※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「一つ屋根の下 第九十一話 JUMと露天風呂」


「ねぇねぇ、今からみんなでお風呂行こうよ。」
部屋でめぐ先輩が言う。時間はすでに夕刻。あれから、お昼を食べてから再びスキーを再開した僕らだけど
初日からそんなに飛ばしても勿体無いって事で早めに切り上げてきたのである。
「あら、いいわねぇ。私もうくたくただものぉ。ゆっくり温泉に浸かりたいわぁ。」
「ほっほぉ?水銀燈はちったぁ滑れるようになったのですかぁ?」
「当然よぉ。見てなさいよぉ。明日にはリフト使って滑って見せるわぁ。」
ふふんと銀姉ちゃんが胸を張って言う、まぁ、成長速度は銀姉ちゃんにしては確実に遅いけど、全く滑れなかった
朝からすると、格段に滑れるようになっていた。この調子なら、旅行中に山頂から滑れるであろう。
「そうですわね。御飯まではまだお時間があるようですし。悪くないですわね。」
「でしょでしょ?あ、残念だけど中風呂は混浴じゃないからね。JUM君?」
「いや、そんな事期待してないし。混浴だったら時間変えますし。」
めぐ先輩は僕を何だと思ってるんだろうか。そんな訳で、僕らはホテル内の温泉へと向かった。
温泉の中は、まだ時間が早いお陰か貸切だった。とりあえず、お湯に浸かる。
「んんんんぶっはぁ~。きんもちいぃ~……」
思わずオッサンのように唸ってしまう。いや、本当に気持ちいいのだ。ホテル内とは言え、雪山の中だ。
ホテルの中も少し寒い。それを完全に吹き飛ばす温泉の温かさ。いやぁ、極楽だ。



そういえば、夏の海の旅行の時は男湯と女湯の壁が、上の方で途切れてて声が丸聞こえだったよなぁ。
今回は、見る限りそんな事はなさそうだ。完全に密室状態。
「ふぅ~……姉ちゃん達と完全に分断されてると落ち着くなぁ。」
別に姉ちゃん達が嫌いな訳じゃない。寧ろ、好きだ。ただ、落ち着く暇が無いってのは事実なんだよね。
8人もいれば、誰かしら僕に寄ってくるしね。僕だけのプライベート空間って案外ないものだったりする。
僕は、そんな事思いながら眼鏡をお湯の中にいれてレンズを洗う。以前も言ったけど、僕はお風呂でも眼鏡を
かけてるタイプだ。まぁ、取るとほとんど見えないってのがあるんだけどね。
「あれ?あっちにもお風呂あるのか?」
ふと、あさっての方向を見る。そこには、完全に曇って真っ白なドアが一つ。多分、その先にもお風呂がある
んだろう。僕はそう思ってタオルで下を隠してドアを開く。その瞬間、風がビュオっと体を貫いた。
「うひぁ!!さむっ!なんだこれ?外か?」
周りは、竹を柵に覆われている。その先に、白い湯気を発する温泉が一つ。
「成る程ね、露天風呂か。丁度いいや、折角だし入ろうかな。」
僕は、寒さで震える体を我慢しながら竹柵を抜けて露天風呂に入る。乳白色のお湯が、波をうった。
「うっひゃあ、これ気持ちいいな!!最高だ~。」
僕は、露天風呂を形成している岩にもたれ掛りまったりする。入るまでは地獄だったけど、入ったら天国だ。
しかし、この露天結構広いな。所々に岩があるし。まぁ、露天風呂っぽくていいけどね。が……
「う~、寒いのよぉ~!!早く早く!!露天風呂入ろうよぉ~!!」
ヒナ姉ちゃんの声がする。僕は思わず身構える。まて、これは孔明の罠だ。きっと露天風呂も男女別々だ。
そうに決まってる。声が聞こえるのは、外だからだ!!間違いない!!そう思ってたのに……
バシャ-ン!!と、少し遠くで誰かがお風呂に入った音がする。それならいい。でも……僕のトコまで
波が届いたのはどういう事なんでしょうか?



「はうっ……これは……癖になりそうですぅ……」
「うん、気持ちいいね。はぁ~、幸せかも……」
翠姉ちゃんと蒼姉ちゃんの声がする。中々に色っぽい声だ。いや、そうじゃなくて。
「やばい……何てお約束なんだ……安心しきっていたけど、まさか露天が混浴とは……そういえば、
めぐ先輩、中風呂『は』って言ってたな。くそ、使い方違うけど確信犯だな、これは……」
ちなみに、本当の確信犯の意味は「自分が行う事は正しく、周囲(社会)こそが誤っていると信じ切っている」
事らしい。今頃、めぐ先輩はニヤニヤしているはずだ……
「どうしたのよ、めぐぅ。そんなにニヤニヤしちゃってぇ。」
「んん~、べっつにぃ。もしかしたら、可愛い子狐でも居ないかなぁ~と思ってね。ふふふっ。」
ほらね。可愛い子狐って、僕ですか?例えが意味不明なんですけども。
でも、今はそれ所じゃない。何とかここを誰にも見つからないように脱出しなくては……そうしないと、姉ちゃん達
に殴られ(主に翠、真紅姉ちゃん)、明らかに誤解され(蒼姉ちゃん)。そして、僕の貞操の危機になりうる。
僕は隠れてた岩陰から、そっと姉ちゃん達を伺い、そしてすぐ顔を引っ込める。
「うぅ……あまり見てると絶対目に毒だ……」
白い湯気に包まれ、乳白色の液体に浸かり、頬と体を紅潮させてる姉ちゃん達は、明らかに思春期男子が
長時間見てると危険なモノだった。色っぽ過ぎるって……
温泉に入ってるせいか、揃いも揃って髪をアップにしており、うなじが……いかんいかん。煩悩を振り払う。
ぶんぶんと頭を振ってると、正に女の子特有の会話が耳に入ってくる。
「ん~、やっぱ水銀燈は胸おっきいわよねぇ。えいっ、揉んじゃえ!!」
「きゃっ、ちょ、ちょっとめぐぅ!何するよぉ……んっ…」
「いいじゃなぁい、減るもんじゃないし。」
バシャバシャと水飛沫が上がる音がする。きっと今頃銀姉ちゃんはめぐ先輩の魔手にかかってるんだろう。



「胸といえば……巴も何気に…あるよね……着やせするタイプ……」
「そ、そんな事……ほら、きらきーのがあるし……」
「あら、でも巴は私より細いじゃないですか。それに、胸大きくても邪魔って思う事もあります。」
「いや、きらきーもそれだけ細いのは物理的にオカシイかしら……」
「あはははははっ、真紅はぺったんこなのぉ~!」
「なっ!?雛苺、貴方に言われたくは……!!」
「ぷぷぅ~、何言ってやがるですかぁ?チビ苺の方が全然大きいですよぉ?」
「う、五月蝿いわ!!大体、貴方こそ蒼星石の方がスタイルいいじゃないのよ。」
「あ、あのぉ……そこで僕を対象に出されても困るんだけどな…」
「まぁまぁ、真紅ちゃん。世の中にはぺったんこ好きな人もたぁ~くさんいるのよ?だから、大丈夫!!」
「とっても有難いですけど……病弱だっためぐ先輩がそんなにあるのに、そう言われても納得が……」
何が大丈夫なんだろうか。男の僕は聞いてはいけないような会話を聞いた気がする。
ええい、忘れるんだ。めぐ先輩や柏葉が意外にあるだなんて。忘れろ!!忘れ……
「……桜田君?」
……は?僕は声のした方をギギギと油の切れたロボットのように振り向く。そこには、顔を赤らめた柏葉がいた。
「か…かひわは……い、いやちがっ!!僕が入ってたら姉ちゃん達が……こ、混浴なんて知らなくて。」
終わった……僕の人生ジ・エンド。でもとりあえず全力で弁明。嘘は言ってないよね。
「う、うん……私達も全然知らなかった……それで、隠れてたの?」
「そりゃあ……『やぁ、レディたち。一緒に入らないかい?』なんて言える訳無いだろ?」
「クスッ、そうだね。いいよ、桜田君がそんな人じゃないの分かってるから。先に私達が出ればいいんだよね?」
ああ、今なら柏葉が天使に見える。どうしようもない僕におりてきた天使だ。
「あ、ああ。ごめんな、柏葉。」
「ううん、別にいいよ。じゃあ、少し待っててね。」
柏葉はそれだけ言うと、姉ちゃん達のトコに戻っていった。


「あら、巴。どこ行ってたの?」
「えっと、少しスキー場を……それより、そろそろ出ませんか?少しのぼせそうですし、御飯もそろそろですし。」
「御飯!!そうですわね、そろそろ出ましょう。また明日に堪能すれば宜しいですわ。」
御飯に釣られたキラ姉ちゃんも出るように言い出す。ああ、何てナイスな奴なんだ柏葉は。
「そうだね。私の作戦も不発みたいだし……そろそろ出ようか。JUM君も待ってるかもだし。」
やっぱりめぐ先輩確信犯だな、これは。まぁ、成功してるんだけどね。言わないでおこう。
「わーい、ヒナもお腹ペコペコなのぉ~!早く行こうよ~。」
ヒナ姉ちゃんがバシャっと音を立てて露天から出たのが分かる。それを筆頭に姉ちゃん達は更衣室へ戻って
行った。よかった、魔は去った……僕は凍えた背筋を温めるために、もう少し入っとこう。
そう思ってると、バシャバシャと僕の近くに誰かがやってくる。
「桜田君、もう大丈夫だよ。」
それは、タオルを体に巻いた柏葉だった。さっきは湯に使ってて分からなかったけど、今は立ってるからタオル
巻いてても体のラインがピッチリ出ている。
「か、柏葉……えっと、有難うな。でも、行かないと気づかれるぞ?」
「うん、もちろん行くよ。」
柏葉はニッコリと笑う。そして、少し屈んで僕の耳に口を近づける。思わず、タオルから見える柏葉の谷間に
目がいってしまう僕は、情けないのか健全なのか。
「今日の事は、私と桜田君。二人だけの秘密ね♪」
艶かしい声で一言言うと、柏葉は更衣室へ向かって行った。その言葉と声にドキドキした僕は、もうしばらく
露天風呂から出る事が出来なかった。
END

|