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【薔薇水晶とジュン】1

1.
薔薇水晶とジュンは恋人。
「ジュン、浮気はダメ」
「え?」
「例えば、真紅の髪眺めてたり」
「あー、あいつの髪綺麗だからなぁ」
「……私のは?」
「綺麗だよ」
「……た、例えば、銀姉さまに抱きつかれて喜んだり」
「あー、それは男のサガだなぁ」
「……わ、私がしたら喜ぶ?」
「むしろ襲う」
「……え、えと、例えば、」
「まだあるのか?」
「あるよ。翠星石と蒼星石の家行った時ジュンが寝て、二人にキスされてたり、雛苺のことおんぶしすぎたり、金糸雀のドジを助けてあげたり」
「……最後の方とか、あんまり関係ないような……っていうか、何だそれ。僕はそんなことをされていたのか?」
「されてた」
「何で薔薇水晶が知ってるんだ?」
「見てたから?」
「……ストーカー?」
「…………浮気者のジュンが悪い」
「否定しろよ……。それで、結局何なんだ?」
「じぇらしー」
「……好きだよ、薔薇水晶」
「ん、私も好き」
そんな幸せな二人。

2.
勉強風景。
「勉強飽きた……」
「飽きたって言ってもなぁ……。薔薇水晶、テストに何も書かないで出したんだろう?」
「違う……アッガイの絵書いた」
「……それで梅岡のやつあんなに怒ってたのか」
「ジュンへの恋文にしようかどうか迷った」
「僕としてはテスト用紙じゃなくて、ちゃんとした紙に書いて欲しいけどね」
「覚えとく……。それより、ジュン? 一緒に留年しない?」
「……また、ワケのわからないことを」
「だって、勉強飽きたよ?」
「あー、そういえばー、真紅が紅茶を飲みに来ないかって言ってたなー(棒読み)」
「…………(びくっ)」
「水銀燈からもー、デートしないかって誘われてたなぁー(棒ry)」
「…………(びくびくっ)」
「翠星石からも――(ぼry)」
「ジュン、勉強しよう」
「ん、しようか」
「……いじわる」
「……何か言った?」
「ねえ、ジュン?」
「ん?」
「……私、頑張るけど、もし本当に留年しちゃったら、一緒に留年してくれる?」
「いいよ。頑張ってダメだったならね」
「嬉しい。私、頑張るよ」
「……っていうか、テストマジメに受けてればよかったと思うんだけどなぁ」
幸せギリギリのラインに居る二人の勉強風景。

3.
テスト当日。
「……眠い」
「頑張れ、あと少しだろう」
ジュンは、目をこすりながら歩いている薔薇水晶を半ば引きずるようなかたちで学校に向かっていた。
「……かたみにいたしなど思ふべかめり~」
デフォで古文口調だった。
(大丈夫か……?)
ものすごい嫌な予感がジュンを襲う。ジュンの脳裏には、寝ぼけながら数学のテストを受ける薔薇水晶。数学なのに古文なのだ。算用数字とか一切ない。ひたすらに古文。
「それって点数取れるのか……?」
「あれ? ジュンくん?」
「ん、蒼星石か。おはよう」
「おはよう。薔薇水晶も、おはよう」
「……おはYOございましゅ」
もう駄目っぽかった。古文ですらない。
「薔薇水晶、どうしたの?」
「あー、どうしたんだろうな」
ちょっと引き気味の蒼星石に答えようとしたが、ジュンもわからなかった。少なくとも、朝出るまでは普通だった。
「まあ、いいや。蒼星石は?」
「あ、僕は園芸部でちょっと用事があって。二人は?」
「薔薇水晶は追試。僕は、その付き添い」
「そうなんだ(ちらり)」
「……ざんねん! わたしのぼうけんはここでおわってしまった!」
「ダメそうだね(即答)」
「ああ……(諦め気味)」



「じゃあ、薔薇水晶、頑張れよ?」
「うん……」
「いやマジで」
未だに眠そうな薔薇水晶。嫌な予感は不安に変わった。っていうか、どうも薔薇水晶寝ながら歩いていたっぽい。
「ジュンは……どうしてるの?」
「そこら辺ぷらぷらしてるよ。やることもないし」
「あ、じゃあ、ジュンくんも僕に付き合ってよ」
心なし嬉しそうな顔をしている蒼星石。
「ちょうどやることもないし……うん。付き合うよ」
ジュンがそう言った、その時――
「――――!(ぴっきーんっ)」
薔薇水晶の目が、光った。
「ホント? 嬉しいなぁ」
「……嬉しいとか言われると照れるな」
が、そんな薔薇水晶にも気付かず、二人はいちゃついていた。二人して顔を赤らめている。なんだ、この初々しさは。
「ジュン」
「薔薇水晶?」
「ちょっと、待っててね」
そういい残すと、薔薇水晶はすごい勢いで走っていった。
「……えっと、起きたのか?」
「うん、そうみたい、だね」
二人は、いまいち状況を理解できてなかった。


「あは、それにしても、薔薇水晶はかわいいね」
「……そりゃ、からかってるのか?」
「まさか。……あーあ。ホントにラブラブなんだね。妬けちゃうなぁ」
少し、寂しそうな口調だった。
「あ」
そこで、ジュンは今さら思い出す。いつだったか、薔薇水晶が言った言葉を。
『翠星石と蒼星石がキス――』
「どうかした、ジュンくん?」
「え、あ、いや……」
どもる。薔薇水晶が、嘘をつくとは思えなかった。聞いたときはそんなに慌てなかったが、本人を目の前にすると、すごい慌てた。
「あの、さ、蒼星石」
「?」
少し、ジュンは悩む。あまりこういうことは聞くことではない。少なくとも、薔薇水晶から言われなければ、知らなかったことだから。つまり、蒼星石は隠しておきたいことだから。
でも、悩んだ末に、言うことにした。どうしても、気になった。
「僕にキスしたって、本当?」
「――!?」
その、蒼星石の顔が、全てを物語っていた。
「……起きてた、の?」
「いや……薔薇水晶から」
「あはは、見られて、たんだ」
蒼星石の目が落ち着きなく動く。それを見てジュンは、選択を誤ったと悟る。……それは、聞かなくてもいいことだった。
「――あの! ジュンくん!」


「え?」
「ご、誤解しないでほしいのは、別に隠していたわけじゃないんだ。そっちの方がいいかなって思って。あ、だからといって、何となくキスしたわけじゃなくて……」
あー、うー、と、しどろもどろに蒼星石は言った。必死に、何かに耐えるように必死に。
「蒼星石……」
「(びくり)」
ジュンが名前を呼ぶと、蒼星石はさっきまでの慌てぶりが嘘のように静かになった。
「……その、ごめん」
「……あはは、やだなぁ。僕、何も言ってないじゃない?」
「そうだけど、」
「ダメ。……そういうのは、せめて気持ちを伝えさせてよ。それから、言ってほしい」
本当は、言ってほしくなんてないけど――。蒼星石は、そう付け加えた。
「……桜田ジュンくん」
改まって、蒼星石はジュンに相対した。
「僕は――あなたのことが、大好きです」
にっこり。そんな表現がぴったりと当てはまる、とても綺麗な笑顔だった。
「……ごめん、蒼星石」
「……あーあ。フられちゃった」
まるで、何でもないように、蒼星石は言う。
「でも、……これ、で……すっきり、し……た」
でも、それは虚像で。やがて、蒼星石の声は小さくなっていく。
「――ホントに、ごめん」
「謝らない、でよ……何だか、悲しくなっちゃうよ……。あはは、はは……、う――うわあああああああ」


その頃の、薔薇水晶。
「来たか、薔薇水晶」
「……はい」
「ん、何だこれ……? ――今日の解答じゃないか!? これをどこで?」
「今解いた」
「そんなバカな。今来たばかりなのに――」
「今 解 い た」
ぴっきーん。
「……薔薇水晶は、今、解いた」
「そう、それでいい……じゃあ、帰ってもいいよね?」
「ああ、いいぞ……」
「じゃ……」
挨拶もそこそこに、薔薇水晶は走り出した。急がなければ、よくない気がした。蒼星石の、あの目は、ダメだ。何か、きっとよくないことが起こる。私と、同じ目だった。
「あ……ジュン――!?」
そこで、薔薇水晶が見たもの。それは――

――キスしている、二人の姿だった。



蒼星石は、ジュンにすがりついた。泣きながら。必死に、感情を伝えようとして。
「……これで、最後だから。許して、ね?」
「…………」
ジュンは、抵抗しなかった。かわりに、肯定もしなかった。ただ、蒼星石に身をゆだねた。
(ああ――ごめん、薔薇水晶)
ただ、薔薇水晶の悲しそうな顔が浮かんでくるのを、必死に押さえて。ただ、その身をゆだね――
「ん……」
そして、唇は、重ねられた。
「……本当に、ごめんね」
「蒼星石が、謝ることじゃ、ない」
「……そういう、優しいところ、好きだったよ。今でも好きだけど」
「なあ、蒼星石――」
そう、ジュンが声をかけた時。
「ダメ――!」
「ば、薔薇水晶!?」
「ダメ! 絶対ダメ! 浮気はダメだって言ったじゃない! ダメだよ! 私を一人にしちゃ、イヤだよ! う、うわあああああん!」
それは、ジュンですら一度も見たことのない薔薇水晶の姿だった。子供みたいに、ただ泣いていた。感情のままに泣いていた。
「落ち着けって! 薔薇水晶!」
「うわああああ、ジュンのばかあああああ……」
――結局、薔薇水晶を宥めるのに10分以上かかった。


「う、……ぐす」
「だから、大丈夫だよ薔薇水晶。彼氏借りちゃって、ごめんね?」
どういうわけか、蒼星石が薔薇水晶を宥めていた。
「……はぁ。こんな薔薇水晶を見たら、盗る気も起きないや」
「…………!(ぶんぶん)」
薔薇水晶は、ジュンの腕をとって、必死に首を横に振った。
「大丈夫だよ。……でも、少しでも油断したら、盗っちゃうからね?」
「(こくこく)」
今度はすさまじい勢いで首を縦に振った。
「……蒼星石」
「ねえ、ジュンくん」
「え?」
「明日は、園芸部手伝ってよ。薔薇水晶も一緒にさ」
ジュンは思う。それは、蒼星石の、精一杯の強がりで――
「ああ、絶対、手伝うよ」
「……ありがとう。じゃあ、また明日ね」
そして、それが、蒼星石の、優しさなんだと。
「……ホントにありがとうな、蒼星石」
去っていく背中に、ジュンはそっと語りかけた。


エピローグ

「そういえば、薔薇水晶。テストはどうしたんだよ?」
未だに甘えてくる薔薇水晶をじゃらしながら、ジュンは聞いた。
「終わったよ?」
「随分早くないか?」
「問題、昨日のうちに手に入れておいたからね」
「――は?」
「だから、問題は、昨日のうちに――っ!?」
薔薇水晶は、後ろからのオーラを感じる。それは、修羅のオーラ。
「……へえ。詳しく聞こうか? 特に、なんで昨日徹夜で僕がつき合わされたくだり」
ジュン的には、別にテストの問題を手に入れたのはどうでもいいらしい。
「……怒らない?」
「多分」
「……う、うー……その、ね? あの、ね?」
薔薇水晶は、恥ずかしそうに言った。
「ジュンと、一緒に居たかったの」
「あー……」
ジュンは空を見上げる。ダメだ。そりゃあダメだ。反則だ。
「薔薇水晶」
「ん?」
「帰って、二人で一緒に寝よう。徹夜明けでくたくただ」
「うん。……えっちなことするの?」
「しない」
「ざんねん」
そんな、少し成長した、幸せそうな二人。

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