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『MY BLUE MONDAY』

広大な敷地、緑の木々が立ち並び森を形成する。
幾重にも重なりそびえる木々、それは自然の城壁。
囲まれるように、その中に佇む巨大な日本家屋。
数多の部屋が重なり交差しあい、生まれたのは強固な要塞。
そこに住むは幾代にも渡りこの国で財を築いてきた超人達。

『柏葉財閥』

魔術理論をいち早く事業に取り込み成功を成し遂げた企業。
財閥と言うのは比喩ではあるが、その企業力は世界を牛耳るまでの財力。
政治、経済、一切合財に関し力を持つ。
しかし彼らはそれに甘んじない。己を律し、正義を重んじる。
不正を許さず、不義を許さず、正しき心を持ち闘う。
それは創始者の意思。
それはかつて義侠の武士と呼ばれた男の意志。
故に彼の家系に連なる者達は正義を重んじ、悪逆を働く者達を、
外道の魔術師を許さなかった。
それは今現在も引き継がれ、その家系の者達の結束の印となっている。



一人の少女がここにいる。少女の名は、柏葉巴。
柏葉財閥の時期後継者に名を連ねる、文武両道の武士。
姿は美麗にて可憐。言動は屈強にて清廉。
まさしく、家系に名を連ねる者として正しき姿。
故に少女は貫く、己の道を、柏葉の血が命ずる道を。
それはとめどなく己の血を流す苦難の道、しかし彼女は屈しない。
それが自分の信じる道と信じるゆえに。
彼女は武士、強固な鎧で己の心を縛る者。


月明かりが照らす庭向かいの廊下を進み、一つの部屋の前に立つ。
そこだけ西洋風の扉のついた部屋。
中から聞こえるのはおびえた嗚咽。
静かに戸を開け中に入る。
「どうしたの、雛苺?」
部屋の片隅で膝を抱え泣きじゃくる幼子に近づき、巴はその腕に抱く。
その肩は余りにも弱々しく、そこから感じるのは恐怖の震え。
「起きたの・・・・・・皆が起きたなの・・・・・・」
聞こえたのは怯えの声、はっきりとした恐怖。
「誰が?雛苺、誰が起きたの?」
「真紅・・・・・・みんな・・・・・ローゼンメイデンが、皆起きちゃったなのっ!!」
顔をあげ自分を見つめるその瞳、恐怖の碧。
それだけで巴は雛苺の異変を知ってしまう。
それは黙示録の訪れを知ってしまった人間の怯えと恐怖、絶望の彩。

「まさか、あのロボットは・・・・・・・機巧神なの、雛苺?」
先程入ってきた情報が脳裏に浮かぶ。巨大な蜘蛛とロボットの激闘。
柏葉財閥の情報力を持って分かった事はあのロボットが人外の法典、
魔導書が召喚する忌神(ギア)と同様の力を持つと言う事。
そして、あれほどの力を持つのは作業用ロボットである魔導機では
考えうることもなく、残った選択肢は機巧神だけであった。
巴の心を読み取り、雛苺は微かに頷き彼女の服を強く掴む。
機巧神(マキナ)、それはローゼンが人外の知識を持って生み出した機械の巨人。
彼の魔術で生み出された人工精霊を身に宿し、魔導書が召喚する異形の巨人、
忌神に匹敵する力を持つ人外の兵器、刃。
「始まっちゃう・・・・・・アリスゲームが始まっちゃうなの・・・・・・・・
 や・・・・いや・・・・・・ヒナしたくない・・・・・・やだやだやだっっ!!!!」
震え、怯え、暴れるその姿、幼子が悪夢に目覚め泣きじゃくる様。
頭を抱え現実から逃れるようにただただ、頭を振る。
「やだ!やだ!やだ!やだ!いやぁ!いや、い・・・・・・っ!?」
突然目の前が暗くなる。一瞬のことに雛苺は何が起きたかわからなかった。
次に感じたのは心臓の鼓動、柔らかい感触、甘く香る花の香。

「・・・・・・・・大丈夫、大丈夫だよ雛苺。」
雛苺は巴に抱き締められていた。
暖かく優しい抱擁、落ち着く心に雛苺は自分の身体を預けた。
まるで親に甘える子供のように、ただ巴に身を預ける。
「私が守ってあげる・・・・・・私は雛苺を消させない、必ず、絶対に。」
「巴・・・・・ヒナ、恐いなの・・・・・・」
「大丈夫、私は強いから。だからね、雛苺は心配しなくて良いの。」
「本当に?」
愛くるしい碧の瞳、目じりに溜まる涙を拭い巴は彼女に微笑む。
「ええ、もちろん。私は雛苺を守る。だって雛苺は私の大切な妹だから。」
巴はまた優しく雛苺を抱き締める。雛苺も同様に届かない腕を
巴の腰にまわして抱き締める。

窓の外、今宵も月は青白く燃え乙女を包む。

朝、それは普通はめんどくさくてだるくて起きる気にもならない朝。
大声張り上げて体力使うなんて愚の骨頂な朝。
なので、大声張り上げず静かにまるで忍者のように学校に行く用意をする。
居間には誰もいない。我が姉もおそらく大学に行ったところだろう。
そして、昨日から我が家の主になったつもりの勘違い人外娘もいない。
様変わりしたはずの僕の日常が、ああ素晴らしき事かな、いつもどおりここに。
テーブルの上に設置された弁当の包みをカバンに入れいざ学校へ。
と、その前に2階に臨時設置された『真紅』とご丁寧に表札まで付けられた
部屋の前でドアに耳をつけて中の様子を盗み聞きする。
「・・・・・・・・音はしない、な。よし。」
状況確認終了、真紅はただいまご就寝中と。
僕はほっと一息をつき、ようやく靴をひっかけドアを開け放ち外に出た。
ガチャリ、軽い金属音で広がったのは実に快晴な青空。
小鳥のさえずりが静かに響き、昨日のあの出来事がウソのように
街はいつもどおりの様相を保っている。
それはやはりアレか、警察と市の対応が早かったからか。
なのに、僕は街を壊しただけ。やったのはあの蜘蛛を倒した事だけ。
遠目にもまだ確認できる駅前のビル群の惨状が痛々しい。
褒められた事なのかも知れないがいい気分じゃないな。
大きく溜息をつく。

「あら、貴方が気に病む事ではないのだわ。」
「にしても気分悪すぎだ。アレをやったの僕なんだぞ?」
「でも、貴方がアレを倒さなければもっと酷い事になってたわ。」
「かもしれないけど・・・・・・・・・・・・ってなにぃぃぃぃ!!!??」
「ん?」
玄関のドアを抜けて表札前、そこに真紅がさも当然と言った顔で
佇んでいた。あっれぇおかしいなぁ、何でこのお方が
こんな所にいるんでしょうかねぇ?
さっきまで確かにあの部屋は静かだったはずですが?
「当たり前なのだわ、ジュンより先に起きてたのだもの。」
「心を読むな!っつか何でここにお前がいるんだ!?」」
「あら昨日言ったのだわ、『貴方と学校に行く』としっかりちゃんと。」
「ほぉ~そうかそうかぁ・・・・・・・・って納得できるかっ!!」
バン、思い切り足を踏み鳴らす。が、ご本人には効果なし。
ケロっとした顔でへーぜんと言葉を続けてくれている。
「大丈夫よ、学校については昔とさほど変わってないようだし。それに、
 見た目はジュンと変わりないから大丈夫なのだわ。」
「そこ論点違う!」
「問題なしよ。」
「ありまくりっだってーの!!!」

ああ不毛だ、不毛過ぎだ。頭痛くなってきた。
「何も心配する事はないのだわジュン。貴方は私のミーディアムなのだから
 普通に私の言う事を聞いてくれればいいのよ、下僕らしく。」
「最後の一言が嫌に生々しいんですがぁ!?」
「気にすることはないのだわ。さ、行くわよ。」
そう言って先に道を歩き始める真紅、が、すぐに立ち止まる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちょっと。」
「はい?」
「学校はどこ?」
「はい?」
「だからっ、学校は何処と言ってるのだわ!」
ようやくそこで振り向いた真紅。何でか顔が赤い。
真紅に染まった顔、あ、上手い冗談だな、これ。


ドボギュッッ!!!!

「げぼほぉえあぁぁ!!!???」
めり込む鉄拳、空を飛ぶ僕の体、きりもみ回転をして地面にキスした。
ああ、鬼の顔が見える。泣いた赤鬼ならぬ怒った赤鬼が。
「おごご・・・・・・ごっ・・・・・・ごげほぇ・・・・・・げぼぉぉぉぉ!?」
「バカにするからなのだわ、自業自得よ。」
「だ・・・・・・だからと、暴力を・・・・・・・ふるうか!?」
「あら、何のこと?」
平然と軽く手を払う真紅、コイツはアレか?口よりも手が出るタイプか?
そういや昨日も殴られたぞ僕。確かあの時は胸がち―――――
「破ァァァァァアァアァア!!!!!!!」
立ち上がろうとした僕の顎に見事なまでのアッパーカットが決まった。
あれだ、きっと今の僕はアレだ。
どっかの星座の名前付けた鎧を着たマンガみたくきれいに空を舞ってるぞ。
だって今、僕重力を感じてないし。つか痛みが何か遠いなぁ。
あ、空が。
あ、雲が。
地面が。
おとうさん。
おかあさん。
さいなら。


「ぐふっ。」

約5分後、どうにかあの世から生還した僕は真紅を従え学校へ向かっていた。
顎と首、頬、肩、足腰、とにかく体中がギシギシと音を立てている。
今生きているのが不思議だよママン。
いつかマジで死んじゃうよパパン。
「契約したミーディアムをみすみすつまらない事で殺しはしないのだわ。」
「いや、それ絶対ウソだろ?さっき明らかな殺意感じたし、めっちゃハードなの。」
「気のせいよ。」
「絶対ウソだ。」
「さあ?」
「ボソ(暴力女め)」
「何か言った?」
ゾクゥ、背中に冷たいものが走る。本能が生命の危険を告げた。
流石にアレをもう一度喰らうだけの体力はないです、はい。
「いいえ何も言ってないです。」
「そう、なら早く学校へ行くのだわ。」
そう言ってまた歩き始める僕と真紅。
どうにもこうにも拒否権及び選択権は僕にはないみたいですな。
仕方無しというか結局僕と真紅は学校へ到着する。
だけど、これはまだほんの始まりだったのだ。
誰も思いも知らない地獄の様な日々への。
それも僕限定。

続く。

てか続いてしまうのか?

やめてくれ。
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