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「あっちぃ~……ですぅ……チビ人間…水を寄こしやがれ…ですぅ…」
「お前な、性悪エルフ。散々計画性もなく飲んどいてそれかよ。お前水の精霊と契約してるんだろ?
その精霊に水でも貰えばいいじゃないか。」
「なっ!?翠星石の精霊魔法はそんな用途に使うものじゃねぇです!分かったら水をよこせですぅ!」
「二人とも、五月蝿いわ。静かにして頂戴。余計暑いだけだわ。」
ギランを後にし、今回は特に問題もなくドラゴンバレーを抜けた真紅一行は火竜の棲家の麓にある
ウェルダン村を目指して歩いていた。この土地の特徴として挙げられるのは、火竜ヴァラカスが棲んでいる
せいか、とても暑く乾燥した地域だ。一年中安定した気候のエルフの森に住んでいた翠星石には厳しい
気候なんだろう。
「もう……ほら、翠星石。僕の水あげるから。」
「うぅ、すまんです。やっぱり持つべきものは双子の妹ですね。チビ人間のロクデナシなんて当てにならんです。」
「当てにしてくれなくていいよ、別に。」
高い気温と、照り続ける太陽の下。元気なのは雛苺くらいだ。
「ねぇねぇ、トモエ~!見て見て~!あっちの方、景色が歪んでるのぉ~!」
「うん……そうだね……」
この暑さはさすがの巴でも厳しいようで、さっきから元気がない。
「……チビは何で元気なんですかね……子供だから……でしょうかぁ?」
「私に聞かないで頂戴……ほら、村が見えてきたわ。もう少し頑張りましょう。」
真紅が指差した先。そここそが、ウェルダン村だった。


「はぁ……ようやく着いたですぅ。真紅、宿取りましょう。汗で服が気持ちわりぃですよ。」
「そうね。宿は……巴?どうかしたの?そんな辺りを見回して。」
真紅と翠星石がウェルダン村の宿を探している最中、巴は珍しくキョロキョロと街中を見ていた。
雛苺ならともかく、アデン大陸を旅してきた彼女が街中を珍しそうに見回すなんて滅多にない。
「うん……なんて言うか、変じゃない?人の気配が無いと言うか……」
「僕も感じてた。まだ昼間だって言うのに人気が無さ過ぎる……真紅、街中を調べてみよう。」
巴と蒼星石が真紅に街の調査を促す。確かに、二人のいうようにまだ日中にも関わらず町は静かだった。
「……仕方ないわね。何か異変があったら宿どころの話じゃないわね。少し調べてみましょう。
一応……何がいるか分からないし、気を抜かないように。」
「ええぇ~!?うぅ、休んでからでいいじゃねぇですかぁ。翠星石は疲れたですよぉ。」
「街に何か起こってたら休むどころじゃないんだ。もう少し我慢しろよ性悪。」
「なっ!?チビの癖に言いやがったですねぇ!」
翠星石とJUMが小言を言い合いながらも真紅達は街の中を歩いていく。荒れた形跡はないので、反王の
軍勢が攻めてきたとは考えにくい。
「やっぱりおかしいね。このウェルダンは、ドワーフ族と共存してて彼らが村の警備をしてるんだけど……
そのドワーフもいない。だからって、戦闘の形跡がまるでない。一体どういうこと……?」
巴が首を傾げる。真紅は、巴の知識量に感心する。外の世界をほとんど知らない真紅だが、彼女のお陰で
各都市の情勢を知る事が出来ている。
真紅がそんな事を思っていると、村で恐らくは一番大きいであろう、屋敷から一人の男性が現れた。


「旅の方……ですかな?私はこのウェルダンの長をさせて貰ってる者です。」
「ええ、そんな所よ。それより、この惨状はどういう事なのかしら?人気がまるでないわ。」
村長は立派に蓄えた白髭を一扱きすると、村の現状を話し出した。
「実はですな……このウェルダン村には毎年特有の熱病が流行るのです。今回も何時もの奴が来たか……
程度にしか思っていなかったのですが……」
「何時もの奴……と言うほどなら対策もあるようね。」
「ええ。あそこに見える『火竜の棲家』。要するに火山ですな。あそこの山頂に、時々火竜ヴァラカスが排出する
火竜の鱗。それを元に薬を作るのです。それを飲めば、熱病は治まるのですが……」
「だったら、それを作ればいいではなくて?」
JUM達は真紅と村長の対話を静かに聞いている。
「実は……あの火山には強力な魔物が多数棲んでおりまして。毎年村の腕自慢と、ドワーフ達に取りに行って
貰っているのですが、今年は何と彼らから熱病にかかってしまったのです。」
「成る程ね。それで、熱病にかかっていないのは女子供だけと言う訳ね。その熱病、悪化すると死に至る
のかしら?」
「いえ、よほど悪くない限りは死亡はありませんが。しかし、自然治癒を待っていては、村の仕事等にも
関わってきますのでホトホト困り果てておるのです。」
「そういう事だったのね。死ぬ事はそうそうなくても、仕事が進まないのはあまり宜しくないわね。」
「はい……私達も、ウェルダンを訪れた冒険者に火竜の鱗の入手を依頼したりしているのですが……
あまりに火山の魔物が強力が手が出せない様子でして。」
村長が完全に困り顔で言う。真紅は、ふむと少し考え。そして、言った。
「事情は分かったわ。なら、私達がその火竜の鱗を取りに行くわ。」


「げぇ~!マジですか真紅ぅ?ただでさえ、暑いのにさらに暑いトコ行く気ですかぁ?」
「ええ、行くわ。困ってる人を見過ごすわけにはいかないでしょう?」
不満を言う翠星石をなだめる真紅。翠星石以外は、真紅と同じ意見のようで特に反論は出なかった。
「おぉ……有難う御座います。今我々にできる事は、水分等の用意くらいですが……それでよければ
いくらでも持っていって下さい。」
「水!?……こほん、運がいいですね人間。しょうがねぇから翠星石が手伝ってやるですよ。」
ひたすら水を欲していた翠星石は、その一言で俄然やる気をだす。
「変わり身はえーな、全く。」
「あ、あはは……あれでも翠星石はいい子だよ……多分……」
あきれ果てるJUMと、姉を何とかフォローする妹。かくして、真紅達一行は象牙の塔に向かう前に少し
寄り道をする事になったのだった。
「それじゃあ、行ってくるわ。山頂に鱗は落ちているのね?」
「ええ、燃えているような紅い鱗ですので人目で分かると思います。先にも言いましたが、火山の魔物の力は
驚異的です。くれぐれもお気をつけて……」
「ええ、有難う。それじゃあ、期待して待っていて。」
真紅達がウェルダンを後に火山へ向かおうとする。その時、村長から声がかかる。
「一つ言い忘れてました!実は、先日象牙の塔の魔術師を名乗る少女が、先に火山へ向かいまして…
未だに消息不明なのです。もし良ければ、彼女も探してもらえませんか?緑の髪に、黄色のローブと黄色の
宝石の埋め込まれた杖をもった随分背の低い少女です。」
「……つまり、黄色の少女ね?分かったわ、ついでに探してみるわ。」
真紅達は再び火山へ向かいだす。その火山で待ち受けていたのは灼熱の熱戦である事を、まだ誰も知らない。
To be continued

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