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空はすでに漆黒に包まれていた。その空の下、焚き火に4人の人間が火を囲んでいる。
「もうじき3時か……」
JUMが懐中時計を見る。パチンと音を立てて時計を閉めると焚き火に枝を入れる。
グルーディンの船着場からエルフの森を目指して旅を続けすでに数日がたっていた。地図にもないような
小さな村にて宿を取ったりもしたが、今日は生憎の野宿だ。この地域には魔物も少なくはない。故に、
JUMが寝ずの番をしているというわけだ。JUMはチラリと火の側で眠っている3人の少女を見る。
金色の髪が火に照らされ美しく光っている真紅。そして、二人で寄り添いあって寝ている巴と雛苺。
本来ならば、もしかした彼女たちは戦いなんか知らないで生きていたのかもしれない。そう、すべては
反王の騒乱で全てが変わった。真紅は国を追われ、巴もまた家族と離散し旅をしている。
JUMは剣を抜く。月明かりに照らされ白銀の刃が光る。
「桜田君……」
ふと、声がする。見れば巴が目を擦りながらJUMの方を見ていた。
「柏葉か。交代にはまだ少し時間がある。寝ておいたほうがいいぞ?」
JUMはパキっと枝を折り、火の中に投げ入れる。巴は毛布を雛苺にかけるとJUMの隣で座る。
「ううん、何だか目が覚めちゃった。何なら桜田君寝てもいいよ?」
「そっか……いや、一応時間までは起きておくよ。」
交代の時間は3時30分。一応、巴と交代の予定だがJUMは時間までは寝るつもりはないようだ。
火がパチパチと音を立てながら枝を燃やし、尚も勢いを増す。二人はそれをただ、じっと見ていた。
「桜田君はずっと真紅と一緒だったんだね。」
「ん?そうだけど。何だよ、急に。」
巴が小さな声だが口を開く。
「ちょっとね。でも、やっぱりビックリしたよ。真紅がアデンのお姫様だったなんて。聞き覚えがあるはずだよね。」
「まぁ、一応警戒して言わなかったんだよ。それは悪いと思ってる。」
「ふふっ、分かってるよ。もしかしたら、反王の手の者かもしれないしね。」
巴がクスクス笑う。その笑顔は歳相応の少女の笑顔だった。


「柏葉は世界中を回ってきたのか?」
「うん、大体はね。雛苺を連れてだから、そんな危険な場所はいけなかったけどね。」
このご時世に女二人での旅である。すでにそれだけでも危険と言ってもいい。
「どうだった……僕等はずっと話せる島にいたからさ。世界情勢とか……」
「うん。アデンには5つの人間の城があるでしょ?ケント、ギラン、ウィンダウッド、ハイネ。そしてアデン。
このうち、反王はすでにアデン、ハイネ、ケント、ウィンダウッドを支配下に置いてるんだよ。ギランだけは
2重門と、商業都市だけあって冒険者も多いお陰で反王の攻撃も苦戦してるみたい。でも、もしギランが
陥落すればアデンワールドの人間の城は全て反王が支配する事になるんだよ。」
巴が説明してくれる。ある程度の情報は話せる島でも入ってきたが、細かい話を聞くのは初めてだった。
「じゃあ、まずは真紅がギランに行くのがいいのかな?」
「うん。或いは他の城を取る事だね。ウィンダウッドやケントは防備が薄いみたい。」
それは、その土地を直に歩いてきた者の言葉だ。きっと真実なんだろう。
「まぁ、何にしろ……今の真紅には兵力も何もない。まずはエルフも森に言ってエルフの協力を得る他ないな。」
「そうだね……エルフの森は人間が侵入できない神聖な場所らしいけど…真紅どうするんだろう。」
「さぁ…まぁ、真紅は結構無茶な奴だけど考えがない訳じゃないだろうし。さて、そろそろ僕は寝るよ。」
JUMは剣を外し、そばに置くと荷物で枕を作り毛布を被る。
「うん、おやすみなさい。ゆっくり休んでね。」
巴はそれを見ながら夜更けを待つ。カタナを抜き、研石でカタナの手入れをする。
シュッシュっと音を立ててカタナが研がれていく。焚き火でカタナを少し炙り、月の明かりにカタナをかざす。
「これでよしっと……そろそろ夜が明けるね…」
月の明かりに照らされた巴のカタナは眩いまでに白銀の光を放っていた。


「もうすぐエルフの森のはずなのだわ。」
時は進み、日中。昼食を終えた真紅一行はエルフの森に向かっていた。徐々に空気が澄んでいくのが
感じられる。近いのだ。神聖なエルフの森が。ふと、ガサガサと音がする。
「うよ?んん……ねぇ、巴。今ね、何か木が動いたのよ?」
雛苺が指を差す。しかし、そこにあったのはただの木だ。
「?何もないじゃないか。まだ眠いのか?」
「う~……絶対絶対動いたもん!あっ!ほらぁ!!」
再び目を移す。すると、確かに木が動いた気がした。
「……ニンゲンヨ……ココハシンセイナバショダ……イマスグタチサレ……」
「うわ、木が喋ってる……」
それは、間違いなく木が発した言葉だった。片言でおまけに野太い声だが確かに喋った。
「貴方、エントね?マザーツリーに話があるの。通してくれない?」
真紅が言う。しかし、エントは相変わらず真紅達を遮って通してくれない。
「……困ったのだわ……言葉が通じてないのかしら……」
「ああ、エントには人間の言葉は難しいんでしょ。それで?ミスリルの匂いに釣られてやってくれば何で
人間が神聖な森にいるのさ?」
「あ、妖精さんなのー!」
陽気な声が聞こえてくる。それは、白い体の妖精だった。
「……貴方がフェアリーね?貴方なら分かるでしょう?このドレスローブの意味が。」
真紅がフェアリーに自身の着ているドレスローブを見せる。
「これは驚いたね。人間がミスリルの服を着てるなんて。しかもそれ。数年前に僕たちフェアリー族が作った
奴じゃないかな。確か……そう、アデンの王様にエルフが友好の証に送った奴だ。」
「話が早くて助かるのだわ。私は真紅。アデン王国国王ローゼンの娘。マザーツリーに話があって来たの。」
その言葉で、ようやくフェアリーは態度を改める。
「ローゼンの娘だって?それは失礼したね。少しそこで待ってて。マザーに話してくるから。」
フェアリーはそう言うと、いそいそと飛んで森の奥に向かって行った。
「成る程ね。確かにそのドレスローブはエルフとの友好の証だったな。」
「そうよ。一種の通行証にもなると思ってね。」
真紅がドレスローブをヒョイと摘んでみせる。しばらくするとフェアリーが飛んで帰ってきた。
「お待たせ。マザーがお会いになってくれるってさ。僕に着いて来てね。」
フェアリーはふよふよ飛びながら進んでいく。真紅達はそれの後を歩いていった。


真紅達が行き着いた先。そこは巨大な樹だった。
「よく来られた。ローゼンの娘真紅殿よ。私が世界樹…そして森とエルフの母『マザーツリー』だ。歓迎しよう。」
その巨大な樹、マザーツリーはウットリするほど美しい声が言葉を発した。真紅はスッと会釈する。
「アデン王国国王ローゼンの第一子、真紅です。この度はお目通りが叶い光栄です。」
「いや、ローゼン殿は我々の友だ。入り口での非礼、こちらも詫びよう。して、御用は何ですかな?」
マザーツリーはいきなり本題に入る。真紅はマザーツリーを見据えて言った。
「マザーツリー。私にエルフ族の力を貸して欲しい。ご存知の通り、今アデンは反王の手中で民は
もがき苦しんでおります。私は亡き父の意思を受け継ぎ反王を倒し、再びアデンに平和を迎えようと
思っております。その為には、貴方方エルフの力添えが不可欠。故に、お願いに参りました。」
真紅がスラスラと言葉を述べる。JUMはそれを聞きながら目だけ色々と見回していた。
真紅の言葉はきっと森のエルフ全てに聞こえているだろう。エルフの耳が長いのは世界中の声を聞く為
だと昔聞いた事があった。時間が流れる。しばらくし、ようやくマザーツリーは言葉を発した。
「フェアリー……翠星石と蒼星石を連れてきなさい。」
「えっ!?は、はいい~!」
フェアリーが急いで飛んでいく。マザーツリーはさらに言葉を続けた。
「真紅殿、貴殿の気持ちよく分かった。我々エルフにとっても今のアデンは望んでいる形ではない。
反王は、いずれ我々エルフの森すらも焼き尽くすでしょう。ならば、我々は貴殿に力を貸しましょう。
それが、古き日のローゼン殿との約束でもある。その証が、貴殿のローブだ。」
真紅の顔が明るくなる。要するに、真紅はエルフの助力を得る事に成功したのだ。
「マザーツリー…真紅、心より感謝いたします。必ずや、反王を倒し人間もエルフも平和に暮らせる
世界を取り戻します。」
真紅が再び会釈する。
「うむ。だが、覚えておくのだ。真紅殿、私が助力を決めたのはローゼン殿との約束だけではない。私は、
貴殿の瞳に光を見出した。貴殿には力がある。ローゼン殿にはなかった力が。自信を持ちなさい。
さて……今宵は森で休まれるがよかろう。急ぎ餞別も作らせる。それから……小さな魔術師さん?」
「うよ?ヒナ?」
「ヒナ……と申すのか?君からは大いなるマナを感じるが…まだ自分の力を使いこなせていないようだね。
こっちにいらっしゃい。一晩で、君に力を与えよう。もっとも、今の人間ほど高度な術ではないがね。」

「うよ……」
「行っておいで、雛苺。私たちも今日は森で泊まるから。また、明日会おう?」
「ういー!分かったの。見ててね、真紅、JUM、巴。ヒナもっと頼りになるようになるからね。」
雛苺がマザーツリーの元へ行く。それと同時にフェアリーに連れられて二人のエルフがやって来た。



「お待たせしました、蒼星石参りました。」
「何ですか?マザー。翠星石はこれから夕飯の準備があるですぅ。」
そのエルフは他のエルフと違い、耳は長くなかった。ただ、髪の長いエルフは右目がルビー。左目がエメラルド
の色をしており、髪の短いエルフは逆に右目がエメラルド、左目がルビー色をしていた。
「翠星石、蒼星石。貴方達二人はこの真紅と共に旅をなさい。」
マザーツリーが言う。二人の翠星石と蒼星石と呼ばれたエルフは真紅達を見る。髪の長いほうが短い方の
影に隠れて真紅達を伺っている。
「な、何で人間達がエルフの森にいるんですか?」
「翠星石。もう…ごめんなさい。翠星石はちょっと人見知りなんです。はじめまして、僕はエルフ族の娘
蒼星石です。それで、こっちが双子の姉の翠星石です。」
「………翠星石……ですぅ。」
髪の短いエルフ。蒼星石は背中に身の丈はあろうかと言うほどの大剣を背負っていた。一方、髪の長いエルフ。
翠星石は背中に弓を背負っている。不思議な事に、矢筒は持っていないようだった。
「真紅殿、二人を旅のお供に連れて行くとよい。二人はまだ若いがエルフの中でも希少種。必ずや旅の
力になるでしょう。」
「有難う御座います、マザーツリー。翠星石と蒼星石だったわね?私は真紅。よろしくなのだわ。」
真紅が会釈する。蒼星石はその会釈を返すが、翠星石はまだ蒼星石の影に隠れたままだ。
「真紅だね。よろしく。それじゃあ、マザー。今日は僕らの家に真紅達を泊めますね。」
「うむ、お互いを分かり合うのは大事だ。そうするが良かろう。それでは、真紅殿。明日にまた会おう。
小さな魔術師…雛苺だったかな?この子は一晩預からせてもらう。」
「感謝します、マザーツリー。それでは、また明日に……」
「じゃあ、僕らの家に行こうか。こっちだよ。」
真紅達は蒼星石に連れて行かれるまま、近くの家に入っていった。
To be continued

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