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学校
世界へ飛び立つ小鳥の巣
羽を拵える小鳥の巣
潜在的な恐怖を掘り起こすトラウマの象徴
這い、忍び寄る闇の不定形
嘆きを封じ込めた鉄の檻
虚栄とウラミを秘めた虚
閉塞された空間に収められた思念が絡み合い溶け合う、そんな場所
しかし今は、そんなモノさえ感じさせる事のない、ただのがらんどうの函


人口の光で掻き消された星々の光
何千、何万、何億もの昔に放たれた輝き
弱弱しく産声をあげ、その存在を謳う証
命宿すもの達をはぐくむ恵みの輝き
命あるものを容赦なく刈りとる灼熱の暴虐
超質量を燃やし、生命を謳歌し、賛歌を施し、やがて消える、モノ
しかし今は、地上の光に照らされ闇に沈んだ、ただの朧な光

少女
人ならざる、魔を秘め、永窮を生きる乙女
人なりて、剣を執りて、現在を歩む乙女
阻む敵を討ち取り、薙ぎ払い、血風の吹き荒む道を征く者
猛き面影を信仰し、勇ましく、血筋の指し示す道を征く者
凛々しき姿は心を覆う幾重の鋼
貫く意志は身を突き動かす硬き矛
しかし今は、己が識らざる己を識らざる矛盾のパラドクス

僕と真紅の目の前、昼間の少女が待ち構える。
月夜に照らされた身姿、胴着袴は淡く、しかし闘気、鬼気を帯びる鮮烈。
と、同時に隣に控える男の姿も目に入る。
女性のような中性的な顔立ち、しかし、その瞳は雄々しく鋭く。
「待たせたのだわ。」
校舎を背にたたずむ少女に紅のドレスを羽織った真紅の声がかけられる。
「昼間の決着をつけましょう。もちろん、一対一、正々堂々と。」
「ええ、それは私も願う事よ。貴女が卑怯な手を使わない限りは。」
見据える。
「卑怯?それは私が言う事なのだわ。」
「柏葉の者は卑怯な手は使わないわ。隣にいる彼もただ見届けに来ただけ。」
つ、と向けられる視線。
「ええ、僕はお嬢様の闘いの見届け人です。そちらの彼もそうでしょう?
 お互い良い闘いができる事を期待しますよ、はい。」
微笑、邪気も何もないただそれだけのモノ。

そして、闘気が迸る。


「決着、昼間のような無様は決して晒しはしないのだわ。」
「もう一度、完膚なきまでに………斃す。」
僕と彼を結ぶ視線と死線。真紅と少女が構えを執る。
少女、斜め後方、それは剣術と思しき、しかし剣道のどの型とも明らかに違った構え。
真紅、腰を沈め、それは古武術と思しき、しかしどの武術に類する事なき構え。
大気、覇気、怒気、霊気、鬼気、精気、平静、昂奮
剣、拳、刃、掌、脚、腕、手、体、瞳、呼吸、血流
全が集中し、研ぎ澄まされる。
微動だにせず、睨み合う二人。
気圧されるその圧力に自然と僕の額に汗がにじむ。
「ふふっ。」
しかし優男の方は平然とその二人を眺めている。
お互い黙して語らず、お互いを見つめ合う。
世界の音が止まったかのような錯覚、僕の全神経が二人に向かう。
刹那が過ぎ刹那
また刹那が過ぎ刹那
そして、刹那の刹那


「「――――ッ!!!」」


動ッ、二人の身体が疾走った。真紅の赤、少女の白黒が月夜に舞う。
間合い、それは伍、死、参、弐、壱と狭まり、零となる。
「哉ァ!!」
斬、斬、斬
斜、斜、斜
初撃、少女の斬撃、淡く光る木刀。真紅を討ち臥すための連斬打。
駆ける刃の疾走、弧を描き全て真紅に吸い込まれていく。
「ッ。」
回避、剣撃の閃と閃の合間を縫い、真紅の肢体が舞う。
月光の白銀に真紅の金糸が揺れる。
綺麗な、そして苛酷な舞。
「疾ッ!」
次撃、真紅の脚撃、描かれる円軌道。少女を打ちのめすためのしなやかな弓。
廻る紅、追う一撃、しかし、それは少女の木刀に防がれる。
「さすが……ね。」
「貴女も……」

二者共にその場を弾ける様に飛び去り、また間合い。
「すごい……」
僕は無意識的に呟いていた。僕と年の変わらない少女が真紅相手に
一歩も退かずに戦っている、それも生身で。
一体どれほどの研鑽を積めばこんな闘いができるというのだろう。
正直、ゾっとしない光景だった。
「刃ァァァァ…………」
「哮ォォォォ…………」
二人の気合が高まる。見えない鬼圧が僕にも感じられる。
静から動へ、二人の戦いがさらに苛烈さを増してぶつかり合う。

閃、閃、撃
蹴、蹴、殴
斬、斬、斬
拳、拳、拳

紙一重と紙一重の応酬は武闘であり舞踏。呑まれる様に食い入ってしまう。

「ッ!」
「ッッ。」
再び、間合い。真紅と少女、それぞれの身体には微細な傷が生じていた。
それは擦れた傷であり、斬れた傷であり。
「昼間より良い動きをしてるね……でも、どうして魔力を使わないの?
 貴女の傍にはミーディアムがいるんでしょ?」
「ええ、いるわ。でも………魔力を使わずとも貴女に勝つ事はできるのだわ。」
「………そう。でも、私はこのエンチャントを施した木刀を使うわ。
 貴女を斃すのに遠慮も、慈悲も………持たないッ!!」
轟ッ、少女の躯が奔る。
真紅に向かって駆ける。
奔る、疾走る、走る。
「ならば私も遠慮はしないッ!!」
疾ッ、真紅の躯が奔る。
少女に向かって駆ける。
奔る、疾走る、走る。
撃、撃、斬、撃、拳、撃。
一定テンポで撃ち合う二人の動きは途切れる事はない。
「羅ァァァァァ!!」
「刃ァァァァァ!!」

牙ッ、ぶつかりあい、三度生じる間合い。それが意味するところ。
僕に流れ込む真紅の意識、理解する。
終撃の一撃の時。
「(昼間とは……違う。気後れも怯みも何もない。だけど、このまま続けても
  意味はない。次で、決める。)」
「(とても頭がスッキリしてるのだわ。これも……って何を考えてるの私は?
  まったく……でも、次で、決める。)」
最初と同じ構え。しかし、違う構え。
お互いの全力を込めた一撃と一撃の構え。
「ほう……。」
男の方もそれを感じとったみたいで微かに眉を動かした。
「長々とやるのは性に合わないのだわ。」
「ええ、このまま続けても同じ事の繰り返しだものね。」
二人の言葉が同じ結論を紡ぐ。

「「次で、終わらせましょう。」」

真紅の身体が大地を大きく踏みしめる。天と地の一体化。魔術の落とし子
らしからぬ、まさしく武人のそれの構え。
少女の上体が空気を斬り大きく捻られる。空間の固定。僕とそう変わらない
年であるのに達人のそれを匂わす構えと覇気。
昂まる鬼気、昂まる平静、空気が痛いほどに澄んでいく。
永遠とも思える刹那が過ぎて
一瞬とも思える刹那が過ぎて
そして、時が動き出す。

「――――柏葉剣戯『葉枯』。」
「――――絆・人呼ビシ。」


間合い零、少女の斬撃、真紅の拳撃が衝突する。
その瞬間は僕には見えなかった。いや、理解できなかった、速すぎた。
そして、四度生じた間合い。背を向け合う二人。
「すごい、わね………貴女。」
「ええ、貴女も………ね。」
乱れた呼吸、二人が向かい合う。
そして。


「私の……負け、かな。」


少女の身体が揺れ、膝をついた。しかし、微笑みは優しい。
「ふふ、昼間のままだと思って少し油断しちゃったかな……つつ。」
「そうでもないのだわ。私の力の方がやはり強かった、それだけよ。」
おいおい、相手が褒めてるのに。
「ええ、そうね。でも、貴女と戦ってみて解った。貴女、まだ目覚めたばかりなのね。」
「…………良くわかったわね。」
少女が少し深呼吸をして真紅と僕を見る。
「ええ知ってるのは当然。私も………ミーディアムだから。」
「やっぱ言っちゃいましたか。」
「……やはりね。」
「なッ!?」
三者三様の反応。驚いた、僕と真紅以外のローゼンメイデンの関係者が
今、目の前に。
「おい真紅。僕にも解るようにせつめ―――ん?」
光った。僕の背後、校舎が、光った。
そして、次に感じたのは、
「トモエェェーーーーーー!!!!!」
「げぼふぉらばぎゃあぁ!!??」
上からかかった殺人的重力、クビが180度ほどアナザー方向に曲がった感覚、
小さい女の子の声だった。

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