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F-15イーグル


それは、二十年以上にわたって「空の覇者」の地位を保ち続けた戦闘機
その航続性能と運動性能の高さは誕生以来数々の戦果をあげ、数多の伝説を作り上げてきた。
この鋼鉄の大鷲を駆るパイロットたちを、人々は畏怖と敬意をこめてこう称す。


――イーグルドライバー


この物語は、時代に翻弄されつつも懸命に戦い続けたイーグルドライバー『ミーディアム隊』の戦士達の姿を伝えるものである。


―ACE COMBAT ROZEN THE Revenger 『第二話 ミーディアム隊』―


―――二〇一〇年十月二十五日 午前六時二十三分 北緯三十八度線付近―――


「スカイネットよりミーディアム5。貴機に接近する機影を確認、機数四、十分に警戒せよ」


 AWACSからミーディアム5こと、『桜田ジュン』への通信。
レーダーには、敵を現す緑色の三角形が四つ写っている。

 機種は、MiG-29ファルクラム。
一対一の格闘戦で相手を圧倒することを目標に開発されたエイリス空軍の主力戦闘機だ。

「(ファルクラム? あいつじゃないのか。だったら……)」
ジュンは手馴れた手つきで機器を操り兵装を選択する。


「兵装選択、XMAA(高機能対空ミサイル)スタンバイ」


 彼の機体に搭載されている特殊兵装XMAAは、約四千五百メートル先からを最大四つの空中目標をロックし、同時に攻撃することが可能な優れものだ。
高度二千メートルをマッハで突っ込んできたMiGの編隊と、ジュンのF-15Jが向かいあう。
彼等の距離は、すでにジュンの射程に入っていた。

「ミーディアム5……FOX3!!」
 敵編隊をロックオンすると、トリガーを引きXMAAを発射!!
それと同時に機体を降下させ、敵からの攻撃に備える。
レーダーに写っているのは敵に向かって行く白い点。


命中まで後、3……2……1……


――命中、せず


敵は散開してXMAAを回避した。
だが、ジュンの顔に焦りの色はなく、突出した一機を狙って機銃を打ち込み即座に撃墜。
鉄機の爆散を確認すると、くるりと宙返りしつつ、後ろのMiG-29へミサイルを撃ち込む。


 複葉機やレシプロ機とは違う亜音速のドッグファイト。
ジュンは、次々と襲い掛かるGに顔を歪めつつ、
それでも操縦桿を倒し、フットバーを蹴り、見事な操縦技術で敵を撃破。
正面から突っ込んでくる敵機からの攻撃を少しの動きでかわしてその後ろに付き、


――FOX2


敵機撃墜。しかしその刹那――


「注意!! 敵のレーダー照射を受けている!!」


 AWACSからの警告。直後にコックピット内に鳴り響くレッドアラート。
ジュンは後ろからやってきた残りのMiG-29にロックオンされていた。


――しまった!!


と思ったときに一本のミサイルが後ろの敵を打ち砕く。
自分を援護したのは誰だ? 見上げると青薔薇のエンブレム付けたF-15Jが滑り込んできた。

彼のウイングマン(僚機)であるミーディアム4こと『薔薇水晶』の機体だ。
「油断しないで、やられるよ」
薔薇水晶からの通信に、ジュンはふんっと鼻を鳴らしつつ答えた。
「薔薇水晶、俺の後ろはお前が守るんじゃなかったのか?」
ジュンはそのまま敵軍の真っ只中に飛び込んで行き、薔薇水晶も慌ててその後を追う。
彼女は金色の瞳で彼の機体を見詰めつつ、心の中で呟いた。

(死なせないよ、絶対に。ジュンの背中は、私が守るから……)


 敵編隊四機撃墜。それは交戦開始から僅か三十秒足らずの出来事だった。


「くそぉ、なんなんだこいつは!」
 目の前を飛ぶF-15Jを追いながらMIG-29のパイロットがちっと舌打をした。
彼から逃げているF-15J。その尾翼には黒い天使の翼が描かれている。
「黒羽? 『あいつ』の真似かよ。ふざけやがって!」
まさに怒り心頭。しかし彼は敵に向けてミサイルを放たなかった。いや、出来なかった。
眼前の日本機は高速で上下左右にぐねぐねと蛇行し、マーカーがなかなか合わせられない。
真っ直ぐ飛んでいたかと思えば、突然ふっと視界から消えて次の瞬間には急上昇。
幾度か攻撃しようとするも、敵をロックしていない状態では命中はずもない。


「畜生。なんでこんな……」
それは確かに存在する。しかし攻撃はおろか、触れることも捉えることも出来ない。
これじゃ……これじゃまるで……

「――亡霊みたいだってか? 俺は信じねぇ、信じねぇぞ!」
彼はかぶりを降ってもう一度前を見た。だが、彼の視線の先。そこに敵の姿は無かった。
少し目を離した隙に敵機は煙のように姿を消していた。
「どこだ? どこに消えた?」
あいつはどこだ? レーダーに目を落とすと――
「なっ!」
答えは出た。そこには、自機の真後ろにピッタリとくっついているF-15Jの機影が映し出されていた。
彼は驚いて咄嗟に旋回。高度を上げたが、その後ろには磁石のように敵機がぴたりとついている。
「ありえない、今の日本にこんな奴いるはずが……」
 それが、彼が口にした最後の言葉となった。
数瞬後、後ろから放たれたミサイルで彼の体は機体ごとコナゴナに粉砕され、そのまま堕ちていった。


 全ては目を離した一瞬のうちに起こっていた。
その瞬間、黒翼のF-15は機首を下げて急降下。そして速度を減速してMIG-29が通りすぎるのを待ってから急上昇。
見事に後ろを取ったF-15Jはそのまま敵を撃墜した。
もっとも、すでに天に召された彼にそんなことを知る術はないのだが。


「あ~あ、今度もハズレか」
 黒翼を描いたF-15Jのパイロットがふうっと溜息をつく。
ヘルメットの奥に見えるのは線の細い黒髪の少女の顔。
「いいのに乗ってるから少しは出来ると思ったのに……」
 そうぼやきつつ彼女はレーダ―に目を向ける。高高度から自機を狙う二機を確認。
期待と歓喜で彼女の口元がきゅうっと吊りあがる。


「ふふっ貴方達は私の天使になってくれる? 私を殺してくれる?
 でも、私もただじゃ死なないから頑張って殺してね。
 頑張って頑張って頑張って……じゃないと、私が殺しちゃうわよ?」
 

ミーディアム3こと『柿崎めぐ』はくすくす笑いながら、再び死の舞いを踊り始める。自身が堕ちるその日まで……。


 そんな彼等の活躍を、さらに上空から見守る同型二機。
尾翼に黄色で『14』と描かれた機体と、なんの特別な塗装もされていないごく普通のF-15J。
彼等の眼下には、早朝の任務にも関わらず嬉々としてエイリス機を追い回す仲間たちの姿。
彼等は三者三様の活躍により、敵機を次々と撃破。戦況を日本側有利に進めていた。


「このまま僕達だけ高みの見物と言うわけにもいきませんね。そろそろ行きましょうか」
「……いよいよですね」
ミーディアム2こと草笛みつは緊張で手のひらが汗でべとつくのが気になった。
それもそのはず、この戦闘は彼女にとっての初陣だった。
「隊長、私は生き残れるんでしょうか?」
「ミーディアムリーダーより二番機へ。戦場で不明瞭な発言はしないように。……でないと死にますよ」
「は、はい。わかりました」
「よろしい、では出撃前に僕が言ったことをもう一度言ってみなさい」
草笛は隊長に言われたことを必死で思い出そうとした。
「えーっと……戦場で大切なものは『生き残ること』『自分の決めたルールを守ること』そして――」


「――『決して憎しみを持たないこと」


「よろしい、たいそうよろしい」
隊長は頷きつつ言葉を続ける。
「その三つを守っていれば、最低でも無駄死には防げます。いいですね?」
「了解、隊長」
「では行きましょう。ルールが貴女を守ります」
『黄色の14』の後ろに草笛機がつき、そのまま急降下。
彼女右手が振るえるが、左手でそれを押さえつけて機体を操る。 迷いは、要らない。


彼女の戦争が――ここから始まる。


 隊長機こと『黄色の14』白崎は無線を切ると、 一人コックピットの中で呟いた。
「憎しみを持ってはいけない……復讐なんて無駄死にを増やすだけだ。それなのにあいつは……」
彼の見据える先。そこには力で敵をねじ伏せて行く桜田機の姿があった。


 空の戦局は覆されていた。
ジュンは圧倒的なスピードと攻撃で敵機を蹴散らし、薔薇水晶は彼の取りこぼしを冷静に叩き、めぐは優雅な機動で敵を翻弄撃破。
白崎と草笛も高度差を利用した一撃離脱で地上部隊を狙う敵機を次々と撃墜。
他の航空隊も彼等に感化されたのか、徐々に勢いを盛り返し敵を追い払っていく。
逃げる陸軍と追う空軍。上と下で正反対の光景が広がっていた。


そして、戦闘は終わった。


 陸軍は撤退完了。援軍に着た航空機のうち撃墜されたのはわずかに三機。ミーディアム隊は草笛機が機銃に当たった他は大した被害も無し。
AWACSが戦闘終了を継げる。


「スカイネットより各機へ、諸君らの働きにより陸上部隊は無事撤退した。ご苦労だった」
各パイロットは、それを聞きつつ緊張を解き歓声を上げる。
「イヤッホー! ざまぁみろエイリスの馬鹿野郎めぇ!」
「俺たち航空自衛軍に出来ないことはないぜ!」
「エイリスも陸さんも大した事なかったな」
 通信機から聞こえる明るい声。だが、周囲と違いジュンの心は晴れなかった。
彼の体は、戦闘の影響で体中が厳しい訓練を何度も繰り返したほどの疲労感に襲われている。
ふと下を見やると、誰かが打ち落としたMiGが民家に突き刺さって炎を上げていた。


「…………」
 ジュンの頭をよぎったもの。
それは、姿を消した恋人……もう戻ってこない幸せな日々……全てを失ったあの惨劇……家族の、故郷の、幼馴染の仇『黒いラプター』……。
胸に手を当てジュンはあの日の誓いを思い出す。


(姉ちゃん……柏葉……あの黒いラプターは、俺が倒す。水銀燈……戦争が終わったら必ず迎えにいくからな)


「各機につぐ、作戦は終了しました。これより基地に帰還します。以上」
 白崎が締めくくる。直後に聞こえた盛大なため息。
ジュンは左の薬指につけた指輪を何度か触って確かめた後、操縦桿を握りなおし帰路へとついた。


続く


次回


―ACE COMBAT ROZEN THE Revenger 『第三話 敵』―

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