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ラプラスの魔は言いました「この世界には悪が満ちている」と
僕は考えました「僕が悪を懲らしめる」と

僕の初めての正義は、近所の悪餓鬼退治
泣きたくなるほど殴られたけど、懲らしめることが出来ました
ラプラスの魔はご褒美をくれました
僕の体ほどの大きさのお人形
続けて言いました「名前は翠星石」
僕は心の底から嬉しかった…

初めてのオトモダチ…
切に願ったオトモダチ…


「オニンギョウサン」

コンコンと降り積もる雪
暖冬だと言われていたわりにはよく雪が降る
こういう寒い日は姉の寝覚めも悪い

蒼「起きてってば、遅刻するよ?」
翠「後5分です! 後5分でおきるです!」
蒼「ダメだったら、いつも化粧やら髪の手入れで遅刻するじゃん!」
翠「化粧と髪の手入れは乙女の嗜みだからいいのですぅ!」
蒼「じゃあちゃんと起きようね」

そんなやり取りを毎日のように繰り返す
こんな日常が好きだ
だからこそ僕は、この日常を守るために悪を懲らしめる

翠「さぁ大変なことに遅刻ギリギリです! 蒼星石、走ってくですよ!」
蒼「誰のせいでこうなってるのか…」


学校に着く
チャイムと同時に入るのは毎日のこと
僕は姉と同じクラスに入る

ジ「おはよう蒼星石、翠星石。今日も遅刻ギリギリだな」
翠「大きなお世話です。」
蒼「あっ、ジュン君…」

桜田ジュン
僕らのクラスメート
小学校の頃から仲良くしていて、優しい人…
僕は好きだった
告白なんて出来ないけど

いつもの日常を僕は幸せに過ごす
大好きな人と姉と僕
姉がジュン君にちょっかいを出して、ジュン君が姉にし返す
それを僕が仲裁する
そんな平和なやり取りが堪らなく好きだ
ジュン君との関係が今の友達でも、この日常が続くのならばかまわない
いや、恋人になれたらそれはそれで最高なのかも


帰り道、翠星石とは別々に帰る
そろそろあの時期だ…

ラ「御機嫌よう、第3ドールのマスター」
蒼「その呼び方変えてっていってるでしょ。翠星石は翠星石だ」

ふと辺りが暗くなるとウサギが現れる
タキシードを着込んだ長身のウサギ
幼い頃からの付き合い
翠星石をクレタウサギ

ラ「それは失礼、翠星石のマスター蒼星石」
蒼「そろそろなんでしょ?」
ラ「はい。そろそろエネルギーが尽きてしまう…」
蒼「わかってるよ、やる。今回は?」
ラ「凶悪な強盗がこの街に隠れ住んでいます。その方の退治です。場所は――」

翠星石はドール
ラプラスの魔からの贈り物
人間として振る舞うため、悪に対しての裁きを糧とするドール
マスターが悪を裁くことで人間を保てる


あの日の贈り物を僕は大いに喜び、頑張った
手にした幸せを自分の行いで保てることに満足していた
だから、悪には負けなかった
近所のいじめっ子を懲らしめることから始まり
前回は学校の教師の浮気現場を匿名で暴いた
今度は強盗…
回数を重ねることに相手が大きくなっている気がする
いや、それは事実だ
でも、翠星石のために頑張ると決めたんだ

蒼「ただいま」
翠「お帰りです、蒼星石♪ 遅かったですね~」
蒼「ちょっとね」
翠「?」

僕は言葉少なげに眠りにつく
翠星石に翠星石が人形だってことは気付かれてはダメだ
早く事を終えてしまおうと決心し、眼を閉じた

次の朝早く家を出る
翠星石はまだ眠っている

蒼「よし…」


ラプラスの魔に教えてもらった場所へと向かう
ぞんざいを確認したらすぐに警察に連絡するつもりだった
あんなことにならなければ…

翠「どうしたです、蒼星石?」
ジ「なんか具合悪そうだな…?」
蒼「大丈夫だよ、二人とも。昨日あまり眠れなかったから…」

自分の手を見て昨日の恐怖を思い出す
あんなことになるとは…
汚れてしまった手は、幸せに泥を塗ってしまったことを感じさせる
心苦しくなり頭を振り考えることをやめた
でも、裁いた事に代わりはない
これで翠星石はまた生活できるんだから…
ぼーっとしていたら学校は終っていた


ラ「御機嫌よう、蒼星石」
蒼「!!」

帰り道にラプラスの魔が現れた
昨日裁いたばかりではないか!

蒼「ど、どうしたの? また悪を懲らしめるの?」
ラ「今日は別件です。あなたは資格を失った」
蒼「!?」
ラ「裁くために悪になった。だけれどもそれではアリスになれはしない…」
蒼「な、何を言っているんだい?」
ラ「アリスになる資格を失ったんですよ、あなたは」
蒼「だから! …?」

蒼星石の目の前にジュンとじゃれている翠星石が現れた

ラ「これであの少女は解放された。彼女はこれから蒼星石として生きる」

互いに見つめ合い、手をとる
蒼星石は眼を伏せた
あの場所には、あの翠星石の場所は僕が居たかった…


ラ「あなたは次のマスターが現れるまで、ドールとして生きてもらう」

ジュン君が翠星石を蒼星石と呼んでいる

ラ「安心してください、翠星石は今日から蒼星石になり幸せに生きる。あなたの描いた形は違うが彼女  は幸せに生きる」
蒼「ちょっと、ちょっと待ってよ…」
ラ「では御機嫌よう。」

時が止まった
蒼星石は、自分がドールになったことさえ自覚できなかった
ただ、ただ最期に翠星石の声が届いた


翠「ごめんです、蒼星石。実はすべて知っていたです。
  翠星石も蒼星石と同じく以前はマスターだったです。
  だけど、しくじってドールになってしまったのです…。蒼星石には悪いですが、
  翠星石は蒼星石になって、蒼星石の幸せを貰うです!」

思考が止まる瞬間
蒼星石はすべてを悟った
「次のマスターの幸せを奪えばいいんだ」



どれほどの時が流れただろうか、蒼星石だったドールはある少女に拾われた
金髪の長い髪を二つに束ねている少女は幸せな一家に生まれていた
そして、ジュン君によく似た恋人がいた…



ラ「今回は失敗だったようですね…。
  正義感が強く、一途な少女はアリスに成れるのではと思いましたが。
  まぁ、どれだけ時間がかかろうとアリスを求める為なら惜しくは無い。
  さぁて、次の少女はどのような手で見定めましょうか…」


~「オニンギョウサン」 オシマイ~

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