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 其処には、ただ。硝子をモチーフとした絵が描かれている。
 透明という虚無。何もない様ですら、絵で"描ききる"ことは出来る。
 この硝子容器は――ルネ・ラリックがデザインしたものだろうか?
 勿論、ラリックのデザインした硝子細工の実物を、私は見たことがない。けれど、それ
こそ何かを描く為の資料は世の中には溢れているし。彼がフランス生まれのデザイナーで
あることを考えると。……其処に惹かれたとするならば、彼女らしいといえば彼女らしい。

 虚無。ひとつの虚無を現すのならば、それこそ私という存在そのものは『それにもっと
もらしい』。本当に、もっともらしいことではないだろうか?

 交通事故……か。彼が言っていた。雛苺の両親は、交通事故で亡くなったと。彼女の両
親が"そう"なったと言うのなら、それはすなわち。私の両親も、そうして失われていった
ということになるのだろう。

 私は多分、在ってはいけない存在なのではないかと、たまに思う。
 けれど。その感情をかたちにしてしまったのならば――多分、それでおしまい。
 大体が、おおまかに――"終わってしまう"から、私はそれを言葉にすることを、きっと
しない。
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