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第二話 「恐怖」


気色悪い奴ー。
変態みたいだな。
そんな奴だったんだ。

自分への罵倒の言葉が響いてくる。

何で生きてるの?
迷惑だよ、居るだけで。
消えてよ。

心に傷が入っていってた凶器のような言葉。

何でこんな事言うかって?楽しいからだよ。
やめて欲しい?嫌だよ。楽しい事はやめたくないだろ。
しょうがないよ、君は遊び道具なんだから。

悲しみと恐怖が湧いてくる。

遊ばれるのが嫌だって?
色々言われるのが嫌だって?

じゃあ死ねよ。
目が覚める。
嫌な目覚めだ、汗でシャツがぐっしょり濡れていて
何か心に嫌悪感が広がる。
嫌な夢か何か見たようだが覚えてはいない。
覚えてるのは悪夢だったという事。
夢を写すのは“記憶”、つまりは“思い出”だという。
悪夢を見るというのはつまり嫌な思い出が写されたという事か?
自分の中で嫌な思い出というと真っ先に思い浮かぶは
学校に通っていた時の事。
その頃の事でも夢見たのか?
夢を思い出そうとするがやっぱりやめた。
考えただけで昔の事は吐き気がしそうになる。
ぐしょ濡れとなったパジャマの上を脱いで
一階へと降り洗濯機にへと放り込む。
洗濯機に入ったのを確認した後リビングにへと入り
冷蔵庫の中から茶を取り出しコップに入れて
早い勢いで喉に流し込む。
飲み終わったコップをテーブルに叩きつけ
荒くなった息を胸に手を抑えて落ち着ける。
暫くして呼吸が大分マシになってきたので二階へと戻る。
時々こうやって夜中に目覚め気分が悪くなってしまう。
何でだろうか?
怖いからだろうか?
昔の思い出が。
全てを拒絶した筈なのに何故この“恐怖”は心から姿を消さないのだろう?
それどころか恐怖がでかくなるような気もする。
対人恐怖症がここの所ますますひどくなってくる気がする。
最初は学校の人に会うのが怖い程度だった。
しかし今では通行人ですら怖くなり道では
自分一人しか居ない時にしか歩かない。
そして姉の顔すら見るのが恐ろしくなってしまった。
白崎と梅岡だけは話せるがもしかしたらいずれ
彼らの事も怖がるようになってしまうのだろうか?
自分は恐怖に覆われてしまうのだろうか?
考えただけで身震いしてしまう。
だから考えるのをやめようとするがどうにもすぐ
その事を考えてしまって怖くなってくる。
自分はどうなってしまうのだろうか?
これからどうしていけばいいのだろうか?
恐怖に見舞われて生きていくのだろうか?
わからない。
必死に考えても分からない。
自分一人では答えが分からない。
誰かに聞いてみようか。
まともに喋れるのと言えば梅岡と白崎さんだけ。
梅岡に相談しても教師の癖にまともな返事など返ってくるわけが無い。
じゃあ残るは白崎さんだけだ。
ちょっと今日はいつもより早いが行って話してみよう。
早いと言っても普通の学生の登校時間を3時間程過ぎたぐらいの時間だが。
下のズボンをお脱ぎ捨て箪笥から普段着を出し
そっちにへと着替えていく。
少しして着替え終わると机の上にある帽子を取り
一階に降りて行く。
念の為に一階に人は居ないか確認する。
見た所姉は何時も通り学校に行ってるようだ。
安心して一階へと降りて帽子を被り玄関のドアを少し開ける。
開けた隙間から外を見てみると通行人が一人居るので
その人が通り過ぎるのを待つ事にする。
角を曲がったのを見てドアから出て鍵を閉める。
喫茶店の方の道を走る。
角に差し掛かり人が居ないかを確認すると
その瞬間人にぶつかる。

「あ、ごめんなさい。」
「あ、あ、あ、す、す、すみません・・・。」

言葉がうまく出なく相手に伝わったかわからないが
その場をさっさと離れてしまう。
これだけでもう気分が悪くなってしまう。
嘔吐しそうになるが必死に耐える。
体がもう走る事を拒否してしまい
息を切らしながらゆっくりと歩いていく。
人が居ないのを見ながら10分ほどゆっくりと
歩いて行くとようやく喫茶店に着く。
ドアを開けると滅多に人は居ないこの店に珍しく
客が居て白崎と喋ってるのが目に映る。

「やぁようこそローゼ・・・大丈夫ですか!?」
白崎さんがいつもの台詞を言い終わる前に
僕は店のドアの所で倒れてしまった。
誰も居ないだろうと油断してた時に人の姿を見てしまったからだろう。
赤の他人を見ただけでこうなるなんて、全く自分は駄目だ。
白崎さんが僕を心配してこっちに走ってくる。
金髪の長い髪の毛が目立つ女性、白崎と話していた客もこっちに来る。

「ぼ、ぼ、僕に、ち、ち、近寄るなぁぁぁぁぁぁぁあああああ!」

僕が叫ぶと客は驚きその場に立ち止まる。
白崎さんはそれでも落ち着いて僕の側に近寄る。
そこで記憶は途切れた。



・・・どこだ?
目を開けると木の天井が見える。
病院って事は無さそうだしボロそうな所からすると
まだローゼンメイデンに居るのだろう。
そんな事を考えてるとドアから誰か入ってくる。
金髪が目立つ外人、さっきの客だ。

「あ、あ、あ、あ・・・。」
声がうまくでない。
出て行けとすら言えない。
相手も何も言えず僕を見ているだけだ。
そんな時白崎さんが部屋に入ってきて
状況を把握したのか客の手を引いて部屋の外へと出す。
客を外へ出して少しした後白崎さんが部屋に入ってくる。

「起きたのですね、大丈夫ですか?」

客が出て行ったので声も普通に出せる。
落ち着いて白崎さんに喋る。

「ええ、まあ・・・あのお客さんは・・・?」
「あなたを店の奥に運ぶのを手伝ってもらったのですよ。
 お礼を言ってといてくださいと言いたい所ですが・・・。」
「こんなんじゃとても言えないですね・・・代わりに伝えてくれませんか?
 そして白崎さん、ありがとうございます。」
「いえいえ、そんな大した事をした訳じゃないですよ。」
「いやいや・・・そういえば何でこの店にお客さんが居たんですか?」
「まるで客が来ないような言い様ですね。」
「気のせいですよ。」
「ならいいんですが・・・あのお客さんは朝のこの時間によく来るのですよ。
 ちょうどあなたとはいつも入れ違いになっているんじゃないでしょうか?」
「そうなのですか。」

白崎と会話しながら壁に手をかけ立ち上がる。
まだ少しふらふらするがこの程度だったら大丈夫だろう。
「ちょうどあなたと同じ位の歳じゃないでしょうか?
 フランスの人なんですよ、日本の学校に通ってたらしいですが。
 日本語も普通に喋れますよ。」
「通ってた?」
「あなたと同じですよ。」
「!」

その言葉で思わず顔を歪めてしまう。
自分と同じ、という事は不登校児なのか?

「・・・虐めかなんかで行かなくなったのですか?」
「そこら辺の事は聞いてないですね・・・
 あなたも原因を聞かれるのは嫌でしょう?
 彼女も嫌でしょうから。」

それはそうだ。
自分の学校に行かなくなった理由、つまりは虐めなどとよくある理由だが
そういうのは人に喋りたくなど無い。
考えただけ気分が悪くなるのに。
それを考えて白崎はその子にも自分にも理由を聞かないのだろう。

「・・・お気遣いありがとうございます。」
「いえいえ・・・彼女もあなたと似た様な人ですからね。
 もしかしたら話せるかもしれませんよ。
 傷を癒すには同じような傷を持った人と話すがいいですからね。」
「・・・かもしれませんね。」
一度話してみたいと言いたい所だが
対人恐怖症の自分には難儀な話だ。
現に顔をあわせただけでこうなってしまってる。

「自分じゃ話せないと思ってるのですか?」

心の中を読まれたかのような一言。
まさいその通り。

「まぁいきなり顔を合わせて話すのは考えず
 私を通してお話してみたらどうでしょうか?
 二人とも私の所に毎日来てくれてる常連さんなんですし。」
「まぁそうですけどそれじゃあ白崎さんに迷惑がかかってしまいますし・・・。」
「心配しなくて結構ですよ、生憎お節介な暇人でして。」

暇人という事は客があんまり来ない事を
自分でも少しわかってるんだな。
そんな事を考えると思わず苦笑してしまう。

「じゃあ・・お願いします。
 ところで・・・その人の名前は?」
「オディール・・・オディール・フォッセーさんですよ。」
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