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「さて、昼ごはん昼ごはん…」
軽い足取りで屋上への階段を登っていく。屋上は最近になって僕の絶好の昼食スポットになった。
普段生徒たちは教室や食堂、中庭で昼食をとるため昼休みの屋上は人っ子一人いない。食事は静かに食べたい派の僕からすると、まさに穴場だ。
さて、そんなわけでいつものように屋上へ出るドアを開けようとしたんだけど…
「あれ?鍵が開いてる…」
おかしい…いつもならここの鍵は閉まってるハズ。なんせキーは僕が持ってるんだから。
でも今日は鍵は開いている。ということは……


「誰かいるのか…?」
まいったな…うるさいヤツじゃなきゃいいんだけど…
「まぁいっか。知らないヤツなら無視すればいいだけだし」

ドアを抜けるとそこは雪国だった…わけもなく、見慣れたいつもの屋上だ。
一通り辺りを見渡してみたが、誰かがいる様子はない。じゃぁなんで鍵が…

ぐるる~……

そんなことを考えていると、突然腹が盛大に鳴った。
「…さっさと食べるか」
とりあえず今はこの空きっ腹を満たすのが先だ。いつものようにフェンスに腰掛けて弁当箱を開くと、どこからか声がかかった。

「…桜田君?」
「!?」
いきなりのことに驚いて箸を落としそうになる。
「だ、誰だ!?どこにいるんだ!?」
「やっぱり桜田君かしらー。上、上♪」
「上…?」
言われて見上げると、給水塔の上に座ってこちらに手を振る女の子がいた。


「なっ…なんでそんなとこにいるんだ!?危ないってば!!」
慌てる僕を見て彼女はおかしそうに笑った。
「ふふふ…そんなに慌てなくても大丈夫かしら桜田君♪」
ん?なんでコイツ僕の名前を知ってるんだ?
いや待てよ…どっかで見たことが……確か同じクラスの…
「金糸雀…お前こんなとこで何してるんだ?」

金糸雀…僕の斜め前の席のヤツだ。小学生みたいな見た目とは裏腹に、勉強はものすごくできるらしい。普段の彼女の振る舞いを見てると、失礼だがとてもそうは見えないのだが……
「ここはカナのお気に入りの場所なの。こうして見たらこの街の景色がすごい綺麗なのかしら♪桜田君もこっち来て見てみるかしらー♪」
ちょいちょいと自分の隣を叩く金糸雀。すごく魅力的な提案なのだが…
「いや、腹減ってるからメシ食うよ。金糸雀はもうメシ食べたのか?」
「あっ……まだだったかしらー!景色に夢中ですっかり忘れてたのかしらー!?」
「じゃぁさっさと食べなよ。昼からの授業もたないぞ?」
「た、食べるかしらーっ!」
そう言いながら慌てて給水塔から飛び降り、すたっと着地した。
……結構な高さがあるんだけどなぁ…


金糸雀のあまりの身軽さに驚きつつ弁当を食べはじめる。
すると金糸雀がトテトテとこっちに寄ってきて、僕の隣にちょこんと座った。ふわっと甘い香りが鼻をくすぐる。
不覚にもドキドキしちゃったじゃないか…
「な、なに?」
あくまでも冷静を装って尋ねてみる。
「一緒に食べよ?一人より二人で食べたほうが楽しいのかしら♪」
「あ、あぁ……」
そんなに嬉しそうな顔されたら断れるわけないじゃないだろ…
しかしなんで僕はこんなにドキドキしてるんだろう……?

しばらく互いに自分の弁当をつついていると、金糸雀がこちらの方を見ているのに気が付いた。どうやら僕の弁当に興味があるみたいだ。
「どした?」
「その玉子焼きものすごく美味しそうなのかしらー…」
「あぁ…これ?欲しいんならやるよ。ほら。」
玉子焼きを一個箸でつまんで金糸雀の弁当箱にいれてやる。
「あ、ありがとうかしらー!いっただきまーす♪」
ゆっくり口の中で味わいながら、こくん。と玉子焼きを飲み込む金糸雀。
「お…お…美味しいのかしらー!!」
「そりゃよかったじゃないか。なら全部やるよ」


残りの玉子焼きをヒョイヒョイといれてやる。金糸雀のこんなに嬉しそうな顔が見れるなら玉子焼き3個なんざ安いものだ。
「ぜ、全部も貰ったら悪いのかしらー…」
顔がニヤけてますよ金糸雀さん。
「いいよ。喜んでもらえて嬉しいしさ」
「で、でも……あ、じゃぁ玉子焼きのお礼をするかしらー」
「お礼って」
何だよ?と言おうとしたが、その言葉は口に出すことはできなかった…僕の口は金糸雀のそれによってふさがれてしたから。

初めてのキスは甘い甘い玉子焼きの味がした。

「んっ……こ、これがお礼かしらー//」
顔を真っ赤にした金糸雀はものすごいスピードで残りの弁当をかきこむと
「じゃっ、じゃあカナは教室に戻るかしらー!あでゅーかしらー!//」
と言い残して去って行った。
その場に残された僕は呆然と座ったまま…
「このあとどうやって顔あわせたらいいんだよ…//」


終わり

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