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「一つ屋根の下 第九十七話 JUMと大掃除」



「今日は大掃除をするです。」
朝、味噌汁をすすっていると声高らかに翠姉ちゃんが宣言した。
「えぇ~、面倒臭いわねぇ。いいじゃなぁい、掃除なんてぇ。」
「ダメです!一年に一回はキチンと掃除しないとダメなんです!大体ですね、水銀燈なんて言わないと掃除
しないじゃねぇですか。しかも、言っても嫌々適当にしかしねぇですし。」
ビシッと銀姉ちゃんを指差して翠姉ちゃんのお説教が始まる。僕から見れば、銀姉ちゃんなんてマシな方だ。
適当でも自分でやるんだから。真紅姉ちゃんなんて僕にやらせるくらいだもん。
「大掃除ですか…自分の部屋も整理するいい機会ですね。」
「うん……普段だと…中途半端にしかしないしね……」
キラ姉ちゃんと薔薇姉ちゃんは意外にやる気だ。大掃除か……仕方ない事だけど、僕には力仕事がメインで
回ってくる。まぁ、現在我が家で唯一の男手だしね。
「JUM!おめぇも拒否権なんてねぇですからね。今年もミッチリ働いてもらうですよ。」
銀姉ちゃんにお説教を終えた翠姉ちゃんが今度は僕に指を差してくる。
「ん、わかってるよ。まぁ、一年に一回くらいは家綺麗にしないとね。」
「いい心掛けねJUM。じゃあ、私の部屋もやってもらおうかしら。」
相変わらず自分で掃除する気はないらしい。真紅姉ちゃんに一番向いてない仕事は主婦なのは間違いない。
「JUM君には他の仕事沢山任せるから、真紅の部屋の掃除は僕が手伝うよ。自分の部屋なんだから
少しは自分でやりなよ?」
蒼姉ちゃんが助け舟を出してくれる。どうやらある意味無駄な仕事は増えずに済んだようだ。
「じゃあじゃあ、今日はみんなでお掃除なの~!」
ヒナ姉ちゃんがニコニコしながら言う。そんな訳で、我が家の大掃除大作戦が始まるのだった。



「JUM君~、少し手伝ってもらっていいかなぁ?」
コンコンと部屋のドアをノックされた後に声が聞こえる。他の姉妹なら断りもなくズカズカ部屋に入ってくるけど、
この辺の気遣いは流石蒼姉ちゃんか。とりあえず僕はドアを開けて蒼姉ちゃんに用件を聞く。
「あのね、コタツ出したいんだよ。もう寒いからね。それでJUM君に手伝って欲しいんだけど…ダメかな?」
僕の部屋掃除は大体片付いてる。後は掃除機かけたり、雑巾で所々拭いたりするだけだ。
「うん、いいよ。もうそんな時期なんだね。」
ふと感慨にふける。時間の流れは遅いようで早いもんだなって。僕と蒼姉ちゃんは部屋を後にして先ずリビングへ
向かう。というのも、物置倉庫がリビングから庭に出るのが一番近いから。
「窓拭き窓拭き~♪綺麗に磨いてピカピカよ~♪」
「ついでにカナのオデコも磨いてピカピカよぉ~♪」
「きゃー!!ちょ、ちょっと水銀燈何するかしら!しかも雑巾でぇ~!」
リビングではヒナ、銀、カナ姉ちゃんが窓を拭いていた。楽しそうに小さな体をフルに使って窓を磨くヒナ姉ちゃん。
そして同じように拭いてるカナ姉ちゃんのオデコを拭く銀姉ちゃん。誰が不真面目かは一目瞭然。
「もう、水銀燈ちゃんとやってよ。せめて邪魔したらダメだよ。」
蒼姉ちゃんが溜息混じりに言う。しかし、銀姉ちゃんは全く悪びれた様子もなく言う。
「いいじゃなぁい、少しは茶目っ気が必要よぉ。」
少しどころじゃないのは気のせいでしょうか。蒼姉ちゃんは再び溜息をつくと窓を全開にする。
「あらぁ、二人でドコ行くのぉ?それから寒いから窓閉めていいかしらぁ。」
「倉庫だよ。コタツ持ってくるんだ。窓はコタツ通すまで換気ついでに我慢してね。」
「へぇ~…倉庫でエッチな事したらダメよぉ?」
銀姉ちゃんがニヤニヤしながら言う。蒼姉ちゃんの顔はみるみる赤くなる。
「なっ…そ、そんな事あるわけないでしょ!?もう、ほら行くよJUM君。」
そう言って蒼姉ちゃんは僕の手を引いて庭に出る。庭から少し歩けば倉庫だ。ガチャガチャと音を立てて
蒼姉ちゃんが倉庫の鍵を開ける。
「うわっ、真っ暗だ……電気なかったっけ?」
「うん、ちょっと待ってね。え~っと…あ、あったあった。」
カチッと音がする。するとようやく倉庫の中は光に照らされた。



「しっかしまぁ…相変わらず色々あるなぁ。」
僕は辺りをキョロキョロと見回す。恐らく父さんの仕事の道具と思わしき物や、アルバム、昔の教科書等。
「ん~、コタツコタツ……あ、あったあった!JUM君~、こっちに来て~。」
僕が倉庫の中を物色していると少し奥で蒼姉ちゃんが手を振っている。どうやらコタツを見つけたみたいだ。
「今年もお世話になります、コタツ君。」
蒼姉ちゃんが埃を手でパッパッと払う。そして引っ張る。引っ張る。まだ引っ張る。
「……ん~…って、見てないで手伝ってよJUM君。」
いや、引っこ抜くのは一人で大丈夫と思ったけど結構重いらしい。僕は蒼姉ちゃんの隣にポジションを取る。
「それじゃあせーので行くよ?せーのっ!!」
グッと力を入れてコタツを引き抜く。ガコン!!と音がしたと思えばコタツが引き抜かれた。
「ふぅ、取れたね~……って…蒼姉ちゃん!!」
「え?……わわっ…きゃああ!!?」
ガタンガタンゴトンゴトン………激しい落下音と共に雪崩のように崩れ落ちてきた倉庫の荷物。
幸い、布団や毛布や服。布類がほとんどだったようで、角ばったもので怪我はないようだけど……
「もが!!!もがもがもが!!」
僕は呼吸困難に陥っていた。布団に埋もれたせいだろうか。目の前は真っ暗。何かが乗ってるようだ。
柔らかい事から察すると毛布だろうか。おかしいな、毛布はこの前出したような……
「ひゃっ…ダメだよJUM君…そんな…んっ……」
何故か蒼姉ちゃんの艶かしい声が聞こえる。とりあえず動くだけ手を動かしてみる。ん…これは肩か?
ちょっと上に伸ばす…サラサラ…髪…って事は…僕蒼姉ちゃんの下敷きになってる。そしてさらに…
「んんっ…やぁっ…JUM君…あの…そこ、僕の胸…」
という事らしい。どうやら仰向けの僕の上にうつ伏せの蒼姉ちゃん。その上に雪崩れてきた物。
そして僕の顔は蒼姉ちゃんの胸に埋もれてるらしい。どうりでさっきから気分が…ゴホンゴホン。
「御免ね、JUM君……ちょっと僕も動けそうにないかも……苦しくないかな?」
苦しいけどある意味この世の楽園です。天国と地獄は隣り合わせか。何にしろ、さっきの音で誰かが
気づいて助けに来てくれないと不味そうだ。色々な意味で……
「ちょっと、凄い音したけど大丈夫ぅ?って……JUM?蒼星石ぃ?どこに……」
微妙に薄れていく意識の中。天使か悪魔の声がしたような気がした。



「いやぁ、ビックリしたわよぉ。まさか二人が倉庫で遭難しかかってるなんてねぇ。」
夜。無事救出された僕等は何とかコタツをリビングに運び入れた。その後もコキ使われる事数時間。
ようやく大掃除は完了した訳である。
「倉庫…ハプニング……そんなプレイもいいかも……」
「薔薇姉ちゃん、僕結構本気で死にかけたんだけど……」
脳内でピンクな妄想を繰り広げているであろう薔薇姉ちゃんにツッコミを入れる。
「まぁ、二人が無事でよかったですわ。二人のお陰で今年もこの幸せが味わえるのですから♪」
キラ姉ちゃんの言う幸せ。それはコタツの他ならない。リビングのテレビの前に設置されたコタツは
掃除を終えた姉妹を吸い寄せるように存在していた。今だって晩御飯の用意をしている翠姉ちゃんと蒼姉ちゃん
以外はコタツでまったりしている。
「冬場の食事はこうじゃないとねぇ。今度蜜柑も買ってこないといけないわねぇ。」
コタツに蜜柑。これ最強。反論は認めない。
「はい、みんなお待たせ~。御飯用意したよ~。今日は、お鍋で~すっ!」
蒼姉ちゃんが大きな鍋を持ってコタツの真ん中に鍋を置く。中にはお馴染みの鍋の具がグツグツ煮えている。
「今日はお疲れですぅ。奮発してたぁ~くさん用意したからみんなで食べるですよぉ~。」
翠姉ちゃんがお茶碗をコトコトと置いていく。すでにキラ姉ちゃんは目がランランと輝いている。
実際僕もさっきからお腹がグゥグゥ鳴っている。チャンコ出汁の香りが堪らない。
「それじゃあ、食べましょうかぁ。いただきまぁす!」
『いただきま~す!』
銀姉ちゃんの号令の元、18本の箸が鍋の中を漁りだす。我が家の大掃除、これにて終了。
END

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