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『スレスレの関西への旅』

「……きらきーお姉ちゃん……踏み切りは一旦停車して……」
「分かってますわ、それぐらい」
 車を踏切にさしかかるあたりで、車を止める。
 そして恐る恐る発進させる。
 普段なら正直あまりやらないことなのだが……。

「ほら……危なかった……そこ見て……」
 助手席に座っている薔薇水晶が踏切の脇の駐車場を指差す。

 ……あらら。警察の方々は本当にご苦労ですこと。

 そこには、いわゆる『止まれ』と書かれたチェッカーフラッグを持った警官が立っ
ていて、駐車場にはマイクロバスが1台とその周りに警官が数人。さらには、先客が
いるのか、数台の車が止まっていて、マイクロバスの前に人の列が出来ていた。

「……サイン会場の前に人だかり……危機一髪だね……お姉ちゃん……」
 ぼんやりとその光景を見ながら呟く薔薇水晶。

 まったくその通り。
 こんなところで違反を取られたら、即免停だ。
 私の今の免許の点数は5点。
 前の違反から1年も経過していないので、1点の違反でもやろうものなら免停確定
という瀬戸際だったのである。

 思えば、ここ最近とんでもないことばかりだった。
 まず2ヶ月前に歩行中の高齢者の足を轢いてしまうという人身事故をやらかした。
 これに関しては、即座に被害者のお年寄りのお見舞いや謝罪や賠償を丁寧に行った
のだが……交通安全義務違反なんかがついて結局4点。罰金もそれなりにあった……。
 事後処理が終わって正直くたびれていた所に、一昨日には会社の帰りにシートベル
トの違反で1点。
 まあ、普段シートベルトを付けていない私も油断し過ぎだといえるのだが……その
一昨日あたりから警察の検問をやたらと見かけるようになったといえる。

 その時、ふと目に入った横断歩道に掲げられた幕。

『秋の全国交通安全運動実施中』

「……警察も忙しいね……ノルマ達成目指して必死すぎ……」
 薔薇水晶、貴女の言う通りですね、本当に。
 この全国交通安全運動ってやつは、本当に厄介な代物といってもよい。
 春と秋に行われる、事故防止のための啓蒙活動というが、取締りをこれらの時
期にやたらと行う警察の動向を見ると、反則金の納付額という売上達成を目指す
ための追い込み期間としか思えない。
(なお、今年の春のやつでは水銀燈、翠星石、真紅の3人が見事にその犠牲とな
り、3者とも免停をくらった。水銀燈と翠星石は一発免停、真紅に至ってはたっ
た1日の間に4回も取締りをくらってしまって免停、という傍から見るとお間抜
けとしか思えないザマだったのだが……今の私の状況から考えると笑える話では
ない)


 今日から仕事が休みに入った。有給と合わせて4連休にしたので、その期間を
利用して旅行に行こうという事になった。
 行き先は奈良。
 昨夜から高速を飛ばしてきたのだった。
 秋の紅葉を見に行こうと思ったのだが……ちょっと早かったかもしれない。
 まあ、それでも東大寺などの寺社仏閣をまわり、鹿が群れている奈良公園で、
涼しい秋風が吹く中で時間を忘れてのんびりとする……それなりに楽しめた。
 さらに柳生の里や隣県の京都府は加茂にある岩船寺を回った。
 そして、次は海を見たいということになり、それなら法隆寺へ行ってから、
大阪の天保山あたりに行って、その後はUSJで遊ぼうと思っていた。
 国道24号線に出て、奈良方面へと下る。

「……あまり運転できなくて……ごめんね……」
「いいですのよ、ばらしーちゃん。怪我してるのだからあまり無理させるわけ
にもいきませんわ」
 私は助手席の薔薇水晶をねぎらう。
 薔薇水晶も運転はできるのだが、1週間程前に左手の手首を捻挫してしまい、
下手に動かせない状態になっている。
 右手だけでも運転できないことはないのだが……正直事故を起こしてしまう
かも知れないので、今回は専ら助手席にいる状態だ。


 ピー!ピー!

 いきなりダッシュボードの上の電波探知機がうるさく鳴り出した。
 この音からして、恐らく……。

「……速度自動取締り路線の看板……おそらくオービスが近くにあるね……」
「そうみたいですわね」
 薔薇水晶の言うとおり、目の前にはその看板がある。
 制限速度プラス30キロ以内の速度に落とす。

 案の定、しばらく行くと両脇にカメラらしきものが付いた四角いハンペンの
ような板が、道路上のアーチに据え付けられているのが見えた。
 警報機は『Hシステムです』という音声を繰り返し発している。
 
 こんなのに引っ掛かるようではまだまだと思いながら、ふと対向車線に目を
やると、警察のマイクロバスが1台止まっていて、そこに人の列が出来ている。
 取締りのサイン会場であるのは間違いない。
 さらに進むと、観測装置の前に座った警官が一人。

「……ネズミ捕りみたいだね……」
 本当、油断がならないというか、ご苦労なことです。


 法隆寺まで来て、寺院の中を回った。
 1000年以上の世界最古の木造建築。
 例えば、五重塔や金堂。
 過去に写真で何度も見たが、実際目の前で見ると迫力が違うのが分かる。
 どことなく長い年月を経たどっしりとした風格が感じられるのだ。

「……すごいね……1000年以上の建物でしょ……これ……?」
「一部は雷で燃えて再建したといいますけど……やはり信じられないという感じ
ですわね」 
 正直、感動するものである。薔薇水晶もそれは同じだった。

 法隆寺の拝観を楽しんだ後、再び車に乗り込み、大阪へと向かう。
 途中から西名阪自動車道に乗ろうと香芝ICへと向かっていたのだが。
(余談だが、最寄には法隆寺ICがあり、そこから乗っても良かったのだが、香芝
から乗ったほうが安くつくと薔薇水晶が言うのでそうした)

 ――!!

 私は思わずブレーキに足を掛ける。
 いきなり前の車が速度を落とし出したのだった。
 信号もないのに、なぜいきなり……?

「危ないですわね。追突しそうになりましたわ」
「まったく……と言いたいところだけど……あれ……」
 薔薇水晶は相変わらず平然とした様子で左前方を指差す。


 その先の道端には、カラーコーンが2つほど置かれていて、その前に座った警
官が一人。
 しばらく先には『止まれ』の旗を持った警官が一人。
 さらにその脇にはサイン会場のバスが1台。
 案の定、数台前を走っていた車が警官に誘導されていた。

「……ネズミ捕り確定……」
「それにしてはおかしいですわね……」
 薔薇水晶の言葉に私はちょっと疑問に思うことがあった。
 計測係と思われる警官の前を過ぎても電波探査機がまったく反応しなかったの
だった。
 ネズミ捕りは主にレーダーかステルスという超短波で行うらしい。
 レーダーなら思い切り感知する。
 ステルスは車が計測器の直前あたりまで来た時に、レーダーをいきなり車に向
けて発射する形式なので、感知は難しいともいえるのだが、この車に搭載してい
る感知機は数十メートル先のステルスも感知できるかなり敏感なものだ。
 感知すれば『ステルスです』と電子音声がうるさく響いていたのを過去に何度
も聞いているのでよくわかる。
 もっとも、警察無線電波探知機能もついているので、それの反応はあるが。



「……おそらく光電管式……探知機は反応しない……」
「そんなものがありますの?」
「うん……このコーンに隠れるようにして……赤外線を受光する光電管が隠され
ている……ちなみに対向車線にもコーンがあったけど……そこに赤外線の発射装
置があるはず……」
 確かに薔薇水晶の言うとおり、対向車線にもカラーコーンが並べられていた。
 どことなく不自然には思ったけど……。
「警察無線が反応したからひょっとしたらと思ったけど……有線で連絡を取り合
うやつもあるから……それだとまったく分からない……」
 探知機にも反応しないネズミ捕りなんて……本当に最悪な代物ですわ。
 オービスでも探知機に反応しないループコイル式だの、LHシステムだの、Rシ
ステムという奴もあるが、それについては運転者の写真をとる形になるので、必
ず手前の方に取締り中を示す警告の看板がなくてはならないはず。
(余談だが、過去にオービスで検挙された違反者が肖像権の侵害として裁判を起
こし、それを認めた判例があるので、こうしないと証拠として採用されなくなっ
たというのを薔薇水晶から聞いたことがある。もっとも、過去に移動オービスで
検挙された水銀燈は見事にその看板を見落としていたという。もっとも、街路樹
の影に工事用の看板であるかのように置かれていたと彼女は言っていたが)
 それに対して、ネズミ捕りは運転者の写真を撮る訳ではないので警告看板を設
置する必要は全くない。
 気付くには車の流れを読むか、対向車のパッシングを頼りにするしか方法がな
いという、ある意味最強のネズミ捕りだろう。この光電管式というやつは。
 ほっと胸を撫で下ろしながら、道を進む。



 やがて香芝ICまで来ると、高速に乗る。
 制限速度は80km/h。
 他の車は快調にそれ以上のスピードで飛ばしている。

 車は県境のトンネルを抜けて大阪府へと抜けようとした時だった。

「遅い車がいるものですわね」
 走行車線を走っていたのだが、目の前には70km/hぐらいで走る和泉ナンバー
の銀色のセドリック。
 他の車の流れを遮らんとばかりにマイペースで走っているともいえる。
 こんな車の後を走っていたら、どこかいらついてくる。
 追越車線に出て追い抜すために、右ウィンカーを出そうとした時。

「……ダメ……あの車を抜いちゃダメ……」
 薔薇水晶が横から私の方を掴む。
「なぜですの?」
「名神走ってたときにも言ったけど……乗っている人をよく見て……」
 彼女に言われたとおりに目を凝らして、その車の中に注目する。

 乗員は二人。
 両者ともどこか青っぽい服を着ているようだった。



「……青か黒の服を来た二人組みが乗る……白か黒か銀色の……クラウン、セド
リック、スカイライン、ソアラは……基本中の基本……」
 薔薇水晶がそう呟いていた時、私の車の横を1台のハイラックスが通過してい
った。前を走るセドリックにも構わず、猛スピードで通過する。恐らく100km/h
以上は出しているだろう。

 すると、今まで前をのんびり走っていたセドリックはいきなり走行車線に移っ
たかと思うと、スピードを一気に上げて、ハイラックスの真後ろにぴったり張り
付くように走る。
 そして……。

 ファアアアアアン!

 いきなりサイレンが鳴ったかと思うと、そのセドリックの天井から回転する赤
色灯が現れる。

『なにわ300ま○○―×▲のハイラックス、速度超過です!誘導に従って止まり
なさい!』
 停止を指示する男の声がする。
 そして問題のセドリックはハイラックスを追い抜かし、前を塞ぐようにして走
り、少し行った先の本線料金所の手前で停車する。ハイラックスもそれに従うか
のようにその後ろに停車する。

「……ビンゴ……」
 薔薇水晶が勝ち誇ったかのようなニヤつきを一瞬見せた。
 覆面パトカーだとは……まったく。


 その2台の車を横目にため息をつきながら通り過ぎる。
 本線料金所のETCレーンを通り過ぎて、そのまま快調に走らせようとアクセル
をふかす……が。

「……あの黒のクラウンも覆面……抜かしちゃダメ……」
 薔薇水晶がまたスピードを落とすように促す。
 しかし、その車はなにわナンバー。
 ここは柏原市内のはずだから和泉ナンバーのはずでは?

「……隣接地域のナンバーの覆面が……遠征してくるのはよくある話……」
 隣り合う県の警察が協定を結んで、隣接地域まで出張って取締りをやるのは聞
いたことがありますけど……それにしても覆面多すぎですわ。
 やはり、今の時期だから活動が活発なのですかね……。
 油断もすきもありゃしないですわ、まったく。

 しかし、ここまで薔薇水晶のアドバイスで取締りの憂き目に遭うのを回避して
きた。
 というか、彼女はこのテの知識には精通している。
 闇で改造したスカイラインを乗り回し、さんざん暴走行為スレスレと言えるほ
ど飛ばしている彼女ではあるが、現在無事故無違反。このままいけば次の免許更
新ではゴールド免許になるという。
 彼女の車には電波探知機はもちろん、警察無線を傍受するための無線機まで用
意しているのだから驚きだ。
 まあ、ここまでの知識があるからこそ取締りには免許を取ってから1度たりと
も引っ掛かってはいないのだが。
 我が妹ながら、ある意味感心してしまう。



 車はやがて松原市内に入り、そこから阪神高速に入る。
 14号松原線を大阪市内に向けて快調に飛ばす。
 もっとも、途中にはオービスがやたらと多くなった上、ここでも覆面が別の車
を取締っているのを目にした。
 本当、油断は禁物である。

 そして、1号環状線に入る。
 車の量は大阪市内とあって、かなり多くなるものの平均80km/h台で飛ばしている。
(ちなみに制限速度は60km/h)
 渋滞もなく、順調に流れていた。

「しかし、オービスが多いですわね」
「……阪神高速はHシステム発祥の地……総本家なのだから当然……」
 薔薇水晶の言葉になるほど……って、どうでもよい知識なのですけど。
 とにかく鬱陶しいこと極まりない。
 しかし、幸いパトカーの姿はない。
 速度を90km/h近くまで上げて走る。
 遅い車もあったが、覆面でないことを確認して、車線変更を繰り返して追い抜
かす。
 なんば、湊町、四ツ橋とインターを通り過ぎたあたりで、左手にいきなり道が
分岐したかと思うと、その先に格納庫のような建物があるのが見えた。『管理用
道路』と言う文字と進入禁止を示すマークが描かれた鉄の扉が閉まっていた。
 また珍しいものがあると思いながらも何気なく通り過ぎる。

 やがて、天保山と神戸方面の分岐を示す看板が見え、左へと分岐する16号大阪
港線へと進入するため、左車線へ移ろうとしたその時!



 ファアアアアアアン!

 なんと後方からパトカーのサイレンの音が!
 慌ててバックミラーを見ると……白と黒のおなじみの塗装のパトカーが赤色灯
を灯らせて、私の車の真後ろに張り付いていた!

 え?なんで?
 だって、ここに来るまでパトカーを追い抜かすこともなかったし、途中のICか
らパトカーが来るのを見た記憶がありませんし、そもそもバックミラーを見ても
パトカーなんて見ていませんわ!
 予想もしなかった自体に私はおろおろしてしまう。さすがの薔薇水晶もびっく
りした様子でパトカーをじっと見つめていた。
 そうこうしている間にも、分岐を通り過ぎてしまい……。

『川崎303せ○▲―××の白のシルビア、速度超過です!誘導にしたがって停車
しなさい!』
 パトカーからの関西訛りの制止を促す警告にある車のナンバーや車種は明らか
に私の車のものだった。
 その間にもパトカーは私の車を追い抜き、前を塞ぐようにして走り出す。
 後部の窓には電光掲示板があり、『パトカーの誘導に従え』と表示されていた。



 やがて途中の非常停車帯に止めさせられる。
「これ……どういうことですの……」
 まったく訳がわからない。薔薇水晶にただその理由を尋ねる。
「恐らく……さっきの管理用のスペースから出てきたのだと思う……確かあの下
には高速警察隊の分駐署があって……監視カメラかなんかで速度違反をしている
車を見つけて……パトカーごとあのスペースにあるエレベーターであがってきて
捕まえるというのを聞いたことがある……阪神高速名物四ツ橋ダッシュってやつ
……まさかここで見るなんて思わなかった……」
 唖然とするよりかは、むしろ感心している様子の薔薇水晶。
 てか、そんなことどうでもいい!
「どうしましょう……」
「どうするも、こうするもない……早く行ったほうがいい……おまわりさんが車
から出て、お出迎えにきているから……」
 見ると、警官がパトカーから出てきて私の車へと近づいてくる。
「とにかく……運命と思ってあきらめるしかない……いってらっしゃい……」
 あくまで他人事のように言う薔薇水晶。ご丁寧に手まで振っている。
 一発、殴ってやりましょうか?それとも丸呑みしてやりましょうか?
 苛立ちを押さえつつも、外に出て警官に言われるがままにパトカーの後部座席
に乗り込んだ。



「あんた、ここ何キロ制限か分かっとるんかな」
「……60キロですか」
「せや。んで、あんたの車が出しとったのは89キロや。ほら、これ見てみ」
 警官は運転席にあるデジタル式のメーターを指差す。
 そこには確かに89km/hと表示されている。
「はあ……」
「とにかく、29km/h超過で3点やな。切符切るから、ここにサインと印鑑、持っ
てなかったら親指で拇印を押して」
 印鑑は持っていないので、親指を黒のインクをつけて押す。

 3点……これで8点。
 免停確定。
 突きつけられた現実に大きくため息をつく。
 青切符と反則金18000円の振込用紙を手渡された。
「反則金の振込みは1週間以内やな。地元に帰ってから振り込んでもええで。
 じゃあ、交通安全でな。気をつけて」
 私はパトカーを降ろされた。
 そして何事もなかったかのようにパトカーは高速を車の流れに乗って走り去って
いく。
 今更、交通安全って、免停なのですけど、私。
 うなだれながら運転席へと戻るのであった。

 その後、天保山やUSJに行ったものの……こんなことがあってすっかりヘコんで
しまい、うかない気分でいたため楽しめなかったのは言うまでもない。



 後日――
 案の定、免停通知が来た。
 過去には人身事故をやった上に6点ではなく8点なので、軽微な違反者対象の講
習は受けられず、通常の免停講習を受ける羽目になる。
 まあ、なんとか免停期間は短縮できたが……なんだかなという気分だ。

 さらに後日――免許更新の日が来た。
 私だけでなく、薔薇水晶や水銀燈、翠星石に蒼星石、真紅、雛苺、金糸雀も時期
がかぶっていて、一緒に更新に行くことになったのだが――。

「……晴れてゴールド免許♪」
「カナもかしらー!」
 鼻歌交じりの薔薇水晶と金糸雀。
 薔薇水晶はともかく、金糸雀は車を全く運転しないくせしてゴールド。
 まったくなんというか……。
 ともかく、天国の優良運転者講習ということで講習時間も30分。んで、期間は5年。
 ついで講習手数料も安い。



「ヒナは2時間なのー。おまけに3年しか更新できないのー」
「まあ、雛苺は仕方がないよ。初心者からの講習だから。僕も1回携帯で違反をや
っちゃったから1時間だよ」
 ふくれる雛苺をなだめる蒼星石。
 初回更新講習の雛苺は仕方ないとして、蒼星石は過去5年で2点の違反だけなの
で当たり前に運転している人なら受けるはずの一般者講習。期間は5年。

 そして……
「ペーパードライバーのくせにゴールドとは生意気ですぅ」
「まったくよぉ。なんなの、この違いは?」
「本当だわ。薔薇水晶もあんな危なっかしい運転して、ゴールドだなんて不公平に
も程があるわ」
「警察に実態を教えてやりたいぐらいですわ」
 私も含め、水銀燈、翠星石、真紅の4人は過去5年で3点以上……前歴まで作っ
ているということで、屈辱の違反者講習。講習時間も2時間と長く、費用も高い。
 おまけに更新は3年。
 大きくため息をつく私達。
 翠星石に至っては、長い講習がだるいからと、蒼星石に替われと言って小競り合
いをやらかしている始末。
 彼女を何とかなだめ、時間が来たので仕方なく講習の教室に入る。



「さて、ただいまから違反者講習を開始いたします」
 教室に入ってきたのは、なんとラプラスだった。
 しばらく姿を見かけないと思ったら、こんなところで仕事をしていたの?
 ラプラスは私達には構わず話を続けていた。
「皆様は過去にいろいろな違反をしたかと思われます。中には速度監視機の取締り
やら酒気帯び運転で免停になった方、1日で4回も軽微な違反を取られた方、人身
事故や速度超過で違反を取られ免停になった方などさまざまいらっしゃるかと思い
ますが、法規をきっちり守り、安全運転を行う意識があるならこのようなことには
ならなかったと思います。まあ、今回はそうした自らの罪を後悔する意味で受講し
ていただければ幸いです」
 ラプラスはあろうことか、違反内容をわざと強調して私達の顔を順番に眺めてい
く。
 そのときの嫌味な笑みは一生忘れられるものではない。
 というか、あてつけですか?

 見ると、水銀燈や真紅や翠星石の顔が引きつっている。
 今にも殴りかからんという勢いだった。
 まあ、当然でしょう。
 私だって目の前のクソ兎の傍若無人な発言に腸が煮え繰り返っているのですから。




「あのボケ兎どうしてやろうかですぅ……」
「百叩き確定だわ」
「それじゃあ生ぬるいわよぉ。十字架に張付けてにしてバーベキューにしないと気
がすまないわぁ」
「それなら、後で肉をバラして唐揚げにしてさしあげましょうか」
 目の前で兎が淡々と講義を進め、ビデオ試聴に入ると、私達は小声で不穏な会話
を繰り広げた。

 講義が終わり、免許を受け取る。
 まあ、まずはおおよそ1年間無事故無違反でいかないとね。この期間は4点で免
停になるから。
 で、あとは5年間3点以内の違反に留めて……そう思うとやるせない。
 大きくため息をつき、教室を後にする私達4人であった。

 もっとも、直後にラプラスを捕まえて、即座にバラバラにして唐揚げや焼肉にし
て、皆の夕飯にしたのは言うまでもないが。

        ‐the end-

 注意:実際の免許更新の講義はこんな傍若無人で傲慢な内容では決してなく、ご
    く普通のまっとうなものであることを断っておきます。ラプラスのように
    人ををコケにするようなことは断じてありませんので、誤解のないように。
    あくまでこれは創作上のネタです。
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