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「キラキラ光る~♪」
「その歌は時期が違うです。七夕は「笹の葉さーらさら♪」です。」
「あ、そっか。ささのはさーらさら。」
少しずつ日差しが強くなって来て、嫌でも夏の到来を感じさせる初夏の日。
夕暮れを迎えた我が家の庭では翠星石と娘が笹に飾り付けをしていた。


『織姫と彦星じゃないけれど』


さて、僕は何をしているかと言うと軒下にて翠星石と娘が笹に七夕の飾り付けをしている様子を観賞中。
隣に鎮座する豚さん蚊取り線香が実に夏らしい。(因みに名前は資本主義の豚。命名は翠星石。)
「とどかなーい。」
笹の枝を前に娘がぴょんぴょんと飛び跳ねている。
どうやら手に持った短冊を笹の天辺に付けたいらしいが今年から幼稚園に通い始めたばかりの娘では残念ながら届きそうに無い。
仕方ないな。
「よっこいしょ。」
うわ、今、無意識によっこいしょとか言っちゃたよ。気をつけないとな。
「おーい、肩車してやるから乗れ。」
娘の隣にしゃがみ込み肩に乗るように促がす。
「パパありがとう。」
娘は、にぱっと笑うと僕の肩に飛び乗った。
「オイオイ、もうちょっとゆっくり乗ってくれよな。」
娘を担ぎ立ち上がる。

「へー。宿六でも少しは役に立つですね。あー、もうちょっと右の方が結び易いです。」
後ろから翠星石が僕に指示する。って言うか、誰が宿六だ。
「ねー、パパ。やどろくって何?」
頭の上から娘が聞いてくる。また変な言葉覚えちゃったし。
「それはですね。JUNみたいな奴の事です。」
だから、誰が宿六だ。
「パパ、宿六?」
「違う。」
否定しておく。
「でもママ、前にかいしょうなしってパパに言ってなかった?」
少し前に翠星石の言葉を思い出し娘が問いかける。
それにしても家の嫁は娘に変な言葉ばっかり覚えさせるな。
「そうですよ。JUNは甲斐性無しの宿六野郎です。」
「パパ、かいしょうなしのやどろくやろう?」
「違う。翠星石もこいつに変な言葉ばっかり教えるな。」
まったく、幼稚園で「家のパパ、甲斐性無しの宿六野郎なんだよ。」とか言われたらたまったもんじゃない。
娘はうーんと唸った後、興味が元に戻ったのか短冊を結び始めた。
暫らくすると家族三人分が結び終わったらしく
「できたよー。」
と嬉しそうに頭の上で笑っている。
「じゃあ、降ろすからな。」
しゃがんで娘を降ろす。
「パパ、ありがとう。」
地面に降りた娘は僕に礼を言うと残りの飾りを付け始めた。

そして僕は再び軒下に座り娘が飾り付けしているのをぼーっと見ている。
視線の先では娘の、翠星石譲りの栗色の毛が揺れている。
「そっくりだな。」
「何がです?」
僕の独り言を聞きつけた翠星石が隣に座り聞いてくる。
「んー、あの子がな。前に爺さんの家で見たアルバムの小さい頃の翠星石にそっくりだからな。」
「当たり前です。あのチビは翠星石が死ぬほど痛い思いして生んだ子です。似てて当然です。」
性格は翠星石と違って素直だけどな。
とか思ったりするけどあえて口には出さなかったり。
「まあ、翠星石に似たおかげでチビは可愛い訳ですけど。」
「自画自賛かよ。」
「目なんかはおめーにちょっと似てるです。」
「そうか?」
自分の目に似てると言われてもよく解らない。
「……翠星石は。」
「ん?」
「あの目が好きです。」
「……そうか。」
何と無く無言になってしまい、そのまま二人で並んで座って娘が飾り付けしているのを見る。
娘は嬉しそうに枝に飾りを施している。
不意に翠星石が僕に寄り掛かって来た。
「……なんだよ。」
「……気にするなです。」
「……暑いんだけど。」
「……男なら我慢しろです。」
まあ、我慢しなきゃいけないって程、暑い訳じゃ無いから良いけどな。
段々と日も落ちてきて空には星が瞬き出した。

「天の川見れると良いですね。」
翠星石が呟いた。
「そうだな。」
実際はもっと山の方に行かないと見れないだろうがそこは言わぬが華。
そのまま、翠星石と二人で暮れ往く空を眺めていると。

「あー!パパとママまたくっ付いてる。」

空を見上げる僕と翠星石を指差し娘が言った。
そんな娘に翠星石は
「そうですよ。今日は七夕ですから。だからくっ付くんです。」
等と良く分からない説明をしている。
「でも、パパとママいっつもくっ付いてるよ?」
まあ、それは確かに。
それに対して翠星石は何て返したかというと
「良いんです。翠星石とJUNは織姫と彦星じゃないから何時でもくっ付いてて。」
「……さっきと言ってる事、矛盾してるぞ。」
「う、うるさいです。おめーは黙って翠星石を支えておけば良いんです。」
「はいはい。」
「な、何です。その言い方は!何か文句がありやがるですか!」


まったく言われなくても支えるさ。この先もずっと。


そんな初夏の夜


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