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短編「図書館」シリーズ十話「薔薇水晶」

突然だが、私、真紅は図書委員だ。
元々本が好きで、中一のときに初めて図書委員になり…
気が付けば図書室、そして図書委員の常連となり早3年。
その間に図書室仲間ともいうべく、同じく本の好きな友達連も出来て、
図書館をよく利用する人の顔もかなり覚えた。
これは、そんな私の図書室でのある日の話。

夏休みも近いある日の放課後、一人の友人が貸し出しのカウンターに現れた。
薄紫のロングヘアに、眼科でもらうような左眼を隠す白い眼帯。薔薇水晶だ。

薔「真紅……これ」
紅「あら、珍しいわね。あなたが本を借りるなんて」

彼女は何時も図書室には来るものの、本を借りる事はめったに無い。
なぜならば、彼女のお気に入りは写真集。大半が禁帯出になっている本なのだ。

薔「うん……お勧め、された」
紅「へえ、そうなの」

渡された本を見てみれば、それは一冊の「絵本」。

紅「珍しいものを借りるわね。絵本なんて、図書室で簡単に読み終えてしまえるものでしょうに」
薔「読んだ。けど、家でゆっくり眺めたい気分」
紅「そう」

写真集をじっくりと「読むように眺める」のが好きな彼女であるからして。
私は、その答えにあまり驚かなかった。
受け取ったカードを見て台帳に記入するために、あらためてタイトルを見なおす。

紅「あら。「しろいうさぎとくろいうさぎ」……懐かしいわね」
薔「読んだ?」
紅「ええ、随分昔に。幼稚園の頃かしら。もう内容もほとんど覚えてないけれど」
薔「そう」

そっけなくそう答えて、薔薇水晶はあらためて手にもった絵本を見下ろした。

次回「階段」

<おまけ>
翌日。

薔「真紅」

ぽふっ。頭の上に何かを載せられた気配。
振り向くと、そこにはかすかに頬を赤らめた薔薇水晶と、その頭の上に…黒くてふわふわした何か。

紅「……薔薇水晶?」

一体何を、と、それは何、という二つの疑問をこめて私は彼女に問い掛ける。

薔「うん。真紅、かわいい」

しかし、その質問はあっけなくも無視されて。そのまま数十秒、無言の時が流れていく。
その静寂を破ったのは

銀「あらぁ、二人してかわいいわねぇ。これなんてウサ耳天国ぅ?」

笑いをこらえるように私を見下ろす、いつも不真面目きわまりないこの先輩。

紅「先輩!これは薔薇水晶が……」
思わず恥ずかしくなって反論しようとしたところで、先輩の視線が他所へと向かう。

銀「あらぁ。これって、「しろいうさぎとくろいうさぎ」ねえ。懐かしいわぁ」

言ったところでハッと何かに気づいた仕草。
見下ろしていた水銀燈先輩の顔がギギギ、と上がって薔薇水晶と向き合った。
互いにじいっと見つめあう。不敵な笑顔の先輩と、ポーカーフェイスの薔薇水晶。
バチンと火花が散った気がする。

銀「……そういうこと、ねぇ?」
薔「……負けない」

椅子に座った私の頭上でかわされた会話。一体何の話なのやら。
ため息をついて、私はそっと頭上に手を伸ばす。外れたのは白いヘアバンド。
ウサギの耳を模した飾りがついている。
未だ動かぬ二人を他所に、私はそれを机に置いた。
そして再び赤川次郎を読み始めたのである。
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