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「一つ屋根の下 第七十三話 JUMと長女」



何時もと全く代わり映えのしない目覚ましの音が響き渡る。朝、か……
「ふぁ……起きてるって…目覚まし黙ってろよ…」
僕は独り言のように呟いて枕に顔を埋めたまま目覚ましを手探りで探す。どこだ、どこだ……?
「あんっ…」
……?何今の?何か聞き覚えのある声…何か目覚ましやたらフニフニしてるし。ボタンは…これか?
「ひゃあん!!んっ…おにいちゃぁん…」
あれ?何かデジャブ。そう、2話くらいのデジャブ。僕は恐る恐る目を開けてみる。僕の手の伸びた先。
そこには、何故か僕のベッドで寝ている銀姉ちゃんがいた。ちなみに、僕の手は銀姉ちゃんの胸を鷲掴み
にしており、ボタンと思われた突起は……言うまでもない。寝るときはノーブラな御人だし。
「おはよう、おにいちゃぁん。朝から水銀燈感じちゃった♪えいっ!」
「ちょ、うわっ!銀姉ちゃん!?」
「もぉ、まだ姉萌えなのぉ?姉より妹の方が萌えるわよぉ?」
そうだった。そういえば、銀姉ちゃんは……というか、姉ちゃん達が何故か妹になってるんだった。
「分かったから。とりあえず離れような銀?」
「やぁよ。折角お兄ちゃんがやる気になってくれたんだものぉ。このまま最後までいきましょぉ?」
いくら、夢か幻か。或いは平行世界か。どれか分からないが、そこまでは不味い。
何より、これが夢として起きたら……朝からトランクスを洗うのは御免だ。そんなの見られたら生きてかれない。
「さ、手早く済ましちゃいましょぉ?あ、銀これでも初めてだからぁ…優しくしてねぇおにいちゃぁん。」
銀姉ちゃんは僕のパジャマを手早く脱がす。手馴れすぎだ。そして、自分のネグリジェも脱ごうとする。
「お兄ちゃん?起きてる?入るわよ?」
「真紅ねえちゃ…真紅!?いや、今はまず…」
ああ、無常。僕の許可ある前に部屋に入るのは、僕の記憶の中の真紅姉ちゃんと同じだ。妹の癖に
兄を何だと思ってるんだろうか。ともかく…・真紅姉ちゃんの蒼い瞳が見開かれている。仕方がない。
何せ、僕は上のパジャマ脱いでるし、銀姉ちゃんのネグリジェも乱れまくってる。そして、僕のベッドで
抱き合ってるように見えるだろう。ああ、少し動いたから息も荒いし、汗も出てるな。大丈夫な要素が
何一つない。グッと真紅姉ちゃんが握り拳を握る。あ、何だかんだで結構久しぶりかも……
「お、お、お兄ちゃん!!貴方って人はああああああ!!!」



さて、右の頬に何だかリアルな痛みを残して僕は食卓についていた。
「JUMにい、大丈夫ぅ?」
ヒナ姉ちゃんが心配そうにチラチラと僕を見ながら言う。ヒナ姉ちゃんはいい子だなぁ。
「私は悪くないわよ。大体、常日頃からお兄ちゃんは水銀燈にデレデレしすぎなのよ。」
真紅姉ちゃんが悪びれずに言う。どうやら、こっちでも僕は銀姉ちゃんにタジタジらしい。
「あらぁ、僻み?生憎、お兄ちゃんは喜んでくれてるわよぉ?今日だって、真紅のおばかさんが来なければ、
水銀燈はお兄ちゃんに大人にしてもらえたのにぃ。」
銀姉ちゃんの発言に、他の姉妹の視線が僕に突き刺さる。
「いや、そんな事するわけが……」
「だってぇ、お兄ちゃんたら朝一で私の胸を揉んでくれたしぃ。」
「それは目覚ましと勘違いしただけで……」
「いいのよぉ、恥かしがらなくてぇ。私ぃ、あそこ弱いから声大きく出ちゃったぁ。」
事態はどんどん悪化していく。さっきから不機嫌そうだった翠姉ちゃんが限界を超える。
「馬鹿おにいは今日はお弁当なしです。きらきー、食べちゃえですぅ。」
「そうですわね。私、お兄さまのお弁当でも食べなければ……お兄さまを食べてしまいそうですし。」
あれ?また何かデジャブ?しかも、キラ姉ちゃんは目がマジだ。拒否すれば本当に捕食されそうな
気がする。ここは我が家の良心に助けを求めておくべきだろう。
「蒼ね……蒼も何か言ってやってくれよ。僕はそんな事しない…」
「……そうだよね、兄さんだってやっぱり女の子ぽい子のほうがいいよね…僕なんて髪も短いし、色気ないし…」
唯一の良心は一人ネガティブにブツブツ言っている。応援は全く期待できそうになかった。
仕方がない。お昼は購買で何か買うことにしよう。背に腹は変えられないしね。



「お兄ちゃん、怒ってるぅ?」
登校中。銀姉ちゃんは僕の機嫌を伺いながら僕と並んで歩いていた。
「別に。僕だって多少は悪かったかもしれないし。」
まぁ、きっちり目を覚まさなかった僕も悪いだろう。99%ぐらいは銀姉ちゃんに非があると思うけど。
「えへっ、お兄ちゃんは優しいから大好きぃ。」
銀姉ちゃんはそう言って僕の右腕にしがみ付いてくる。
「お、おい銀。もうじき学校なんだからやめろって。」
「やぁよ。水銀燈はお兄ちゃんの妹だものぉ。これ位甘えてもいいじゃなぁい。」
言っても聞くわけがない銀姉ちゃん。なんて言うかさ…妹の銀姉ちゃんはやけに甘えん坊だ。
「そぉだぁ。ね、お兄ちゃん。今日昼食水銀燈と一緒に屋上で食べましょぉ?」
「いや、僕はお弁当ないんだけど。」
そう、君のせいでね。しかし、銀姉ちゃんはさも当然のように言った。
「あるじゃなぁい。水銀燈のお弁当を半分コしましょ?ね?」
銀姉ちゃんが言う。拒否権などあるわけもなさそうだ。まぁ、購買で買うお金が浮くからいいかな。
そんな事を思ってると学校に着く。僕は銀姉ちゃんのクラスだったな。校内でもピッタリ引っ付いている
銀姉ちゃん。周りの視線を受けながら僕は3-Eの教室に入った。
「あら、おはよう桜田君。水銀燈。相変わらずだね。」
教室に入ると、めぐ先輩が声をかけてきた。めぐ先輩の苗字は柿崎だったっけ。
「ん、おはよう柿崎。」
「めぐおはよぉ~。相変わらずなのは当然よぉ。だって、今朝私お兄ちゃんに愛撫されたしぃ。」
一瞬でクラスの男子の目が僕を視線で殺そうかと言わんばかりに突き刺さる。マジで勘弁して下さい。
「桜田!お前……水銀燈さんに何をしたぁ!」
一人の男子が僕の目の前に立った。コイツ、誰だ?



「別に何も……てか、あんた誰だっけ。」
「な!?笹原だよ、笹原!ミスター廊下こと笹原!」
笹原?そんな奴僕知らないし。でもまぁ、こっちでのべジータ的ポジションの奴と思っておけば全く問題
ないだろう。成る程、どの世界でも代わりはいるものなんだろう。なのに…なのにどうして…
「おはよう、みんな!担任の梅岡だよ!!あ、笹原は廊下に立っててね!立たないと…僕のが立つよ?」
何で担任はこいつのままなんだろう……しかも僕のが立つってさ…いやまぁ、言及するのはやめて
おこう。言及したら負けだ。そうだ、そうに違いない。


そして、お昼休み……僕は銀姉ちゃんと屋上にいた。
「はい、お兄ちゃん。あ~~~ん♪」
上機嫌の銀姉ちゃんはお弁当を僕の口に運ぶ。何だかとても嬉しそうだ。
「嬉しそうだな、銀。」
「嬉しいわよぉ。だって、お兄ちゃんと二人っきりでお弁当食べれるんだものぉ。嬉しくないわけないじゃなぁい。」
ニッコリと笑う。やばい、僕の記憶の銀姉ちゃんみたいに、どこか黒さがある笑みじゃなく、真っ白な笑みだ。
「なぁ、銀。もしさ。もしだよ?僕が銀の兄じゃなくて…弟だったらこんな風に甘えてるか?」
「…そうねぇ。お兄ちゃんが弟だったら、きっとちゃんと長女らしくしてると思うわぁ。実際、お兄ちゃんが
薔薇しーと一緒のに我が家に来るまではそうだったしぃ。でも、お兄ちゃんが来てくれたから、私は長女
から解放されてるのぉ。お兄ちゃんが居なかったら、こんな甘えん坊になれないわぁ。」
そうか。この銀姉ちゃんは、長女の重圧と責任から解放された姿なんだ。きっとこれが銀姉ちゃんの本当の
姿なんだろう。甘えん坊で、愛らしくて。
「そうか。じゃあ、しょうがないな。僕にとことん甘えていいぞ。」
僕は銀姉ちゃんをギュッと抱きしめる。キョトンとしてから、銀姉ちゃんは嬉しそうに顔を緩ませた。
「えへへ~、お兄ちゃん…大好き…」
END

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