「一つ屋根の下 第五十六話 JUMと着替え」



「JUM……お願いがあるの……」
体育祭二日目。午前は適当な競技で終わった。玉入れとか綱引きとかね。というのも、二日目のメインは
午後からの応援合戦だからだろう。昨日の乙女騎馬戦もだが、応援合戦も獲得ポイントは非常に
大きい。ヒナ姉ちゃんと柏葉の1-Bを追って2位のウチのクラスとしては、何としてもいい順位を取りたいトコだ。
「ん?なぁに、薔薇姉ちゃん。」
すで昼食を終え、午後の競技開始時間まで今日も音楽室で時間を潰していたときだった。
「うん……サラシ巻いて欲しいの……」
「サラシ?ああ、応援合戦のだっけ。薔薇姉ちゃんは学ランだもんね。」
「うん…じゃあ、着替えるから巻いてね……よいしょっと。」
「うわ!?ちょ、ちょっとストップ薔薇姉ちゃん!!!」
薔薇姉ちゃんは何を血迷ったかその場で体操服を脱ぎだした。ほっそいお腹と白の下着がチラリと見える。
「?巻いてくれないの?まきますか?まきませんか?」
「いや、そうじゃなくて。何でこの場で脱ぐんだよ!?」
「ん~~………ちらりずむ?」
いや、チラリズム所かモロな気がしますよ薔薇姉ちゃん。と、翠姉ちゃんが話に割り込んでくる。
「とりあえずJUMは音楽室の前で待っておけです。翠星石達も着替えるですから。」
「あ~、そうしとくよ。サラシは誰かに頼んでね。」
僕はそそくさと音楽室から出て、廊下側のドアの前でぼけーっと座って時間を過ごす。
「あれ?JUM君どうしたの?」
ひと、声がかかる。顔を上げればめぐ先輩と柏葉がいた。
「あー、中で応援合戦の着替えしてるから追い出されたの。」
「ははっ、そっかそっかぁ。じゃあ私達は入っていいよね。お邪魔しま~す。」
「私もお邪魔するね。」
めぐ先輩と柏葉はズカズカと中に入り込んでいく。時間にすると10分くらいだったろうか。
「お~い、JUM。入っていいですよぉ?」
中から翠姉ちゃんの声が聞こえた。


ガチャリとドアを開けて僕は音楽室の中に入る。そこは異様な空間だった。
「どうかな……JUM、似合う……?」
薔薇姉ちゃんが上は胸にサラシを巻いて素肌に学ラン。下は学生ズボンといった出で立ちだった。眼帯も外し
髪も微妙にオールバックで珍しくオデコ全開だ。
「へぇ~、カッコいいじゃん薔薇姉ちゃん。あ、でもその学ランはどうしたの?」
「うん……店長のを借りた……」
白崎さんか。果たして白崎さんの学生時代のモノなのか。或いは私物か。そこは気にしないどこう。
「JUM!薔薇しーだけじゃなくって、翠星石にも何か言う事はねーですか?」
翠姉ちゃんも同じく胸にサラシを巻いた素肌ガクランだった。髪型は長い髪をポニーテールにしてある。
中々大胆な変身だ。もっとも、それより驚いたのはその隣の蒼姉ちゃんだが。
「ははっ……やっぱり少し恥ずかしいかも……」
蒼姉ちゃんは学ランではなく、チアの格好だった。短いスカートに上も少し丈が短い服だ。そのせいか、チラチラ
と蒼姉ちゃんのお腹とオヘソが見える。これこそチラリズムって奴だろうか。
「いいじゃぁい、蒼星石。恥ずかしいたってスパッツ穿いてるんでしょぉ?ほれ。」
「うあぁ!?ちょ、ちょっと水銀燈!!??」
体操服のままの銀姉ちゃんが蒼姉ちゃんのスカートをピラリと捲る。おっさんか?この人は。スカートの下からは
黒のスパッツが現れる。
「あー、ビックリした……でも翠姉ちゃんも蒼姉ちゃんも似合ってるよ。可愛い。」
「ま、まぁその辺で許してやるですぅ。そのぉ……ほ、惚れてもいいですよ?」
「えへへ~、有難うJUM君。下穿いてても恥ずかしいけどね。」
二人とも顔を赤くしながら言う。そんな顔されると僕も何だか恥ずかしい。
「あら、私もちゃんと穿いてますわよ?」
同じくチアの格好をしたキラ姉ちゃんが自分でスカートを持ち上げる。そこには白のスパッ……ん?
「きらきー……パンツ見えてるよ……」
「あら、私ったら。穿き忘れてましたわ♪」
あー……やっぱりそうなんだ。せめて本番では穿き忘れないで下さい。



「真紅姉ちゃんもチアやるんだね。ちょっと以外。」
「そ、そうかしら?」
真紅姉ちゃんは赤のチア服に身を包んでいた。正直な話、真紅姉ちゃんがチアをやるのは意外だ。
普段からあまり肌の露出を好まない真紅姉ちゃんだ。チア服も抵抗があるような気がする。
「でも、やっぱり恥ずかしいのだわ。あまりジロジロ見られると……」
「大丈夫よぉ。真紅の貧相な体なんて見るとマニアだけだからぁ。」
銀姉ちゃんが相も変わらず喧嘩を売る。真紅姉ちゃんの目がキッと銀姉ちゃんを睨む。しかし、ここで意外な
人物が現れた。
「銀ちゃん……真紅苛めたらダメ……」
それは薔薇姉ちゃんだった。一体どういう風の吹き回しだろう。
「薔薇水晶……」
「真紅……私達が間違ってたよ……真紅は苦しんだよね……」
ん?何か話の展開がつかめてこないんだけど。
「サラシまいて分かったの……圧迫されて貧乳って苦しいんだなって……」
「そういえばそうですぅ。翠星石もさっきから胸が苦しいですよ。真紅はこんな苦しみを常に味わってるですね。」
すいません、お二人さん。それは貧乳のせいで苦しいんじゃなくて、サラシで圧迫してるからでは?
銀姉ちゃんはゲラゲラ大爆笑している。正直、僕も笑いたい。でも笑えばきっと死ねる。
「ごめんね、真紅。もう真紅の貧乳で笑ったりしないよ……」
「すまんですぅ、真紅。姉として気づかなかったのが情けないですぅ。」
プツン!!……そんな音が聞こえた気がした。
「ふ………ふふふ……いい加減にするのは貴方達よーーー!!!!!」
「きゃーー!何で怒るですかぁ!?」
「自分の胸に手を当てて聞いてみるといいのだわ!!」
鬼と化した真紅姉ちゃんが薔薇姉ちゃんと翠姉ちゃんを追いかける。ああ、騒がしい人たちだなぁ。
「J~~~M!!ヒナも見て見て~~!!」
と、後ろからヒナ姉ちゃんが抱き付いてきた。


チア服だな、これは。生地が薄いから胸の感触が直に……や~らかいなぁ……いや、そうでもなくてさ。
「えへへ~、ヒナもチアやるのよ~。」
後ろから僕におぶさっていたヒナ姉ちゃんが僕の前にやってくる。ピンクのチア服を着込んでおり120%
可愛さを強調してある。実際、相当に可愛いと思う。金色の髪が相性良すぎて素敵だ。
「トモエもカッコいいのよ~?ね、トモエ~!」
柏葉の方を向く。柏葉は学ランで手には白い手袋を。さらに、地面に届くかというほどのハチマキをしており、
さらにオマケに帯刀していた。何時の時代の番長ですか?と聞きたくなる。
「私は雛苺みたいに可愛いのはちょっと似合わないからね。」
柏葉はそんな事を言うが、頭の中で想像するとなかなか似合ってる気もする。ちなみに、柏葉も
サラシに素肌学ランだ。ほっそりとしたお腹にドキドキしてしまう。
「んで……銀姉ちゃんとカナ姉ちゃんは出ないの?」
僕は変わらず体操服のままの長女と次女に向かって言う。
「やぁよ、ダルイものぉ。」
銀姉ちゃんは簡潔にそう言った。理由が簡潔すぎてリアクションに困るんですが。
「カナは部活やクラスので忙しくって……JUMと同じ理由かしら~。」
ああ、それは実に分かりやすい。実際僕は応援合戦出たくないわけじゃなくて、練習する暇がなかっただけだし。
『まもなく応援合戦を行います。全校生徒はグラウンドへ集合して下さい。』
スピーカーから声が聞こえてくる。
「それじゃあ行きましょうかぁ。あ、JUM~。一緒に応援合戦見ましょ?」
「カナも一緒に見るかしら~。」
僕らはグラウンドへ向かう。そして、僕、銀姉ちゃん、カナ姉ちゃん、めぐ先輩と4人で最前列に座る。
「ふふっ、姉妹がどんな演舞するか楽しみねぇ~。きらきー、ちゃんとスパッツ穿いたかしらぁ。」
銀姉ちゃんが言う。すっかり忘れてた。間違えてもスパッツ穿いててください、キラ姉ちゃん。
END

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最終更新:2006年09月25日 13:48