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「一つ屋根の下 第九話 JUMと薔薇水晶」


僕は知っての通り、貰われっ子。まぁ、養子だ。5歳のときにローゼン家に貰われた。まぁ、苗字は未だに
桜田だけど。そして、偶然にも僕と同じ日に養子に来た子がいる。それが薔薇姉ちゃんだ。
薔薇姉ちゃんはすでに苗字はローゼン。確か旧姓は槐だったかな。初めて会ったとき、薔薇姉ちゃんは
人見知りだったのを覚えてる。僕は案外すっと姉妹の中に入れたけど、薔薇姉ちゃんは恥ずかしがってた。
だから、僕が仲介役になって薔薇姉ちゃんは姉妹の仲間入りしたんだっけな。ちなみに、同時に養子に
入ったけど誕生日は薔薇姉ちゃんのが早いので、薔薇姉ちゃんのが姉になっている。
それから、僕はよく薔薇姉ちゃんといた。薔薇姉ちゃんにとっては、他の姉妹と僕とはやっぱり違ったんだと思う。
同じ養子同士だからかな。基本的に無口だった薔薇姉ちゃんも僕とはよく話した。
確か薔薇姉ちゃんは女の子だけど、ロボットが好きだったんだよな。それで、僕が持ってた
小さい食玩をあげたんだ。ロボットの。確か、それは・・・・


・・・そんな夢を久々に見た。そういえばあれから結構経つなぁ。僕は眼鏡をかけると部屋を出てリビングに
向かう。その途中薔薇姉ちゃんに会う。珍しい事に眼帯はしていない。
「おはよ、薔薇姉ちゃん。ガンプラ作ってたの?」
「おはよう、JUM。うん、ちょっとね。」
薔薇姉ちゃんの趣味はプラモ作りだ。特にアッガイをこよなく愛している。薔薇姉ちゃんの部屋は女の子の
部屋とは思えないほどガンプラが飾ってある。アッガイのほかならサザビーがお気に入りのようだ。
そして、薔薇姉ちゃんはガンプラを作るときには眼帯を外す。何でも、目を酷使するため片目だと
負担が大きいらしい。
「最近毎日作ってるんじゃない?何作ってるの?」
最近薔薇姉ちゃんは学校から帰ると毎日部屋に篭ってプラモを作ってる。僕が部屋に行こうとすると
頑なに拒否される。もちろん、オカズ争奪ゲーム大会も棄権している。
「えっと・・・それはね・・・秘密・・・乙女の秘密さ・・・」
そう言って薔薇姉ちゃんは食卓についた。う~む・・・薔薇姉ちゃんが大好きなシュウマイの権利を放棄してまで
作るプラモ・・・一体どんなやつなんだろう。


「薔薇しーが変?そんなのいつもでしょ?」
今日は銀姉ちゃんと登校する。その際、薔薇姉ちゃんの事を聞いてみた。
「いや、そうじゃなくてさ。何か隠してるような感じって言うか・・・」
そう言う僕を銀姉ちゃんはニヤリとした顔で僕を見る。
「ふふっ、そんなこと?JUMてばぁ・・・愛されてるんだからぁ。」
全く意味が分からないんですけど?
「まぁまぁ、そのうち分かるわよぉ。それよりぃ・・・今日はお姉ちゃんが買い物の日だから付き合ってねぇ。」
「それって荷物持ちでしょ?」
「あら、JUMったらか弱いお姉ちゃんに重い荷物持たせる気ぃ?そんな子に育てた覚えないわぁ。」
育てられた覚えもありませんが。
「はぁ、まぁ僕も暇だし・・・いいよ。」
「やったぁ♪JUM好きよぉ~。」
銀姉ちゃんが僕の腕を取って胸に押し付けてくる。柔らかい胸の感触がなんとも言えない。
「うわぁ!ぎ、銀姉ちゃん!せめて学校では勘弁をー・・・」
「だぁめ。いいじゃなぁい、姉弟なんだからぁ。」
銀根ちゃんはそう言ってますます僕の腕を抱きしめてくる。寧ろ、姉弟だから勘弁して欲しいんですけども・・・
僕は周りの痛い視線を受けながら教室へ向かった。


そして、銀姉ちゃんと買い物に行き、買い物袋を抱えて家に到着する。
「お疲れぇ、JUM。さってっと・・・JUMは部屋にいていいわよぉ。御飯できたら呼ぶからぁ。」
銀姉ちゃんに進められて僕は部屋に行く。御飯ができるまで暇なのでPCの電源を入れる。その時だった。
「JUM・・・入っていい・・・?」
薔薇姉ちゃんの声がする。僕は断る理由も無く薔薇姉ちゃんを招きいれた。薔薇姉ちゃんは大きな風呂敷
を持って僕の部屋に入ってくる。
「薔薇姉ちゃん・・・それ・・・何?」
「むっふふ・・・見て驚きなさい・・・」
薔薇姉ちゃんが風呂敷を解く。その中にはかなり大き目のサイズのアッガイがあった。
「これは・・・アッガイ?これを作ってたんだ?」
「うん・・・自信作・・・超自信作・・・超だよ?」
僕はアッガイを眺める。成る程、確かに上手だ。フォルム、色、艶。どれをとっても完璧な気がする。
「あれ?でもさ、こんな大きなアッガイのプラモ売ってたっけ?」
僕の頭に疑問が浮かぶ。確かアッガイはMG・・・つまり100分の1が一番大きなはずだ。つまり、20センチ
程度。しかし、このアッガイはどう見ても30センチを越えている。
「売ってないよ・・・だって・・・それは私がオリジナルで作りあげたから・・・」
「へぇ・・・って!オリジナルゥ!」
まぁ、売ってなければオリジナルに決まってるわけだが。僕はかなりビックリする。
「うん・・・色々パーツ組み合わせてね。とっても大変だったよ。ほら、体育座りもするよ・・・」
薔薇姉ちゃんがアッガイの間接部を動かして体育座りをさせる。おお、アッガイだ。
「これを作ってたのかぁ~。確かに、超だね!薔薇姉ちゃん凄いよ。」
いや、本当に凄い。これもアッガイ愛なんだろう。
「えっへん・・・・それでね・・・このアッガイを・・・JUMにあげます・・・」



「へぇ、これを僕に・・・って!えええ!?こんな凄いのを!?しかも、アッガイだよ?薔薇姉ちゃんの大好きな。」
僕は再び衝撃を受ける。薔薇姉ちゃんのアッガイに対する愛は尋常じゃない。その愛を注ぎ込んで恐らく
削ったりしながら少しずつ作ってきたんだろう。正直、値が付けれないほどの品だ。
「うん・・・だってね、だって・・・このアッガイは・・・JUMのために・・・作ったから・・・・」
「僕の・・・・ため・・・?」
「うん・・・JUMは・・・今日が何の日か・・・覚えてない・・・?」
今日?誕生日は違うし。何だ?
「むう・・・仕方ない・・・お姉ちゃんがヒントあげます・・・10年前・・・だよ・・・」
10年前・・・僕はそれでようやく気づく。そして、自分の愚かさを知った。
「僕と・・・薔薇姉ちゃんが・・・姉弟になった日・・・だね。」
すると薔薇姉ちゃんは本当に嬉しそうに笑った。
「ぴんぽ~ん・・・大正解・・・パチパチパチ・・・私がJUMと・・・姉弟になって10年の・・・記念の品・・・
だから・・・一生懸命作ったの・・・受け取ってくれる・・・かな・・・?」
そうだ。今から丁度10年前に・・・僕はローゼン家に。そして、薔薇姉ちゃんもローゼン家に。
僕らが出会い、そして姉弟になって・・・今日で丁度10年なんだ。なんで、こんな大事な事・・・
「ごめん・・・僕、そんな大事な事忘れて・・・」
謝る僕を薔薇姉ちゃんは優しく抱きしめて包み込んでくれた。
「いいよ・・・だって・・・思い出してくれたもん・・・だから・・・許してあげる・・・あのね、JUM・・・
私ね、初めてここに来たとき怖かったの・・・知らない人しかいなくて・・・でもね、JUMがいたから・・・
私、ここまでお姉ちゃん達と仲良くなれたんだよ・・・JUM、これ覚えてる?」
薔薇姉ちゃんがそっと手を広げる。そこには、小さな食玩のアッガイがあった。
「僕が・・・薔薇姉ちゃんにあげた・・・まさか薔薇姉ちゃんがアッガイが好きなのって・・・」
「うん♪ようやく気づいてくれたね・・・私ね、凄く嬉しかった・・・だから・・・宝物・・・JUMはアッガイで
私を喜ばせてくれたから・・・アッガイでお返し・・・だよ・・・私がアッガイが大好きなのは・・・JUMがくれた
から・・・JUMが大好きだから・・・だよ・・・」


僕はそんな薔薇姉ちゃんがとても愛しくて抱きしめた。温かい薔薇姉ちゃんの体温が心地いい。
「ごめん、薔薇姉ちゃん・・・僕姉ちゃんに何もお返しできない・・・だから、僕に出来るならなんでも・・・」
「ふふっ、いいよ・・・でも・・・せっかくだから・・・JUM。今日だけ・・・『弟』じゃなくて・・・『彼氏』ね。」
「薔薇姉ちゃん・・・うん・・・今日は薔薇姉ちゃんの彼氏。」
「違うよ、JUM。薔薇姉ちゃんじゃなくて・・・薔薇水晶・・・」
「うん、薔薇水晶・・・」
僕は薔薇姉ちゃんを抱きしめる。薔薇姉ちゃんも気持ちよさそうに僕の胸に顔を埋めていた。
「JUM~!薔薇しー!パーティーよー!おりてきなさーい!」
リビングから銀姉ちゃんの声がする。どうやら、知らなかったのは僕だけみたいだ。
「いこっか・・・薔薇ねえ・・・薔薇水晶。」
「えへへ~♪うん、いこう・・・JUM。」
腕を組んだままリビング向かう。他の姉ちゃん達は僕らの姿に若干戸惑ったが、どうやら我慢してるようだ。
「じゃあ、JUMと薔薇しーが我が家の一員になって10年記念パーティーはじめるわよぉ~!」
銀姉ちゃんの声でパーティーが始まる。
「JUM、今日は彼氏だから・・・ちゅ~♪」
「そ、それはダメよ!抜け駆けなのだわ!」
と、若干ハイな薔薇姉ちゃんをさすがに止める真紅姉ちゃん達。
「むぅ~・・・じゃあ・・・ぎゅってして・・・」
それくらいならと、僕は薔薇姉ちゃんを抱きしめる。薔薇姉ちゃんはエヘへと笑う。そして、僕の顔の前で言う。
「JUM・・・大好き・・・だよ・・・」
そう言って、薔薇姉ちゃんは僕の頬にキスをした。その唇は温かくて、柔らかくて、優しかった。
後日、僕の机の上の特別な大きなアッガイは、薔薇姉ちゃんの机の上の特別な小さなアッガイと壁を隔てて
体育座りをしながら向き合っていた。
END

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