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「薔薇乙女戦記」第一話


目の前には、風車と麦畑が広がっている。
金色に輝いて見える麦の海は、どこまでも吹き抜ける風でそよいでいた。
周囲には、小高い山々、そして森。
緑豊かなこの国の名は、アリス・ケーニクライヒ。大陸の端に存在する小さな王国だ。
そして、先ほどから麦畑を見渡している青年は、この国の貴族。
名前はジュン。

一見平和そうなこの国は、今、周辺国の圧力と、国内に出没しはじめた賊の脅威に脅かされている。
ただ今はっきりと言えることは、この王国が滅びかけているということだけだ。

我が国の国王が名君と称えられたのは先代までの話で、実際、今の王は名君とは程遠かった。
指導者は民を想い、民の声を大事にしなくてはならないはずだが、現在の国王、
先代国王ローゼンの一人娘、雪華綺晶は、そんなことなど知る由もないようで、
王政は迷走を続けている。

これはジュンの憶測に過ぎないが、ローゼンは何らかの陰謀に巻き込まれ、
謀殺されたのではないだろうか?
ジュンの父は、元々国王の相談役だったが、他の貴族たちの罠に嵌められ、
宮廷を追われ、財産を剥奪され、狭い領地で領民と共に畑を耕すという、
貴族らしからぬ貧しい日々を送ることになった。

だがこれは、国王の地位を纂奪せんとする他の王侯貴族が、経験不足の雪華綺晶を
王位に据えるために、父を罠に嵌めたということではないだろうか?

---だとすれば、父はさぞ無念だったことだろう。
自分が追放されなければ、国王の命を守れたかもしれないのだ。

しかし、真相を確かめてみない限り、ジュンの考えは憶測のままだ。
ローゼンが「殺害」された証拠さえ掴めれば、雪華綺晶を操り、
王国を乗っ取らんとする不届きな輩はいなくなる。

王国の為を思うなら、真相を解き明かすべきだ。
ジュンが屋敷にある自室にこもる時間は、日に日に増えていった。

王侯貴族の中にも、現在の政治に不満を持つものがいるはずだ。
内部事情を知る者の協力は絶対に必要になってくるだろう。

もし、このことで完全に貴族の地位を失えば、ジュンは父に向ける顔がない。
とんでもない親不孝者だと自分でもわかっている。
---それでも、父の無念を晴らしたい。
そして、荒れ果てたこの国の、かつての栄華を取り戻すため、命をかける覚悟はできている。


これは、守るべきもの全てをかけた戦いだ。
ジュンは、いわゆる騎士と呼ばれる存在ではない。
しかし、ジュンの戦う理由は騎士の戦うそれと等しかった。
騎士は、己が国と、君主と、一族の誇りをかけて戦うものなのだ。

ジュンは決意した。この国を、変えてみせると---

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