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「はい、どうぞ。エルフの食べ物だけど人間のお口にあうかな?」
日も暮れ、辺りが暗くなった頃。エルフの森の翠星石と蒼星石の家では実に5人分の食事がテーブルに
並んでいた。
「あら、そんなに変わらない物を食べるのね。美味しいのだわ。」
真紅が蒼星石の出してくれた夕食を口に運ぶ。
「まぁ、人間がエルフの食事を不味いなんていうには100万年はえぇですぅ。」
翠星石が言う。テーブルを囲んでいるのは家の主の翠星石と蒼星石。そして、真紅とJUMと巴だ。
「それはよかった。それじゃあ、改めて自己紹介だね。僕は蒼星石。よろしくね。」
蒼星石がニコリと笑って軽く自己紹介をする。同時に目で隣に座っている姉に促す。
「しゃーねーですね……翠星石ですぅ。」
至って面倒くさそうに翠星石が言う。蒼星石は苦笑しながらも真紅達に視線を向ける。
「私はアデン王国国王のローゼンの娘、真紅よ。よろしくなのだわ。」
「アデンの!?そうかぁ……道理で……」
蒼星石が一人で何か納得したように言う。続いて巴が口を開く。
「私は柏葉巴。元々はアデンの貴族なんだけど、今はただの旅人かな。それから、今はいないけど小さな
女の子がいたでしょう?あの子は雛苺。私達の仲間だよ。」
「かしわばともえ?ヘンテコな名前ですぅ。」
「ふふふっ、巴でいいよ。翠星石。」
巴がクスクス笑いながら言う。エルフは全てマザーツリーから生まれる為、姓が存在しない。そのため、巴の
フルネームを聞いて翠星石はそう言ったのだろう。


「あ、僕か。僕は桜田JUM。真紅の護衛……かな?よろしくな、翠星石。蒼星石。」
「うん、こちらこそ。ええと……JUM君でいいのかな?」
「…………」
「呼び方は別に何でもいいよ…って、何だよ?そんなジーッと僕を見て。」
翠星石はJUMをジーッと見たまま口を開かない。そして、口を開くと言った。
「・・・チビ!!」
一瞬、家の中を沈黙が包む。そして、数秒後JUMが叫ぶ。
「んなぁ!?」
「きゃっ!鳴いたですぅ!蒼星石、怖いですぅ~!」
翠星石は蒼星石の影にササッと隠れてしまう。
「もう、翠星石ったら。ごめんね、JUM君。翠星石にも悪気はないんだよ……多分……」
「あら、別に間違いは言ってないのだわ。JUM、確かに貴方は少し背が低めではなくて?」
「お、お前ら人の気にしてる事を……」
翠星石と真紅に散々に言われるJUM。それを見ながらクスクス笑う巴もフォローしない所を見るとそう思ってる
んだろうか。そんなこんなで、食事をしながら案外すんなりと打ち解けていった。
「そういえば……二人は普通のエルフと違うらしいけど……どんなトコが違うの?」
巴が言う。そう、二人はエルフの象徴とも言える長い耳を持ってない。その代わり、両目の色が違う。
「そうだね。説明しておくよ。僕等はエルフの中でも希少種と言って、本当に極稀に生まれてくるらしいんだ。
エルフは自然の化身として、精霊と契約して地水火風の精霊を力を借りて戦うんだ。通常、契約は一種類
の精霊としかできない。でも、僕と翠星石は同時に2種類の精霊と契約しているんだよ。僕が火の精霊
ファアグリオと地の精霊マーブル。翠星石は水の精霊エヴァと風の精霊サイハと…ってね。」
蒼星石がスラスラと説明してくれる。魔法学とは縁のない3人だが、一応は理解できてるようだ。
「つまり………二人は一人でエルフ二人分の働きが出来るってことか?」
「まぁ、チビ人間の脳味噌に合わせてやればそういう事ですね。」
JUMの言葉を翠星石が返す。


「成る程……でも、実際は恐らく貴方達は一人でもエルフ二人以上なのではないの?」
「まぁ……契約してる精霊の組み合わせ的にね。」
蒼星石がそう言いながら、後ろに置いてあった大剣を真紅達に見せる。
「僕の場合は、このレンピカで接近戦をするんだけど…火の精霊はその猛き炎を剣に貸してくれるんだ。
つまり、攻撃重視。そして、堅牢な地の精霊は堅い守りの鎧を与えてくれる。つまり、防御重視。
通常ならどちらかしか選べないのを僕は両方使役できる。それ故に、希少種なんだよ。」
蒼星石の説明を聞くと、それがどれだけ凄い事か分かる。エルフの精霊魔法は強力だが、通常は
あっちを立てればこっちが立たず。しかし、それを両立させるのが希少種の力だと言う事だ。
「翠星石は、このスィドリームで遠距離戦が得意ですぅ。エルフの中でも翠星石の弓に敵う奴はそうそういねぇ
ですよ?」
翠星石が同じく置いてあった弓を見せる。相変わらず、矢筒は見当たらない。
「なぁ……さっきから気になってたんだけどさ。お前、弓はいいけど矢はどこにあるんだよ。」
「全く、これだから浅はかなチビ人間は……最後まで聞くですぅ。スィドリームは風の精霊サイハの加護を受けた
弓なんです。風の精霊力の強いものが使えば、弓を引けば風が矢を生成してくれるんですぅ。」
そこで、ようやく理解した。翠星石は矢を持っていないのではない。携帯する必要がないのだ。翠星石は
風の精霊と契約している。ならば、弓を引けば矢ができる。即ち、矢要らずの弓なのだ。
「矢要らずとは凄いのだわ。それで、水の精霊はどんな力を貴方に与えてくれるの?」
「水とは元来から生き物の命として扱われてきたですぅ。水は癒しの力なんですぅ。」
翠星石が真紅の質問に簡単に答えを返す。そうこうしてるうちに、夜も更けてくる。
「さて…そろそろお風呂にしよっか。三人とも長旅で疲れてるでしょう?」
「賛成でっす~。チビ人間は後で一人虚しく入るですぅ。覗いたら森からつまみ出すですよ?」
「誰が覗くか性悪エルフ。」
4人が浴場に向かっていく。とりあえず、外に出たJUMは夜空を見上げる。エルフの森は自然の化身に
守られた祝福された場所。そのせいか、その夜空はただ、綺麗だった。


同じ星空の下、4人の少女は仲良く自然によって作られたお風呂に入っていた。
「ふぅ……昨日は野宿だったから気持ちいいのだわ。」
真紅が髪をアップにして湯に浸かっている。ふと、翠星石の視線に真紅が気づく。
「何かしら、翠星石?」
「……真紅は何歳ですかぁ?」
「私?18だけど……どれがどうかしたの?」
すると、みるみるウチに翠星石の顔がニヤニヤしていった。
「18でそれですかぁ……巴はいくつですか?」
「私も18だけど。」
「まぁ、そんなもんですよねぇ……ふっふっふっふ。」
一人でニヤニヤする翠星石にひたすら頭にハテナを浮かべる3人。
「そういえば、翠星石と蒼星石は何歳なの?」
「さぁ?翠星石は歳なんて興味ねぇです。」
「もう……僕等は生まれて19年だよ。二人より一歳年上になるのかな。」
蒼星石が言う。しかし、巴が気になったのはまた別にあるようだ。
「翠星石は歳を数えてないの?」
「……エルフにとっては10年も20年も…100年も大して変わりはねぇですよ。エルフに与えられた時間は
とてもとても長いんですぅ……だから、翠星石は歳に興味がねぇんです。」
その瞳はどこか少しだけ寂しそうだった。
「そうね……エルフは寿命の概念がないと言われてるものね。確かに、それは少しだけ寂しいのかもしれない
のだわ。でも、私は逆に有難いのだわ。」
「どうしてですか……もし、翠星石に愛する人間が出来ても……必ず先に死んでしまうんですよ?」
「決まってるのだわ。私がアデンを取り戻しても、私はいつか死んでしまう。それでも、貴方達はきっと生き続ける
でしょう?貴方達になら国をずっと見守っていてもらえるのだわ。」
真紅は言う。翠星石はそれを聞いてキョトンとしていた。蒼星石はクスリと笑う。
「それは反王を倒してから言えです。でも……そういう考え方……悪くないですぅ……」
こうして、エルフの森での夜は過ぎていった。


翌朝。身支度を整えた五人はマザーツリーの前に居た。
「あ、トゥモゥエー!みんなお早うなの~!」
そこでは雛苺が新しいピンクのローブを着て、手をブンブン振っていた。
「おはよう、雛苺。あ、翠星石と蒼星石、あの子が雛苺。雛苺、二人は翠星石と蒼星石だよ。」
「うよ?えっと、ヒナは雛苺なのー!よろしくなのよー!」
雛苺がニコニコしながら言う。
「うん、よろしくね雛苺。僕が蒼星石。こっちが僕の双子の姉の翠星石だよ。」
「……翠星石ですぅ。って!そうじゃねぇですよ。ええと…チビ苺!貴方の杖は何ですかぁ?」
翠星石の指差す杖。ピンクの宝石が埋め込まれており、今までの杖とは違うものだった。
「うよ?これはマザーにもらったのよ?」
「うむ……私も驚いたが、彼女はこのジャジャ馬を使いこなしてるのだ。現在エルフでこの「ベリーベル」を
扱える者はいない。ならば、扱える者に使って貰うのが有意義と言う物だろう。」
「信じられねーですぅ……ベリーベルをこんなチビチビが扱えるだなんて……」
翠星石が一人でショックを受けている。蒼星石も少なからず驚いているようではあった。
「それから……エルフ族の武具を送呈しよう。JUMと申したか…君にはこのエルフの盾を…」
JUMがその盾を受け取る。その盾はJUMに不思議な力を与えてくれるようだった。他にも、JUMと巴には
ミスリルの糸で織られた鎖帷子が送られる。
「ご好意、感謝します。マザーツリー。」
真紅がスッと会釈する。
「うむ……まだまだ道は険しいとは思うが頑張ってくれ。アデンの闘いの際には我々エルフ族も総出で
真紅の力となろう。して、真紅。次はどこへ向かうつもりだ?」
「ギランに向かおうかと。あそこはまだ反王に支配されてません。私たちも何か力になれるかと……」
マザーツリーはそう聞くとフム…と少し考える素振りを見せる。そして、言った。
「ならば…急いだ方が良いかも知れぬ。何やら不吉な魔力がうごめいている。」
「魔力……まさか…魔女ケレニスか!?」
JUMが言う。魔女ケレニス。常人を遥かに超えた魔力を持つ、反王の一番の側近である。
「分からん。しかし、不吉な魔力だ……気をつけるがいいだろう。翠星石、蒼星石。二人にとってこの旅は
沢山の事が得られると思う。成長して帰ってくる事を信じている……」
「任せとけですぅ!反王は翠星石がチャッチャとやっつけるですよ。」
「はい、それじゃあ行って来ます。マザー。」
翠星石と蒼星石が別れの挨拶をする。そして、六人はエルフの森を発って行った。
「急ぎましょう。ギランが陥落しては大変なのだわ。巴、どの道が一番早い?」
「そうだね……森を北上するのが一番いいかな。ただ……竜の渓谷。ドラゴンバレーを越えないとダメなんだ。」
To be continued

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