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地獄マッサージ





「ジュン、毎日お仕事ご苦労様。今日は私がマッサージをしてあげるわ」

……今月もこの時が来てしまった。
月に一度、真紅が機嫌の良い時にだけしてくれるマッサージ、僕はこれが怖くてたまらなかった。

なぜならそれは、マッサージとは名ばかりの拷問だからだ。

あの細い腕のいったいどこに隠されているのか、そう思ってしまうほどの怪力で僕の体を引っ張ったりねじったり……それが真紅の言うマッサージだった。

それでいて本人はマッサージが上手いと思っているから尚更たちが悪い。

断ったら断ったで、
「……そう、そうよね。私は家事もろくに出来ないしマッサージ一つ出来ないダメな妻なのだわ」
と言って泣き出すのだ。

だから僕の返事はいつも決まっている。

「ありがとう真紅。じゃあお願いするよ」

……泣きたい。



マッサージがいよいよ始まった。
僕がうつぶせになり、真紅が何故かグーで背中を押している。

ミシミシッ……ゴキッ

「……ぐふっ!」

今日はいつも以上に強烈だ。早速背骨が悲鳴をあげている。

「だいぶ凝ってるわね。少し強めにするのだわ」

……嫁よ、凝ってるんじゃない、それは骨だ。

ゴリッ……ゴリッ……

真紅が体重をかける度に、聞いたことのない音と激痛が襲い掛かってくる。

しかし痛いと言ってはいけない。もしそんなことをすれば嫁は拗ね、僕の一週間の食事が無くなる。
それだけは避けなくてはならない。

「ぎぎぎぎぎぎ……」

必死に耐える僕。額には汗がにじんでいる。
そんな僕の異変に気付いたのか、真紅が心配そうな顔で僕に尋ねる。



「ジュン……気持ちよくないの?」

……嫁は卑怯だ。目に涙をためていても可愛らしい。
僕は夫として、いや、ひとりの男として。
たかがマッサージごときのことで泣かせるわけにはいかないのだ。

「そんなことないよ! 天にも昇る気持ちだ!」
「そう、それなら良かったわ」

僕の言葉を聞き、真紅はたちまち笑顔になる。
そうだ、僕はこの笑顔を見る代償として体を差し出すのだ……




開始から二十分、一向に終わる気配は無い。
僕は枕を噛みしめながら耐えていた。

「これで凝った筋肉とサヨナラなのだわ!」

バキバキッ!!バキバキッ!!

(さよなら僕の筋肉っ!)

意識がとびそうだ。このままでは明日の朝刊を飾ることになる。
「虚弱体質の夫、妻のマッサージで死亡」
なんて悲しい死に方だ。マズイ、なんとかしなければ




耐え切れなくなり、真紅に声をかけようとした瞬間、真紅の手が止まった。

(た、助かった!)
「最後に新しいマッサージをためしてあげるのだわ。……ジュンのために本を読んで勉強したのよ///」

なんだか嫌な予感がする……

真紅は背中にまたがり、僕の両足を自分の脇に挟んだ。

「いくわよ」
「し、真紅! ……それはサソリ固めええええぇ!!」

僕の記憶はここで途切れたのだった。

END
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