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第四話 「雪溶け」


-翌日八時五十分
病院の玄関で約束の10分前に行くと
すでにベジータはそこで待っていた。
高校時代より前兆があった髪の毛は今や
前兆を通り過ぎて光を反射する綺麗な頭にへとなっている。

「雪華嬢、早いな。」
「あなたこそ。」

ベンチに腰掛けていたベジータがこちらを
向いて喋ってくる。正直眩しい。

「見違えましたわね。」
「ん、そうかな。」

ええ、随分と見違えましたもの。
そんな事を考えてるとベンチから立ち上がり
こちらに来る。

「さて、そろそろ行くか。」
「ええ。」

2人はゆっくりと歩き出す。

少し歩くと病院の玄関が見える。
いつも思うがほんとに大きい病院だ。
面会時間開始の5分前だがそれぐらいはいいだろうと思い
病院の中へと入る。別に看護婦達にも注意されないからいいだろう。
そしてエレベーターへと向かい病室がある階を押す。
そういえば最近エレベーターとかの事故があるらしいが大丈夫なのだろうか?
まさか病院がそんな会社のエレベーターを使ってないだろうななど
色々考えてる内にエレベーターは着いていたので降りる。
危うく降り忘れて違う階まで行く所だった。
長い廊下を歩いていく。
歌が聞こえてきたので病室はもうすぐそこだ。

「何なんだ?この歌は?」

確かに気になるだろうな。
私も始めて聞いた時は同じだったし。

「歌ってる患者さんがいるんですよ。いい人ですよ。」
「ほう。」

病室の前へと着く。
念のためにノックをする。
コンコン
やはり返事は無い。少し悲しくなりながらも中に入る。
暗い病室の中には相変わらずベッドに寝る薔薇水晶の姿があった。

「おはようですわ、ばらしーちゃん。」

無論返事は無い。
ゆっくりと横たわる薔薇水晶へと近付く。
そして顔を撫で、髪をといてやる。
黙ってただゆっくりと。

「薔薇嬢・・・。」

ベジータが名前を呼ぶ。
その声には何か哀愁がただよっている。
側に近付くと続いて喋りだした。

「・・・うまくは言えない。
 だが一言言わせてくれ。
 薔薇嬢、あんたの弱ってる姿は似合わないぜ。
 早く目を覚ましてくれよ、いや覚ましてくれるな。
 何たって薔薇嬢だもんな。」

ベジータの顔を見てみると涙が流れている。
それも大量に。バッグからハンカチを出してベジータに貸すと
ありがとうとだけ言って顔を拭き始めた。
1分程立っただろうか。
涙を拭きながらベジータが喋ってきた。

「・・情けないぜ。」

「情けないぜ・・・俺。」
「・・・。」
「俺は保険屋だから薔薇嬢の為に相手からの賠償金をとったりする事は出来る。
 けどそれじゃあ薔薇嬢は目覚めない・・・。
 俺は医者じゃないからよ・・・何も出来やしない。」

いつも思うがこの人は本当に優しい人だ。
死んだジュンさんもそうだったがこの人も他人の為に泣いてくれる。
他人の為に力になってくれる。他人の幸せを祈ってくれる。
なんて人なのだろうか。

「・・・ベジータさん、何も出来ないなんて事は無いですよ。」
「・・・え。」
「私も医者ではありません、だからばらしーちゃんの怪我を治したりなんか出来ません。
 それにあなたみたいに保険屋でも無いからほんとに何も出来ない。」
「・・・。」
「だから私は・・・せめて一緒に居ようと思ったんです。
 言葉は届かない、助けも届かない、じゃあ何が出来るのでしょう?
 それは居てあげる事なのでは無いかなと思ったんです。」
「・・・。」

いつの間にか雪華綺晶の右目からも涙が流れていた。
本人は気付いてる様子は無いようだが。

「だから私は・・・寝てる間、そして起きてからも一緒に居ようと思ったんです。
 ベジータさん、友達のあなたが一緒に居るのはばらしーちゃんにとっても
 幸せな筈です。だから何も出来ないなんて事は無いんです。
 あなたは居てくれてるのですから、本当に感謝します。」

泣きながらベジータの方を向く。
その表情は悲しみと喜びが満ちていた。

「・・・。」

ベジータは自分のバッグからハンカチを出す。
保険会社からの支給のハンカチだが。

「雪華嬢。」

名前を呼びかけると同時にハンカチで右目を拭く。
自分の涙で湿った雪華綺晶のハンカチで拭くのは何なので
自分のハンカチで拭く。
雪華綺晶は驚いた表情をしている。

「泣いていたのですか・・・私・・?」
「ああ。」

黙ってそのまま拭き続ける。
暫く痛くならないようゆっくり拭いてると涙は全部拭けた。

「雪華嬢、何て言ったらいいかよくわかんないが・・・。」

一息着いて再び喋りだす。
涙はもう流してはいなかった。

「あんたは優しい人だ。妹の事を一杯考えてやって居てやったりして・・。
 そんな優しいあんたが・・・優しい姉が居るんだから薔薇水晶は必ず戻ってくる・・。
 必ず目を覚ます!必ず!」

目の前で拳をぎゅっと握る。

「ベジータさん・・・。」

また涙が流れそうになるが必死にこらえる。
こらえて一息おいて喋りだす。

「色々言いたい事があります。それはほんとに色々で一杯で・・、
 言葉では語りきれそうにはありません。けど・・・強いて言葉で言うなら。」

手の甲をつねり痛みで涙が出るのをこらえさせる。
涙目にはなってるかもしれないが流れはしない。

「ありがとうございます。」

満面の笑みで言った。
ベジータは微笑むとただ一言。

「友達なんだぜ、礼はいらねえぜ。」

もう一度体の目で拳をぎゅっと握り力強くベジータは言った。
ああ、本当に優しい友達を持ってよかった。

その後二時間程2人はずっと病室で
薔薇水晶の側にいていた。
そんな中雪華綺晶が唐突に喋りだす。

「ちょっと会いたい人がいるのですが一緒に会いませんか?」
「会いたい人?」
「ええ、水銀燈の従姉妹の人なのですがその人のお見舞いもしたくて。
 そしてもう一人雛苺の従姉妹の人も。」
「・・・優しいな。勿論いいぜ。
 しかし・・・友達三人の関係者が入院とはな。」
「まったく・・嫌な運命ですね。」

椅子から立ち上がりスカートの埃をぱっぱと手で払う。
バッグを持って行く用意をすると再び薔薇水晶に近付く。

「また戻ってきますね。一杯話をしてあげますわ。」

顔を撫でるとふりむいて入り口へと向かう。
ほんとは今度は思い切って唇にキスでもしようかと思ったのだが
流石にベジータの目の前ではそんな事は出来ない。
廊下に出ると歌のする方の部屋へと向かう。
まずは柿崎さん。
ノックをすると歌をやめドアの向こうから弱弱しい声で返事が来る。

「誰?」
「白い天使ですわ。」
「天使さん・・?入って。」

ベジータは何やら不思議そうな表情を浮かべてる。
そりゃそうだ、いきなり天使ですなんて言ったら誰でも疑問に思う。

「天使って?」
「ふふ・・気にしないでいいですわ。」

笑いながら答えるとベジータは困惑した表情を浮かべる。
ベジータも何か呼び名をつけられるのかな?

「そういや雪華嬢、雛嬢の従姉妹の入院してる人って
 歌を歌ってる人なのか?」
「ええ、オディールさんよ。」

そう答えると部屋へと雪華綺晶は入る。
ベジータは歌のする後ろの部屋を見る。
名前が書かれてる。
オディールと確かに書かれている。
オディール・フォッセーと。

「何をしているのですか?」
「え、いいいや何でもない。」

少しうろたえてるのが声に出たままだがそのまま部屋に入った。
オディール、オディール・フォッセー。
あまり信じたくはないがまさかと思う。
鞄の中の保険関係の書類を見て今日雪華綺晶と会う
加害者の娘の部屋の番号を確認する。


その番号を覚えてもう一度振り向く。
其処には覚えた部屋番号と同じ番号が書かれていた。

「・・・此処からが本当の地獄だ。」

現実から逃げるが如く中の部屋へと入り
個室のドアを閉めてベジータは水銀燈の従姉妹なる人物の所へと向かった。
雪華綺晶はすでに何か色々話している。

「何をしていたのですか?」
「いや、気にするな。」
「・・・?」

何なんだろう?まぁそんな事はどうでもいいでしょう。
ベッドに座ってるメグがベジータの方を向き不思議そうな
顔をした後喋りだす。

「この人は?」
「私の友人のベジータですわ。」
「成る程、友達なの。よろしく王子さん。」

いきなり王子と言われてベジータは困惑する。
私も天使と言われた時は同じ反応だったのだろう。

「お、王子・・?」
「うん、王子。私を生と言う名の呪縛から解き放って
 死という幸せを運んでくれる王子。」
「へ・・・へ・・。」

ベジータはいきなりそんな事を言われたもんだから混乱している。
そんな中横から雪華綺晶が喋ってくる。

「柿崎さん、殺してとかそんな事を言うのは水銀燈からもやめてって言われてるのですよ!」

少し怒り気味で柿崎さんに言う。
柿崎さんは笑ったまんまで答える。

「メグでいいよ、メグ。それにこれって・・・私のじゃない。
 私の命、だから何言ってもなにしてもいいでしょう?」

自分の左胸らへんを触りながら喋ってくる。
柿崎・・いやメグさんは・・・。

「ほんとあなたって言う人は・・・・。」
「ふふふ。」

相変わらず笑いながら語りかけてくる。
この人は一体何を考えてるのだろう・・。

「あ、あの・・・ん?」

ベジータが喋りかけようとしたが途中で言葉が切れる。
一体どうしたのだろう?
ベジータが窓の向こうに目線を泳がしているので目線を追って
窓の方を見ている。みると外にはわずかな量だが、粉雪というレベルだが
雪が降っていた。

「あ・・・雪ですね。」
「ほんとだ。」

メグと雪華綺晶が言う。
この地域はそんなよく雪が降るという訳でも無いのだが
粉雪程度の雪なら毎年降っている。

「ねえ、私思うんだけど。」

メグが窓を見ながら喋りだす。

「私って昔から・・ずっと子供の頃からこの病室に居るんだ。
 だからこの窓からずっと雪が降るのも見てきた。
 けど毎年毎年粉雪なんだ。積もりもしないし
 すぐ消えちゃう弱々しい粉雪。」

ベッドから立ち上がり窓に触れる。
自殺防止の為か病院の窓は開けれないようになってる。

「けどね、忘れられないの。
 一年に一回ぐらいしか降らない粉雪。
 積もりもしない弱々しい粉雪。
 ほんのちょっとでやんじゃう粉雪。
 ちっぽけなのに忘れられないんだ。」

再びベッドに戻って座って窓を見ると再び喋りだす。


「粉雪はすぐ溶けちゃう。ちっぽけな存在。
 けど人の“思い出“の中じゃずっと降り続けている。
 粉雪は人の心で生き、降り続ける。
 じゃあね、私ってさ。」

いつもの笑顔が少し悲しい顔になる。
少しするとまた笑顔に戻る。

「何なのだろね?ちっぽけな粉雪以下の存在なのかな? 
 弱くて弱くて・・・。そして忘れられる・・・。」

・・・何だろう?この気持ち。
悲しいと言えばいいの?
それにしては重い、凄く思い。
余りに重い悲しみ、それをメグさんは背負ってるのか。

「私って何の為に生きてるんだろ?死にたいな・・・。」

・・・言葉が出てこない。
何と言えばいいのだろう?この悲しみに対抗する
言葉が全然思いつかない。
そんな中ベジータが叫ぶ。

「んなもんねえ!」

かなりの大声で叫んだ為に耳に響く。
雪華綺晶もマグも驚いて呆気にとられる。

「そんなもんねえ!俺にもねえ!何の為に生きるか・・・。
 生きる理由なんてしらねえ!それを探す為に生きてるんだろ!」

ベジータが怒っている。
凄く怒っている。
こんな姿は今まで見たこと無い。

「だから・・・死にたいとか・・んなもん言うなよ!」

涙を流しながらそう言った。
言われたメグはというとまだ驚いた表情をしている。
しかし暫くするとまたいつも笑顔になった。

「あなたいい人ね、王子さん。」

怒り泣いてたベジータの表情が少し落ち着いていく。

「・・・人に迷惑ばかりかける人生で・・・生きてていいのかな?」

メグさんは子供の頃からずっと入院している。
何年も何年も・・・。
だからそれが看護婦や他にも色んな人に迷惑だと考えてるのだろう。
けど・・・。

「・・・当たり前ですよ、生きてて欲しいって自分でもいい、誰一人でも
 思っていたら生きる意味というのはあるんですよ。」

メグの肩を掴み顔を近付け喋る。
メグはまた驚いた表情でこちらを見てくる。

「だから・・・死にたいとか殺してとか言わないで下さい。
 私達は・・・生きて欲しいと思ってるのですから。」

こらえようと思ったがこらえきれず涙が出、泣きながら喋る。
暫くそれをメグは驚きながら見ていたが少しするとやはりまた
笑い顔になり雪華綺晶の後頭部へと両手を回す。
・・・何を?
そんな事を考えてるとメグが両手を手前へと引き寄せる。
自然と雪華綺晶の顔はメグに近付きそして・・・。
チュ
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
え、え・・今・・・何・・・?
一体何が起きたか把握できず驚いて体を跳ね除ける。
ベジータも涙がいつの間にか止まり唖然とした表情でこちらを見る。

「い、一体・・・何したんです・・・。」
「ちゅー。」

笑いながら言ってくる。
思わず顔を赤らめる。
泣きながら赤くなってさぞかし凄い表情になってるだろな。
なんて考えてる場合じゃない。

「一体何考えて・・・。」
「お礼。」

メグは地面に座ってる雪華綺晶に近付く。

「・・・生きて欲しいって思ってくれてありがとう。
 色々教えてくれてありがとう。」

またメグが雪華綺晶に口づけする。
思わず体を跳ね除け後ろへと行って壁へとぶつかる。
メグは雪華綺晶を見てクスクスと笑うとベジータへと近付く。

「・・・暫くは言わないよ、死にたいとか殺してなんて。
 今からじゃ遅いかもしれないけど生きる意味探してみるね。」

きょとんとしてるベジータにも口付けをする。

「あなたもありがと♪」

そう言うとメグはベッドにと戻っていった。
ベジータは呆然と立ち尽くしている。

「今日は時間・・・大丈夫?」

壁にもたれかかる雪華綺晶に聞く。
はっとし涙を拭き立ち上がる。
顔が赤いのはまだ元に戻らない。

「え、ええええとええととととととででですすすね。」
「落ち着いて話さないとまたちゅーするよ?」

ウインクをし投げキッスをしながら言ってくる。
顔がまた赤くなった。

その後は中々話がうまく出来ず10分ほどしてようやく落ち着いて
残りの面会時間はまだまだ残ってるものの加害者の娘さんと
会わなければいけないという事もあって部屋を出た。
オディールさんに会おうと思ったが時間も少ししか無いので後にする事にした。
あと5分程で会わなければいけないが
泣きまくった上に顔を赤くしすぎて大変なので
トイレに戻って化粧を整えている。
全く・・・何て人だ。
けど・・・少し考え方を変えてくれて良かった。
化粧を整えるとトイレから出る。
ベジータはまだ戻ってなかった。
やけに遅いな・・。
後三分しか無いがしょうがない。
待つ事にしよう。



少しするとベジータが出てきたのですぐにベジータに

行くように急かしてベジータについて行く。
約束時間を過ぎているので少し急ぎ足だ。
近付く度にベジータから笑みが消え
浮かない顔にとなっていってる。
暫くするとベジータが立ち止まったのは
歌が聞こえるあの二つの部屋の前だ。

「・・・え?」
「・・・。」

ベジータは黙ってオディール・フォッセーの部屋をノックした。

「サイヤ保険です。」
「あ、はい・・・どうぞ・・・。」

中から歌が消え返事が返ってくる。
ベジータはそれを聞くとドアを開けて中に入っていく。

嘘でしょう?そればっかり思っていた。しかし現実は覆せない。

「・・・こんにちわ。」
「こんにちわ、サイヤ保険のベジータです。」

保険屋の口調となりオディールにとべジータは
喋りかけている。

「あの・・・被害者の方は・・・?」
「・・・後ろに。」

ベジータがそう言うと雪華綺晶が出てきた。
雪華綺晶を見ると驚いた顔をし、昨日初めて会った時のように怯えだした。

「あ、あなたが・・・被害者の・・・左目に眼帯をした女の人の・・・?」
「・・・姉です。」

信じたくは無い光景を目の前に喋りながらコクリと頷く。
そうか、昨日怯えたのは私をばらしーちゃんと勘違いしたからなのか。
非常な現実の証を見たオディールは床に降りると
必死に土下座までして泣いて謝り出した。

「御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい。」

ただそれだけをリピートし雪華綺晶の手を掴んで自分の首に
当てるとこう言った。

「・・・殺してください、殺してください。」

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