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『Smile As If Maria』

血の宴、狂乱の杯、現で踊る愚者の夢。
死の宴、鮮血の杯、苦痛にのたうつ敗者の叫び。
魔人の微笑み、パックリと口を開き、笑う。
魔人の微笑み、弱者を弄び、また微笑む。
微笑み、笑う。

笑う笑う哂う哂うワラウワラウわらう笑う笑う哂うわらうわらう
笑う笑うわらう藁藁藁藁藁わらうわらららららららららららららら
わらららららららららるううううううううううううううわららううう
笑う笑う笑うっ輪わわわわわわわわらうわわらうわらわらう
笑う
笑う
哂う
ワラウ
わらう

笑う

祭壇に捧げられた供物は怯え、魔人を見上げる。
可憐な少女、幼き少女、清き体の少女。
子を産むに達した少女の豊かな実り、それこそがニエに相応。
「やあやあ、ようこそ。」
梅岡は顔面に愚笑を貼り付け少女に近付く。
少女は退く。
しかし、退くことはできない、蜘蛛の巣、貼り付けられた蝶。
祭壇、そこは蜘蛛の巣の上。
少女は蝶だった、蜘蛛にその身をむさぼられる蝶だった。
「怖がらなくて良いよお嬢さん。」
一歩。
また一歩。
「僕は君の血肉が欲しいだけだ、魂までは喰わないから安心して。」
柔らかい口調、秘める瘴気。
少女は気づいた、それは絶望。
一切の希望のない絶望。



少女の正気は砕けちる。
恐慌、咆哮、絶望、咆哮。
少女は狂い叫ぶ、叫ぶ叫ぶ。
来ない助けを求め叫ぶ。
だが訪れたのは更なる絶望。
更なる恐怖。
更なる苦痛。

ポトリ

少女は自分の服の上に落ちた何かを凝視した。
それは子蜘蛛だった。
だがそれは握りこぶし大の大きさをした蜘蛛だったけれども。

ぼとりぼとりぼとり

叫びに呼応したように子蜘蛛が少女の周りに、蜘蛛の巣の上に落ちた。
引き攣った呻き声。
声にならない呻き声、少女の声に呼応したように蜘蛛は少女を複眼に捕らえる。

うぞろうぞろうぞろ、標的を定め子蜘蛛は少女に群がる。
足首、太もも、脇腹、くびれ、首、胸、腕、顔、髪、臓腑、指。
突き立てられる牙、麻痺していく肉体。
貪られる肉、抉られる肉、噛み千切られる筋繊維。
痛みが遠のき、精神が浮遊する。
現実と区別がつかない悪夢、彼女の全てを犯す。
少女はただ見るしかない。
己が貪られるさまを。肉片と変じていく自分の身体を。
苦痛が快楽に、激痛が快感へと変じていく。
現の夢が少女を犯す。



「あはは、あははははは………あはははははははははははははははははははは
 ははあははあはははははははははははははははあはははははははははは
 あはははははあははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
骸と化していく少女を眼前に捕らえ、梅岡は狂笑した。
血の宴、恍惚の苦痛。
身体の芯が火照る感覚を覚える。
カタチあったものの、カタチ崩れる様が与える快感。
ヒトでありし頃には味わう事許されぬ外道の快感。
もはや生気を宿さない少女の唇を奪い貪る。
血の味がする。
肉の味がする。
臓腑の味がする。
ぞくりとする歓喜が魔人を満足させる。
ゴトリ、少女の身体だけが蜘蛛の巣の上に落ちる。
骸と化した少女の肉をまた貪る子蜘蛛たち。
腕を広げ群がる蜘蛛を愛撫する。
狩宴の前菜を喰らいつつ蜘蛛は牙を鳴らした。
かちりかちり、それは乾杯の音のように。
「うっわ、また梅ちゃんソレやってやんの。マジゲロ趣味悪ぇぇ。」
「いつ見てもゾっとしねーな、アンタのお遊び。」
2人の少年、ラシエルとルヒエルが梅岡、ザフィエルの領地に降り立つ。
広大な暗黒に広がる蜘蛛の巣の上、幾重にも重なった粘着質の蜘蛛糸が
彼らの迸る魔力でぶつりぶつりと切れて落ちる。
身になじんだその魔力、梅岡は彼らの存在を両眼に捕らえ認識する。
貼り付けたような笑みが彼に向けられる。
「や~2人とも!僕のサバスにようこそ!歓迎するぞ~!」
バンッ、2人を歓迎する両の手の拍手。
ぐしゃり、挟んでいた少女の首が爆ぜる。
肉塊となったそれは四方八方に飛び散るが、梅岡に飛び散ったそれは
彼の衣服を汚すことなく蒸発する。
残りは蜘蛛の巣の上に引っかかるか奈落のそこへと消えていく。
「クソが、てめーの遊びなんて興味ねえっての。おめえの遊びは陰険過ぎて
 つまんねーんだよ。クソが。やるならもっとハデにやれってぇの。」
「そういうことを言いに来たんじゃねえだろうがラシエル。」
ツンツン頭をした少年、ルヒエルが彼を諌める。
「今日はテメーに話があって来たんだよ、ザフィエル。オメーにな。」
「おやおや、何だか機嫌悪そうだなルヒエル?もし悩み事があるんだったら
 先生、何でも相談に乗るぞ?」
「ハッ、調子っぱずれな事言うなよザフィエル、いや、ここでは梅岡って
 言った方が良いか?ここはお前のNのフィールドだしな。」
「本当は先生と呼んでもらいたいが僕としてはどちらで呼んでもらっても
 構わないぞ。先生とお前の仲だからなっ!」
「………………」
まったく腹の立つことばかり言う奴だ、ルヒエルの顔に苦いものが浮かぶ。
長い付き合いだがコイツの性格はどうにもこうにも吐き気を催す。
だが、今ここでは関係のないことだろう。
「………まあどうでも良いさ。それより話だ、話。」
「ああ、それで話ってなんだい、ルヒエル?」
「テメエに話ってのはもちろんローゼンメイデンの事だ。」
「ああ………」
瞬時、梅岡の、ザフィエルの目の色が変わる。
それは魔術師として、狩人としての彼の本質が垣間見る時。
「で、何だい?」
「やれるのかって事だよ。一度お前の使い魔はアレに殺られてる、マキナによ。」
「マキナ、機巧神、機巧神、マキナ、ローゼンが作った外法の機神。
 人工精霊を宿した意思ある巨人。忌神に匹敵する力を秘めた器。
 僕たちを幾度となく退けた刃。だが、それがどうしたっていうんだい?」
「言うじゃねえか。アレはお前の制御を離れてた。」
「ははは、そういえばそうだったかなぁ。でも、良いじゃないか。
 アレは捕まえるだけしか能のないクズごみだったんだからさ。」
笑み、邪悪を孕む笑み。ルヒエルを見つめる黒に塗りつぶされた瞳。
笑みに隠された歪な感情がにじみ出る闇を揺らめかせる。
「よく言うぜ梅ちゃんさぁ。結局オマエってばアレに負けたんだぜ?
 恥ずかしくねぇ?バカじゃねぇ?クソじゃねぇ?はは、ゲロ以下じゃん。」
ラシエルの容赦ない罵声、しかし梅岡は動じない。
「うーん、それはちょっと厳しいなぁ。うん、だからさ、先生は考えたんだ。
 ロードも言ってただろ?これはゲームだって。」
「まあな。」
「彼女たちの魔力は絶大だけど、だからこそ挑みがいがあるじゃないか。
 ゲームは難易度が高いほど楽しいものだ。かれこれ何十年も探し続けた
 ローゼンメイデン、今までは負け続きだけどもうそろそろ攻略しても
 言いとおもわないかい?禁じ手も使えるようだしねぇ………」
「それはつまり、忌神招喚してドンパチやりあうってことか?」
「それも一理ある。だが、今まで僕たちは彼女たちとやりあったかい?」
「直接には、なかったな。」
「そう、負けたと言っても、だよ。だからこそ………」
梅岡は右手を掲げる。
闇を裂く亀裂、そこから滲み出すように現れたのは魔導書。
『土蜘蛛異聞』
梅岡が持つ外道の知識、人外の宝典、そして忌神を秘める刃。
「僕らはようやく本当に遊べる機会がめぐってきた、とは言えないかい?」
「んで?要点ちゃっちゃと言えってのクソ梅ちゃん。」
眉を潜めるラシエルの貌。
「つまりはだ。僕らが出て簡単にグシャってのも風情がないだろう?
 ロードはきっとそれが言いたかったんだよ。だからこそ、1人ずつ
 仲良くみんなで、見つけだしたローゼンメイデンを弄ぼうという事さ。」
「だからこそ、自分の番だからと俺たちには口出しさせないってか、ザフィエル?」
しかし、ザフィエル=梅岡は首を振る。
「い~やいやいやいや。そんなつもりで言ったわけじゃないんだよ僕は。
 僕らは魔術師として好き勝手にやるけどゲームは違うと言いたいだけだ。
 ゲームは正々堂々と、あつ~~~~くやらないとおもしろくないだろ?」
「アクマでも、これはゲームってか。」
「そのとおりさ。だから、今回は先生に機会を譲ってなぁ、くれないかなぁ。」
「負けたらローテーションで交代じゅんばんこってかっ!良いねぇ良いねぇ。」
ラシエルがにやりと笑う。
「良いぜ良いぜ良いぜ良いぜ~~っ!梅ちゃんのお手前拝見ってか。クソみてーな
 負け方して赤っ恥かいておめおめ逃げ帰ってくるのを見れるってかぁ?
 良いね良いね良いね良いね~~~!!!ゲロ溜めの負け様が楽しみだ!!
 ヒハ!ヒハハハハ!!ヒハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!」
品のない、下衆の笑い声。
「あははは、そんな事言われると先生俄然やる気が出てくるよ。僕としても
 最高のゲームをするつもりだから安心して欲しいな。今すぐはゲームは
 始めないけど準備ができたらしっかり見せてあげからっ!」
「ほ~~本気ってか、ザフィエル?」
「ああ、本気さ。楽しい楽しい、最高のカーニバルさ。肉を喰らい、
 骸を喰らい、肢体を喰らい、骨を喰らい、さらには悲鳴をも喰らう。
 そんな、そんな愉悦と歓喜で踊りだしたくなる様なカーニバルを提供したい。
 そう、僕は、ザフィエルたる僕は君たちにそんな余興を提供したいんだ。」
梅岡の、張り付いただけの笑顔がぎゅるりと歪む。
それは彼自身の邪悪が滲み出した、本当の貌。
邪悪は確実に迫る、ゆっくりと足音を立てて。


「………で、いったいオマエは何処に行こうとしてるんだ、おい。」
「ん?」
学校について早々、真紅は勝手も知らないのにどこかへ行こうとしている。
もちろん、服は制服であろうはずもなく普段着。
「何か不満でもあるのかしら?ちょっと用事を済ませるだけなのだわ。」
「あるね。連れて来させた僕の身になれ。周りの視線がチクチクグサグサ
 刺さって、今にも身体に穴が開きそうなんだよ用事だかなんだか
 知らないがそれが何かを言えって僕は言ってるんだよ!」
「大丈夫よ、そんなに時間はかからないからすぐ帰ってくるわ。」
コイツ、今の話聞いてないな。
「だ~~~~か~~~~らぁぁぁぁぁぁ!!!一体全体オマエは何をしようと
 してるんですかと聞いてる僕の言うことが貴女様は微塵にも理解できないのですか
 僕は聞いてるんです、わかりやがりましたかオーバー!?」
「そこまで言わなくても分かってるのだわ、むしろ大声あげてるジュンの方が
 注目を浴びてると感じるのは私の気のせいかしらね?」
「何をぉ…………!?」
バッ!バッ!周りに視線をめぐらす、と僕と視線のあった生徒たちがそんな
擬音を立てて首をそむける。あ~、もしかして何だか自分すごい間抜け?
「ええ、無様で間抜けで哀れね。」
「だ~~~~~~~!!!オマエが言うなぁぁつか心読むなぁぁぁぁあぁ!!!」
「声、大きいわよ。」
「ぬぐぅっ……」
それに口をつぐんでしまう。ああ、きっと教室に言ったら笑いものにされるなぁ。
脳内で、悲劇の主人公(配役=僕)の大浪漫映画が大音響プラス超高画質映像で
エンドレスで流れている。はあ、余計気分が重くなってきた。
「ま、それはともかくさっさと用事を済ませたいからもう行くのだわ。」
「あ、おい。」
ブルーな気分をさておき校舎に向かって足を進める真紅に声をかける。
「何かしら?」
「このまま離れて大丈夫なのか?お前、僕から離れすぎるとやばいって
 言ってた気がするんだけど。」
そう、確かある距離を離れると真紅は活動ができなくなるとか言ってた。
「くすっ。」
微笑む真紅、ドキリと軽く鳴る僕の心臓。まったくどうしてこんな
普通の笑顔ができるんだか、不意打ちを喰らった気分。
「優しいのねジュン。うふふ……大丈夫よ、私ならぜんぜん平気。」
「え、それってどういう――――」
「ウソだもの。」
これまでで最高の光り輝く後光さすくらいにさわやかな笑顔。
「あ゛ぁ!!!???」
ついでに変顔で素っ頓狂な声あげる僕。

「き、き、き、貴様ァァァァ!!!騙したのか!騙されたのかぁあぁ!? 」

「あら、騙したというのはひどいのだわ。ほんの軽いジョークよ、半分は本当だし。」
「それをジョークとは言わん、ヒトはそれを『実は私もう長くないの』に
 匹敵する悪質なウソと言うんだよ。」
「ジュン、話の後半部分をものの見事無視してるのだわ。」
あきれ顔で僕を見返す真紅。
「知るか。」
「はぁ………まあ良いのだわ、その指輪を外さない限りは問題はないだろうし。」
「指輪?」
「指輪。」
「指輪だと?」
「指輪よ、それ。」
真紅の指差す先は僕の右手。そこを見た瞬間僕の脳内を走ったのは絶望の二文字。
「な………なんじゃこりゃぁ……」
僕の右手の薬指、そこには紅い薔薇が飾られた金の指輪がはめられていた。
やたらめったら高そうな一品なのだがはめている場所がヤヴァイ。
意味がやばい、モノがやばい、つか高校生時分でこれはありえない。
薬指に指輪、つまりは結婚とかする用の指に指輪、ありえなさ過ぎる。
「おい真紅、この指輪、何時僕の指に嵌めた?」
「今さっきよ。そんな事よりその指輪はなかなかの代物よ。その指輪は
 ジュンが何所にいても、それを通して貴方の魔力を私に供給することが
 できるように作られたすばらしい魔具なの。だから心配しなくても大丈夫よ。」
「いや、それはどうでも良い。どうして薬指に指輪を嵌めやがった?」
「あら、契約には薬指に指輪をはめるのが普通じゃなくて?」
冗談で言っているようには聞こえない。
「あのな、契約は契約だが、ここは一生契約用につけるための指だったはずだが?!」
「…………」
沈黙、痛い沈黙、すんごい嫌な予感のする沈黙。真紅の顔が微妙に
ひきつっている。おそらくもしかして、もしかするとかか、おい?
「うふ、うふふ………さ、さあ、私はもう行くのだわ!」
「やっぱ図星かこんちくしょう。」
「大丈夫よ、それなりに貴方に似合ってるから問題はないのだわ。」
「まったくフォローになってない!?あ、ちょ、待て!!」
「それじゃ、また後でね。」
奇異と好奇の視線に囲まれる僕を取り残し真紅は去っていく。
ああ、なんて厄日だ。
厄日過ぎて泣けてきた。
「はあ、どうにもならないよなぁ。どうしようもないよなぁ。最悪だよなぁ。」
昇降口で知らず知らず独り言をつぶやいてしまう僕。
周りはクスクスと僕を笑い、ちらちらと僕を見てはまた視線をそらす。
檻に入れられたライオンの気分ってきっとこんな感じだ。
間違いない、間違いないったら間違いない、多分。
あ。またくら~~い気分になってきた。
「あの………ジュン……お…おは、よ。」
と、そんな暗い気分の僕に声をかける物好き一人
後ろを振り返ってそいつの顔を見てやる。
そこにいたのは、
「お~……うっす。な~んだ、薔薇水晶か。」
腕を上げて僕は薔薇水晶に返事をしてやる、結構だるげに。
薔薇水晶、僕がこの学校に来てから数少ない女子の友人。
眼帯をしているこの外見と名前との奇抜さで不思議少女だとか
不気味少女だとかいろいろ言われている。
が、名前は親御さんが外人で日本っぽい名前をつけたらこうなっただけで
眼帯は目が悪くて人に見られるのがイヤなだけだそうだ(本人談)。
ま、人間見た目と名前だけでは判断しちゃいけないっていう
良い実例の一つ。

だが、まあ。

僕の今の気分と逆にうれしそうに腕を上げて、うっす、と挨拶する薔薇水晶を
上履きに履き替えながら僕は上から下まで眺めなおす。
「え?あ……あの……な、何?何か……へ、へん?」
人見知りの気があるのか顔を真っ赤にしてわたわたとあわてる薔薇水晶。
「い~や別に。なんとなく朝から騒ぎ起こした人間に声をかける物好きが
 どんな人物かじっくり観察したくなっただけだよ、気にすんな。」
「そう……でも……その、照れるから…やめてほしい、かも。」
戸惑いながらも僕に笑いかけるその顔。どうもコイツといると気分が落着く。
別に恋愛感情ってわけじゃないがのほほんできるんだよなぁ。
うん、よし。さっきのことを忘れれそ――――

「おうおう。朝から夫婦漫才繰り広げた桜田君じゃねえのッ!」

「…………」
「あ………笹塚くん。」
「まぁったく、昨日は大事件があったってのに生存本能に忠実だね~~。
 あ、さっきのってやっぱあれ?許婚、幼馴染、遠い親戚の恋人とかか!?」
「…………………」
「いや~~~!見た目の野暮ったさに似合わずあんな可愛い子とお知り合いとか
 桜田ってば実はモテモテ?かーーー、うらやましいぜぃ!」
「えと……ジュン?」
「僕なんてここ最近女の子に縁がないってのにお前だけ!お前だけあんな可愛い子と!
 あ、もちろん薔薇水晶さんも可愛い女の子リスト入りしてるよ?」
「あ……ありがとう………」
「い~やいや!女の子は敬うべきもの、特に可愛い女の子は世界の至宝だからね!
 それなのにここにいるメガネときたらそんな可愛い子と朝から痴話喧嘩っ!
 そんでもって女の子と昇降口でやる気なさげに話す日には――――」
「だーーーーー!黙れ、黙りやがれ笹塚ァァーーーー!!!!!」
「うおっ、さえない男がキレた。」
「あ……あの………」
「アレは断じて『幼馴染♪』とか、『許婚ッ♪』なんていう良いモンじゃねぇ!!
 むしろあれは毒だ!害悪だ!バイオハザードだ世界を破滅させる大魔王だッ!!」
「ふぅん。にしちゃ、結構な感じでフランクな関係っぽかったけど?」
「えっと………その………」
「うるへぇ。それ以上余計なこと言うと家庭科の実習手伝わんぞ?
 お前は僕の裁縫の腕がなければ間違いなく放課後補習確実だったはずだよな?」
「う~わっ!それをダシにするかよ!?ずっりー!すっげぇずるすぎっ!!」
「でぇぇ~~~~い黙れだまれぃ!!」
悪友との朝の何気ない一幕。だが、真面目に本気で勝負。
熱を帯びる舌戦!飛び交うキックの嵐!そしてツッコミ!!
二人(だけ)に走る炎のバトル。それを見守る(美)少女。
そして、戦いのピークを迎え、最後の時が来る。
「さあ、どうする!?このままやるかッ!?それとも放課後補習するか!?」
「くっッ………!」
緊迫の一瞬、勝利の栄冠はどちらの手に渡るのか。
「あの……」
そんな真面目にバカをしている僕らに声をかけてくる薔薇水晶。
やる気がなんだか削がれてしまったじゃないか、僕と笹塚は
薔薇水晶に抗議の視線を向ける。
「その……遊ぶのは良いけど……予鈴のチャイム鳴ったよ?」
「うそ。」
「うそでしょ。」
「ううん、ほんと………ほら。」
バッ、薔薇水晶の指差す先、立てかけられた壁掛け時計はすでに
8時30分ちょい前。
「げげげげっ!!!」
「い、今から行ったら教室間に合うのギリギリじゃないか!!」
「だ、だから……やめようとさせたのに……」
「つか薔薇水晶、お前すっごい平静だけどどうしてだ?」
へ?と虚を突かれたようにきょとんとする薔薇水晶。
「えと………私、もう教室に…荷物置いてる。」
「へ?」
「今日は早く来たから……」
本当か?僕と笹塚はよ~く薔薇水晶を観察する。

――本当だ、カバンを持ってない。

「やっべぇ!!急ぐぞ桜田!!僕もう今月6回遅刻してるんだった!!
 次は親の呼び出し確定申告!!!まずすぎる!!」
「お、おい笹塚!」
僕をおいてダッシュで、いやマッハで階段を三段飛ばしで上っていく笹塚。
あっという間に僕らの目の前から消えてしまう。
「はえー。」
「うん………」
あっけにとられてしまう僕ら。
「ジュン……急がないの?」
「あ、うん。教室に行くのなんだか億劫でさ。」
「……あの女の子のこと?」
図星だ。はは、と苦笑いしてしまう。
「大丈夫……ジュンはそんなに甲斐性とかない。女の子にはモテない。」
グサグサグサ。なんで?どうしてこうも朝から僕は女運がないの?
こんな事をにっこりと平然と言われてしまう僕の存在価値って何?
うっすらと目頭に涙が。
「でも大丈夫……」
「え?」
落ち込む僕に気づかずスタッスタッと階段を上っていく薔薇水晶。
階段の踊り場当たりまで来るとクルリと僕に向かって振り向く。
「いつか……良いことあるよ。昨日あんなひどい事があったのにみんな元気。
 みんなが明日を向いて生きてるって事だから。辛い事があっても…
 うん、皆笑って生きていこうって力で……満ち溢れてるから。
 だから……ジュンにもいいことがあるっ。」
「薔薇水晶……」
階段から差し込む朝日を背に受ける薔薇水晶の顔が優しく微笑む。
慈愛に満ちた穏やかな笑顔。心がほんのりと温かくなる。
「さ……教室いこっ。」
えへへと笑いながら階段をポンポンと駆け足で上っていく薔薇水晶。
ボリボリと頭を掻きながら僕も階段を駆け足で上っていく。
チャイムの音が教室に入ると同時に鳴る。

『Smile As If Maria』closed…



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