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「ん~、いい天気っ!!絶好のスキー日和だね。そう思わない、水銀燈?」
「え?ええ、えええ、そ、そうね。」
ゲレンデに着いた僕達は、スキー用具をレンタルして板を背負い歩いていた。
「今回は時間がなく新しい板買えずにレンタルの板だけど、まぁ悪くないわね。」
真紅姉ちゃんがスキーブーツを履いている。何でも、物置を探したら昔の板は小さすぎたらしい。
真紅姉ちゃんって、背伸びたかなぁなんて思ってたけど、よくよく考えれば僕も昔から小さい方だから
目線がいつも変わらずに成長が分かりにくかったんだろう。そんな事を思ってると、銀姉ちゃんがブーツを
履くのに苦戦していた。
「銀姉ちゃんどうしたのさ?」
「う……ん~…このブーツ入らないわよぉ?」
銀姉ちゃんはブーツに足を突っ込み懸命にブーツを履こうとしている。おかしいな、サイズはちゃんと合わせたはず
なんだけど。そう思ってブーツを見てみる。
「……銀姉ちゃん。あのさ、これ緩めないと普通履けない。」
銀姉ちゃんは、ブーツを緩めず直接履こうとしていたようだ。これじゃあ入る訳がない。
「え?そ、そうだったかしらぁ~?お、おほほほほ……」
パチンパチンと音を立てて金具を緩めていく銀姉ちゃん。いやしかし、さっきから本当変だ。
そんな事を思っていると、すでに雪まみれのヒナ姉ちゃんとカナ姉ちゃん。そして柏葉がやってきた。


「あははははは~!かなりあの髪の毛真っ白けでお婆ちゃんみたいなの~!」
「う~、巴ったら酷いかしら。カナがヒナ狙って投げようとした瞬間を剛速球で……」
スキーをするまえに雪合戦で一汗かいてきたらしい。ヒナ姉ちゃんの言うとおり、カナ姉ちゃんは髪まで雪で
真っ白である。ヒナ姉ちゃんも雪まみれだけど、まぁこれは多分自分で雪にダイブでもしたんだろう。
で、一人柏葉は涼しい顔で雪なんて微塵も被ってない。このしたたかさは流石と言うべきだろう。
「あらぁ?貴方達雪合戦はお終いなのぉ?私もやろうと思ってたのにぃ、つまんなぁい。」
「う?水銀燈も雪合戦したかったの?でもでも、ヒナ達もお滑りしたいなのよ~。」
「折角スキーに来たんだから、滑らないで帰るのはカナの家訓に背くかしら。」
カナ姉ちゃんの家訓なら我が家の家訓だけど、そんな家訓は僕は知らない。
「え゛!?も、もしかして貴方達滑れるの……?」
銀姉ちゃんが少し青い顔しながら言う。
「当たり前なの~!ヒナ小さいときにお父様に教えてもらったし。」
「カナだって滑れるかしら!」
カナ姉ちゃんは色んな意味で普段から滑ってる気もするしね。
「と、巴は……?」
「私も一応、多分人並みには……」
何だか銀姉ちゃんの額からダラダラと汗が流れてる気がする。
「銀姉ちゃん大丈夫?具合悪いの?」
「だ、だだだ、大丈夫よぉ。さ、い、行きましょ……きゃあ!?」
歩き出そうとした銀姉ちゃんはいきなりつまづく。銀姉ちゃんが転ぶ光景なんて滅多に見られないだろう。


「うぅ…な、なによなによぉ~!このブーツ歩き難いじゃないのよぉ!不良品じゃないのぉ!?」
「歩き難いって、当たり前だよ。スキーブーツって基本そうだけど?」
めぐ先輩も不思議そうに銀姉ちゃんを見る。あ、僕何だか分かってきた気がする。そして、思い出してもきた。
「ねぇ、水銀燈?貴方もしかして……滑れないの?」
銀姉ちゃんがビクリと背中を震わせる。真紅姉ちゃんもストレートすぎだ。
「そ、そ、そ、そ、そんなわけないじゃなぁい、このおばかさぁん。」
「そんなに挙動不審に言われても説得力ないよ、水銀燈。」
全く持ってその通りだ。僕は記憶の糸を張り巡らしていく。父さんがまだ、海外に行く前は僕らも家族で
スキーに来ていた。僕も父さんからスキー習ったし。でも、だ。その時の銀姉ちゃんはどうだったか。
僕の記憶に間違いがなければ、この時ばかりは何故かヒナカナコンビと雪合戦したり、雪だるま作ったり
して遊んでいた記憶がある。それは何故か……
「………そう。貴方がそう言うなら問題ないわね。さ、早く滑りに行きましょう?ねぇ、水銀燈。」
真紅姉ちゃんが何故かニヤリと笑う。普段から弄られっぱなしの真紅姉ちゃんだ。これ以上の復讐の
チャンスはないとか思ってるに違いない。
「も、問題なんてあるわけないじゃなぁい。あぁ~、早く滑りたいわぁ~……」
ガチャコンガチャコンと油のきれたロボットのように歩いていく銀姉ちゃん。そうこうして、ゲレンデで板を
はめていると、シャーっと快音と雪を上げてボードで降りてくる二人が僕らの前にやってくる。
「ふぅ~!無茶苦茶気持ちいいですねぇ!最高ですぅ!!」
ボードに乗った一人がゴーグルを外す。言うまでもなく翠姉ちゃん。
「うん、山頂から一気に降りるのは最高だね!ほらほら、JUM君達も一緒に行こうよ!」
もう一人はやたらとハイテンションの蒼姉ちゃん。さすが、二人は毎年滑りに来てるせいか上手い。
「そうだね。じゃあ、早速リフトで上行こうか。銀姉ちゃんも行ける?」
「え?ちょっと、まって……きゃあ!?」
銀姉ちゃんを見る。すると、板を着けた瞬間お尻からコテンと転んだ銀姉ちゃんが居た。


「うぅ……いったぁ~い……えい!たぁ!!……うぅ、JUM~…起き上がるの手伝ってぇ……」
銀姉ちゃんは一人で悪戦苦闘しつつ立ち上がろうとしている。脚力だけで立ち上がろうとしてるから、
余計に板は滑って全然立ち上がれそうにない。そんな銀姉ちゃんを見て翠姉ちゃんが爆笑した。
「あっはっはっはっはっはっは!!何ですか、水銀燈。おめぇ、もしかしなくても滑れねぇんですかぁ!?」
「矢張り、ね。情けないわね。ローゼン家の長女がスキーがこなせないなんて。」
その後を真紅姉ちゃんが追撃する。そう、僕の記憶による銀姉ちゃんは滑れないのだ。
他は何でも器用にこなす銀姉ちゃんが、恐らく唯一絶望的に下手なもの。それがスキーだった。
よく父さんに初歩から教えてもらってたけど、全く成長せず……結局そのまま今に至るってわけだ。
「な、なによぉ。なによなによなによぉ~!その水銀燈を馬鹿にした目はぁ~!別にスキーなんて
滑れなくてもいいじゃなぁい……」
転んだまま銀姉ちゃんが半分涙目で翠姉ちゃん達を見る。
「ええ、別に構わねぇですよぉ。おめぇがそこで尻餅ついてる間に翠星石達はJUMと一緒に滑ってくるですから。」
「そうね。さ、行きましょうJUM?」
真紅姉ちゃんが僕の手を引く。銀姉ちゃんを見る。相変わらず苦戦中だ。そんな銀姉ちゃんを見ながら、
デジカメで録画しながら大爆笑してる大外道のめぐ先輩はとりあえずスルー。
「ふぅ、しょうがないなぁ。」
僕は引かれた手を解くと、銀姉ちゃんの側によって手を差し出した。
「JUM……?」
「ほら、?まって。立ち上がったらさ、僕と一緒に少しずつ練習しようよ。」


何となく。放っておけなかった。ただ、それだけ。まぁ、僕自体スキーが久々だからちょっと練習したいってのも
あるんだけどね。銀姉ちゃんは僕の手と顔を交互に見ながら、少し笑うと僕の手を握って立ち上がった。
「よいしょ…っと…ひゃあ!?」
そして勢い余って僕にもたれ掛かる。僕はそんな銀姉ちゃんを支えるように抱きしめた。
「ちょ、ちょっと何やってやがるですかぁ!?JUMに抱きつくんじゃねぇですぅ!」
「あらぁ、ヤキモチ?仕方ないじゃないぁ。私ぃ、滑れないから思うようにバランス取れなくてぇ。
あぁん、JUM~。滑ってこわぁいぃ~。もっとギュッてしてぇ~♪」
つい数秒前から一気に形勢大逆転。さっきまでの涙目はどこに行ったのか、何時も通りの銀姉ちゃん。
しかも、いつの間にか滑れないのを利点にしてるし。銀姉ちゃん、恐ろしい姉!
「うぅぅぅ……じ、実は翠星石も全然滑れないからJUMと一緒に練習を……」
「さっき山頂から颯爽と滑ってきたのは誰だよ。」
マッハで翠姉ちゃんの戯言にツッコミを入れる僕。
「はいはい、姉妹喧嘩はその辺でお終いにしなよ。水銀燈、JUM君。時間はあるんだからさ。ゆっくり
練習してね。最後にはみんなで滑ろうね。」
我が家の良心蒼姉ちゃんが、不満そうな翠姉ちゃんと真紅姉ちゃんを引きずっていく。
「じゃあ、私もJUM君と一緒に水銀燈の練習に付き合おうかな。」
爆笑しすぎて出てきた涙を拭いながらめぐ先輩が言う。この人は、スキーよりも銀姉ちゃんで遊べれば
いいんだろう。
「よっし、それじゃあ練習しよっか銀姉ちゃん。」
「そうだね。あそこに初心者練習場があるからさ。あそこでやろうか。」
めぐ先輩がスイスイと滑って練習場に行く。僕も銀姉ちゃんの手を引いて向かっていく。
「……JUM、有難う……大好きよぉ……」
「?何か言った銀姉ちゃん?」
ポソッと小さい声が聞こえた気がするけど。すると、銀姉ちゃんはニッコリ笑って『何でもないわよ。』とだけ言った。
END

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