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「一つ屋根の下 第七十五話 JUMと三女」



「おっきやがれでっす~!おめざの足踏み運動です!」
「ごぶふっ!!」
気持ちよく寝てた。ああ、睡眠って人生の至福の一つなのは間違いないよね。が……そんな安眠を妨害
する姉…もとい妹が一人。仰向けに寝てる僕のお腹あたりを踏みつけている。もう少し、マシな起こし方は
ないものだろうか。
「翠、おも……げはぁ!?」
「何か言ったですかね?おにい。」
キッと翠姉ちゃんは僕を睨みつける。頼むから鳩尾は勘弁して下さい。出来れば、布団被ってる僕を
踏むのも止めてください。当たり所…というか、踏み所が悪いと再起不能になってしまうんで。
ええ、本当……不能に……まぁ、そんな事は置いておいて。僕は視線を上げる。そういえば、翠姉ちゃんは
蒼姉ちゃんと反対で、基本スカート派だ。ズボンはあまり持ってない。今だって、ミニスカートだ。
ミニスカートで僕を踏みつける翠姉ちゃん。僕は寝たまま視線をあげる。あ~…まぁ、仕方ないだろう。
「翠……とりあえず…見えてる…」
僕が言う。翠姉ちゃんは一瞬何言ってるか分からないかのように、首を傾げる。そして、気が付くと顔を
真っ赤にしてスカートの裾を押さえて一気にしゃがみ込んだ。うっ……翠姉ちゃんの座った場所ヤバイ。
丁度息子の部分に翠姉ちゃんのお尻が……まぁ、不幸中の幸いと言うべきか、朝マウンテンは収まってた。
「うぅ…み、見えた…ですかぁ?」
翠姉ちゃんが裾を押さえて僕をジト目で見ながら言う。
「何がだ?主語がないと分からないぞ。」
「あう…だからそのぉ…す、翠星石のスカートの中…」
「いや、見えてないぞ。決して緑と白の縞々だったのなんて見えてない……がはっ!!」
「っ……100回死ねですぅ!!!この馬鹿おにぃ!エロおにぃ!!」
翠姉ちゃんの鉄拳が僕の頬を打つ。ああ、そういえば以前こんな事もあったなぁ~……



さて、翠姉ちゃんの鉄拳で再び深い眠りから目覚めたのはお昼だった。少し右の頬が痛い。
そういえば、夢の中で痛いと目が覚めるって言うけど、アレ嘘だよね。僕、崖から落ちたことあるよ。
まぁ、そんな事は置いておいて僕はユラユラしながらリビングへ向かった。
「あら、お早う御座いますお兄様。」
「おはよう、キラ。お互い寝起きみたいだな。」
キラ姉ちゃんはまだパジャマ姿だった。当然眼帯もしていない。
「ええ、お休みの日はやはり二度寝に限りますわ。特に朝食をとってから寝るのが最高です。」
「食べてすぐ寝ると太るぞ……って、キラは大丈夫そうだな。」
「あら、そうですの?私は食べて寝ると、起きたときにはお腹空いてますから体重も減ってますわよ?」
まぁ、多分それはキラ姉ちゃんの特殊の中の特殊体質だとは思うけど……
ガチャリとリビングのドアを開ける。ん、この匂いは炒飯だな。うん、実にいいお昼だ。
「あら、お早うお兄ちゃん。遅くまで起きてたの?」
真紅姉ちゃんがテーブルで本を読みながら言う。今日は出かける気がないのか、髪はおろしたままだ。
「ん?まぁ、色々とな……真紅は朝から本読みふけってるのか?」
「そうでもないわ。朝はくんくんの再放送見てたもの。」
本当くんくんが好きだなぁと思う。再放送も欠かさない。DVD全巻持ってる癖に。
「みんな~!お昼できたよ~!」
そんな事を思ってると、蒼姉ちゃんの声が聞こえてくる。そして、コトリコトリとみんなの席に炒飯の
入ったお茶碗が置かれていく。にしても、お腹空いたな。早く食べたいなぁ……そう思ってたんだが…
「えーっと……翠。蒼。僕の炒飯無いんだけど。」
そう、見事なまでに僕の分がハブられていたのだった。



「ええと、そのぉ………」
蒼姉ちゃんが気まずそうに翠姉ちゃんの方をチラチラ見ている。まぁ、普通に考えて首謀者はこっちだろう
と思ってたよ。翠姉ちゃんはムスッとしたままスプーンを口に運んで炒飯を食べている。
「ふんっ!馬鹿エロ変態おにぃはもう食べたじゃねぇですか!」
「は?いや、昨日の夜から何も食べてない……」
「はぁい、水銀燈が翠星石に教えてあげたのよぉ~。」
僕が翠姉ちゃんに抗議しようとすると、銀姉ちゃんがニヤニヤしながら言う。僕は物凄く嫌な予感がした。
いや、これは予感というより確信。この長女がマトモなコト言うわけないんだから。
「銀…一応聞くが、翠に何を言ったんだ?」
「え?別に普通のコトよぉ。翠星石が今日朝お兄ちゃんを起こしに行ったら、パンツ見られたって言ってた
からぁ。じゃあ、お兄ちゃんはお昼いらないわねって言ってあげただけぇ。」
……よく見れば銀姉ちゃんの額に珍しく血管が浮き出ている。あ、これ怒ってるな。
その話を知らなかったんだろう、真紅姉ちゃんやキラ姉ちゃんを僕を見る。いや、不可抗力だって。
「それで……その理由は?」
「ふふっ、だってぇ。それだけ立派な『オカズ』があればいいでしょぉ?だから、お兄ちゃんはお昼抜きぃ~。」
笑顔で銀姉ちゃんは言うが、目は完全に笑ってない。僕が翠姉ちゃんのパンツを見たのがそんなに
頭にきてるのだろうか。いや、本当勘弁して下さい。
「そういうわけですぅ。まさかおにぃ……あれだけじゃ足りなくて翠星石にもっと見せろって言う…ですかぁ?」
そんな事すれば死亡確定です。激アツなくらい確定です。僕は仕方なく部屋に戻るしかなかった。



「がー……腹減った…なんか食べに行ったほうがよさそうだな。」
時間はお昼の2時。僕は空腹で力なくベッドに寝転んでいた。そろそろ限界だ。僕がベッドから体を
起こして、部屋を出ようとしたとき、ドアが開かれた。そこには、お盆を持った翠姉ちゃんがいた。
「はぁ~、翠星石としたことがウッカリしてたですぅ。よく見たら中華鍋の中にまだ炒飯が残ってたですぅ。」
翠姉ちゃんはそんな事を言いながら、お盆を僕の机の上に置く。お盆の上の茶碗にはしっかり炒飯
が入っていた。温めたのか、炒めなおしたのか湯気がユラユラと昇る。
「お?よく見たら飢えてる馬鹿おにぃがいるじゃねぇですかぁ。」
「誰のせいだ、だれの。」
「そんな事言って良いんですかねぇ?まぁ、おにいが残飯でもいいって言うならあげますけどぉ?」
「喜んで頂きます。」
最早恥じも外聞もない。それに……これが残飯なんかじゃないのはよく分かってるから。
何時もの翠の俗に言うツンなんだろう、多分。僕は翠の持ってきた炒飯をむさぼるように食らう。
美味い。腹が減ってればなんでも美味いと言うけど、これは減ってても絶対美味い。
「どう……ですかぁ?美味しいですか?」
「うん、美味いよこの残飯。さすが翠だな。残飯さえも美味しいよ。」
「う~……何かあまり褒められてる気がしねぇです。」
翠姉ちゃんはム~ッとしながら僕のベッドに腰掛けて炒飯を食べる僕を何だか嬉しそうに見ていた。



「ふぅ~、食べた食べた。ご馳走さま、翠。」
「べっつに残飯だからお礼言われる筋合いはねぇですよ。あ、でもぉ……どうしても可愛い妹の翠星石に
お礼したいって言うなら……えと…だ、抱っこしろですぅ……」
翠姉ちゃんが言う。結局、この人は姉でも妹でも、最終的には僕に甘えてくるんだから。
「はいはい。ほら、翠。膝に乗って。」
僕がベッドに座ってパンパンと膝を叩く。翠姉ちゃんはスカートを抑えながら僕と向き合って僕の膝に座る。
「ぎゅって……しろです…」
翠姉ちゃんが僕の方に体重をかけてくる。僕はそれを受け止めるように翠姉ちゃんの背中に腕を回す。
翠姉ちゃんのサラサラの髪を撫でる。翠姉ちゃんは気持ち良さそうに顔を僕の胸に埋めてくる。
「甘えん坊だな、翠は。」
「!?べ、別にこれは甘えてるわけじゃねぇです!」
「じゃあ、何だ?」
「うっ……これはそのぉ…べ、別に妹だから甘えてもいいじゃないですか!」
おっと開き直り。全く、本当に素直じゃない。僕の記憶の翠姉ちゃんも。この翠姉ちゃんも。
「なぁ、翠。もし僕が翠の弟だったらどうする?」
「おにぃが弟ですか…考えた事もないですけど…おにぃは兄でも弟でも世話が焼けるのは一緒だと思うですよ。」
御もっともです。何だかんだで、僕は翠姉ちゃんに世話を掛けっぱなしだなって思う。
「有難うな、翠。」
だから、発作的にそんな言葉が出てきたんだろう。
「……別にかまわねーです…おにぃの世話は好きですから……お礼なら…もっと抱きしめて欲しいです。」
翠姉ちゃんは言う。お礼がそれくらいでいいのなら……僕は喜んで与えよう。そう思った。
END

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