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「一つ屋根の下 第六十話 JUMと後夜祭」



グラウンドの真ん中で木材が積みあげられている。時刻はすでに7時過ぎ。
空はすでに暗闇に覆われている。6日間の学校祭のクライマックスだ。
『それでは、後夜祭を始めたいと思います。先ずは皆様、この6日間お疲れ様でした!!1年生……
初めての学校祭はいかがでしたか?今年は学校優勝が一年生から出るという快挙を成し遂げパワーある
1年生でした。残り2年も楽しみにしててください。2年生、去年の経験を生かしてやりたい事はやれましたか?
来年は最後の学校祭。今年の経験を是非来年に生かしてください。3年生。最後の学校祭は如何
でしたか?これから始まる受験。是非、学校祭での力を受験に生かしてください。
前置きが長くなりました……それでは、後夜祭を開催いたします!!!!』
木材に火が灯される。パチパチと音を立てながら炎は燃え盛っていき、闇を打ち消すようにグラウンドに光を
与えた。全校生徒でその光を囲む。
「みんなお疲れ様!担任の梅岡だよ!!学校祭はお疲れ様!!先生とみんなの絆が強まって嬉しい
限りだよ!!3学期にある球技大会でも、学校優勝狙おうな!!」
何だかテカテカしてる梅岡。そういえば、さっきからべジータは元気がない。
「なぁ、どうしたんだ?」
「……わからねぇ……蒼嬢と何かあったような気がしたんだが……気がついたら何だか尻がな……」
あー、まー、うん。知らない。僕は何も知らない。チラリと薔薇姉ちゃんを見ると、テヘッと舌を出してた。
いや、テヘッじゃ済まないでしょ……
『それでは、闘いの遺恨も忘れてみんなで踊りましょう……』
何だか音楽が流れてくる。何人かの生徒は炎を中心に踊っている。僕はそれを眺めていた。
「あらぁ、JUM踊らないのぉ?」
ぼけーっとしてた僕に銀姉ちゃんが近寄ってきた。
「ん~……僕踊りとかよく分からないしね。」
「そう?じゃあ、お姉ちゃんが手取り足取り教えてあげるわよぉ。さ、行きましょう?」
「へ?ちょ、ちょっと……」
僕は強引に銀姉ちゃんに手を引かれ、みんなが踊ってるトコまで足を運んだ。



「そうそう……そっちの手は腰に回していいわよぉ。」
「ん……こうかな?」
僕は銀姉ちゃんと向き合って、僕は左手。銀姉ちゃんは右手で手を繋ぐ。そして、逆の手はお互いの腰に
当てていた。ピッタリ体同士は引っ付いてて当然のようにドキドキする。
「どうだった?学校祭は。」
僕と銀姉ちゃんは周りに合わせながら適当に足を運び踊る。炎に顔が照らされ少し熱い。
「楽しかったよ。この1週間、退屈する暇がなかった。」
「そうねぇ。何せお祭りだものねぇ。私もJUMの獲得権は取れなかったけど……まぁ、満足よぉ。」
「ははっ、僕もめぐ先輩のお陰で銀姉ちゃんの意外な一面見れたしね。」
「……それは忘れなさいよぉ。JUMにあんな見っとも無い姿見られるのやぁなのよ。」
銀姉ちゃんが少し顔を赤くしてジト目で言う。普段は余裕な銀姉ちゃんもめぐ先輩といると素が出る。
「いいじゃん、何て言うかサ……可愛かった。めぐ先輩に弄られる銀姉ちゃん。意外な一面が見られる
学校祭だったけどさ…なんて言うかそんな感じ。」
今回の学校祭で僕はみんなの意外な一面を見てきた。それは銀姉ちゃんに関しても同じだ。
「ふふっ……そっか。なら、別にいいわぁ。それに、私も普段からJUMになら全部見せてもいいって言ってる
しねぇ。ほらぁ、これとか……いくらでも見せるわよぉ?」
銀姉ちゃんがちょこっとだけ首もとの体操服を伸ばす。その中から胸の谷間と下着が見える。
「ちょ、ちょっと銀姉ちゃん!?」
「えへっ、JUMのエッチぃ~。でも、私の気持ちは一緒よぉ。JUMなら……いいんだから…」
銀姉ちゃんはコツンと僕の胸にオデコを当てる。そして、しばらくして手を離した。
「銀姉ちゃん?」
「ほら、他の姉妹とも踊っていらっしゃぁい。私は今日はもういいからぁ。ね?」
銀姉ちゃんが言う。僕は言われるままに姉ちゃん達を探して歩いた。


「あ、JUM!カナとも踊りましょ?」
「カナ姉ちゃん。うん、踊ろうか。」
僕は銀姉ちゃんに習った通りにカナ姉ちゃんと手を握り、腰に手を回す。そして、カナ姉ちゃんの小ささを
再認識した。情けない話だが、僕は銀姉ちゃんと背は同じくらいだ。だから、踊りやすかったけどカナ姉ちゃん
とは20cm近く違う。ちょっと踊りにくい。でも、頑張る。
「学校祭、終わっちゃったわね……カナ何時も思うわ。ずっとお祭りが続けばいいのにって……」
カナ姉ちゃんが切なそうに言う。ずっと終わらない祭り。それもいいかも知れない。でも……
「そうだね。でも、僕はこう思うよ。終わらないと次へ進めないってさ。終わるってのは、何かが始まるって
事じゃないかな?ちょっと自分でも何言ってるか分からないけどね。」
「JUM……そうね、そうかもしれないかしら。流石JUMはカナの弟かしら!考え方が素晴らしいわ。」
僕とカナ姉ちゃんは向き合って笑いながら踊る。と、そこに乱入者が現れる。
「こら、チビ金糸雀!JUMを独占するんじゃねぇです!!翠星石と代わりやがれですぅ!」
「うん、いいわよ。JUMとは有意義なお話できて満足かしら~!」
カナ姉ちゃんはそう言って僕の手を離す。そして、そのまま僕は翠姉ちゃんに拉致られた。


「ちゃんとリードしろですよ?」
「はいはい……じゃあ失礼するよ?」
翠姉ちゃんと手を繋ぐ。翠姉ちゃんもギュッと握り返してくる。そのまま僕は逆手を腰に回す。
「ひゃっ……んんっ…ちょっとビックリした…ですぅ。」
「大丈夫?やめとく?」
「や、止めないでいいです…それよりもっと……そのぉ…ギュッてして欲しいです…」
僕は言われるままにギュッと翠姉ちゃんを抱き寄せる。んっ、と翠姉ちゃんの吐息が漏れる。そして、僕らは
そのまま踊りだす。翠姉ちゃんの長い髪が暗闇の中で舞う。翠姉ちゃんのオッドアイに炎が映る。それは、
何だか幻想的な雰囲気だった。翠姉ちゃんは僕の耳元に顔を近づける。翠姉ちゃんの息が当たってこそばゆい。
「正直ホッとしたです……誰もJUMを手に入れれなくて……例え姉妹でも…」
翠姉ちゃんが小さな声でポソッと言う。そして、そのまま翠姉ちゃんは僕の頬に誰にも見えないようにキスを
した。きっとそれは、僕と翠姉ちゃんだけの秘密事。それが終わると、翠姉ちゃんは何時もの調子に戻った。
「JUM、いくら翠星石が可愛いからって近づきすぎですよ!下心見え見えなんでもう踊ってやらんです。
さっさと姉妹のトコに行くですよ。」
翠姉ちゃんは顔を赤くしたまま手を離してプイッと顔を背けて歩いていった。



「JUM君、良かったら僕と踊ってくれないかな?」
次にやってきたのは蒼姉ちゃん。僕は当然蒼姉ちゃんとも踊る。しっかり手を握り、お互いを確かめ合う。
「えへへ~…僕ね、こういうのちょっと憧れだったんだぁ……変かな?」
「変じゃないと思うよ。でも、僕でいいのかなぁ?」
僕が言うと、蒼姉ちゃんは笑う。そして、小さな声で言った。
「JUM君でいいのかなぁ?じゃなくって……僕はJUM君だからいいんだよ。きっと、JUM君じゃなかったら
こんな満ち足りた気持ちにはなれないから……」
蒼姉ちゃんが僕の腰に回した手に力を入れて自分の方に僕を引き寄せる。僕はそのまま引き寄せられて、
蒼姉ちゃんとほぼ密着し、胸の感触を自分の胸で味わう。凄いな、跳ね返るもんなんだ。
「ははっ……蒼姉ちゃんって姉妹で一番乙女だよね。」
「うっ……似合わないかな?」
「ううん、全然似合うよ。ほんと、、可愛いね蒼姉ちゃんは……」
蒼姉ちゃんは顔を赤くしていく。本当にこの人は反応がいちいち可愛いなって思う。
「あぅ…嬉しいけど、その…恥かしい…」
「そうだね、蒼姉ちゃん顔真っ赤だもんね。」
「ち、違うよ!こ、これは……そう、炎が当たって赤く見えてるだけなんだから!」
必死で抗議する蒼姉ちゃん。それが逆効果なのは恥かしくて頭に血が上ってるのか気づいてないらしい。
「あ、でもね……でも、そぉ…本当は凄く嬉しいん…だよ?」
そう言って、僕と蒼姉ちゃんは見詰め合う。何だ、この空気。蒼姉ちゃんはそのままゆっくり目を閉じる。
これってアレですか?全校生徒の前でですか?僕がどうしようか迷って、結局……
「蒼姉ちゃん、それはまた……今度ね…」
僕はそう言ってチョンと唇に指を置いた。蒼姉ちゃんは目を開けると少し残念そうな顔をする。と、そこへ・・・
「いい雰囲気のトコ悪いけれど……蒼星石。そろそろ交代なさい?」
「うわっ!?し、真紅?い、何時からいたの?」
「JUM君、よかったら僕と踊ってくれないかな?辺りからよ。」
それ、最初からじゃん。蒼姉ちゃんは全部見られてた事に気づくと顔を真っ赤にして走り去っていった。
「あら、本当に可愛い子ね。JUMがああ言うのも分かるわ。」
真紅姉ちゃんが逃げる蒼姉ちゃんを見ながら言う。そっか、僕の臭い台詞も聞いてたわけね。
「まぁいいわ。JUM、命令よ。私と踊りなさい。」



「ようやく終わったわね、学校祭。どうだった?」
「そうだなぁ。ありきたりだけど、楽しかったよ。みんなと一緒に文化祭の準備したりさ。」
僕は真紅姉ちゃんと踊りながら話す。真紅姉ちゃんは意外に…いや、案外意外じゃないな。踊りは優雅で
上手かった。踊りなれてると言うか。まぁ、どうせ「当然の嗜みよ。」とか言うんだろうな。
「そうね、私もみんなの色々な一面が見れてなかなか面白かったのだわ。」
意外な一面か。僕はそれで少しだけ真紅姉ちゃんを弄りたくなるネタを思い出した。
「そうだね。例えば真紅姉ちゃんがお化け屋敷で泣いたり、後は真紅姉ちゃんが泣いたり、真紅姉ちゃん
泣いたり……ぐえっ!!」
調子に乗りすぎた。ツインテールでビンタを貰う。真紅姉ちゃんは顔を朱に染めている。
「思い出させないで頂戴。忘れないと力ずくで消去するわよ?」
「ん~、残念だけど忘れられないよ。だってさ……」
僕の悪戯心は収まる気配がない。そっと真紅姉ちゃんの耳に口を近づけてボソッと言った。
「だってさ……泣いた真紅姉ちゃん本当に可愛かったからさ。忘れたら一生の損だよ。」
真紅姉ちゃんの頬が珍しく限界まで真っ赤になってるのが分かる。何か言いたそうに口をパクパクさせてる。
「……まぁ、別にいいわ。二人だけの秘密…というのも悪くないわね。」
真紅姉ちゃん、ごめん。アレの首謀者の銀姉ちゃんとめぐ先輩も知ってるので二人の秘密じゃないです。


「J~UM!!ヒナともおどろ~!」
ヒナ姉ちゃんがガバッと飛びついてくる。何時も思うけどヒナ姉ちゃんジャンプ力すごいよなぁ……僕の背中
まで軽々飛びついてくるんだもんなぁ。
「そういえば、柏葉は?見ないけど。」
「トモエは用事があるって言って帰っちゃったのよ。だから、残念なのよ~。」
僕はそうなんだ、とだけ答える。
「JUMはトモエが好きなの?」
「はっ!?な、何で?」
「う?だって気になるのかなって。ヒナはトモエもJUMも大好きなのよ~!」
満面の笑みで言う。ああ、一般的な『好き』とヒナ姉ちゃんの『好き』は違うんだったな。それなら、『好き』だな。
「そうだね。好き……かな?」
「えへへ~、JUMがトモエ好きだと嬉しいの~。みんな仲良しなのよ。あ、JUM。トモエが伝言なの。
うーとね、『桜田君、アリスはいりませんか?』だって~。何のことだろうね~?」
……『好き』だけど…僕はやっぱり柏葉は理解できません……


「あら、JUM。お手が空いてますか?私と踊りませんか?」
「ん、いいよ。下手だけどね。」
僕はキラ姉ちゃんと踊りだす。炎がキラ姉ちゃんの白い肌を照らす。
「楽しかったですわね。私、たくさん食べれて大満足ですわ。」
「ははっ、キラ姉ちゃんは本当食べるの好きだね。」
「そうですか?普通だと思いますけど?」
あれ、自覚ないのか?余計恐ろしい……
「でもさ、あのパン……ホイップクリームパンだっけ。美味しかったよね、あれ。」
「ええ!大変美味でしたわ。ああ……また何時か食べたいモノですわね。」
キラ姉ちゃんはパンに思いを馳せている。あのパンは前途の通り超人気だ。朝一で並ばないと買えない。
しかし、キラ姉ちゃんは低血圧なせいか、朝が非常に弱い。故に普段は買えないのだ。だったら……
「じゃあさ、僕が起こしてあげるから今度一緒に買いに行こうよ。僕もまた食べたいしさ。」
「JUM……ナイスなアイデアですわ!私、低血圧ですのでその時はJUMのキッスで起こしてくださいね。」
キラ姉ちゃんがニッコリ笑う。いや、それをやると他の姉妹も起きてこなくなりそうなんで……


「JUM……踊ろう……」
最後は薔薇姉ちゃんだ。薔薇姉ちゃんは何時もより随分ニコニコしてる。
「ご機嫌だね、薔薇姉ちゃん。どうしたの?」
「うん?だって……明日はJUMとデートだもん……楽しみ……」
そうだった。でも、それでこんな嬉しそうにしてくれるのは正直凄く嬉しい。
「そっか……じゃあ薔薇姉ちゃんは明日までお祭りかな?」
「うん……明日が一番のお祭り……きっと一番楽しい…JUMと二人っきりだから……」
何だかこっちが恥かしくなる事を言う。こうして、僕の高校初めての学校祭は幕を閉じた。
姉ちゃん達との……そしてクラスの奴らとの思い出と一緒に……
そして、再び僕の日常が始まる。
END

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