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第十八話 「結婚式」


金糸雀がみっちゃんさんと槐さんを連れてきた日から
ずっと水銀燈が来ない時間をウェディングドレスの作成にあてていた。
毎日のように槐さんとみっちゃんさんが毎日のように来て
ウェディングドレスの作成のサポートを……と言うより
初心者の僕はほとんど雑用しか出来なく
僕がみっちゃんさんと槐さんの手伝いをしながら作るというような形になっていた。
デザインは僕が考えた。考えた僕自身が言うのもなんだが
ちょっといびつなデザインになってしまったかもしれない。
水銀燈は時々授業をサボってくるので
みっちゃんさん達と鉢合わせにならないように
気配っていたから大変だった。
そうやってずっと頑張っていた。
けど、僕の体が“頑張ることさえ許してくれないらしい”。
毎日毎日、ウェディングドレスの作成とかをしていただけでも疲れていた。
それでも自分で出来る範囲の事を僕は
夜中の睡眠時間を削って作成に時間を当てた。
それが辛かった。
体が悲鳴をあげていた。
命を削るなと、聞いてられなかった。
僕は水銀燈の誕生日に告白すると決めていたからだ。
皆に助けられて助けられて、そしてやっと学校へと行って
水銀燈に告白をして恋人同士になった大切な日だから。
大事な大事なその日に結婚したかった。
大事な日までに命を削って頑張った甲斐あって
ウェディングドレスは完成した。
僕は気持ちを込める以外はほとんど何も出来なかったが
それでも嬉しかった。
みっちゃんさんと槐さんはさっさと告白して渡せと言ってきたが
誕生日の日までは待った。
僕は残りの日までは安静に過ごしていたが
削った命は元には戻らないようで
体調は悪くて悪くてひどかった。
宣告された余命は三ヶ月。
まだ一ヶ月近くしか経っていないのにもう限界だと感じた。
もう本当に死ぬんだなと思ってまた涙が出そうになったが
何とか堪える事が出来た。
涙を流さないでいるのがこんなに辛いなんて。
けど、泣いていては駄目なんだ。
涙は“哀しみ”の雫だから。見せてはいけない。



「ま、開けてみな」

水銀燈の目の前にはウェディングドレスが入った大きな箱がある。
僕は、プロポーズをしようとしている。
……少々無茶があるプロポーズだが
忘れられないものになりそうだ。
考案してくれた金糸雀に感謝しよう。
 「なんなのぉ?これ?」
「僕の気持ち」

僕の思い。精一杯の思い。水銀燈、受け取ってくれ。

「これは……?」

水銀燈は不思議そうに箱の中身を見ている。
中にはウェディングドレスと指輪が入っている。
ウェディングドレスも指輪もかなり変わったものなのだが。

「何度も言うが僕の気持ちだ、水銀燈結婚してくれ」

恥ずかしくてつい早口で固まった口調になってしまった。
それでも充分水銀燈には思いが伝わったようで戸惑った水銀燈は

「……へ?」

と疑問の声をあげた。

「駄目か……?」
「ジュン……」

水銀燈は泣きながら僕の名前を呼んだ。水銀燈も……泣き虫だな。僕まで泣いてしまいそうだ。
……けど、あの涙は嬉し泣きだろう。
“哀しみじゃなく喜びの雫”
僕も泣いてしまおうか……。
いや、やめておこう。
みっともない所を見せてられない。

「返事は決まってるじゃないお馬鹿さぁん。勿論返事はオーケーよぉ」

その言葉を……待っていた。
が、喜びに浸る暇もない。
急がなければ。

「じゃあ早速行こうか」
「え……?どこに……?」
「結婚式会場へ」
「……へ?」
「屋上に散歩って言って抜け出してきたんだ。早く行こう!」
「へっ?ちょ……ジュン……!」

時間が無いんだ。
もしかしたら今死んでしまうかもしれないんだ。急がないと、急がないと。
……時間なんて気にしてなかった時に戻れたらいいのにな。
儚い願いを一人、心に中で思った。

「ちょ……結婚式会場ってどこよ!?」
「それは秘密」
あくまで驚かせたい。
最後まで秘密にしておこう。
水銀燈はウェディングドレスの入った箱を背負う。
僕は持つほどの体力がない。
水銀燈、ほんとに申し訳ない……。
僕は病院の屋上のドアを開けると一階へと向かう。
暫く歩いていると周りに変な目で見られる。
だが、そんなのを気にしていられない。
さっさと行かないと。
そう思っているとタクシー乗り場に混じる
不自然なレンタカーを見つける。よし。

「来たな」
「来たのかしらー!」
「え……あなた達っ!?どうしてここへ……!?」
「そりゃあ会場への案内役だからな」

レンタカーから出てきたのは金糸雀とベジータ。
会場への案内役だ。
これで結婚式会場まで行く。

「そういう事かしらー!早く行くかしらベジータ!」
「OK!任せてな!」

トランクにウェディングドレスを入れながらベジータは言う。
箱が大きくて閉まりきらないので紐を使って強引に落ちないようにしている。
トランクから運転席へと入る。
金糸雀は助手席、僕らは後部座席へと乗った。

「ちょっと早いが銀嬢……おめでとうな。」
「うらやましいかしらー!」
「い、いきなり結婚て……!?」
「いいっていってくれたじゃないか」
「そりゃそうだけど……」
「善は急げって言うしな。こいつらにも頼んでいたんだ。」
「……」

あらま、顔が赤くなっている。
恥ずかしくて声も出ないんだろうな。
僕も恥ずかしいが事前に言ってあったしまだマシだ。
そんな事を思っていると車が止まる。

「さて……ついたぜ。ここからが本当の……極楽地獄だ……!」

いつもとは少し違う台詞だな。

「先に行ってるかしらー!まだ私達は準備はあるかしらー!」
「わかった。先に行っておくな」

まだ他に何か準備はあったのか……?もう無いはずだが、まぁいいか。

「わかったわぁ」
水銀燈もようやく落ち着きを取り戻しているようだな。

「じゃあ行こう」

水銀燈がウェディングドレスの箱を背負う。
会場の場所を知らない水銀燈より前に歩き先導する。

「さっきもなんだが……すまないな……。そんな荷物背負わして」
「なぁにかえって免疫がつくのだわぁ。ほんと優しいわぁ」

優しくても……僕は何も出来ない。
無力だ、弱い。
だから、こんな貧弱な僕の最後の頑張りをどうか許してくれ。
自分の体よ、だいっ嫌いな神様。

「ここは……学校?……もしかしてここぉ?」
「ああ、僕が告白した場所。スタートとゴールが同じって素敵じゃないか?」
 ……ゴールじゃないな、新たな出発だな 」
「ジュン……」

出発してももうゴールは見えている。
それでも僕達は道を進む、短い道を。

「会場エリアに着くまで少し昔話でもしないか?」
「そうねぇ、じゃあ告白の時の話でぇ」
「おま……」
僕らはあの時の告白の話をしていた。
ちなみに、屋上で結局五時間目はサボってしまって
六時間目は出ないと大変なので
“二人で”教室に戻ると周囲のとんでもなく痛い視線を浴びた。
五時間目に行方を“二人で”くらまして
そして“二人で”戻ってきたのだ。
周囲の反応は当たり前のようだが
それでも怖かった記憶がある。
全く、色々な意味で大変だった一日だった。
放課後は二人で帰った。
六時間目とホームルームの間は
薔薇水晶や翠星石らに思いっきりからかわれ大変で疲れてたな。



「そういえばあなたが引き篭もっていた時に教えくれた曲を思い出したわぁ」
「何だっけ?」
「確か~ほら、アクエリオンって曲ぅ。」
「あれかぁ」

放課後、水銀燈はいきなりそう言ってきた。
水銀燈がローゼンメイデンの帰りに
僕のMP3プレイヤーいじってる時にその曲を教えたんだっけ。
「一万年と二千年前から愛してる……だっけぇ?ジュンもそれぐらい前からぁ?」
「そ、そこまではいかないけど一目見たときから好きだったよ。」
「って事はずっとずっと昔からねぇ。一目惚れかぁ」
「そ、そんな事人には言うなよ!」

水銀燈と僕は幼馴染だ。
昔の事はよく覚えてはいないけど
もしかしたら不登校になる前の更にその前の昔、僕は好きだったかもしれない。
水銀燈を。子供の時に恋というのを知らなかっただけで好きだったかもしれない。
もしかしたら、子供の時の今は覚えてない恋が今になって蘇ったのかな?
僕はそんな事を時々思う。

「ふふ……。そう言えばあの曲の事をまた思い出したわぁ」
「ん?なになに?」
「僕の地獄に音楽は絶えない~だっけ?」

アクエリオンの歌詞の一部だ。

「あーそうそう。それがどうかしたのか?」
「ジュンの……地獄のように広大な心にはどんな音楽が流れているのぉ?」
「地獄て……そんなに広大かな?」
「広くて優しいわぁ」
「一万年と二千年前から愛してる……だっけぇ?ジュンもそれぐらい前からぁ?」
「そ、そこまではいかないけど一目見たときから好きだったよ。」
「って事はずっとずっと昔からねぇ。一目惚れかぁ」
「そ、そんな事人には言うなよ!」

水銀燈と僕は幼馴染だ。
昔の事はよく覚えてはいないけど
もしかしたら不登校になる前の更にその前の昔、僕は好きだったかもしれない。
水銀燈を。子供の時に恋というのを知らなかっただけで好きだったかもしれない。
もしかしたら、子供の時の今は覚えてない恋が今になって蘇ったのかな?
僕はそんな事を時々思う。

「ふふ……。そう言えばあの曲の事をまた思い出したわぁ」
「ん?なになに?」
「僕の地獄に音楽は絶えない~だっけ?」

アクエリオンの歌詞の一部だ。

「あーそうそう。それがどうかしたのか?」
「ジュンの……地獄のように広大な心にはどんな音楽が流れているのぉ?」
「地獄て……そんなに広大かな?」
「広くて優しいわぁ」
自分の心が地獄だとすれば。

「そうだな……僕の地獄には……名前は無いよ」
「へっ?」
「何か自然と流れている。けど名前は知らない」
「変わってるねぇ」
「ただ……?」
「ただ?」
「ラブソングだって事はわかる……。好きな人への……」
「ジュン……」

心の中でずっと響いてるのかもしれない。
ラブソングが。



「今でも鮮明に覚えてるわぁ。」
「恥ずかしいな」

そうやって昔話をしていると校舎についた。
僕達は校舎へと入っていった。
その後、水銀燈と少し言葉を交わして一旦別れた。
衣装に着替えるからだ。
男子更衣室の扉を開ける。
元気だった頃は体育の着替えで使っていた。
……考えると久々だ。
感慨深いな、こんな小さな“思い出”さえ。
……そういや、梅岡には感謝しないとな。
梅岡は今では担任を持っていないが生活指導のままだ。
だからあまり関わりはない筈だが
水銀燈の遅刻などひいきしてくれているらしい。
……良くも悪くも熱心な奴だ、ほんと。
もう顔を合わせる事も無いんだろうな……。
なんか、寂しいな。
僕はタキシードを着込む。
ちなみにこれはみっちゃんさんらの家に元々あったものを少し作り変えたものだ。
基本は黒だけど所々白色が入っている。
普通、新郎は白基調のタキシードだか知らないが
普通の結婚式じゃないんだからいいんだ。
僕はタキシードを着終わり自分の着ていた病院のパジャマを畳んで置いておく。
そして廊下へ出た。
言うのもおかしいが、少し重く感じる。
いつもはすかすかのパジャマだ。
今着ているのは少々分厚いタキシード。
そのギャップのせいだろうか?
どっちにしろ……自分は弱っているな。
そんな事を考えていると水銀燈が出てきた。
僕とは違い普通の結婚式のようなウェディングドレス……ではない。
普通のウェディングドレスに黒が混じっている。
「待ったぁ?」
「ん……あ、ああ。そんな事無いよ。」
「見とれてたのぉ?」
「そ、そんな所だな」
「ふふ……、さて行きましょうか」

ウェディングドレスの荷物が無くなり
動きやすくなった水銀燈は僕の手を引っ張っていった。

「これはあなたから渡す方の指輪でしょぅ?」

水銀燈は僕に指輪を手渡してきた。僕が箱に間違えて入れたんだった。

「ああ、間違えてウェディングドレスの所に入れちゃったんだ。」
「渡すのは指輪交換の時なのにね」
「そういえば……あなたに渡す指輪……どうしよう……」
「心配はいらないよ」

ちゃんとそれも用意してある。
いきなり結婚しようなんて言って指輪を水銀燈が持ってくるわけ無いからな。
そんな風に喋っていると屋上へ続くドアへ着いた。
普段ドアを閉じる鍵は刃物で潰されている。
恐らく蒼星石だろう。任せてなんて言っていたが恐ろしいな。
まさか人殺しなんてしないだろうな。
屋上には舞台があった。
白い舞台、演劇部の物を持ち出したものだ。
借りたって迷惑をかけないからいいだろう。
周りを見るといつものメンバーが揃っている筈が
金糸雀とベジータはまだ居なかった。
何の準備をしているんだろう?
皆が祝福の言葉をくれる。
嬉しいな、ほんとに嬉しい。
幸せだ、間違いなく幸せだ。

「このウェディングドレス……普通と違って黒色が混じっているけどどういう事ぉ?」
「そういえば普通とちょっと違うね」

蒼星石も突っ込んでくる。
まぁ、気になるのはしょうがないか。

「ん?あーこれか、 考えてみたら純粋な色ってどんなのを思う?」

皆に言う、少し考えた後口々に言い出す。
「うゆー?苺色なのー!」
「翠じゃないですかぁ?」
「情熱の赤……?」
「……紫?」
「やはり純白でしょうか?」

どこから出てきたか薔薇雪華姉妹も出てくる。
最初から居た筈なんだがどうも存在感が薄くてあまり気付かなかった。

「やっぱり白とかが出るか……。僕はね白も純粋な色だと思う。」
 だけど黒色はそれ以上に純粋だと思うんだ」
「どういう事ぉ?」
「黒色は純粋だから他の色があってもずっと黒色のまんまなのだと思う。」
「誰にも邪魔をされない恋……って事で黒も混ぜたんだ。喪服を意識したんじゃないよ
 それに水銀燈が好きな色だしね。」

黒色は強く純粋、そう思う。
そんな馬鹿みたいなデザインを実現させてくれたみっちゃんさん達、ありがとうございます。
ちなみに、喪服を意識したというのは……嘘だ。

「策士の私でもわかんなかったかしらー!」
「全くだ」

金糸雀とベジータが戻ってきていた。
ほんと何時の間に。
その後は金糸雀が結婚式のアドバイザーだという事を水銀燈に教えたりして
少し皆で話していた。
少しして僕らは手を繋ぎながら舞台へと歩いていった。
舞台は殺風景だった。白い舞台には壁が1つあるだけで他は何も無く
周りは殺風景だった。だがそれがよかった。
僕らの後に真紅がついて行く。

「なんなのぉ?」
「牧師さん代わりと言った所だわ」
「ふふ……本当にありがとねぇ」
「感謝するよ、真紅」
「下僕と親友の為ならなんだってやるのだわ」
「さて始まるわよ、まぁ普通と違って質素だけどね」
「関係ないわぁ。ふふ……」
「そういう事……」

そんな会話をしている内に舞台へと着いた。
あってもなくても同じようなもんだけど。

「さて……。いきなりだけど本題なのだわ」
「ええ……」
「ああ」

真紅はそう言うとポケットから指輪の箱を覗かせる。
そしてその指輪の箱を水銀燈へと渡す。
「……え?」
「誕生日プレゼント……とでも言っとくわ。」
「真紅ぅ……」

水銀燈は涙目になる。
僕の持っている指輪も真紅い貰ったものだ。
何でも、真紅は花が好きなようで
花を指輪につけたらどうと言ってきた。
指輪をどうするか困っていた僕なので真紅に任せる事にした。
花が好きとは、“麗しい”もんだな。
そして真紅は続ける。

「さぁ水銀燈、指輪を出しなさい。あなた達の永久の恋の証となる指輪を」
J「さぁ……水銀燈……」

水銀燈は言われるがまま中の指輪を取り出す。
白い純白の指輪に小さな小さな薔薇の造花が絡みついた
いびつで変わった指輪。

「ふふ……それでは先に指輪交換といきましょうか」
「結婚式の順序ってよく知らないけど後じゃないのぉ?」
「常識に囚われるってなんか嫌だろ?」
「あなたらしいねぇ」

まぁこの結婚式自体非常識なんだけどな。
順番なんてどうでもいいさ。
僕は指輪の箱から純黒が基調の指輪に薔薇が絡みついたデザインの
水銀燈と似た指輪を取り出した。
そして、それを水銀燈の指輪にはめる。
水銀燈は純白の指輪を僕にはめた。

「さて、誓いを始めるわよ」

真紅はそう言うと舞台の小さな小さな壁を曲がっていった。
その先は運動場が見える位置へと行けるだけで何も無い。

「……?この後はここで“誓い“じゃなかったのか?」
「予定は変わるものなのよ」

……どういう事だろう?
こんな事は全く知らないのだが。
壁を曲がると校庭が見える位置に小さな階段が置いてあった。
階段を上れ、という事だろうな。真紅は先に行ってというので僕達が先に上っていった。
危ないので慎重に、慎重に上る。
そして運動場を見ると、人が居た。
一人じゃない、一杯居た。
兎に角沢山居た、歓声が聞こえてきた。

「どういう……事……?」
「策士の思うがままかしらー!」
「金糸省はね、君達に秘密で他にも祝ってくれる人を呼んでたんだ」
「水銀燈がプロポーズを承諾するかわからなかったから今日水銀燈がOKを出した後急いで読んだのですぅ。」
「お医者さんたちにはばれない様に連絡するのは大変だったのー!」
「とまぁこういうわけね、あなた達の門出を祝うのは私達だけではないわよ」
あー……見事にやられたもんだな。
こんなドッキリがあるとは予想してなかったな……。
ああ、嬉しい、ほんとに。

「……グスッ……ほんと……おばか……さんねぇ……有難うとでも……言っておくわぁ・・。」
「みんな……有難う」

水銀燈は泣いていた。
僕は今回も、頑張って堪えた。
必死に必死に堪えたせいか涙は出なかった。
真紅が階段を上ってきた。

「さぁ……二人とも誓いなさい」
「友と恋人……そしてこの薔薇に誓いなさい、永遠を」

真紅は指輪の薔薇を指しながら言う。

「ああ」
「ええ」

返事をすると水銀燈とジュンは唇を重ねる。
今まで何回もした事はあるが今までで一番のキスだ。
愛を実感できる。
告白された時みたいに今という一瞬が 過ぎ去るのが惜しくも思えた。
――二人は今ここで誓う。
友と愛する人、そしてこの薔薇の指輪に永遠の愛を――
「じゃあ締めくくりだね。」
「ん?あーそうか、ブーケを投げなきゃな。」

蒼星石が言ってくる。
そういえばブーケ投げも予定にはあったんだよな。

「そうねぇ、で、ブーケってどこぉ?」
「これ……全部……」
「ちょ……な、なんですっ!この量は!?」

翠星石が驚くのも無理は無い。
薔薇水晶が指差す薔薇のブーケの量は尋常じゃない。
一畑分あるんじゃないだろうか?

「園芸部から……貰ってきた……」
「それで僕の鋏貸してって言ったんだね……」

蒼星石と翠星石は一応園芸部だ。
その二人の反応からして薔薇をあげたという反応では無さそうだ。

「折角育てた薔薇が無残ですぅ!……けどあの二人の為なら構わないですぅ」
 健やかに~きれ~いに投げるですぅ。」
「うん……。銀ちゃん……ジュン……薔薇……投げて……」
「これはとんでもない量だな……」
「いいじゃなぁい。こんだけ薔薇がまかれるなんて絶景よ。」
「ふふ……だな。じゃあ投げるか」
そう言うと僕達は薔薇水晶の持ってきた薔薇のブーケを手に持つ。
手に持った他にも一杯あるんだけどな……。

「しかし改めて見るとすごい量ですわ……」
「凄く……多いですぅ」
「さて……やるか!」
「ええ!」

掛け声と共に僕らは薔薇のブーケを投げ始めた。
ずっと投げ続ける。


―薔薇学園に赤い薔薇が舞った。
ブーケから散乱したりして飛ぶ様はととえも優雅で美しく儚かった。
まるで二人の愛のように―
腕が痛くなった頃、薔薇は無くなった。
とんでもない量だった。

「凄い量だったな……肩が痛いよ」
「そうねぇ、いい運動になっちゃたわぁ。」
「それもそうだな」
「そうだ二人とも、あと2つだけやる事があるよ」

蒼星石が肩を痛めた僕らに言ってくる。

「なんだ?まだあったっけ?」
「お前達がするんじゃないですぅ。翠星石達がお前らに祝福のスピーチをするですぅ」
「仲人としてね」
「蒼星石……」
「いつみてもラブラブのカップルだわぁ」
「僕らに負けないぐらいにね」

姉妹、そして恋人。
その関係は異端のものだろうけど
“愛は縛られない”
二人の愛は美しいものだと思う。

「なな・・何いいやがるですぅ!」
「ほんとなんだしいいじゃない、僕も結婚式を挙げたかったよ」
「そそ蒼星石」
「ではそろそろスピーチを始めるよ」
「お願いするわぁ」
蒼星石と翠星石が僕らが指輪交換をした舞台に立ち
スピーチを始めてくれた。

「ジュン君、そして水銀燈はとても優しい人でした。」
「水銀燈もジュンも面倒見が良かったですぅ。」
「お互いが優しいせいか二人とも二人のそんな所に惹かれていった。」
「そして愛し合ったですぅ。」
「優しくそして愛しあってる二人もいつかは結婚するとは思ってたけどまさかこんな早くとはね。」
「凄く驚いたですぅ。そしておめでとうですぅ。」
「この結婚式で君達は永遠を誓い合った。」
「それも神様にじゃなく薔薇と相手と私達にですぅ。」
「神様なんか信じないって言ってたね、けど僕らは信じてくれてる。」
「信用してくれて本当に嬉しいですぅ。」
「そして僕らも君らを信じてる。」
「ですぅ。」
「僕らは君らが永遠を誓ってくれたので僕らも誓う。」
「私達はこれからずっと二人の幸せを祈るですぅ。」
「だからずっと・・・朽ちない愛を君達は堪能してくれ。」
「幸せになりやがれですぅ。」
「以上でスピーチを終わります。」
「聞いてくれてどうもありがとうですぅ。」

普通の結婚式のスピーチからしたら
短いし子供っぽいかもしれない。けど、本当に嬉しい。
僕らにとってはかけがえのない言葉。
二人の気持ちが心の底まで伝わってきて……
言葉で表せない程に嬉しい。
「ありがとう……凄く嬉しかった」
「私達はこの永遠をあなた達にも誓ったもの、ずっと楽しむわぁ」
「だからさ、約束しようぜ」
「何をだい?」
「あなた達はずっと私達の幸せを祈ってくれる」
「だからいつか僕達にも君達の幸せを祈らせてくれ」
「な……」
「ふふ……わかったよ。僕らはいつか君達に永遠を誓うよ」
「蒼星石……」

翠星石と蒼星石、本当に……ありがとう。
そして、君達も……幸せに。
僕が死んだ後も笑って、楽しく、愛し合って生きてくれ。
長く……永く……。

「ジュン!」

金糸雀の声が聞こえる。
驚いて振り向くと金糸雀はバイオリンを持っていた。

「あなたに……祝福の思いを伝えたくてこの曲を作ったかしら……。最後まで聞いて欲しいかしらー!」

僕が何か言う暇もなく金糸雀は弾き始めた。
曲は間違いなく“友への祝い曲”。
金糸雀の気持ちが込められていた。“友達の僕”への気持ちが。
心の中にまで響いてきた。
金糸雀の思い……曲が。
金糸雀の……様々な“努力”の結晶だった。
「金糸雀……有難う……」

また、涙が出そうになってしまう。
水銀燈に至ってはずっと泣きっぱなしだ。
僕まで泣いたら……かっこ悪いな。

「も……もう泣くのはやめるかしらー!」

そう言う金糸雀の目にも、涙が浮かんで
頬にゆっくりと筋を作る。

「本当に……ありがとう……」

僕は頬に涙が流れたのを感じて金糸雀の側へ寄る。
恋人には……涙を見せたくない。

「大切で……大好きな……友達の為なら……いくらでも弾く……かしらー……
 幸せに……なってかしら……」

僕は静かに頷いた。
言葉が出なくて。
本当に本当にありがとう。
これしか言えないけど……本当にありがとう。
みんな……。
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