気なしにコクピットのそばに立っていた真紅に提案してみる。
別に深い理由なんてなくてただの思い付きだったのだけど。


「一応は家族みたいなんだから話しといて損はないんじゃないか?ほれ、別に
 闘う気はないんだし今は平穏無事って状態なんだからゆっくり話せるだろ」
「あら、気遣いでもしているつもり?」
「思い付きだよ。深い意味も理由もない」
「そう」
少し思案する真紅、がそれもすぐ終わったのかふうと深呼吸をして一言。
「ま、確かに久々だし行ってくるわ」
カタパルトに備え付けられたはしごを下って降りてもう1体のマキナの
ある方へ向かっていく真紅。
それに続いて僕も下に下りる。
「ジュン、分かっているけどそこらを無闇やたらにほっつき歩いては駄目よ?
 ミーディアムの無礼は私の恥なんだから」
「僕は5歳児かよ……ったく、そんな心配は良いから行って来いって」
溜息をついて真紅を見送る。
ホーリエの足元に腰を下ろして数分、何となしにぼーっとしていた
僕の前に1つの影が近づいてくる。
「君は……」
「ちゃんと話すのは初めてだね。よろしく」
あの、真紅と闘った少女だった。




彼女は僕の目の前に立って微笑みかけてくるので僕もそれにならい立ち上がる。
「あ、座っていてても……」
「いや、良いよ。かたっぽが座ったままなんてみっともないしな」
「そう。それじゃ、まずは貴方にありがとうって言わなきゃね」
「あ、いや、お礼なんて――」
「ううん、そんなことない。貴方がいなかったら私と雛苺は死んでたかも
 しれなかったもの。だから、これは真っ当なお礼。それにここまで私達を
 運んでくれたんだし、だから、えっと……」
「ん?」
「あ、ううん。貴方の名前、聞いてなかったから」
「僕は桜田ジュン。しがない、ただの高校生。ま、今は成り行きで真紅の
 ミーディアムをやってる訳だけど」
「そう。では、私も自己紹介させてもらうね。私の名前は柏葉巴。
 雛苺のミーディアムをしています」
そこまで聞いて僕は今、この目の前の少女がトンデモナイ事を
言ったのに気づいた。
「え?えと、今、なんて?」
「え?わ、私は柏葉巴で……って、ああ、そっか!うん、桜田君が思ってるとおり
 私は柏葉財閥の人間で、一応、次期総帥です」
凍った、脳みそがこれほどまでにないほどガチガチに凍り付いた。
柏葉財閥、ここ桃種市に本拠地を置く超がつくほどの巨大企業。


財閥というあだ名が通るほどのその経済力は世界の政治を裏で動かすとまで
まことしやかに言われており、その他各種産業にも出資しているまさしく、
一流も一流、超一流巨大企業だ。
まさか、まさかそんな超巨大企業の令嬢で次期総帥となるようなお方が目の前、
しかも僕と大して変わらない格好、そう、半袖のTシャツにGパン姿で
立っているとは。いや、恐れ多いったらありゃしない。
ガチガチに凍り付いた僕の顔を見て彼女がくすりと笑う。
「あ、そんな身構えないで良いよ。私、そんなに偉くないから」
「え?いや、でもお嬢様なわけだから僕みたいのが普通に話したらいけないんじゃ」
「良いよ。桜田君のおかげで私達助けられたんだから」
そう良いながら彼女が後ろのほうに視線を向ける。そこにはほぼ無傷の
ホーリエがカタパルトの上に立ち、その周りで何やら小さなロボット達が
せわしなく動き回っていた。
「あれは?」
「ん?あれ?あれはイリアニメーター、錬金術と魔術、柏葉の技術力が
 作り上げたロボット、だって。主に巨大機械の修理に使うらしいんだけど
 ベリーベルやホーリエにも使えたみたいだったの、少しびっくりだよね」


「へ、へぇ……」
すごすぎる。見た事のないオーバーテクの塊だ。
「そういや君……えっと」
困った、なんて呼べばいいのだろう。雲の上の人と話す機会なんて
なくてどうにもなんて呼べば良いのかわからない。
「あっと……どうもこういうのには慣れてなくて……なんて呼べば良いのかな」
「何とでも。下の名前で呼んでくれても良いよ」
いや、流石に親しくもない間柄でそれはないだろう。
「あ~っと……柏葉、って呼んでも良いかな。そっちの方が呼びやすいんだけど」
「良いよ」
即答。意外と一般人的な論理思考は持ち合わせてくれているらしい。
「そか。んじゃ柏葉、その怪我、大丈夫か?」
「え?」
僕の視線は彼女の腕と額に巻かれた包帯と顔に張られた絆創膏に向かう。
それに気づいて柏葉がそれに手を置きながら僕に微笑みかける。
「うん、大丈夫。浅い傷だし、すぐに治る怪我だよ。優しいんだね、桜田君」
ボンと音を立てて顔が赤くなる。余りにも素敵な笑顔で正直やばすぎる。
いや、何て言うんだ?ああそうだ、無防備な笑顔というヤツだ。
しかも柏葉は結構、いや、かなり可愛い部類に入るわけで、ショートカットの
黒髪はサラサラだし、眼なんかもパッチリと丸くて、鼻筋なんかそりゃ
完璧ってくらいにスっと通ってて、下に移したらそれはもう!


「何が、それはもう、なのかしらねジュン」
背中からとても機嫌の悪い、思い切り敵意むき出しの少女の声が。
幸福の絶頂から無慈悲に突き落とされたような気分、振り向けばそこに
笑顔を貼り付けた般若の姿が。
怖い、マジで怖い。ちょとちびりそう。
「ブッ!!なななな……な、何のようでございましょうか真紅さん?」
「何の用、とは良い度胸をしているわねジュン?久々の姉妹の再会だと言って
 雛苺に会いに行くよう取り計らったのは良いけれど、まさか、その間に淑女に
 手を出すような下品な外道とは思いもしなかったのだわ」
「ご、誤解だ!やましい気持ちなんて何もないぞ!?ただ柏葉の怪我が
 気になって聞いただけだっての!それだけで本当に何もだな!?」
「あら、その割には鼻の下が伸びているのは何でなのかしらね?」
図星、いや、だってあんな屈託のない笑顔向けられたら誰でもだな。
「誰でも、何?」
「いえ、何でもありません」
「……変態」
「グホォッ!」
さげすむ視線にひねりを加える余りにも残酷で破滅的な一撃に撃沈する僕。
あれ、おかしいな?何でだろう、眼からしょっぱいものが流れてきたぞ。



「ねえ巴。ここは一体どういう私設なの?」
「無視かよ」
だが、お構いなしに真紅は僕を徹底的に無視して柏葉に話しかけている。
「まさか、ホーリエを召喚したまま格納できる場所があるとは夢にも
 思わなかったのだわ。魔術的にも理想的な場所でもあり、尚且つ
 損壊していた装甲も修理できる場所なんて並大抵のものではないわよ」
「え、ええ。御爺様がもしもの場合にと建設していた場所がここなの。
 そ、それで……」
チラリと僕を見やる柏葉。
うん、こういう奴なの真紅は、はい。我侭かつ乱暴、どう見ても思いやり分は
ほぼゼロです、ありがとうございました。しかも人使いも荒いですよ。
そうジェスチャーで返す僕、次の瞬間、真紅の身体が一瞬光ったかと
思うと僕の身体遙か彼方、空へと舞っていた。
「ヌオッホォォォォォォ!?」
ああ、神様、それに仏様。世の中に貴方がいるってのはやっぱ嘘だ。
大地に激突、潰された虫みたくピクピクする僕を無視して二人は話を続ける。
「そう、だとしたら貴女の御爺様は素晴らしい魔術師だったのね」
「あ……う、ううん。御爺様は魔術師ではなかったわ。魔術についての知識に
 理解があったみたいではあったのだけど」
「そう、外道の知識たる魔術に通ずるには常人では不可能なのだけど……」
かなり遠くまで吹っ飛ばされたのか、反響して届いてくるその話を
突っ伏しながら上の空で聞く僕。と、目の前に6歳くらいの女の子が。



「……♪」
「………」
「……♪」
「………」
「……♪」
「……………何か用か?」
「うぃ?」
キョトンと、首をかしげる女の子。くるくると縦ロールにした金色の髪の毛
と大きなリボンがその幼さをより強調しているようにも見える。
「あなたはここで何でおねんねしてるの?」
「うーん、それは良い質問だ。この惨状を見て何か気がつかないか?」
「うゆ?」
「はは……ごめん、聞いた僕が悪かった。そこらへんで遊んでな」
「う~……。遊びたいけどトモエが真紅とお話中だから遊べないの」
「へ?」
と、言う事はつまり。
「お前が雛苺か?」
「ぴゃ!?」
「?」
びっくり仰天、そんな感じで飛びのく少女。だけど、すぐさま僕と同じ
視線に合わせようとペタンと寝っ転がって僕の前までやってくる。


「お、驚いたのよ~……。あなた、もしかしてちょーのーりょくしゃ?」
「いや、違う。でも、お前が雛苺なんだ」
僕は突っ伏したまま話しかける。さっき、巴の乗っていたマキナを
運んだは良かったがそれから先はあの執事が全部取り仕切っていたわけで
彼女を見るのは今が初めてだった。
「うん!あたしが雛苺なのよ。あなたはだーれ?」
「僕はジュン、桜田ジュンだ。握手したいけど動けないから勘弁」
「う~~、それはメッメなのよ!初めて会った人には時はちゃんと
 挨拶しなきゃめーなのよ!」
「え?ちょ、いや、ま、待て!いきなり、う、うごぎゃばらげぼぉぉぉ!」
雛苺が無理矢理僕の腕を取りブンブンと腕を振る。
真紅のせいでボロボロな僕の身体に鞭打つように激痛が更に倍増する。
やっぱ、神も仏もない。
「うゆ?」


数分後、ビクンビクンと痙攣した身体も収まり、どうにかあぐらをかく僕。
そこに巴と真紅もやってくる。
「あ、雛苺」
「トッモッエ~~~~~~~~!!!!」
眼をキラキラとさせて雛苺がトモエに飛びつく。
「あいたたたた。雛苺、痛いよ」
そうは言ってるが嬉しそうな柏葉の顔。
それに比べてこっちときたら。
「何?」
「いえ、別に」
かわいげがないったらありゃしない。
「……ねえジュン。もう一度空を飛ぶアトラクションはいかがかしら?」
「喜んで拒否します。つか忘れろ」
「雛苺も桜田君に挨拶した?」
「うんっ!ジュンにヒナはちゃ~~んと挨拶もあくしゅもしたのよ!」
「えらいえらい」
優しく雛苺の頭を撫でる柏葉。その優しい笑顔は僕と同い年くらいの
女の子が持つそれ。
雛苺と話を終えたのか柏葉が僕らの前にやってくる。
「すっかり忘れてたんだけど今日の決闘の話、私が負けたのから貴女を
 あの学校に編入できるように取り計らっておくわ」
……やっぱ、こういうところは違うか。
「ありがとう巴。これでジュンから眼を離さず監視ができるのだわ」


「おいこら、今なんてった」
「さあ」
「とぼけるんじゃねえ」
はあ、溜息をつき僕に視線を移す真紅。
「冗談に決まってるでしょジュン。それに、契約したローゼンメイデンを
 離れたままにするミーディアムなんて聞いた事がないのだわ」 
「僕はできる限りお前から離れていたいのだが!?」
「それはどういう意味ととらえたほうが良いのかしら?」
「僕の平和な日常を壊さないでほしいと言ってるんです」
「でも貴方はさっき私について行くと言ったじゃない」
「それは非常時の話なんです。日常にはそれは持ち込んでないんです!」
「酷い話なのだわ。こんないたいけな乙女にそういう仕打ちをするなんて」
「誰がいたいな乙女だって?はっ!ちゃんちゃらおかしくれぼぎゃらばっ!」
顔面にクリーンヒットする拳、やっぱいたいけなんかじゃねぇ。
「………」
「こ、こわいのよ~……」
視界の端でこの光景に戦慄を覚えている柏葉と雛苺の姿が。
「そういう訳でよろしく頼むのだわトモエ。雛苺もまた会いましょう。
 さ、ジュン、さっさと家に帰るわよ、紅茶が飲みたいのだわ」


助けて、柏葉と雛苺に手を伸ばしてたすけを求めるがその願いむなしく
僕は外へと引き摺られていく。
「おや、真紅様に桜田様。もうお帰りになりますか?よろしければ再会の印にと
 お二方をおもてなしでもしようかと思ってたのですが」
「ありがとう執事。それはまた今度御伺いするのだわ」
「かしこまりました。では、御出口までご案内させていただきますね」
執事は僕にちらりと目配せしてからまた真紅へと見やる。
「えと、桜田様はこのままで?」
「ええ、構う必要はまったくないわ」
「あ、はぁ……」
誰も助けてくれない。

ああ、なんて哀れなんだ、僕


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