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「ジュン、紅茶を煎れなさい」
「はいはい、葉は何かな?」
「アールグレイ」
「承知しました、ってね」

えらそうに紅茶を注文してくる真紅。
だが僕はそれが嫌ではなく、慣れた手つきでお湯を沸かし煎れる葉の準備をする。
一体今までに何回煎れてるんだろうな。
暫くするとお湯が沸騰するので僕はそれを止める。
そして茶を煎れる。
カップに煎れた後、上から蓋をして蒸す。

「偉いわ、ちゃんとおいしい煎れ方をしてるじゃない」
「そりゃお前に何回も煎れさせられてたらな」

僕が自分の為に紅茶を煎れることはまずない。
煎れるとしたら何時もえらそうな真紅の為だけに。

「はい、どうぞ」
「ありがとう」

蓋を外し、香りが漂う紅茶を渡す。



そして何時ものようにカップに口をつけて飲み始める。
うーん、優雅だなぁ。

「おいしいわ」
「そりゃどうも」

そう言って静かにまた飲み始める。
結構熱いのによくそんなにすいすい飲める。
猫舌という言葉が似合わないな。

「ご馳走様」

暫くして飲み終わりカップをテーブルに置く。
そして椅子を立ち僕の横の椅子へと来る。

「ん?どうしたんだ?」
「あなた寒いでしょう?
 紅茶で私は暖まったからぬくめてあげるわ」

そして真紅は僕にもたれかかる。
うん、確かに体が火照っていて暖かい。



「素直に甘えたけりゃ黙ってもたれかかればいいのにな」
「な、何を……私は暖めてあげたいだけ」
「はいはい」

真紅の顔を撫でる。
紅茶を飲んだせいもあってか顔が赤くなってる。
可愛い奴。

「やっぱり気が変わったわ、抱っこして」
「はい、お嬢様」

僕は真紅の膝の裏側に手を回して
何時ものようにお姫様抱っこの形になるように抱っこする。
そして立つ。軽いので余裕だ。

「いい紅葉ね」
「ああ、もうすぐ季節も終わりそうだけどな」
「その時はその時で冬が来るのだわ」
「そして寒いからまた紅茶か?」
「ええ、そうよ」
「はは……ワンパターンだな」
「けど悪くないでしょう?」
「ああ、悪くない。ずっとそうしたい」



「あ」

紅葉がちょうど真紅の手のひらに落ちてくる。

「真っ赤だな」
「ええ」
「そうだ」

僕はそう言って真紅の手から紅葉を取って髪の毛にさす。
うーん、こんな事しても似合うな。

「な、何をやってるの?」
「いいじゃない、可愛いよ?」
「……もう、もう少しだけそうしてあげるわ」
「そりゃ嬉しい」



季節の紅葉を頭にさしたえらそうな貴方とのひと時

 


 

「寒いわ」
隣を歩く真紅が言う。
確かに寒い、もう冬も本格的な寒さになっている。
僕だった手袋にコートにマフラーと
かなりの防寒状態だ。
一方、真紅は薄いコートを羽織っているだけ。

「その格好じゃ寒いだろう?」
「ええ、もうちょっと考えて着ればよかったのだわ。
 ジュン、何とかして私を暖めてちょうだい」
「何とかって……」
「何とかよ」

ほんとに勝手な事を言う奴だ。
まぁそれが嫌とは思わないんだがな。
もうなれてしまっている。

「じゃあカイロ」

僕はポケットの中にあった拳大の大きさのカイロを渡す。

真紅はかじかんだ手でそれをとると
両手で包み込み必死に暖まろうとする。
少しするとカイロをコートの内ポケット中へと入れる。

「まだ寒いわ」
「うーん、と言ってもなぁ。紅茶でも飲むか?」
「貴方の以外飲まないわ」

そう言われると少し嬉しいが
毎回煎れなきゃならない僕も結構大変なんだよな……。
まぁ真紅が喜ぶからいいんだけどね。

「じゃあどうすればいいんだ?」
「兎に角暖めなさい」

だからどうやって。
僕は必死に案を模索する。
どうやって暖めればいいんだろうな……?
……そうだ。驚くかな?
けどいいだろう。

「……!」

真紅は戸惑っている。
僕が自分の首にかけていたマフラーをといて
真紅の首ごとマフラーを巻いたのだ。
つまりは二人でマフラー共用の状態という訳だ。
暖かいだろう?

「どうだ?暖かいか?」
「……暖かいわ」
「これだったらいいんだよな?」
「ええ、恥ずかしいけど……。
 けどまだ何か物足りないわ」

まだ物足りないとは。
正直、今でも周りの視線が恥ずかしくてたまらない状態だ。
幸せだけど。
他に出来る事ってあったかな……。
そうだ、手袋をあげよう。

「ほら、手袋使いなよ」

手にはめた手袋を外し真紅に差し出してやる。だけど真紅はそれを拒否した。

「手袋より……手握って欲しいわ」

ああ、そういう事か。

「はいはいお嬢様、これでどうですか?」

僕は手袋外した方の手で真紅の手を握ってやる。手が冷たい。

「暖かいわ」
「そりゃどうも」
「けど……私の手は冷たいわ」
「まぁ……けど手が冷たい人は心が温かいっていうじゃない?
 真紅は心が温かい人だよ」
「……嬉しいわ、じゃあ手が暖かいあなたは?」
「心が温かいと自然と手も暖かくなるんだよ」
「どちらにしろ変わりないわね」
「だろう、けどそれは嫌じゃないだろう?」
「……ええ、ほんとに……暖かいし温かいわ」

照れる真紅の手が少しずつ熱くなるのがわかる。あ、恥ずかしいだな。僕も恥ずかしい、けど……

「もうちょっとこのままでいいな」
「ええ、暫くこうしていましょう」

僕らはマフラーを共有し手をつなぎながらまた歩き続けた。



その姿を友人に見られて当分の間ネタにされたのはまた別のお話。

 


 

「どうした?」

急に真紅から電話がかかってきて
すぐに家に来てとの事だった。
一体、どういう事なのだろう?

「……一緒に寝て」
「へ?」

予想外で思わず間抜けな声を出してしまう。
一緒に寝て……だなんて、一体いきなりなんで……。
そう思っていると真紅が腕を引っ張って強引に家へ入れる。
一体何なんだ?
そんな事を思う僕を思う僕をお構いなく真紅は自分の部屋の方へと引っ張る。
……ん?

「真紅、どうしていきなり家に呼ぶんだ?」

そう言う僕の顔は恐らく少しにやけているだろう。
疑問に思っていた事は解けたのだから。



「どうでもいいでしょ」
「じゃあこれは?」

僕がDVDデッキの取り出しボタンを押すと
真紅はくわばった表情を浮かべる。
中から出てきたのはホラー映画のDVD。

「怖くなったんだろ?」
「……なんでわかったの?」
「パッケージ出しっぱなし」

机の上にはディスクが入っていたケースがある。

「怖くなったんだろ?」
「……」
「怖くなったんだろ?」

しつこく言う僕に対して真紅はツインテールビンタ。
直接的なダメージはほとんど無いが
髪の毛が目に刺さって痛い。



「……」
「ご、ごめん言い過ぎた」

真紅は珍しく泣きそうな顔をしている。
しかし、真紅は涙を堪える。
そして僕の方に向かってくると……抱きついた。

「え……」
「もう……」

それだけ言うと真紅は更にきつく抱きしめて来た。

「……」
「……」
「寝ようか?」
「……ええ」

僕は真紅を抱っこする。
膝の裏側に手を通し持ち上げる。
俗にいうお姫様抱っこというやつだ。
そしてそのままの状態でベッドに運びベッドに真紅を入れて自分も入る。



「しかし……何で一人で見ようとしたんだ?」
「……ひ、一人で見るぐらい平気なのだわ」
「はは……今度から一緒に見てやるから」
「……」

真紅は顔を赤らめるとそのままそっぽを向いてしまった。
ああ、こんな様子までほんと可愛いやつだな。僕は真紅の頭をそっと撫でる。

「じゃあ寝ようか」
「……ええ」

真紅は僕に撫でられると、直に……眠った。警戒心の全くないその寝顔は僕しか見られない。

「ほんと可愛いな」

僕はそう言うと軽く口付けして目を瞑った。

「好きだよ」

最後に一言そう言った。

「私もなのだわ」

 



「抱っこ」

最近は発言が投げやりでもある。
真紅のお願い、もとい命令は面倒くさいのか簡潔に言うのだった。
「はいはい」と僕は真紅を抱えて椅子に座る。
テレビもついていないし、窓の外から特に何かの音もない。
鳥の姿も見えず、BGMもなしでゆったりとしていた。
いつからか静かな間で気まずくならず、幸せを感じるようになった。

「最近はぐーたら姫になりましたこと」

そんな事を言うとぷくーっと真紅は膨れ上がった。
そっぽを向いて目を合わせてくれない。
しかし従順に静かに抱かれているのだから可愛いものだ。
という訳で静かに頭を撫でる事にする。
……なんだかお姫様というよりも猫のように思えてきた。

「真紅ちゃん」
「へ?」

猫を呼ぶような感じで真紅に囁く。戸惑う真紅に理由を説明すると、噛まれた。
僕の顔に自分の顔を近づけてきたのだ。そうして僕がどきどきしている時に鼻をがぶりと。
全く痛い。

「何すんだ」
「からかうからよ」

生意気なお嬢様なこった。

「来なさい」

そう言って真紅は自分の部屋へと僕を招いた。
おとなしくついていく。
綺麗に整理された部屋、優しく匂わせる香りが心を和ませる。
女の子って感じだなー。

「はい、じっとするのだわ」

真紅は机から何かを取り出したと思うと僕の顔の前につきつける。
絆創膏である、僕は大人しく貼られる。

「怪我してたのかよ」
「ちょっと血が出てたのだわ」
「ひどいことしてくれる」

逆に今度は僕が頬を膨らました。
人差し指で強く頬を突いて来るので空気が抜けてしまった。
ちょっとむかついたので人差し指に噛み付いてやった。
ちゃんと優しく。
びくっと指を咄嗟に引っ込める動作が可愛くてつい笑ってしまった。

「やらしい」

そうさやらしいさ!
まぁそんな事はいい、互いに暴れるのも疲れるので必然とおとなしくなった。
真紅がコンポの電源を付け、タイトルも知らない曲が耳の中を流れていった。
心が落ち着くようなメロディーで、静かに語りかけてくるように感じた。

何やら僕には理解できない言語で構成される本を読んでいる真紅の背後に立つ。
そして抱きしめてみた、こういう不意な動作にはいつまでたっても慣れないのか
体を一瞬震わせて、おとなしくなった。
真紅は本を読んで、僕は抱きしめる。
壁掛け時計の秒針の音も交えたBGMだけが室内の音。
甘くおとなしい時間である。

「で、最近なんだか一言のみってのが多いよな」
「そうかしら」
「そんな感じそんな感じ」
「あまり意識してないのだわ」

「けど」と一息置いて口を開く。

「気持ちは伝わっているでしょう? 」
「全くその通りで」

言葉とは表現するためのものであって、ある種大切なものでないのだ。
純粋な気持ちが密接していればそんなのどーだっていい。
あ、そんな感じで喋るのも考えるのも面倒くさくなるわけか。
成るほど!

「静かな真紅は不気味だけどな」
「あら、私はおしとやかなのよ」

軽く流す。確かにそうではあるが自覚されるとなんか変な感じである。
やるせない気分というかなんというか。
こんな感じで長い時間をたまに僕が頭を撫でたり、真紅が頭突きしたりで過ごした。
首筋を噛んでみるとまたも体を震わせた。 

「うー、苦手なのだわそういうの」
「順応したらどうだい」
「貴方と同じよ、中々慣れないの」

そう言った後、小声で真紅はうるさいと言った。そんなに口うるさいような事を言っただろうか。
怒ったのかな、そんな事を僕は暫く考えていた。首がだるいので顔を肩に置いて問うてみる。

「そんなにうるさかったかな」
「今もうるさいわ」
「へ? 」
「心臓、ずっとどきどき言ってうるさいのよ貴方」

思わず顔を肩から離して自分の胸元を見てみる。
そして手を当てて、どきどきしている事に気付いた。
うん、色々と慣れないのは真紅だけじゃないらしい。
真紅といつも傍に居るのにこんなにどきどきしているとは。どきどきが止まらない、という感じか。

「背中に当たってるだけでわかるもんなのかい」
「どうでしょうね」

食えない返し方をしてくれる。ちょっと真紅を抱いてる腕の力を強める。
そうしてると暫くして「痛い」と一言呟いてきた。

「けど悪くないだろう」

そう言ったが返事はなかった。だが、暫くして恥ずかしそうに言った。

「ばーか」

たどたどしく何時も言わないような事を言うので、僕まで恥ずかしくなるのだった。

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