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「うわ~!!凄いの!!おっきいいの!人が沢山なのぉ~!!ね、早く行こうよぉ~!!」
ドラゴンバレーでドレイクとの死闘に勝利した真紅達は、渓谷を抜けて何とかギランへ到着していた。
「ま~ったく、チビは餓鬼ですねぇ。田舎モンに見られるですよ……そ、蒼星石?あれは何ですかねぇ?」
「……君も人の事は全然言えないよ……」
ギランはアデン大陸一の商業都市である。故に、真紅達が今まで通ってきた町や村のどれよりも遥かに
賑やかで、店や人が溢れていた。
「幼い頃来た事はあるけど、やっぱり大きいわね。人の集まりで言えば、アデンを凌ぐでしょうね。」
「うん、反王がアデンを乗っ取ってからは尚更人が流れてきたんじゃないかな。私も、アデンから脱出
したときは、人に流されて着いたのはギランだったし。」
はしゃぐ雛苺。それを見て呆れつつ自分もはしゃいでる翠星石。それを見守る蒼星石。
そして、そんな三人の後ろを歩く真紅と巴。
「なぁ。別に観光気分はいいんだけどさ。城行くんだろう?」
JUMが真紅に言う。しかし、真紅はそれを気にとめる様子もなく言った。
「あら、たまにはいいじゃない。気を入れっぱなしでも疲れるでしょう?あら、巴?あれは何?」
真紅が指差したのは、ギランのほぼ中心にそびえ立っている十字架だった。
「あれはギランクロスだね。ギランで一番の観光名所って所かな。このまま北にいけば城だし、ゆっくり
見ながらお城行こうか。桜田君もそれでいいかな?」
「もう好きにしてくれ……」
JUMがぐったりうな垂れる。結局、6人が城についたのは3時間ほどしてからだった。



「立派な城門ね。これなら、反王の攻撃を幾度も防いでるのも納得がいくわ。」
真紅がギラン城の城門を見上げながら言う。所々戦いの爪痕とも言うべき破損箇所や、修復箇所が
見て取れる。真紅達が城に入ろうとすると、警備兵がそれを遮る。
「何者だ!?今ギランは反王の襲来に備えて警備を厳重にしている。勝手に通すわけにはいかん!」
「私は真紅。アデン王国ローゼンの娘。ギランの城主に会いたいの。」
「アデン王国の姫だと!?そんな話が信じられるか!」
最もな話だった。しかし、真紅は少し溜息をつくろ腰からホーリエを抜いた。
「ならば、この剣を城主に見せてもらえないかしら?一応、身分照明みたいなものよ。」
真紅は警備兵にホーリエを渡す。警備兵は不信そうな顔はしたが、もう一人の警備兵にそれを渡す。
「しばし、待たれい。」
残った警備兵は、相変わらず槍で真紅達を通せんぼしている。10分くらいたったろうか。さっきの警備兵と
眼鏡をかけた男が走って門へやってきた。
「ご無礼をお許しください!!早く門を通すのだ!!」
眼鏡をかけた男が少し息を切らせながら言う。警備兵はそれを聞くとようやく真紅達を通す。
「おお……その見間違う事なき金色の髪と蒼の瞳はまさしく真紅様!!よくぞご無事で……」
眼鏡の男は深々と頭をさげる。真紅は返してもらった剣を腰に収めなおしながら言う。
「ありがとう。それで、貴方は?」
「申し送れました。僕はギラン城主、槐の参謀魔術師の白崎と申します。ささ、槐がお待ちです。どうぞ、
謁見の間にご案内いたします。」
白崎を先頭に真紅達は城を歩いていく。その途中、門をもう一度通った。
「?ギランは門の中にまた門が?」
「ええ、ギランは二重に門があります。おかげで、反王の猛攻も何とか凌いでおります。」
真紅の言葉を白崎が返す。真紅は成る程と納得しながら進んでいく。城内に入り、しばらく進むと
大きな椅子に座った、若い男が真紅達を迎えた。



「真紅様……よくぞご無事で。覚えておりませんかな?」
「……槐…そう、貴方がずっとギランを……」
真紅はその男、槐に覚えがあった。幼い頃会った事がある。槐は、ローゼンに大きな信頼を受けておりギラン
の城主をまだ若い時に任されて、それ以来ずっとギランを守り通したのだ。
「ありがとう、槐。貴方がギランを守り通してくれたお陰で、城が全部反王の手に渡る事がなかったわ。」
「勿体無いお言葉……私はローゼン様に受けた恩を真紅様に返すだけです。」
槐は深々と会釈をする。再開の言葉も適当に、真紅は本題を切り出す。
「さて……警備兵の話だと、アデンの兵が攻めてくるようね。」
「ええ、偵察によると明日にはギランの領域へ向かってくるそうです。白崎。地図を。」
槐に言われて白崎が大きな机に地図を広げる。槐はチェスの駒をギランの東に位置する鏡の森に置く。
「現在、情報ではアデン軍は鏡の森を進んでいるそうです。鏡の森を抜ければすぐにギランの領地。
我々も、毎度の事ながら冒険者を募って兵力を集めております。」
槐はそう言いながら、同じようにチェスの駒をギラン城に置く。
「成る程。あと少し私達がギランへ到着するのが遅れてたら、戦いの真っ最中だったと言う訳ね。」
「そうなりますね。ただ、不可解な事が一つありまして。実は、奴ら今回の攻撃の規模は、今までで一番
小さいんです。今までは少しずつ兵力などを増やして攻めてきていたのですが、今回は過去最低です。
これが一体どういう事なのか検討もつかず……」
槐が言う。真紅はそれに心当たりがあった。
「隠し玉と言った所ね……私達の予想が外れてなければ……今回アデン軍を率いてきているのは…
反王の片腕。魔女ケレニス……」



「ケレニス様。まもなく鏡の森を抜け、ギランの領地へ入ります。」
親衛隊と思わしき兵が、馬に乗った黒髪の女性に耳打ちをする。その女性、ケレニスは「そう。」とだけ
言って、馬を進める。
「ケレニス様。今回の攻め、あまりに兵力が少なくありませぬか?前回は、この倍はおりましたが攻め落とせ
なかったのですが……」
「……問題ないわ……ただの雑兵がこの倍いても、このケレニス一人に遥かに劣る……」
ボソッと小さな声でケレニスが言う。その氷のように冷たい声に親衛隊は思わず身震いしてしまう。
「た、確かにケレニス様のお力はよく存じておりますが……」
「ふふっ……大丈夫よ…私は戦場でこそ輝くのだから……うふふっ…」
ケレニスは微かに笑う。その笑みは狂気が滲んでるのが誰の目にも分かる。
そうこうしていると、偵察に出ていた兵がケレニスの元へやって来た。
「ケレニス様。ギラン兵はすでに城の中に篭っている様子。さらに、冒険者も傭兵として兵力に招きいれ、
我が軍のゆうに3倍は控えている様子です。」
「また城内に篭ったか……ケレニス様。ギランの2重門は前回も大いに苦戦した堅き門です。
やはり兵力を……」
「2重門……?関係ないわ……貴方達は門が開いてからが仕事。門は私が開けてあげる。」
ケレニスが言う。もう誰も何も言わなかった。言えば、見も心もケレニスの冷たい言葉と、魔力に凍らされて
しまう。そんな気がしたからだ。
「……そう…私には門など関係ない……ふふっ、ケンラウヘル様…今にギランを陥落させて見せます…
さぁ、早く戦いになりなさい…戦場でこそ、私の魔力は、私の魂は輝くのだから…」
カッポカッポと馬の足音だけが響き渡る。ケレニスの前方では漆黒の鎧に身を包んだ反王の精鋭部隊
ブラックナイトが規則正しく行軍している。ギランはもう、目の前だった。



朝日が真紅の顔を照らす。その光で真紅は目を覚ました。真紅はドレスローブを着込み、ホーリエを腰に
携える。そして、二つのリボンを持つと部屋を出た。
「おはよう、みんな。JUM。髪を結って頂戴。」
広間には、すでにJUM達や槐。そして白崎が各自鎧などを着込んで揃っていた。
「はいはい、分かったよ。」
JUMは真紅の髪を何時も通りツインテールに結い、キュッとリボンを結ぶ。
「真紅様、何も貴方様まで戦場に出向く必要は……」
「そんなわけにはいかないわ。自ら剣を振るわねば、みんなついて来ないわ。それより、状況はどうなってるの?」
槐は真紅の身を案じて言うが、真紅はそれを一蹴する。
「すでに反王軍は、城外に陣取ってますね。攻撃準備も万端のようで、何時攻撃してもおかしくありません。」
白崎が地図を見せながら言う。反王軍は、ギランの城を囲むかと思われたが、意外なことに兵を一箇所に
纏めていた。一点集中で攻めてくるつもりだろうか。
「防衛も、我が軍の騎士団長に纏めさせてあります。動きがあれば連絡が入るかと思いますが……」
槐がそう言うとほぼ同時に、一人の騎士が広間に入ってきた。
「報告です!ギラン騎士団長の梅岡だよ!!」
騎士団長を名乗る梅岡と言う男が無駄にハイテンションに言う。しかし、なかなか豪華な鎧に、鋭い
光を放つ槍を見れば騎士団長と言うのも嘘じゃないんだろう。
「反王軍進軍!!いよいよ攻めてくる模様だよ!!」
「よし……では、行きましょう。」
槐が報告を聞き、広間から城門の上へ歩いていく。真紅達も初めての攻城戦に不安を覚えつつ
槐の後を追った。



城門の上から見た景色は圧巻だった。蟻の群れの如き黒の物体が溢れていた。もっとも、相手は蟻では
なく反王の精鋭なのだが。
「先ずは弓でどれだけ兵を減らせるか……翠星石の腕の見せ所ですぅ。」
「弓なんて久しぶりだけど……初めは弓の方がいいしね。」
翠星石がスィドリームを構えながら言う。蒼星石も、普通の弓ではあるが一応構えている。蒼星石は
普段は大剣を使ってるが、エルフだ。弓の扱いは人間より遥かに慣れている。
「真紅。お前はあまり無理するなよ。戦うのは僕らでもできるけど、真紅にしかできない事もあるんだからな。」
「ご忠告有難う、JUM。でもそれは間違いね。私にしか出来ない事は、貴方達がいないと出来ない事
でもあるのよ。貴方達だけに戦わせたりしないわ。」
真紅が反王軍を見据える。黒で統一された鎧に、所々白い鎧が見える。白い鎧はリーダー格だ。
「う~……ねぇ、トモエ~。ヒナはどうすればいいの?」
「あまり前に出ると危ないから、私や桜田君の後ろで、魔法で援護して欲しいな。」
オロオロする雛苺に、相変わらず肝が据わってる巴。それぞれ、戦い前の時間を過ごす。
進軍していた、反王軍が弓の射程がギリギリ届かないあたりで停止する。そして、馬に乗った黒髪の女性が
一人で少し前へ進む。そして、その女性は魔術で己の声を響かせた。
「愚かなギラン城主に告ぐ。私はケンラウヘル様の配下、ケレニス。降伏しなさい。そうすれば、命の
保障だけはしましょう……ふふっ……」
「ふざけるな!!その程度の兵力でこのギランを落とすつもりか!?逆に返り討ちにしてくれよう!!」
槐が大声で叫ぶ。ケレニスはそれを聞き、クスッと笑う。
「ふふっ、まぁそう言うでしょうね。じゃあ遠慮なく……貴方達は皆殺しにしてあげる……怖がらないでいいわ。
貴方達は死んで、私の糧になるのだから……行きなさい!!果敢なるケンラウヘル様の兵よ!!」
ケレニスの声と共に、黒い甲冑の大群が門へ押し寄せる。
「誰一人城へ入れるな!!ギランを守れ!!」
槐が叫ぶ。ここに、ギランの戦いの幕が切って落とされた。
To be continued

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