※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

 ここは、デュエルアカデミア・サウス校。
 超一流の決闘者を養成する為に“あの”コーポレーションが設立したこの学園は、全国
各地からデュエル・エリートが集まっている。
 皆、明日の決闘王を夢見て日々努力し、デュエルの腕を競っているのである。
  
 そして、ここはデュエルアカデミアの職員室である。
 職員室の一角にある一般職員用デスクでは、一人の教師が先日行われた月一テスト
の解答用紙を前にして唸っていた。
 彼の名は兄者。デュエルアカデミアの教員で、実技の教官を務めている。
 そして彼が前にしている解答用紙の氏名欄には、『真紅』と書かれていた。
  
「……う~む」
「どうした兄者? 溜め息など吐いて」
「ん? ああ、弟者か……」
  
 兄者に声をかけてきたのは、兄者と瓜二つの男だった。
 彼は弟者。兄者とは双子の兄弟であり、彼も実技の教官だ。兄者と弟者は教師である
と同時に、巷で『流石兄弟』と呼ばれて知られている、実力派の決闘者でもある。
  
「兄者らしくないな、何か悩みでも?」
「いや、悩みというほどでもないんだがな」
「その答案は……ああ、あのレッド寮のお嬢様か」
「うむ。奴は筆記はいいのに実技が絶望的でな……俺の教え方が悪いんだろうか」
「いや、そんな事はないと思うぞ。別に兄者の教え方が上手いと言う訳ではないが」
「弟者……ちょっと表へ出ろ」
「OK兄者、時に落ち着け。要するに、成績不振者の処遇について考えてたんだな?」
「ああ。近々補習か追試でもやろうと思っていたところだ」
「ま、無難な線だな」
  
 この学園は決闘者養成の為の学園であり、成績不振者は寮の降格や退学という処罰も
日常茶飯事として行われる。兄者も実技担当の教官として、何かしらの措置を取らねば、
と考えていたのだ。
 特にオシリスレッドの生徒は、補習や追試を行う際、その人数割合がとても多い。折角
決闘者の為の学園に進学したのだから、もう少ししっかりして欲しいというのが兄者の
正直な感想だ。
  
「補習や追試と言っても、具体的には何をするんだ?」
「ああ。詰めデュエルとか、テーマデュエルなんかをやろうと思っている」
「そうか……だが、詰めデュエルやテーマデュエルでは本当の実力は計れないと思うぞ」
「う~む……やっぱりそうかなぁ…………」
 
 腕組みして考え込む兄者に、弟者は呆れたような顔をして言った。
 
「……ていうか兄者、何か忘れてないか?」
「え? 何を」
「俺達の絶対の得意分野だ。あれなら、デュエルの実力や人間性も見る事が出来る」
「あれか……確かに、あれは俺達兄弟の最も得意とするところだな」
「やっちゃうか、兄者?」
「……やっちゃうか、弟者」
 
 ――こうして次の日、各寮の掲示板に連絡のプリントが貼り出された。
 
   
  
               ≪追試験のお知らせ≫
  先日行われた月一テストにおいて、実技科目で赤点を取った生徒は、
  ○月☆日の追試験に参加する事。
  追試験の内容は、実技教官の流石・兄者と流石・弟者のタッグとの
  タッグデュエルとする。生徒のペアは後日抽選で決定し、連絡する。
 
  各寮の成績不振者は必ず参加し、合格出来るよう最大限努力しよう。
 
 
 
 無論、それはオシリスレッドの真紅も知るところとなった。
   
「……翠星石、これは何かしら」
「読んで字の如く、追試のお知らせですぅ」
「納得いかないのだわ」
 
 真紅は、聞いていて清々しいほどにキッパリとそう言い切った。
 確かに自分はド素人で、実技は小学生以下のレベルかも知れないが、それを埋める為
に筆記試験には人一倍力を入れたつもりだ。今までも、実技がいかにダメでも筆記で補う
事が出来ていた為、補習や追試を受けさせられる事はなかった。
 だが、どうして今更追試なのか。真紅は正直、憤懣遣る方ない気分だった。
 
「兄者先生は何を考えているのかしら。実技科目なんて、デュエルアカデミアの沢山ある
 科目のうちの一科目にすぎないのに、わざわざ追試なんて」
「真紅……このデュエルアカデミアがどういう学校なのか、ホントに分かってるんですぅ?
 ていうか何しにこの学校を受験したんですか? カードに関してはズブの素人なのに」
   
 翠星石が、前々から聞きたいと思っていた最も根本的な疑問を投げかけると、真紅は
見る見るうちに顔を真っ赤にして大声を張り上げた。
   
「あ、貴女には関係ない事なのだわ! 私は別に、ジュンが……」
「ジュン? あのオベリスクブルーのヒキコモリの事ですぅ?」
「な、何でもないのだわ! 今のは忘れなさい! いいわね?!」
    
 ……面白いくらい丸分かりだ。言わないでおいてあげるのが優しさという事だろうか。
 それはともかく、今は真紅が追試に受かる事を考えなければなるまい。真紅の実技の
成績を鑑みれば、停学や退学すら十分に起こりうる事態なのだから。
   
「翠星石は赤点じゃないからいいですけど、真紅はどうするんですぅ? タッグデュエルも
 やった事ないんですよね?」
「ええ、丸っきり初めてなのだわ」
「授業じゃあんまりやんないですからね……それにまだタッグパートナーの顔も知らない
 ですし、戦略の立てようもないですぅ」
「まあ、それはおいおいでいいのだわ。ところで翠星石、兄者先生と弟者先生はどんな
 デッキを使う決闘者なの? 教えなさい。そして対策を立てるのだわ」
     
 どうしてこの素人決闘者は、他人に命令する時に限って堂に入っているように見える
のだろう。無い胸を張って凛とした声を上げているその姿は、一端の決闘者と言っても
いいくらい、不必要な貫禄を伴っている。
 さっさと部屋に戻っていく真紅を追いかけながら、翠星石は肩をすくめて一人ごちた。
     
「……ったく、やれやれですぅ」
|