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帽子を忘れたことに気づかなければ、あるいは。

*蒼い子サイド

僕がジュンくんの家に帽子を忘れたことに気づいたのは、
幸い出て間もない時だった。

蒼「ごめん、翠星石。
  すぐに持ってくるから、先に帰ってて」

翠「わかったですぅ。早く戻って来いですぅ」


何故か胸騒ぎを感じる。
言いようの無い不安が込み上げる。

とにかく、早く取りに行こう。
そんな気持ちで一杯だった。



ギーッ。
蒼「あれ?鍵が閉まってないや。無用心だな」

僕は靴を履いたときに帽子を置いて行ってしまったので、
帽子はドアを開けてすぐのところにあった。

蒼「あったあった…」

あれ?ジュンくんの声。起きたのかな?
このまま帰るのはなんか泥棒みたいだし、
ちょっと挨拶でもしていこうか。

玄関と居間を繋ぐ廊下を歩む。


───あれっ?
薔薇水晶と何を     …!?

数メートル先に、見つめ合っている二人。
徐々に顔が近づく。 僕は思わず帽子を落としてしまった。

見てはいけないものを見てしまった気がして、僕は引き返──


ガツンッ


蒼「ひゃあっ」

僕は帽子につまずいた。

ジ「そっ 蒼星石…?」

モウダメダ。
アヤマラナキャ。アヤマラナキャ。

蒼「邪魔してゴメンね!?忘れ物しただけ… なんだけど」

嘘だ。ホントは止めたかった。二人を、止めたかった。

ジ「……あの、さ」

蒼「わかってるっ 真紅達には何も言わないよ」

薔「…蒼星石」

蒼「ひっ!?」

コロサナイデ。コロサナイデ。

コロサ  ナニヤッテルンデスカ?


ジュンくんと薔薇水晶、ちゅうしちゃってるよ?

ソンナモノミセナイデ。

ジ「薔薇水晶…? え?今僕…」

薔「…次は…押し倒す…」

ヤメテ。ヤメテ。ヤメロ。

蒼「……やめてよ」

薔「嫌…」

蒼「僕は何も見なかった。それじゃダメ…?
  もう…僕に何も見せないでっ!」

感情が溢れ出す。悪いのは僕なのに。
涙と共に溢れ出す。勝手なのは僕なのに。

薔「ジュン… しよ?」

ヤメロ。ヤメロ。ヤメ…ロ

ジ「蒼星石、悪いけど…帰った方が良いと思う」

心が引き裂ける。そんな比喩がお似合い。
二人から逃げてしまおうか。
卑怯な僕は感情に、涙にまかせて逃げてしまおうか。

蒼「ごめん。…キミが好きだった…」
最後に一つ、置き土産。
謝罪の言葉に心は込めない。
何故なら僕は卑怯者だから。


バタンッ。



翠「どっどうしたですか!?」

蒼「うぐっ、ひぐっ …なんでもない。ひっく 一人にさせて」


バタンッ。


ナンデモナクナイ。タダニゲタイダケ。
何も言わず、僕は孤独に逃げ出した。


fin

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