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「一つ屋根の下 第百五話 JUMと大人」



「今年の成人式も各地で大荒れとなった模様で……」
そんなニュースを見て僕は、ああ今年も成人式があったんだなぁなんて思った。しかし、ここ毎年いつも
見るニュースだよな。新成人が暴れたとか何とかさ。他にニュースはないのかね。
「全く、仕方ない成人達ね。何か勘違いしているんじゃないかしら。」
同じようにニュースを見ていた真紅姉ちゃんがムスッとしながら言う。確かに、真紅姉ちゃんはこの手のニュースが
嫌いそうだ。元々真面目な人だから、こういうのが許せない性質なんだろう。
「本当、カナ達の成人式も心配かしら。折角一生の一度の式が目茶目茶になったら、やっぱりちょっとね……」
「ああ、そういえばカナ姉ちゃんってもうすぐ成人式だったっけ?」
もうすぐってほどじゃないと思うけど。でも、そろそろ成人式の振袖のDMとかが来る頃だろう。
「うん、カナと水銀燈は18だからね。再来年が成人式かしら。」
再来年か。長いようで案外あっと言う間な気がする。僕もその頃には18歳か。再来年のこの時期は僕は
多分センター試験でヒィヒィ言ってそうだ。まぁ、銀姉ちゃんやカナ姉ちゃんみたく指定校推薦もらえればいいけど。
「ぷっ、でも金糸雀が成人って柄ですかぁ?どうせ2年後でも今と一緒でチビっちゃくてとてもじゃないですけど
成人になんか見えないのがオチですぅ~。」
ぷぷ~っと翠姉ちゃんがニヤニヤしながら言う。実際ありえるのが何とも言えないね。今でさえカナ姉ちゃんは
私服だと中学生。下手したら小学生に見られたりするし……背も低いし顔も幼いからなぁ。
「しっ、失礼かしら!カナは18!自動車の免許も取れるし立派なれでぃかしら!」
カナ姉ちゃんの中では免許=大人なのか?それだったらすでに免許持ってる銀姉ちゃんは大人だな。
「そういえば、カナ姉ちゃんは免許取らないの?もう18だし取れるでしょ?」
以前銀姉ちゃんが取ったときは、カナ姉ちゃんは誕生日がまだだったけど。先日誕生日迎えたから
免許は問題なく取れるはずだ。見た目は子供でも戸籍では立派に18歳だしね。
「ん~、カナはとりあえず高校を卒業してからにしようかなって思ってるわ。自動車学校も春先は実は
結構空いてるらしいし。合宿とかもいいかしら。」
そういえば、今の時期が自動車学校は一番混んでいるらしい。卒業後即就職って人は今の時期に
取っとかないと時間がないかららしい。
「金糸雀の運転……公道でスリルが味わえそう……」
それはもう、下手したらジェットコースターを超える恐怖が味わえると思いますよ薔薇姉ちゃん。



「まぁ、免許云々は置いておいてさ。大人の境界線って難しいよね。ほら、最近多いでしょ?何て言うか
大人になりきれてない大人って言うかさ。」
真面目な話題をさせたら我が家一の蒼姉ちゃんが言う。まぁ、確かに給食費未納だとか。珍走団も
半数近くが成人って記事をニセちゃんねるで見た気がする。年齢や世間的には大人なんだろうけどねぇ。
「そういえば私、以前どこかで聞いた事あります。『人は皆大人になろうと懸命に努力している子供』
という言葉です。ああ、成る程なぁなんて柄にもなく思ってしまいました。」
キラ姉ちゃんが言う。ふむ……確かに一理あるって言うかさ、最もな感じがする。
となると、蒼姉ちゃんの言う大人になりきれてない大人ってのは懸命に努力していないって事なのかな。
「うゆ……蒼星石と雪華綺晶のお話は難しいの。でもねでもね、ヒナは別に子供のまんまでもいいの~。」
「子供のまんまでいいって言うより、どう考えてもチビ苺はお子ちゃまですぅ~。ま、チビ苺がこの翠星石の
ように華麗で美しく、まさに才色兼備の大人になる日は遠いですがねぇ~♪」
無邪気なヒナ姉ちゃんをゲラゲラ笑う翠姉ちゃん。しかし、ヒナ姉ちゃんは気にとめる様子もなくトコトコと
僕の隣に歩くと、そのままピョンと僕の膝の上に飛び乗った。
「別にいいも~ん、ヒナ子供だからJUMに沢山甘えれるもんね~。」
そう言ってニコニコしている。当然これを黙って見ている翠姉ちゃんじゃない。が……
「お、降りやがれですチビ苺!!J、JUM……その翠星石もぉ……」
「JUM~、翠星石はしないでいいのよ~。」
翠姉ちゃんが何か言いかけたのを笑顔で遮るヒナ姉ちゃん。翠姉ちゃんの顔がムッとする。
「こ、このチビチビ苺ぉ~!!下手に出てれば調子づきやがってですぅ!!」
「え~?だって翠星石はがくしょくかんびの大人でしょ?大人は抱っこなんてされないのよ~。
あ、それとも翠星石もヒナと一緒で子供なの?」
学食完備じゃなくて才色兼備です。何と言うか、高校生になってからのヒナ姉ちゃんは色々強いなぁと思う
寒い冬の日。完全に言い負かされた翠姉ちゃんは『んがっくく…』とノックアウトである。
「うえええ~~ん、蒼星石ぃ~!チビ苺が反抗期ですぅ!姉を苛めるですよぉ~!」
「はいはい。それじゃあ適当に晩御飯の買い物行こうね。今日はハンバーグにしようかなぁ。」
蒼姉ちゃんに泣き付く翠姉ちゃん。しかし、蒼姉ちゃんも翠姉ちゃんを適当にあしらうように、翠姉ちゃんを
つれて買い物に出かけていった。今日はハンバーグかぁ……最近はデミグラスソースで食べるより大根おろし
とポン酢で食べるのが好みだ。あっさりしてて結構美味しいんだよね。



「でもまぁ、ヒナ姉ちゃんと翠姉ちゃんの話は置いといてさ。僕なんかはやっぱりまだまだ子供だなぁって思うよ。
やっぱり姉ちゃん達に頼りっきりだしね。」
特に蒼姉ちゃんには家の事を筆頭に世話されっきりな気がする。
「まぁ、大人は自立してるってイメージはあるわよねぇ。親のスネかじりっ放しじゃあ大人って言えないわねぇ。」
確かに、何でもかんでも親が面倒見てるうちは大人とは言い難いかも。ああ、一緒に住んでても毎月
家にお金入れてたりは別だと思うけど。そういう見解じゃあ我が家はある意味大人かもしれない。
学生だしお金だけは父さんの仕送りでやりくりしてるけど、それ以外の家の事全般は僕等だけでやってるし。
まぁ、家事全般は翠姉ちゃんと蒼姉ちゃんがやってるんだけどさ。
「あ、そうだわぁ……JUM、貴方がもしすぐ大人になりたいって言うならぁ。すぅぐしてあげれるわよぉ?」
「は?そんなにすぐなれる訳ないじゃん。」
銀姉ちゃんの妄言をスルーする僕。そんなすぐ大人になれるんだったら、すぐにでもなってみたいもんだ。
「なれるなれないじゃなくてぇ。なりたいの?なりたくないのぉ?」
相変わらずニヤニヤしてる銀姉ちゃん。どこにそんな自信があるんだろうか。
「そこまで言うならまぁ……なってみたいかなぁ。」
僕は言う。すると銀姉ちゃんは待ってました!とばかりに席を立つと僕の腕を引いてコタツから無理矢理引っ張り
出すと満面の。そして妖艶な笑みを浮かべて言った。これが予想できなかった僕はまだまだ甘いんだろうか。
「ふふっ、決まりねぇ。じゃあ私の部屋に行きましょぉ~。お姉ちゃん嬉しいわぁ。」
本当に嬉しそうに僕の腕を抱きしめる銀姉ちゃん。
「ちょ、ちょっと待って!!何で銀姉ちゃんの部屋に!?」
「何でってぇ。JUMが姉妹の居る前だと恥かしいかなぁと思って気を利かせたんだけどぉ。」
「だ、だからさ。何をするのさ!?」
「何って……大人になる儀式と言えば『ピー(自主規制)』しかないでしょぉ?ふふっ、水銀燈も初めてだからぁ
一緒に大人になれるわねぇ。」
え……今なんて言った?目の前では真紅姉ちゃんが盛大に紅茶をブフーッ!!っと噴出してる。ヒナ姉ちゃん
は頭にクエスチョンマークが浮かんでるし、カナ姉ちゃんは顔を真っ赤に染めてる。珍しい事にキラ姉ちゃんも
口に入れようとしたお餅を持ったままポカーンとしていた。
「なっ、ちょっ、え、え………えええええええええええええ!!??」
いやはや。本当に予測できなかった僕の罪だねこれは。正月ボケかね。



「恥かしがっちゃって可愛いわねぇ。ほぉらぁ、行きましょぉ?」
銀姉ちゃんが僕の腕をズルズル引っ張っていく。タンマ!ちょっと待って!それは不味いんでは?が……余りの
衝撃に僕は抵抗すらできないようで。リビングを出ようとした時ドアの前に一人の少女が立ちふさがった。
「待って銀ちゃん……」
「あらぁ、薔薇しー邪魔なんて野暮な事したらダメよぉ?」
どうやら薔薇姉ちゃんらしい。ああ、信じてたよ薔薇姉ちゃん。今では姉ちゃんが天使に見え……
「銀ちゃん、私も混ぜて……私も一緒に大人になりたい……」
なかった。寧ろ悪魔だった。銀姉ちゃんはその発言にクスッと笑う。
「ふふっ、仕方ない子ねぇ。いいわよぉ……一緒に……ね。」
ここで争ってくれれば逃げれた可能性があるんだけど、あっさり合意してしまう訳で。僕は売られていく子牛の
目をしながらズルズルと二人に引きずられていく。ああ……ここからが本当の地獄……見方によっては天国か?
「ただいまぁ~!今日はロース肉が安かったからトンカツにしたよ~!って……何やってるの?」
ああ、本当の天使が帰ってきた!!しかし実は……後にこの選択肢も案外間違ってたんじゃないかって思う。
「そ、蒼姉ちゃん助けて!実は二人が……」
僕は早口に説明する。ああ、セーブ地点があったらセーブしておけばよかった。説明していると徐々に蒼姉ちゃん
の顔が俯き加減になっていった。そして珍しく手がプルプル震えている。顔は髪に隠れて見えない。
「リビングの入り口で何をやってるですか………あ、あ、あ……す、翠星石はちょぉっと部屋に行ってるです!」
少し遅れて帰ってきた翠姉ちゃんは表情の見えない蒼姉ちゃんから何かを感じ取ったのか蜘蛛の子を散らす
ように逃走する。僕の腕を引いている銀姉ちゃんと薔薇姉ちゃんからも明らかに恐怖と見られる震えが
伝わってくる。そして蒼姉ちゃんが顔をあげる。その顔には今まで見た事もないような怒れる瞳が……
「水銀燈、薔薇水晶………貴女って人達はーーーーーー!!!!!!!!」
その日、地球が滅亡した。そんな気すらした。


「ふえええ~~ん!許してよぉ、蒼星石ぃ!」
「ぐすっ……べそっ……これは酷い。」
2階の恐らく蒼姉ちゃんの部屋から怯えきった二人の声がする気がする。僕には聞こえない。何も聞こえない。
「ふぅ……難しいわね……大人になるって……」
真紅姉ちゃんが紅茶を口に入れる。心なしか手が震えているのは気にしない。リビングはさっきからガクブルだ。
「うん……難しいね……」
END

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