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 デュエルアカデミア・サウス校。
 一流決闘者を養成するこの学園は、全国各地からデュエル・エリートが集まっている。
皆、明日の決闘王を夢見て日々努力し、デュエルの腕を競っている。

 さて、そこに実技の点数が非ッ常ォ~に悪い、ド素人同然の奴がいるんですが……。
 
 
 
 ここはオシリスレッド。
 デュエルアカデミアの中でも、成績不振のドロップアウト組の吹き溜まりとして認識され
ており、日常生活や各種行事においても露骨に冷遇されている寮である。
 その成績ダメダメな寮の一室では、何十枚ものカードが散らばり、その部屋の中心に
は二人の少女がいた。共に赤い制服を着込んでいる。

 

「……アカデミアに来といて今更カードを教えろって、ツッコミどころが多くて困るですぅ」
「つべこべ言わずに教えなさい」
「ティーチングしてもらおうって相手にその口の聞き方はなってねぇですぅ。遊戯王OCG
のルールを覚える前に人としてのルールを覚えやがれですぅ」
「教えなさい。さもなくば二度とカードが持てない身体にしてあげるのだわ」

 

 互いに牽制しあうようなオーラを出し合っているのは、オシリスレッドの1年生真紅と、
同じく1年生の翠星石である。
 散らばった何十枚ものカードは先程真紅が売店で買い込んできたもので、真紅はこれ
らのカードを携えて、同室の翠星石に『遊戯王カードを教えろ』と言ってきたのだ。

 

「……ま、これくらいカードがあればそこそこのデッキは組めそうですぅ。じゃ、今のデッキ
を見せてみるですぅ。どんなド素人デッキなんだか……」

 

 翠星石は真紅からデッキを受け取ると、一枚一枚確認していった。
 すると、翠星石の手がある一枚のカードを見た時に止まった。

 


≪レオ・ウィザード≫ ★★★★★
地属性 魔法使い族
ATK:1350 DEF:1200


 
「………………」
「あら、翠星石もそのカードには注目するのね。3枚揃えるには苦労したのだわ」

 

 翠星石は、無言で≪レオ・ウィザード≫のカードを破り捨てた。

 

「ちょ、人のカードに何を」
「もうデッキ構築とかそんなレベルじゃねぇですぅ! ★5以上は生け贄が必要だって事
くらい一般常識! 幼稚園児でも知ってるですぅ! こんな存在価値すら疑問なカード、
デッキに入れてる奴を初めて見たですぅ!」
「でも、GBのゲームでは生け贄なしの最大攻撃力なのだわ」
「てめーは何年昔のゲームで遊んでるんですぅ?! 顔洗って出直しやがるですぅ!」

 

 真紅の余りの問題外ぶりに軽くキレた翠星石は、床に散らばったカードの中から数枚
を拾い上げ、真紅に見せた。

 

「このカードをよく見るですぅ……★4の最大攻撃力は2400。しかし、これらのカードが
使用されるってのは珍しい例ですぅ」
「生け贄なしで2400なら、レッドアイズやサイコ・ショッカーとも互角じゃない。どうして
皆使わないのかしら?」
「攻撃力ばっかじゃなくて効果テキストもよく読むですぅ」

 


≪レアメタル・ドラゴン≫
効果モンスター
星4/闇属性/ドラゴン族/攻2400/守1200
このカードは通常召喚できない。

 


≪電動刃虫≫
効果モンスター
星4/地属性/昆虫族/攻2400/守  0
このカードが戦闘を行った場合、
ダメージステップ終了時に相手プレイヤーはカード1枚をドローする。

 


「通常召喚が出来ない……? どういう事?」
「≪レアメタル・ドラゴン≫は通常召喚が不可能……つまり、自分から墓地に落として、
蘇生系魔法カードとかによって特殊召喚するなどの手順を踏まなければならない、って
事ですぅ。で、そっちの≪電動刃虫≫は、攻撃するごとに相手にドローさせちまうですぅ」
「通常召喚が出来ないのがデメリットになるのは、召喚条件を整えるのが面倒だからね」
「……というより、汎用性の高い蘇生系カードは大体禁止か制限カードですから、攻撃力
2400のデメリットアタッカーの為だけに使うのは勿体無さすぎですぅ」
「で、≪電動刃虫≫の方だけど、どうして相手にドローさせるとまずいの? 相手が何か
カードを使う前に、ライフを0にすればいいだけなのだわ」
「まあ、その辺は詳しく話すから、耳の穴かっぽじってよ~く聞きやがれですぅ」

 

 翠星石は、散らばったカードを一箇所にまとめると、ベッドの下のカードケースから数枚
のカードの束を取り出した。
 TCGの元祖マジック・ザ・ギャザリングである。

 

「MTGはクリーチャーや呪文をプレイする為に、土地を積んでマナを出さなきゃならねぇ
ですぅ。でも、遊戯王OCGはそれがない。つまり、どういう事ですかぁ?」
「ノーコストでモンスターや魔法カードが使えるのだわ」
「半分正解、ですぅ。ノーコストという事は、マナや土地へのカード出費がないって事で、
カードのロスが少ないんですぅ」
「それで?」
「遊戯王OCGには、ドローに関するカードは少ないんですぅ。あったとしても、ほぼ確実
にこっちが損する効果ばかりですぅ。その点、MTGみたいなマナの概念のあるゲームで
は、ドローに関するカードは沢山あるんですぅ」
「マナへのカード出費を、ドロー効果のカードで補うのね?」
「そう。でも遊戯王OCGにはそれがない。つまりカード一枚一枚の重みが違うんですぅ」


 MTGのカードをしまうと、今度は遊戯王カードの方を広げ、手で弄ぶ。
 現環境で禁止カードになっているドロー強化カード、≪強欲な壺≫である。
 かつては『強欲な壺*3にあらずんばデッキにあらず』とまで言われた、遊戯王OCGに
おいて最も有名なカードの一つであるそのカードは、何のデメリットもなくただ2枚ドロー
するだけという、現環境では考えられない汎用性とアドバンテージ獲得能力を持つ。
 このようなシンプルなカードこそ、実戦では強さを発揮するものなのである。


「だから、一回の攻撃よりも一回のドローの方が重い時だってあるんですぅ」


 手札における優位性――ハンド・アドバンテージは、カードゲームというジャンルに特有
の、そして絶対の概念である。手札を効率的に増やしてデッキを回せばキーカードを引く
確立も高まるし、豊富な手札があればブラフをかます事も出来る。


「まあ、★4のアタッカーとして使われるのは、攻撃力1900のバニラ(効果なし)モンス
ターか、2000かその辺のデメリットアタッカーですぅ。高攻撃力は上級モンスターに任
せて、★4以下はアタッカーとブロッカー、それに効果モンスターを揃えときゃいいですぅ」
「なるほど……勉強になるのだわ。ありがとう、翠星石」
「こんなもん、基本中の基本ですぅ。じゃあ、次はデッキを組んでいくですよ」


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