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第五話 「答え探し」


同窓会が終わり休日も経て
今日は初講義がある日となった。
講義のコマ割りはほとんどが金糸雀と一緒なので一緒に登校もしている。
金糸雀の友達の雛苺も一緒だ。

「行ってきますかしらー」
「行ってきますなのー」

二人揃えてバスの窓から見える風船配りの兎に手を振る。
いや、本当に何なんだあいつ?
まぁ考えても分かる筈も無い。
しかし朝から元気だなこの二人。

「朝から本当に元気だな」
「当たり前かしら、水銀燈印のヤクルトとカナの玉子焼きを毎朝食べれば元気かしら!」
「うにゅー食べれば元気一杯なのー!」

水銀燈印て……あの妹さんか。
妹に飲まされてるのかな?
それは兎も角……

「うにゅー?」
「うにゅー」
日本語の会話になってるかすらわからない。
うにゅーって何なんだ?

「ジュン、苺大福の事かしら」

金糸雀が横から解説を入れてくれる。
はぁ、苺大福の事か。

「一体全体何で苺大福の呼称がうにゅーなのかがわかんないんだが……」
「うにゅーがうにゅーである事に理由はいらないのー。
 うにゅーが存在してる、うにゅーがある、それに意味があり理由は無いのー。
 つまりはうにゅーはうにゅーでありうにゅーの為にうにゅーとしてうにゅーであるのー」

いやそんなに哲学チックに言われてもわかんない。
それどころか余計にわからなくなる。
まぁ兎も角苺大福はうにゅーって事だな。
まぁそんな事はどうでもいいか。
アナウンスが大学前へと着いたという事を伝える。
それを聞いて視線を窓の方に移すともう大学が見えていた。
さて、降りなきゃな。
僕は鞄を肩に掛け席を立つ。
同時に後ろの席の二人も立つ。
そして出口の方へと向かいドアが開くのを見計らって
開いた瞬間外とへと出る。
あー日が眩しい。
休みの間ずっと引き篭もって寝ていた僕にとって日は天敵だ。
僕は鞄から帽子を取り出しそれを被る。
これで少しはマシになるな……。
「ジュンが帽子被ってるのー」
「ホントかしらー」
「生憎、日の光は苦手でな」
「吸血鬼なのー」
「怖いかしらー。かじられるかしらー」
「んな事するかっ!」

まぁ吸血鬼と言われてしょうがないような生活なんだがな。
そんな会話を広げながら大学の中へと入っていく。
学校長の梅岡が入ってくる生徒全員に挨拶をしている。
ほんとに小学校かどっかに行った方がいいんじゃないのだろうか?
まぁそんな事はいいや。

「じゃあまたなのー!」
「バイバイかしらー!」

気付くと金糸雀が雛苺に別れを告げている。
雛苺は僕らと同じ講義が全くと言っていいほど無い。
その為会えるのも朝だけと言えよう。

「じゃあジュン行くかしらー」
「ああ、わかった」

楽しそうに歩いていく金糸雀について行く。
さて……初講義頑張りますか。
「えー初めまして講師の翠星石ですぅ。
 お前らしっかりとついてきやがれですぅ」

僕は最初のコマでいきなりド肝を抜かれる。
この人確か花屋の店主じゃなかったのか?
同窓会の時に行った花屋で会ったので間違いない。
大学じゃかなり多くの人数が講義に参加するので
小学校や中学校みたいに生徒の自己紹介などある筈も無い。
ので講師の翠星石さん……じゃなく翠星石先生の自己紹介が終わると
すぐに講義が始まった。

「金糸雀、あの人……」
「同窓会の時に花屋で会った人かしら、どうして此処に居るかしら……?」

やはり金糸雀も疑問に思っているようだ。
講義が終わって暇があれば翠星石先生に質問してみよう。
そんな事を考えながら講義を受けていてふと思い出し
財布の中から紙きれを取り出す。

“幸せになって下さい、未来の僕”

紙にはそう書かれている。
タイムカプセルに入っていた今の自分、過去の自分から見た
未来の僕へのメッセージに書かれていた短い言葉。
僕は今でこそこんな無気力で幸せなんぞ知らない人間だが
昔は明るく幸せな少年だったと思う。
だがこんなメッセージが書かれているという事は
僕は“昔から幸せを知らなかった”のだろうか?
昔の記憶を思い出してみる。
……特に見映えのするような生活では無かったと覚えている。
普通の人と同じように暮らし
普通の人と同じように学び
普通の人と同じように遊び
普通の人と同じように楽しみ
普通の人と同じように幸せだったんじゃないかと思う。
しかし、紙のメッセージは幸せになってくださいと書かれている。
つまり昔の僕はごくごく普通の生活に飽き飽きしていて幸せでは無かったんじゃないかと思う。
かと言って不幸という訳でもない。
つまりは今と同じように“つまらない”生活だったんだろうか?
だとしたら何で僕は小学生ぐらいの僕を幸せだったと認識したんだろう……?
……思い出せない。
元々記憶力は無いし、それにかなり前の事だ。
細かいことなんぞ覚えてられない。
まぁ……いいや。
考えてもしょうがない。なら人に聞くまでだ。
後で金糸雀に昔の話でも聞いてみよう。
さて……少しは講義を聞かないと。
「なぁ金糸雀」
「何かしらー?」

昼からの空き時間、大学のカフェで昼ご飯の玉子丼を食べてる金糸雀に喋りかける。
しかし本当に筋金入りの玉子好きだな。
カロリーやら何やら大丈夫なのだろうか?

「昔の僕って……どんな感じだった?」
「んー、昔のジュンかしら?」

金糸雀はでこに手を当てながら考え出す。
数秒程して口を開く。

「んーと、ジュンは受験勉強で忙しくて六年生の時とかは
 あまり人と遊んだりしてなかったかしらー」
「ふんふん」

そういえば僕は中高一貫の学校に入る為
長期の間勉強もしてた事もある。
思えばあの時一番頑張ってたのだろうが今じゃ頑張るなんて気力も沸かない。

「それでもカナとは毎朝一緒に登校したり勉強教えてくれてたかしらー」
「そういえばそんな気もするな……受験が終わった後は?」
「勉強はしなくなったもののあまり変わりは無かったかしらー」
「ふーん」
元々そんなに社交的では無かったみたいだな。
今と同じように。
だけど……

「お前とはよく居たんだな」
「かしらー」

何でだろうな?まぁいい。

「ジュンは何故そんな事聞くかしらー?」
「ん……何ていう言うかね、自分って幸せなのかなと思って。
 何故か昔は幸せだったって思い込んでたんだけど
 ほら、これ見て」

そう言って財布の中のタイムカプセルに入っていた紙を取り出し
金糸雀へと渡す。


「これ何かしら……?」
「ああ、タイムカプセルに入っていた今の僕への過去からのメッセージ。
 こんな事書いてるんだったら幸せじゃなかったのかな……って」
「ジュン……幸せになりたいのかしら?」
「ん……まぁなりたいというのもあるがその前に“幸せを知りたい”」
「……ならカナが一緒に幸せの答え、探してあげるかしらー」
「……え?」
「過去の事なんかうだうだ言ってても何にもならないかしらー。
 まずそれなら未来の幸せの事を考えるかしらー」
「うーん……」
まぁ確かにそうかもしれない。
思い出すのも難しい過去の事なんかにこだわっていたら
幸せなんて全然わからないかもしれない。
それなら今幸せの答えを探すのがいいよな……。

「……一緒に探してくれるのか?」
「無論かしらー」
「……金糸雀は幸せだよな?」
「幸せかしらー」

こんだけ幸せそうな金糸雀が折角一緒に探してくれるというんだ。
きっと見つかるだろう。
金糸雀に……ついていってみるか。

「……んで、具体的にどうすればいいだろな?」
「サークルにでも入るのはどうかしら?
 色々な物に触れ合う事で答えが見つかるかもしれないかしらー」

うーん、サークルか。
中学、高校と僕はずっと部活とかには無縁の帰宅部暮らし。
なら、今までやった事の無いような事をするのもいいかもな。

「いいな、じゃあどんなのに入る?」
「サークル紹介の冊子があそこで貰えるから
 あそこで調べてみるかしらー」
そう言うと金糸雀は走り出したので僕も急いでついていく。
暫く走るとサークルに勧誘する為に色んな人らが
所属サークルの紹介などしてるのが見える。
「あそこかしらー」

サークル勧誘の真っ只中に看板が立っていてそこに何個かの冊子がある。
その二つを金糸雀は取りこちらに戻ってくる。

「はいかしらー」
「ありがとう」

貰った冊子を早速開く。
うーん、最初に目に入ったのは運動系のサークル。
こういうのはちょっと自分向けじゃないな……。
というかパラグライダーなんてするサークルもあるのか……。
前、金糸雀が言ってたように変わったサークルが多いようだ。
パラパラと冊子をめくりながらそんな事を思う。
運動系のサークル紹介のページの次には
文科系サークルの紹介ページがある。
こちらも文芸サークルやアニメ研究サークルなど一般の大学にもあるのもあるが
ゲテモノ愛好サークルや爬虫類愛好サークルなどほんとに変わったのもある。
種類が半端じゃないな……。
……ん?
ミステリー研究サークルの紹介の横に変わった名を見つける。
UNKNOWN会研究サークル。
何だこりゃ?

「ジュンもそこを見たかしらー」
「ん、ああ。これだけ横文字の名前のサークルで気になったしな。
 実際どんなサークルなんだろうな?」
「見てみるかしらー」

紹介の部分を見る。
どうやらこれは今科学じゃ解明できない事、
つまりは人が“知りえない”事を研究するサークルのようだ。
オカルト系のサークルやミステリー系と似ているが
どうやらこれは幅がかなり広いみたいだな。

「これに入るのはどうかしらー?」
「うーん……」

まぁ他に目ぼしそうなサークルもない。
それにこんなうだうだしてる間に後ろに居る
ヤマジュン愛好サークルやまさちゅーせつ愛好サークルなどに
強制に近い勧誘をされるかもしれない。
「そうだな、これに入るか」

僕はそう言うと金糸雀の手を引っ張って逃げる。
後ろのサークル勧誘に見つかったら大学どころか人生を棒に振る気がする。
そして目指すはUNKNOWN研究会サークルのある部屋を目指す。
この大学にはサークル棟なるものがあるようで
そこに大体の文科系サークルが固まっているようで
UNKNOWN研究サークルもあるようだ。
しかし、体力の無い僕がそう長い間走れる訳もないし
どうやらあの二つのサークルもまいたようなので止まる。

「はぁ……はぁ……疲れたかしら……」
「ご、ごめん……」

息が整っていないのがよくわかる。
金糸雀も相当疲れてるようだ。ホントに御免。
僕らは息が落ち着いてきてベンチで休憩している。
ここら辺は人が少ないので逃げる心配も無い。

「ちょっと詳しく紹介見てみよう」
「かしらー」

紹介の部分は結構長くまだ見きれていないので
もう少し見ることにした。

“この世の分からない事、UNKNOWNを徹底研究するサークルですぅ。
 幽霊の真実、UFOの真実、黒歴史の真実、タイムマシンの真実など
 一杯調べてるですぅ。入りたかったらさっさとサークル棟の
 UNKNOWN研究サークルの部屋まできやがれですぅ”

やけに乱暴と言うか何というか変な口調で紹介はこんな風に書かれている。
しかし……。

「黒歴史やタイムマシンってまたよくわからないのを……」
「だから面白そうかしらー」
「まぁ確かに」

そんなもんを研究するサークルなんて中々無いだろうし楽しみだ。
某漫画などで出てくるタイムマシンを研究するなんていうのも面白そうだな。

「じゃあ行くか」
「レッツゴーあしらー!」

僕らは意気揚々とサークル棟へと行った。
思えばこの時から“時は狂ってたかもしれない”

そんな事を僕は知るよしも無く幸せの答え探しを始めた。
答えは近いようで遠いようで見えるようで見えない。
あるようで無いようで知ってるようで知らないUNKNOWN。

果たして答えを見つけれるだろうか?
「どうやらうまくいったようですよ」

私はそう“会長”にと喋りかける。
会長は少し微笑むと喋りだした。

「まぁ良かった良かった、何しろ複雑な人生だからね」
「全く、とんでもない人生ですぅ」
「君が言えるような事じゃないと思うんだがね」
「うるせぇですぅ、デカ人間ですぅ」

そんな風ににぎやかに雑談してる。
確かに相当私の人生も複雑なんだろなですぅ。

「少しは静かにするのだわ、もうすぐ誰か来るかもしれないのだわ」
「だな」

ホントはかもじゃなく来るの間違いなんだが
その事実は彼女は知らない。
まぁ知ってもどうって事はないです。

「おや?来たようだな誰かが」

何も知らない真紅の為にわざわざ“誰かが”と知らない振りをする。
全く笑えるですぅ。
そんな事を思ってるとドアが開く。

「ようこそ、UNKNOWN研究会へですぅ」
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