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第二話 「早き再会」


待ちに待ったなんて気持ちは無く
面倒くさい事に今日は卒業式だ。
面倒くさいというのは何もかもだが。
卒業式の時に来て行ったのと同じ堅苦しい服を着る。
着たくは無いがしょうがないだろう。
それにしても体がだるい。
此処の所毎日寝る以外の生活をしてなく
植物人間にも等しい状態だったので朝起きるのが
いつもの数倍のダルさに感じられる。
ずっと寝れたらいいのにな。
そんな廃人まがいの事を考えながら靴を履く。
少々きつい、買いに行かないといけないな……。
紐を結び終えると立ち上がりドアを開ける。
うおっまぶし。
日の光を久しぶりに浴びたせいで思わずひるんでしまう。
相当眩しいな……。
かと言ってサングラスは柄が悪そうに見えるから
かけるのはあまり好きではない。
我慢するしか無いな。
諦めがつくとドアを閉めて鍵を閉める。
春なのにやけに暑いんじゃないかなどと
色んな事が思い浮かんだが考えるのをやめた。



大学まではバスに乗って10分ほどで着く。
何かに乗るというのが高校の時と違う所だな。
10分ほど待ってようやくバスが来て人が中に流れこむ。
列の最初の方に並んでいたのでどうにか座る事が出来た。
幸運だったな。
やがて少しするとバスが動き出す。
早いと言えるスピードじゃないがバスは大学の方へと向かっていった。
暇なのでバスの外の景色を見る。
特に見て何か思う訳じゃないのだが何もしないよりはマシだ。
ただずーっと眺めている。
信号なのかバスが商店街の近くの所で止まる。
朝から活気がある商店街の方を見ると何か風船を配ってる人が居る。
バイトなのだろう、こんな暑い中よく頑張る。
そんな事を思ってたら配ってる人の顔が見える。
!!!
こういうバイトじゃ大体気ぐるみなど着ている場合が多いだろう。
この風船配りも例外では無く気ぐるみを被っていた。
それは見覚えのある兎の気ぐるみ。
卒業式の日に会ったあの兎だった。
驚いて窓を開けようとしたがこのバスの窓はどうやら
開かないようになっているようだ。
全く開かないようにしてメリットがこれといってある訳でないのに。
そんな事を考えて苛立ってると兎がこっちを向く。
少しして僕がいるのに気付いたのか手を振ってきた。
一体何なんだあいつは?
そんな事を考える僕をよそにバスは走り出す。
後ろで同じ大学に行くだろうと考えられる女二人が兎に手を振っていた。
兎が見えなくなったせいなのか手を振るのをやめたようだ。
無邪気な奴だな、そう思って顔を見る。
一人は金髪でロールがかかっていて
目の色も何か違う。外国人なのだろうか?
幼さがかかった顔で綺麗より可愛いと言える。
もう一方は髪に花の飾りをつけて
こちらも何処か幼さがかかっていて可愛く思える。
ちなみに可愛いと言ってるがロリコンって訳ではない。
女には特に興味は無い。
僕が彼女らを見てると気付いたのか声をかけられる。

「ジュンかしらー!」

普段誰とも口を聞かない僕に女に喋りかけられる覚えなど無い。
と思ったがこの声に何か覚えがあったので記憶を探る。
ここ最近は誰とも喋ったりなんかしてないと思ったけど・・・。
そういや最近電話したな。あ……。

「……金糸雀?」

顔は自分の知っている頃の顔とかけ離れてるが
声は間違いなく電話で聞いた金糸雀だ。
もしかして同じ大学なのか……?
「偶然かしらー!」
「確かにな、何処に行くんだ?」
「此処から5分ほどした所の大学かしらー!」

此処から5分ほどした所の大学なんて一つしかない。

「ジュンももしかして同じ大学かしら?」
「……どうやらそのようだ、こんな偶然があり得るものなのかな?」
「“運命の必然”かしらー!」
「必然と言うより運命の悪戯だな……」

どうやら居るかどうかもわからない神様は
人が困惑するのを見るのがお好きなようだ。
まぁ……特に再会したからといって
損するわけじゃない、むしろ昔の友達だったこいつと一緒に居れば
昔の僕に戻れるかもしれないからな……。

「そういえばそっちは誰なんだ?」
「高校の時の友達で雛苺って言うかしらー!」
「うゆ、雛苺なの、よろしくなのー!」

金糸雀と同じで元気そうな女だ。
しかし日本語を喋れるって事は……。

「日本人なのか?日本語を喋っているが」
「うゆー、雛はハーフなのー」
「そうなのかしらー」
成る程、ハーフな訳か。
ハーフというのは初めて見るが
ここまで外国人っぽいハーフというのも珍しいものだろう。
そんな風に喋りあってるとバスが止まる。
窓を見てみると大学が見えるので
降りなければと思い席を立つ。
金糸雀達は元々席の前で立っていたが僕の事を
待ってるのか降りようとはしなかった。

「待ってくれたのか?」
「そうかしらー。」
「……ありがとう。」

僕の事を待ってくれてるとは。
相変わらず優しい奴だな。
そんな事を思いつつバスを降りる。
使い慣れない定期を使い段差を下る。
後から二人もついてくる。
大学を見回してみる。
桜の木が所々少し生えていている。
それは綺麗だと思うのだが生憎キャンパスが少しボロ目だ。
僕達はそんなボロ目のキャンパスへと向かっていった。
入学の挨拶は学校長の梅岡という奴が

「学校生活ってのに友情というのは大切だと思うんだ。
 だから皆友達を一杯作るようにねっ!
 以上学校長の梅岡だよっ!」

寒気がするような挨拶をしたのだが
長い挨拶は頭に入らんという事もわかってか
短く尚且つあんたは何歳だとも言える事を言っていた。
話を短くまとめるのは良いが言ってることが幼稚園の先生レベルぐらいだ。
まぁそんな事はどうでもいい。
この日は結局講義が無くそのまま家へと帰る事になった。
さて、帰ってどうするか。

「ジュンー!一緒に遊びに行くかしらー!」

などと思ってたら後ろから声がかけられた。
金糸雀だろうな、しかし何処に遊びに行く気だろう。

「何処に行くんd・・。」

言おうと思い振り返ると金糸雀の頭突きが見事僕にクリーンヒットする。
正直かなり痛い。
威力については称賛するが顔を近付け過ぎないでくれ、危ない。
立ち上がり金糸雀の方を向いてみると
どうやら金糸雀も同じだけのダメージを負っているようだ。
何をしているやら。
「痛いかしら・・・。」

おでこを押さえて涙を目に浮かべてる。
僕も泣きそうだ。
が、それは言わない。

「大丈夫か?」
「じゃないかしら・・・。おぶって欲しいかしら・・・」
「そんな事が言えるようなら無事だろな」

そう言いながら手を差し出すと
金糸雀は手をとって立ち上がる。
そして僕が歩き始めるとおでこを押さえながら歩き出した。
ホント相変わらずだな。
こういうドジっぷりは。
昔からよくカラスに餌をあげるとか言われて
自分が食べられそうになったりと色々ドジな所がある。
だけど憎めないのが金糸雀だ。

「そういえば何処に行くんだ?」
「何処でも良いかしらー、喫茶店でも行くかしらー。」
「そうしようか、……じゃあ商店街の方まで歩いていくか。」
「そうするかしらー。」
商店街の方にはさっきの兎がいた筈。
もしかしたらまた会えるかもしれないし
行ってみようと思った。
それにしてもこんなに退屈しないのは久しぶりだな……。
金糸雀に感謝しよう。

「そういえば雛苺は?」
「あの子の友達とキャンパスを見回ってるかしらー。
 それにサークルを探しているかしらー」

成る程、サーークルか。
大学じゃ普通は入るのだろうけど
入るなんて考えた事も無かった。
金糸雀も何か入るのだろうか?

「何処か金糸雀も入るのか?」
「考えてないかしらー、何か良いのがあればジュンも一緒に入るかしらー。」
「まぁいいのがあればな」

まぁそんなに興味沸くのなんて早々無い。
入る事も無かろう。
そんな事を考えてると商店街に着く。
見てみるとまだ兎が風船を配っていた。
頑張る人だな。

「……あなたは何してるんです?」
「見て分かるでしょう?生きる為に働いてるのですよ。
 賃が無ければこの世は生きれませんからね」
うん、間違いない。
間違いなく卒業式の時にあった兎だ。
ほんと何考えてるかわからないな。

「あなた達こそ恋人同士で何してるのです?」
「こ、恋人じゃないですが……な、金糸雀?」

いや何で笑ってる?

「何者なんだ……?あんたは。」
「はてはて愚問ですな、強いていうなら道化に近付いた人の子でしょうか?
 私はあなた達、あなた達は私、つまりそう言う事ですよ。」
「全く分からん。」
「でしょうね、今のあなたでは真理に辿り着けない。
 成長しなさい、いずれ分かるでしょう・・・。
 まぁ道化はお邪魔でしょう。
 私は別の所にでも行きましょう。
 お二人さん御機嫌よう」

そう言うと兎は去っていった。
ホントに何て奴だ。
「ホント変な奴だな……」
「けど悪い人には見えないかしらー。」
「まぁそれもそうだな、変人だが変態では無さそうだ。」
「ふふ、そうかしらー」

そうやって金糸雀は笑いながら喋りかけてる。
楽しいのだろうか。
そう言えば自分は笑っているのだろうか?
楽しいのだろうか?

「何考えてるかしらー?」
「いや、何でもない。早くどっかに行こうか。」

そう言うと僕は喫茶店の方にと向かっていった。
僕は、一体どうなんだろう?
楽しいのだろうか?
あの兎の中が読めないと思ったが自分の中が一番わからない。
……まぁゆっくり考えよう。
今日はひとまず金糸雀と一緒に適当に色々行こう。
楽しむとか何も考えずに暇を潰そう。
出来るなら金糸雀を楽しませて。
僕は喫茶店のドアを開けながらそう思った。
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