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真紅達一行は象牙の塔の魔術師金糸雀を仲間に加えて、象牙の塔へ向かっていた。
象牙の塔は、ウェルダンのすぐ北に位置するオーレン地方に存在する。その為真紅達はウェルダンを出た後
北へ向かっていた。向かっていたのだが……
「さ、さ、さ、さ……さっびぃ~ですぅ……ど、ど、どういう事ですかぁ?さっきまであんなに暑かったのに
何でこんな急に寒くなるですかぁ?おかしいです。人間の世界はぶっ壊れてるです。」
ザッシュザッシュと音を立てて歩く真紅達。その地面は雪で埋め尽くされていた。さっきから文句を
言っている翠星石はこの雪景色の中一人だけ随分薄着だ。
「きゃ~。トモエ!JUM!見てみて雪真っ白なのよ~!」
ボフッと音を立てて雛苺が雪の中に倒れこんで遊んでいる。先のウェルダンの暑さでも楽しんでいたあたり、
彼女はどんな状況でも楽しめる感が伝わってくる。
「さむっ……あのチビは寒くても暑くても元気ですねぇ。これだからガキは便利でいいです……ううっ、寒いです。」
「だから、カナはさっきの村で防寒着を着たほうがいいって言ったかしら。」
「なのに君が『こぁんな暑いのに防寒着なんて必要ねぇですぅ~』とか言って着なかったんでしょ。」
金糸雀と蒼星石に立て続けに非難される翠星石。ちなみに、防寒着を着ていないのは彼女だけであり、
他の面々は金糸雀のアドバイス通りに、戦闘に支障の無い程度の防寒着を着ている。
「う、う、う……確かにそれは翠星石が悪いかもしれねーですけど……なんでこんなに一気に気温が下がってる
んですかぁ?その象牙の塔とやらの研究のせいで異常気象になってるんじゃねぇですか?」
確かに、彼女の言うとおりである。ウェルダンとオーレン地方は隣り合っている。しかし、温度の差はそれこそ
異常なほど開いている。何かの影響と考えるのが普通だろう。
「ん~、象牙の塔は違うかしら。でも、なにかのせい……ってのは正解よ。」
「確か、ウェルダンはあの火山に住んでいる火竜ヴァラカスの影響であの暑さだと聞いたけれど……その理屈
ならば水竜パプリオンかしら?でも、パプリオンはハイネの海底に住んでいるはずだけれど。」
少しだけ寒そうに体を擦って温めながら真紅が言う。あまり外の世界を知らなかった彼女ではあるが、アデン
大陸中を旅してきた巴と色々勉強しているようで、最近は一気に知識の幅も増えてきている。
「惜しいわね。確かに南のウェルダンが暑いのはヴァラカスの膨大な魔力の影響かしら。これは象牙の塔の
研究で明らかにされているの。そのヴァラカスの魔力に劣らないほどの力を持った魔物。そいつがこの
オーレンを雪景色にしている張本人かしら。」
アデン大陸で最強の力を持つと言われる四竜。その中でも最強と謳われるヴァラカスにも劣らない魔力を
持つ魔物。いくら竜にとって魔力なぞオマケに過ぎないと言ってもそれは人間からすれば強力すぎる力だ。
「私は聞いた事あるかも。多分、象牙の塔のさらに北に存在するクリスタルケイブ……水晶の洞窟にいる……」
「流石は巴かしら。そう、その魔物の名前は……氷の女王、アイスクイーンかしら。」



「アイスクイーン……僕も聞いた事がある。確か元々は氷の精霊だったんだよね。それが、象牙の塔の魔術師
が研究した秘法を奪って膨大な力を手に入れたとか。」
「そうよ、蒼星石。もっとも、その話も遥か昔のお話……カナ達が生まれるずっとずう~っと前のお話かしら。
でも、アイスクイーンがこの地を寒くしてるのは事実ね。名前の通り暑いのが嫌いみたいでね。でも、隣には
最強の炎を持つヴァラカスが住んでいるでしょ?だから、せめて自分の住処を中心に冷気を振り撒いてるの。
ヴァラカスも寒いのが嫌いみたいだから、冷気の影響が強くなれば自ら熱気を振り撒く……暑くなれば
アイスクイーンが冷気を……その悪循環の繰り返しでこんな現状になってるのかしら。」
要するに。強力な力を持つが故の意地の張り合いという事だ。オーレンとウェルダンに住む人間にとっては
堪った物じゃないが、討伐も簡単に出来るわけも無く。結局は人間が住み易い様に対応している訳だ。
「成る程なぁ。それでウェルダンとオーレン地方はアデン一暑い地域とアデン一寒い地域が隣り合うなんて
不思議な現象が起きてる訳だな。」
つまりはJUMの言うとおりだ。最も、二体の魔物のパワーバランスが崩れてしまえばどっちかに傾く事は
必死ではあるが、例えそうなっても地元民は難なく生活を移行できそうな感じもする。
「はぁ~……しっかし金糸雀って馬鹿じゃなかったんですねぇ。翠星石はてっきり馬鹿かと思ってたですぅ。」
準備のいい蒼星石から予備の防寒着を受け取ってようやく落ち着いた翠星石が言う。
「なっ!?カナはお馬鹿じゃないかしら。まぁ、お馬鹿だったとしても人の話を聞かないで寒がってる誰か
さんには勝てないかしら。」
「い、言いやがったですね!!丁度いいです、新入りには力関係ってのを教えてやるいい機会です。」
「やってやるかしら。言っておくけど、カナは強いわよ?」
バチバチと二人が火花を散らす。すると真紅はとても面倒くさそうに二人の頭を小突く。
「二人とも馬鹿でいいわよ、もう。無駄に体力を使わないで頂戴。こっちまで疲れるわ。」
「そうだよ、翠星石。大体防寒着の件は本当に君が悪いんだから。」
「うっ……蒼星石までぇ。しゃあねぇですねぇ。ここは引き分けにしておいてやるです。」
明らかに金糸雀に分があったのだが、負けは絶対に認めないところが彼女らしい。
「全く……それより金糸雀。聞きたい事があるわ。象牙の塔は魔術の研究機関だったわよね。反王……
ラウヘルがここを狙わないのは少し疑問が残るのだけれど。」
真紅の疑問は最もだった。アデン大陸の制圧の野心に燃えるケンラウヘルが、戦略価値としても高い
象牙の塔を放置している理由。ここを制圧すれば多くの魔術師も駆り出せるのに、だ。



「そうね。これはカナの予想でしかないけれど……反王は象牙の塔に攻めたくても攻めれないのが現状
だと思うの。」
「攻められない?あの天上天下唯我独尊男が?あいつは自分に不可能はないと思ってる男よ?」
「うん、でも……そこまで力に溺れてはいないと思うの。先ず第一に、反王の片腕……魔女のケレニス。
あいつの魔力は人智を超えてるって言われてるけど、象牙の塔の長老『タラス』様はケレニスに匹敵する
魔力を持っているかしら。」
「あのケレニスに!?流石はアデンの魔術師の頂点に立つ人……という事ね。」
先のギラン城の戦いでケレニスの力を嫌と言うほど味わった真紅は感嘆の声を漏らす。アデン大陸には
あの魔女と渡り合える人がいるのかと。それならば、反王が侵攻してこないのも納得がいく。
「第一にって事はさ……他にも何か要素があるって事なのか?」
興味深く話を聞いていたJUMが金糸雀に聞く。金糸雀はコクンと頷いて話を進めた。
「もう一つ……反王の本拠地のアデン城から象牙の塔に侵攻するには二つしかルートがないの。一応、
オーレンはアデンの最北端だから。一つはギラン、ウェルダンを経由して大回りして攻めるルート。
でも、こっちはギランやウェルダンで抵抗に合うだろうし、万が一突破されてもこっちは準備万端になるから
消耗がとても大きくて話にならないかしら。」
JUMは地図を見て位置関係を確認する。確かに大回りするにはギランとウェルダンを経由しなくてはならない。
しかし、ギランは槐が守っているため突破は容易ではない。ウェルダンにしても、真紅達が寄った時は
タイミングが悪かったが、あそこはそもそもドワーフが街を守護している。これも手強いのは間違いない。
突破できても満身創痍の軍が象牙の塔の魔術師を相手に戦えるはずがないのだ。
「じゃあさ、金糸雀。この正面突破はどうなんだ?アデン城から西に進軍すれば何も障害はないと思うけど。」
JUMが地図を見せながら言う。確かに、彼の言うとおりアデンを西に進めば障害は何もない。
「それが地図じゃ分からない事かしら。象牙の塔の東には通称『エルモア荒地』という荒野が広がっているの。
その荒地は昔、アデンに侵攻してきたエルモア王国と戦った場所でね。結果的にエルモア王国は敗戦して
撤退したんだけど、国境を閉ざされたせいで戦死した兵士の魂が国に帰れずに彷徨っているの。
カナ達は総括してエルモアゾンビって呼んでるけど、こいつらは性質が悪いかしら。人間を見れば一般人でも
反王軍でも襲い掛かるわ。おまけに馴れない雪地でしょ?だから反王は攻めるに攻めれないの。」
「成る程ね。正面突破すればエルモアゾンビの軍と戦闘になるし。迂回すればギランやウェルダンで抵抗に
あう。無傷では象牙の塔に辿り着けないから攻めてこないって事か。」
まとめるとJUMの言った事そのままである。如何に強力な反王軍と言えども、傷を負った体で熟練した
魔術師達を相手にするのは分が悪すぎると言うわけだ。
真紅達が金糸雀の話を聞いて納得している時だった。一人雪と遊びながら進んでいた雛苺の声があがった。
「うよ……ねぇ真紅~、トモエ~!あっちから何か来るなのよ~。」



多少雪が降っているせいか視界が悪いが、確かに前方から十を超える人影が向かってきている。
「!?雛苺、こっちに戻ってくるかしら!真紅、さっき話したエルモアゾンビ覚えてる?」
「ええ。確か昔敗戦した国の兵士の……まさか……」
「嫌な時に遭遇しちゃったかしら。普段はこの周辺は単体で彷徨ってるのに……今日は揃いも揃って
行軍しちゃってるかしら。みんな、戦闘になるわよ!」
金糸雀の声の元、真紅達は戦闘の準備にかかる。防寒着は着たままだ。というのも、寒さで筋肉が縮んで
しまっては、逆に動きが悪くなる可能性がある。
「一、二、三……全部で十二匹!ちょっと多いんじゃねぇですかぁ?」
構成は、長い槍を持った一般兵であるエルモアゾンビソルジャー六匹。コーンオブコールドをメインに魔術を
使うエルモアゾンビウィザード五匹。そしてそれらを纏め上げる将軍、エルモアゾンビジェネラル一匹だ。
「多くてもやるしかない……真紅、指示をお願い。私はそれに従って敵を斬る。」
巴がスラリと愛用のカタナを抜く。彼女は例え敵が百匹いても命令があれば斬りかかるだろう。
「そうね……翠星石、雛苺、金糸雀。貴方達は遠距離攻撃であの魔術師のゾンビを狙いなさい。
JUM、巴、蒼星石。貴方達はあの槍の兵士を。そして隙があれば大将格を狙いなさい。」
真紅が矢継ぎ早に指示を出す。相変わらず的確な判断を下す。
「ちょっと待っててね……カナがこっちの頭数増やすから。」
「はぁ?何言ってやがるですかぁ?戦闘の恐怖でおかしくなったですか?」
金糸雀は懐から青白く光る石を数個取り出す。そして、魔力を込めながら詠唱する。
「馬鹿にしないでかしら。魔力の石よ 契約者の名においてその姿を具現せよ……出でよ、ダイアーウルフ!」
瞬間、金糸雀の持っていた石が二匹の黒い毛並みに赤い瞳を持つ狼に変わった。
「す、凄いの~。おっきな猫さんなのぉ~!」
「このお馬鹿苺!こいつはダイアーウルフ、狼ですぅ。こいつ、モンスターを召還しやがったですぅ!
まさか翠星石達を安心させといて食べる気じゃ……」
「そんな事しないかしら。この子は魔力の石を触媒にしてカナが召還した子達よ。だから、カナの言う事なら
何でも聞くの。さ、いいわね貴方達?カナが狙った敵を倒すのよ。」
金糸雀が二体のダイアーウルフの頭を撫でる。すると、ダイアーウルフはエルモアゾンビに敵意を向けて吠える。
「貴方、本当に凄いのね……でも助かるわ。行くわよみんな!こいつ達を蹴散らすわよ!!」
To be continued

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