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「一つ屋根の下 第九十五話 JUMとスキー」



スキー旅行も三日目。最終日だ。太陽が雪を照らし、その反射された光が僕の顔を照らす。本日は晴天也。
「さぁさ、今日で最後の日ですぅ。ちゃっちゃとみんなで山頂行くですよぉ~。」
翠姉ちゃんと蒼姉ちゃんを筆頭に僕等はリフト乗り場へ向かっていく。
「水銀燈、山頂行くけど大丈夫?無理はしないでいいんだよ?」
「だ、大丈夫よぉ。昨日真紅にミッチリしごかれたしぃ。楽勝よぉ……多分…」
そう言って銀姉ちゃんはスゥッと深呼吸をするとリフト乗り場まで滑っていく。大分スキーも板についてきたな。
「JUM、早く行くわよ?まさかまだ寝惚けているの?」
そんな銀姉ちゃんを見ていた僕に隣から声がかかる。長い、綺麗な金髪が風に乗って流れている。
「ん、そういう訳じゃないんだけど。銀姉ちゃんスキー結構上手くなったなってさ。」
「それはこの真紅が鍛えてあげたからよ。それにしても……そんなに水銀燈が気になるの?」
真紅姉ちゃんはそう言って不満そうな顔を向ける。
「そりゃあ気になるだろ。銀姉ちゃん山頂行くの初めてだろうし。リフトも昨日初めて乗ったくらいだろ?」
そもそも、僕は真紅姉ちゃんにこんな顔される覚えは微塵もない……はずだ。
「……そう。なら、貴方は一生そうやって水銀燈の心配でもしていたらいいのだわ……何よ……
昨日の夜はあんなに………だったのに……」
ムスッと不満顔。僕はそれを見てついつい噴出してしまう。当然のように真紅姉ちゃんはさらにムッとした顔。
「な、何がおかしいのよ。」
「いやさ、真紅姉ちゃんは結構ヤキモチ妬きだなぁと思ってさ。」
「わ、私は別にヤキモチなんて……大体、下僕の行動にヤキモチを妬く主人など…」
ムキになって反論する真紅姉ちゃん。僕は、そんな姉ちゃんの頭に手をポンと載せるとグリグリ撫で回す。
「じゃあせめて、山頂まで僕がエスコート致しますよお嬢様?」
真紅姉ちゃんは僕の手を払いのけて背を向けてリフト乗り場へ向かい、一言。
「仕方ないわね…ほら、早くしなさい。私と一緒にリフトに乗れるのだから光栄におもいなさい。」
そのまま僕のほうを見ずにリフト乗り場へ向かう。でも、僕は見た。さっきまで強張っていた頬が緩んでるのを。



「いつも思うけれど。リフトの最中にストックを落とすなんてどれだけお馬鹿なんでしょうね。」
ゆっくりゆっくり山頂に登るリフトに真紅姉ちゃんと乗りながら、ふと真紅姉ちゃんが言う。
「さぁ。板は外れたって解釈できるけど…ストックや手袋は注意不足だよね。」
下を見ると、張られた網の上にストックやら手袋やらが落ちている。これ、スキー場の人が回収してるのか?
それにしても寒い。まぁ、徐々に高度が上がってるんだから当然だろうケド。風もそこそこに吹いてて、適度に
リフトを揺らす。思わずブルッと体が震えてしまう。
「あら、寒いの?」
「そりゃあ温かいって事はないでしょ。凍えるほどじゃないけど、普通に寒いよ。」
真紅姉ちゃんがそうかしら?と首を傾げる。ん~、どうやら僕と真紅姉ちゃんでは耐えれる気温が違うらしい。
「でも。貴方が寒いなら仕方ないわね。貴方が凍死でもしたら悪いから……」
真紅姉ちゃんはそう言うと、僕の体に体を寄せて顔を腕に埋める。
「か、勘違いしないでよ?元々使えない下僕がもっと使えなくなるのが困るからよ。」
「だったら別にそんな事しなくても僕はかまわな…」
「五月蝿い下僕ね。御主人様の労いは素直に受けるものよ。」
真紅姉ちゃんが僕の言葉を遮る。一体どっちが素直じゃないんだろうか。でも、そんな事言えばリフトから
落とされそうな気もするから口にチャック。
「ほら、JUM。こっちを見て顔を少し下げなさい。」
僕は真紅姉ちゃんに言われるままに顔を下げる。すると、その顔に。唇に。真紅姉ちゃんの唇が触れる。
少し勢い余ったのかカツッと歯があたる音がしたけど、真紅姉ちゃんは気にしていない。
「ちょ~~~~っと真紅!!おめぇ、何抜け駆けしてやがるですかぁ~~~~~!!」
「ちょ、ちょっと翠星石。そんなに暴れたらリフト止まっちゃうよ。」
ふと、後ろから翠姉ちゃんの怒号が聞こえる。ああ……あの二人後ろに乗ってたのか…
「んっ……全く五月蝿い娘ね。ムードが台無しじゃないの…」
真紅姉ちゃんは若干不満げに言う。ああ、こりゃリフト降りたらまた板ばさみだな…



「はいっ、着きましたっ!山頂です!!」
そんなこんなで僕等は3日目にしてようやく山頂へとたどり着いた。相変わらず寒いけど、太陽の光が遮られる
事無く直接あたるせいか、不思議と温かくも感じた。周りを見れば一面雪景色。太陽の光を雪の結晶が
反射させてキラキラと光っている。父さんはキラ姉ちゃんの名前付けた時スキーでもしてたんじゃないかって思う。
『雪』の『華』、『綺』麗な結『晶』がキラキラと……ってね。
「さ、記念にみんなで写真撮ろうか。デジカメ持ってきてるし、私ちょっと撮ってくれそうな人に声かけてくるね。
そうだなぁ……あっちの山をバックに撮ろうか。さ、並んでてね。」
めぐ先輩はそう言うと、適当に近場の男性に声をかけていた。僕等は言われるままに雪山をバックに並ぶ。
「銀姉ちゃん、大丈夫?」
まだ俊敏に移動するのは難しいのか、銀姉ちゃんが少しもたつきながらも到着。そのまま僕の隣に陣取る。
「だい、大丈夫よぉ……そうだ、ちょっとバランス悪いからぁ…JUMの腕借りるわねぇ~。」
銀姉ちゃんはそう言うと、僕の左腕をギュッと抱きしめる。モコモコしてるウェアの上からでも胸の膨らみを
確実に感じる事ができる。グゥレイト!胸だけはでかいぜ!
「ちょ、ちょっと水銀燈ズルイですよ!一番入りやすいと思って仕方なくJUMの隣空けていただけなのに…!」
「そんな事知らないわよぉ。何なら、貴方も滑れなくなったらぁ?」
初めは相当滑れないのを気にしてた銀姉ちゃんだけど、今ではそれを武器に変えてしまってる気もする。
「頼んできたよ~。じゃあ、私は空いてるJUM君の右隣にしようかな。」
シャーッと滑ってきて、近くで華麗に180度回転。そして悪ふざけなのかめぐ先輩も銀姉ちゃんのように
僕の右腕をギュッと抱きしめてきた。
「めぐ先輩!?な、何を……」
「いいじゃん、真紅ちゃん。気にしない気にしない。いいですよ~、撮ってください~!」
めぐ先輩がデジカメを持った男性にブンブン手を振る。男性は苦笑交じりにデジカメのシャッターを切った。
「有難う御座います。助かりました。」
めぐ先輩は男性からデジカメを受け取ると僕らに向かって言った。
「うん、綺麗に撮れてる。この写真は返ってからパソコンでプリントアウトしてみんなに配るね。それまで出来は
お楽しみだよ。さ、後は一番下までみんなで滑ろうかっ。」



「け、結構斜面キツイわねぇ……」
銀姉ちゃんが雪の敷かれた斜面を見ながら言う。確かに、多少は滑れるようになったが初心者の銀姉ちゃん
には厳しいかもしれない。
「大丈夫だよ銀姉ちゃん。初めみたいにゆっくり滑ればいいよ。僕も一緒に滑るしさ。」
「が、頑張ってはみるわぁ。」
そう言ってふぅと深呼吸。一方、他の姉妹はと言えば……
「じゃあ、翠星石達は一番下まで先に滑っておくです。トロトロしてると周回遅れにするですよぉ?」
「何か困った事があったらその場で連絡してね。すぐ駆けつけるから。」
「本当は全員一斉に行けるといいのだけど…この人数では少し邪魔になってしまうわね。」
「先に下に行って、何か食べたら私もまた滑って行きます。」
「JUM……銀ちゃん……道外れないでね……」
そう言い残して翠姉ちゃん、蒼姉ちゃん、真紅姉ちゃん、キラ姉ちゃん、薔薇姉ちゃんは颯爽と滑っていく。
「カナ姉ちゃん達は行かないの?」
「う~、カナ達もちょびっとだけ怖いからJUM達と一緒にゆっくり滑っていくかしらぁ。」
「うゆ……ヒナもJUMと一緒がいいのぉ。」
「私もまぁ……二人がこう言ってる事だし。」
と、カナ姉ちゃんとヒナ姉ちゃん。そして柏葉は僕等と一緒にゆっくり滑るようだ。
「そっか。それじゃあ、僕等も下まで滑ろうか。」
僕はそう言って、斜面に身を乗り出す。そして、板がドンドン滑っていく。体が加速していくのが分かる。
このまま直滑降ではスピードがヤバイ事になりそうなんで適度に大きめにターンをしてスピードを押さえる。
大丈夫、いける。ザザザッと板が音を立てて雪を跳ね除ける。ある程度滑った所で僕は後ろを振り返った。
すると、普通に滑ってくるカナ姉ちゃんチームと。そして、あくまで慎重にゆっくり滑る銀姉ちゃんが見えた。



「んっ……ゆっくり…ゆっくりでいいのよ……」
私は自分に言い聞かせながら大きくターンをしながら。時には真横に滑りながら。それでも確実に下に向かって
滑っている。JUMが待ってくれてる場所まで、滑り出したトコから後半分くらいかな。
「水銀燈~、こっちむいて~。写真撮るよ~!」
「ごめん、めぐ。そんな余裕ないわ…」
めぐはデジカメを片手に余裕を見せながら私にペースを合わせて滑っている。さっきからカシャカシャ音がする。
きっと必死な顔つきの私を撮ってるんだろう。本当、偶に思う。今のめぐしか知らない人はめぐが小さい頃
病弱で、下手すれば死んでいたなんて信じられないだろう。私もめぐとの付き合いは長いつもりだけど、
偶にそれを忘れてしまう。だって……
「ん~、いいよ銀ちゃん。その切羽詰ってる顔も愛くるしい♪」
あんなに無駄に元気なんだから。私はふぅと少し溜息を吐く。そろそろJUMの待ってくれてる場所に着く。
金糸雀達も一緒に待ってる。悔しいけれど、やっぱり2,3日じゃあ金糸雀や雛苺のレベルにも
届かなかったみたい。でも、いいわ。今回は基礎。今度からは……私もスキーから逃げずに滑れると思うから。
だって、そうじゃないと申し訳がたたない。
「お、銀姉ちゃん滑れたじゃん。じゃあ次はアソコのリフトまで降り場まで一気に滑ろうか。くれぐれも
無理しないでね。銀姉ちゃんは銀姉ちゃんのペースで滑ればいいんだからさ。」
「分かってるわよぉ。金糸雀や雛苺に滑れて私が出来ない訳ないじゃなぁい。」
「むっ……それはちょっと聞き捨てならないかしら!全然滑れなかったのはドコの誰かしらぁ?」
「そうなのよ!そんな事言う水銀燈は置いていって先に滑っちゃうのよ~。」
「ほらほら、姉ちゃん達喧嘩しないでさ。ほら、みんなで滑っていこう?」
私の……いいえ、私達の優しい、大好きな弟に……



さて、山頂から1時間は余裕でかかっただろうか。翠姉ちゃん達には2週遅れどころか、3週遅れになって
しまったけど、僕等はようやく下まで滑り終えた。
「はぁ~……ようやく滑りきったわねぇ。」
銀姉ちゃんが額の汗を拭いながら言う。やっぱり相当に疲れたんだろう。
「さて、帰りのバスまではまだ時間あるけど……どうする水銀燈?」
「そうねぇ。もう少し滑りましょうか。来年に向けて練習しときたいわぁ。」
銀姉ちゃんはそう言って、めぐ先輩とリフトに向かっていく。
「ふふっ、よかったわ。あの娘も少しはスキーの自信がついたみたいね。」
真紅姉ちゃんが銀姉ちゃんを見ながら言う。確かに、ブーツや板の着け方も分からなかった最初にから比べると
随分成長した方だ。
「そうだね。何だかんだで楽しかったしね。」
「そうね……私も……JUMとの大事な思い出が作れてよかったわ…」
真紅姉ちゃんが顔を赤くして言う。クリスマスの事を言ってるんだろうか。僕も思い出してつい赤面する。
「JUM!!真紅!!時間はまだあるですから滑るですよぉ~!JUMも最後くらい翠星石達に
付き合えですぅ!!」
リフト乗り場から翠姉ちゃんの大きな声がする。そういえば、銀姉ちゃんに構いっぱなしで翠姉ちゃん達とは
あまり滑っていなかったな。
「ふふっ、行きましょうか。あの娘も今回は相当我慢してたみたいだし。最後くらい一緒に居てあげてもバチは
当たらないわよ?」
そう言って真紅姉ちゃんがポンと僕の背中を押す。僕はそのまま翠姉ちゃんと蒼姉ちゃんのトコへ。
そして、時間一杯まで僕等はスキーを満喫した。
最後に、ホテルに戻り温泉を満喫する。レストランで夕食をとり、部屋に戻れば後はバスで帰るだけと
なった。おっと、旅行はここで終わりじゃないよ?ほら、よく言うじゃないか。家に帰るまでが遠足。
バスが家に着くまでが今回の旅行。みんな疲れ果てて寝たりしてるけど。
その中で不思議なくらい無駄に元気な人がいたんだよなぁ。
END

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