「一つ屋根の下 第四十五話 JUMとオープニングセレモニー」

 

 

「いよいよ、今日から学校祭ねぇ~。」
学校祭一日目の朝、銀姉ちゃんが言う。ああ、ようやくって感じだなぁ。
「そういえば、姉ちゃん達アリスゲームっての出るんだよね?薔薇姉ちゃんと銀姉ちゃんが出るの?」
先日、べジータが言ってた事を思い出す。アリスゲームは学校祭のオープニングセレモニーの一つで、今日
あったはずだ。まぁ、ミスコンみたいなのに、真紅姉ちゃんや蒼姉ちゃんが出るとも思えない。
「……ごめん、僕も出る。というか、姉妹はみんな出る……」
ほらね、翠姉ちゃん辺りも恥ずかしがりだから……って…えええええ!!!??
「ちょ、まっ!!みんな出るって!?」
「そうなのだわ。私も出るわ。何せ……アリスの称号を手に入れたものには……もれなくJUMが付いて来る
のだもの。アリスゲームに出なければ姉妹に好き放題にされるJUMを見るだけなのだわ。」
……ええっと?もしかして、今回もまた僕を景品に?
「まぁ、一日だけだけどねぇ。それでも、一日あればJUMを完全に自分のものに出来るものねぇ。」
恐らく今回の扇動者がニヤリと笑いながら言う。
「そ、そんなのは僕は聞いてない……」
「うん……ギリギリまで言わないって……みんなで約束したから…言ってないよ…」
どうして妙なところで団結するかなぁ?
「えっと…僕に権利は?」
「ないかしらー!あ、姉妹がアリスになれなかった時に限りJUMは何もないかしら。そんな事はないだろうけど…」
うん、確かにないだろうなぁ……父さん、母さん。もしかしたら、案外早いうちに孫が見れるかもしれません。

 

 

 

さて、そんな鬱な僕も今は体育館の椅子に座っている。そう、学校祭のオープニングセレモニーだ。
午前中も丸々使ってアリスゲームや、音楽部の演奏などをやるとか。お?壇上に校長が……
「おほん、おはよう諸君。遂に君達の待ち望んだ学校祭がはじまる…堅い話は無しにして早速始めようか。
まずは、我が校伝統のアリスゲームからだ!それでは、司会のべジータ君。よろしく頼む。」
お、本当に話が短い。話の分かる校長だ。体育館のライトが消え、舞台にパッとライトが当たる。すると、
マイクを持ったべジータがそこにはいた。
「……最強のアリスを見たいかーーーーーーー!!!!」
『オオオオオーーーーーーーーー!!!!』
体育館が揺れるくらいの歓声が聞こえる。
「俺もだ……俺もだみんな……全選手入場!!!」
どっかのトーナメントみたいな展開だな、これ。ベジータの紹介と共に、アリス候補が一人ずつ出てくる。
「心臓病でも生きていたぁ!その歌声にさらなる磨きをかけ、歌姫!!3-E、柿崎めぐだぁあああ!!」
トップバッターはめぐ先輩だ。ライトに先輩の鮮やかな黒髪が映える。そういえば、歌が上手いとか何とか。
「真のツンデレを知らしめたい!!2-C、翠星石だああああ!!!」
いや、翠姉ちゃんは多分自覚ないし。べジータが紹介文考えてたら張っ倒されるな。
「フードファイトは全階級制覇なら、アリスゲームも制覇。アリスは私のものだ。1-C、雪華綺晶だああ!!」
うん、理屈はメチャクチャだよね、それ。フードファイトとアリス関係なくないか?
「全アリス候補のベスト・萌えは僕の中にある!僕っ子の神様が来た!!2-C、蒼星石だあああ!!!」
うわ、ベジータの趣味入りまくり。蒼姉ちゃん、舞台で赤くなりすぎ。
「策なら絶対に敗けん!カナの策みせたる!!策士、3-B金糸雀だあああ!!!」
……カナ姉ちゃん、投票に何か策を弄すんだろうか……やりそうだ。景品が景品なだけに。
「バーリ・トゥード(何でもあり)ならこいつが怖い!!ピュアガール、1-B、雛苺だあああ!!!」
まぁ、確かにある意味ヒナ姉ちゃんは怖いね。何しでかすか分からないし……

 

 

「冥土の土産にアリスとはよく言ったもの!老婆の魅力が今、舞台で爆発する!家庭科教師、柴崎マツだ!」
ええええええ!!?アリス候補って何でもありか?
「萌えさせたいからここまで来たっ!頭の中は一切不明!ラプラスの看板メイド、1-D、薔薇水晶だあ!!」
あー、確かに薔薇姉ちゃんて何考えてるか分からないもんね。
「目元がエロォォォォォイ!!説明不要!クールな目付き、左目下の泣き黒子!1-B、柏葉巴だあああ!」
いや、説明不要って思いっきり説明してるじゃん。何か、ツッコミ疲れてきた……
「クラスの勧めで舞台へ来たっ!1-D、桑田由奈だあああ!!!」
お、桑田さんだ。しかし、この面子でも見劣りしないのって凄いよなぁ。
「生徒の前なら僕はいつでも現役だ!燃える教師、梅岡だああ!!男なのに登場だ!」
……………もういいよ、うん……アリスってその程度なんだね…
「誇り高さはどーしたっ!アリスへの炎未だ消えず!アメもムチも思いのまま!1-A、真紅だあああ!!」
真紅姉ちゃんはアメとムチの使い分けが上手いよなぁ……べジータは何で知ってるんだろう……
「特に理由はない!みっちゃんに萌えるのは当たり前!年齢は内緒だ!アリス高校OG、草笛みつだ!!」
あー、何かさっきからキャーキャー言いながらカメラ撮ってる人が居ると思えば……元気だな…
「美しきアリスが帰ってきたっ!どこへ行っていたんだ!アリスッ!俺たちは君を待っていた!水銀燈だああ!」
最後に、銀姉ちゃんが出てくる。それと同時に大きな歓声が沸きあがる。
『ありがとおおおお!!!最高だーーーーーー!!!』
で……アリス候補は出揃ったけど、どうやってアリス決めるんだ?
「さて、今回出揃ったアリス候補は14人!この中から諸君らの投票でアリスを決める!投票最終受付
は明後日の12時。それまでに、文化祭内で彼女らの行動を見て、アリスにもっとも相応しいと思う候補に
票を投じてくれ!!アリスは我が校の伝統!間違ってもふざけて投票しないように!」
なら、二人ほど初めから除外しとけよ。特に男の方……
「それじゃあ、セレモニーだ!音楽部の演奏を聴いてくれ!!」
べジータが候補を退場させ、次に進める。ああ、カナ姉ちゃんは残ったままだな。

 

 

「ただいま……」
音楽部の演奏の最中に、薔薇姉ちゃんが帰ってくる。
「おかえり。緊張した?」
「うん、少しだけ……蒼星石も顔真っ赤でバクバクしてたよ……」
何となく想像できるな。蒼姉ちゃんは紹介文も恥ずかしかったしね。舞台の前でみっちゃんさんがキャーキャー
言いながらカナ姉ちゃんの晴れ姿を撮り捲ってる。元気だなぁ、あの人。
「みなさん、聴いてくれて有難うかしら!さて、最後に音楽部とアリス高校の歌姫のコラボ、いっちゃうかしら。
めぐ、よろしくお願いかしらー!それじゃあ……聴いてください…『瞬』……」
カナ姉ちゃんにライトが当たり、喋ったと思えば今度は真っ暗になる。そして、再びライトが当たる。
そこに居たのはめぐ先輩だった。舞台衣装なんだろうか。制服ではない。
「♪夢は風 光導く 空と蜘蛛を超えてゆく あなたの声 響け ♪」
静かに音楽と歌声が体育館内に響いていく。少し騒がしかった体育館が一瞬で静まり返る。
みんな、演奏と歌に酔いしれていた。薔薇姉ちゃんが隣で小さく体を揺らしている。
「♪ 瞬の内に込めて すがる気持ち捨てて 全て思い繋げ ♪」
静かに曲が終わる。めぐ先輩が舞台でペコリと頭を下げる。すると、怒涛の歓声があがった!!
「……綺麗な歌声だったね……凄い…」
薔薇姉ちゃんが隣でボソリと言う。成る程、こんな感じでアリス決まっていくわけか。
聞こえる声は、めぐ先輩とカナ姉ちゃんに入れようとか、そんな声ばかりだった。
「素晴らしい演奏だったな!この演奏でオープニングセレモニーは終了だ!みんあ教室に戻り、クラスの
出し物の準備をして欲しい。それじゃあ、アリスゲームの結果発表で会おうぜ!!」
べジータが爽やかに決める。さて、こっからは僕等の出番だな。

 

 

「おい、その看板もうちょい傾けて!!」
「女子が制服に着替えるから男子は廊下出てー!」
「そろそろ調理始めるか。一般客もそろそろ入ってくるぞ!!」
教室が慌しい。とりあえず、僕の店番は今日はない。午後からは自由に回れるわけだ。
「……JUM……一緒に回りたいけど…残念…」
制服に着替えた薔薇姉ちゃんが出てくる。自分で言うのも何だが、制服は良い出来だ。
薔薇姉ちゃんは看板メイドって事で、今日は全く動けない。
「うん、でも明日や明後日もあるしさ。そしたら、一緒に回ろうよ。」
「うん……約束……」
薔薇姉ちゃんが納得したように店に戻っていく。さて、僕は回ろうかな……そう思ってると後ろから制服の裾
を引っ張られた。
「JUM、貴方暇そうね?」
目線を少し下げると金髪のツインテールが出てきた。真紅姉ちゃんだ。
「うん、僕は今日は当番じゃないしね。」
「そう、なら私と回りましょう。人が多すぎるから主人を護衛するのも下僕の役目でしょう?」
有無を言わさず僕を引っ張っていく真紅姉ちゃん。
「はいはい、分かりましたよお姫様。それじゃあ、適当に回ろうか。」
僕が歩き出そうとする。しかし、何故か真紅姉ちゃんは着いてこない。
「真紅姉ちゃん?どうしたの?」
「JUM……貴方が迷子にならないように手を繋いであげるのだわ。有難く思いなさい。」
真紅姉ちゃんがスッと小さい手を差し出してくる。僕はプッと笑うとその手を握った。
「よし、じゃあ行こうか真紅姉ちゃん。」
僕と真紅姉ちゃんが手を繋いで歩く。さて、どこから行こうかな……
END

 

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最終更新:2021年05月26日 18:47