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第三話 「オディール・フォッセー」


コンコン
ノックをする。
5秒ほどすると雛苺がドアを開ける。

「うゆー?雪華綺晶どうしてついてくるのー?」
「いえ・・・ちょっと気になる事がありまして・・・。
 先日他の人に聞いたんですが此処の人も事故のせいで
 入院って聞いて・・・。少しお話がしたいなっと思い。」

同じく事故で入院した人の話も聞きたいというのもあるが
一緒に歌ってみたいというのも実はあるんですけどね。

「うゆー、ちょっと聞いてみるのー。」

雛苺はそう言うと部屋の奥へと消えていく。
此処からでは顔は見えないが表札に書いてる名前からして
外人の人なのだろう。
・・・ふと思ったが言葉は通じるのでしょうか?

「うゆー、オディールも話したいってー。」

雛苺がこちらに喋りかけながら向かってくる。

「それはどうも有難うございます・・・。
 気になったのですが言葉は通じるのでしょうか?」

「うゆー、大丈夫なのー。オディールは日本語喋れるのー。」
「それは良かったですわ。」

そんな会話をし奥へと進む。
やがてベッドから少し起き上がり壁にもたれているオディールさんを見つける。
可愛らしい人だ。

「初めまして雪華綺晶です。」
「こんにちわ、オディールです。
 私も同じような境遇の人と話したいと思っt・・・。

雪華綺晶の顔を見るなり急に顔色を変えるオディール。
体は震えてまるで何か怖がってるような様子だ。

「うゆー、どうしたのオディール?」
「あ・・あ・・・あ・・ご、御免なさい御免なさい!!!!!!」

急に叫ぶとオディールは布団を被って姿を隠す。
布団を被った後も御免なさいと叫んだままだ。

「あ、あの・・・。」

心配して声をかけようとするが何を言えばいいかわからない。
とりあえず大丈夫か聞いてみよう。

「だ、大丈夫でしょうか・・・?」

一体何に謝ってるのだろう?
私に向かって謝ってくるが・・・。
もしかしてこの人は幽霊が見える人で病院で私に憑いた
霊に謝ってるなんて事は無いでしょうね・・・。

「オディール!落ち着いてなの!」
「ひゃあ!」

雛苺が布団を引っぺがそうとするが
オディールが中から踏ん張ってるのかそうはいかない。

「オディール!」
「オディールさん!」

しかし事態は一向に変わりはせず
オディールはずっと謝ってくるばかりだった。
一種のパニック症状かもしれないから
ナースコールをした方がいいのではと思ったとき後ろから音が聞こえる。
しかも爆音。ギーッ!という音が耳の中に流れ込み一瞬皆が黙る。

「落ち着くかしらー!」

後ろに居たのは金糸雀、バイオリンであの音を出したのだろう。

「何があったかどうかわからないけど兎に角落ち着くかしらー!」

金糸雀がそう言ってる間に雛苺は布団をはがす。
オディールはきょとんとした表情でこちらを見ている。

「落ち着いたかしら?」

静かにコクッとオディールは頷く。
何はともわれこの場を静めてくれた金糸雀に感謝しましょう。

「一体・・・どうなさったのです・・?」
「ひゃ・・だって・・・だって・・・。」

涙目でこちらをオディールは見てくる。
怯えて声もほとんど出ないようだ。
しかし30秒ほどするといきなりきょとんとした表情になる。

「あ、あれ・・・・?」

一体何なのでしょう?

「あ・・・御免なさい・・・人違いです・・・。」

ほんとに一体何なのでしょう?

「オディール、一体どういう事なのー?」

雛苺がオディールの顔を見つめながら問い詰める。
オディールは申し訳なさそうな表情で答えだす。

「え・・・あの・・・ちょっと人違い・・・。
 この人ちょっと似てて・・・・。」

・・・一体どういう人と勘違いしたのだろう?
あそこまでして謝るような人とは・・・。

「ご、御免なさい・・・。」

顔の目の前で手を合わせ謝ってくる。

「い、いや別にいいですよ。
 勘違いなら誰でもある事でしょう。」
「う、うん・・・。」

そう言うとオディールは乱れた服や布団を整える。
金糸雀は後ろでバイオリンを直していた。

「しかし・・・一体誰と勘違いなされたのですか?」
「え、あ、うん・・ちょっとね・・・。」

まぁそんな問いただすような事でも無いだろう。
本人も嫌がってるようだからこれ以上は聞かない事にしよう。

「オディール調子は大丈夫なのー?」
「う、うん・・大丈夫よ・・・けど死にたいといつも思っちゃう・・・。」

この人も柿崎さんみたいな所があるようですね・・・。
落ち着いたオディールに近付きながら考える。
金糸雀もそれについてくる。
ホントに可愛らしい人だ、フランス人形のようだ。
見てるだけでうっとりとしてしまう。

「何か・・・顔についてるのですか・・?」

オディールが私に尋ねてくる。
しまった、見つめすぎてたようだ。
つい夢中になってしまった。
こういう時どういえば良いのだろう?

「え・・・ちょっと見とれてて・・・。」

そのままの気持ちを思わず伝えてしまう。
オディールは急に顔を赤らめる。

「え・・え・・・一体何を・・・。」
「え・・・あ・・・いいいいえお気になさらずに。」

雪華綺晶の顔も恥ずかしさで赤くなる。
何で声にだしてしまったのだろう?

その後は四人で色々喋っていた。
正確には三人でだが。
金糸雀は途中で昨日の疲れのせいか寝てしまっていた。
昼夜逆転生活へと近付きつつあるようだ。
哀れ金糸雀。
オディールさんの怪我は軽いものらしく
もうすぐで、というより明日明後日には退院出来るらしい。
ばらしーちゃんのように重い怪我で無くて良かったと本当に思う。

「時間は・・大丈夫なのですか・・・?」

オディールさんにそう言われて残りの時間を見る。
携帯の時計を見て残りの面会時間が20分程度である事に気付く。

「もうこんな時間なのですか・・。そろそろ失礼させてもらいます。
 今日はありがとうございます。」
「うんうん・・・こちらこそ。また話しましょう・・・。」

そう言うと部屋を出て行く。
出て行く際に玄関で待ってるから一緒に帰りましょうと雛苺に伝えて。
ドアを閉めて廊下へ出る。
面会時間のギリギリなせいかもう人は少なく静寂が広がっていた。
雪華綺晶の歩く音だけが響く。
10秒ほど歩くと薔薇水晶の部屋に着き静かにドアを開ける。

「帰って来ましたわばらしーちゃん。」

ドアを閉め寝たままの薔薇水晶に近付いていく。
近くにあった椅子に座り地面に荷物を置く。

「今日はばらしーちゃんと同じように事故にあった人に出会いましたわ。」

今日会ったオディールさんの話などをしていく。
寝てるから喜んでるかわからないけどばらしーちゃんは
お話楽しんでくれてるでしょうか?

「でね・・・オディールさん見て思ったの。
 ばらしーちゃんも頑張ってるんだなて。」

顔を撫でながら囁く。
なんて可愛らしくて柔らかい顔なんだろうと思う。

「けど・・・私は何も出来ない。
 お医者様じゃないしばらしーちゃんを助けたりしてあげれない。
 ばらしーちゃんの為に何も出来ない。」

抱きつく。
ぎゅっと抱きつく。パジャマを伝わって薔薇水晶の暖かさが伝わってくる。
暖かい。更に力を入れる。

「だから・・・ばらしーちゃんの傍にいますわ。
 目を覚ますまで、目を覚ましてからも。」

おでこに軽く唇をつける。
それだけで恥ずかしさで顔が真っ赤になってしまいそうだ。
いや案外もうなってるかもしれない。
鏡を見る。鏡に映る雪華綺晶の肌はいつもの白色でなく
赤色にとなっている。
それを見てさらに顔を赤らめてしまう。
いけない、落ち着かないと、落ち着かないと。
暫く深呼吸したりして気持ちを落ち着ける。
ラマーズ法もやってみる。
むしろきつい、今度からやめよう。
時計を見ると10分前、今日は水銀燈では無いが
それでも待たせるのはいけないだろう。
そう思って部屋を出る。

「また明日来ますわ。」

そう薔薇水晶に向かって囁くとドアを閉めた。
そして早歩きして玄関へと向かう。
ひたすら早く歩いたせいか5分前にはしっかりと着いた。
さて雛苺を待ちますか。
柱にもたれかかる。
・・・10分が経過する。
面会時間を5分上回る。
だから病院を追い出されるという訳でも無いが
外に出て病院の入り口正面にあるモニュメントの近くのベンチに腰掛ける。
まぁこれぐらいの遅刻はよくある事でしょう。
引き続き雛苺を待つ。

・・・さらに10分が経過する。
おかしい、いくらなんでも遅すぎないか?
面会時間を15分ほど経過する。
流石に遅すぎるだろう。
一体何かあったのか?
まさかオディールさんの容態が急変したのか?
オディールさんの怪我については詳しくは知らないが
退院目前でも悪化するなんて事はあり得ないとはいいきれない。
心配になりベンチから腰を上げ病院に入ろうとする。
その時、雛苺と金糸雀の姿を見つけた。
入り口らへんで看護婦に怒られている。
一体どうしたのだろうか?
面会時間を過ぎたから怒られたのだろうか?

「一体どうしたのです?」

看護婦と怒られている2人に声をかける。

「あ、雪華綺晶かしらー。」
「ごめんなのーちょっと待ってなのー。」

そう言うと2人は説教の続きを受ける。
5分程して2人はようやく開放された。
2人はくたくたなようだ。

「一体何があったのです?」

「え、え~と・・・。」
「じ、実は・・・。」

2人は暫く怒られていた理由について語りだす。
何でも5分前に病室を出ようとしたが
金糸雀が中々起きず起きたのが面会時間終了2分オーバー。
急いで帰ろうとすると金糸雀が近道があるっていうので
金糸雀について行って帰ろうとしたらしい。
しかし道がわからなくなり一旦病室に帰って帰り道を聞こうと
思ってドアを開けるとそこはオディールの病室ではなく
霊安室、白い布を被って寝ていらっしゃる方とご対面して
悲鳴をあげた所を看護婦に見つかって絞られてたらしい。

「・・・。」
「え、えーと・・・。」
「御免なの・・・。」

私ははぁと一息吐くともうドジはしないようにと
2人に言う。これで何回目なんだろうか?
学生時代の分も含めたら4ケタはいってる気がする。
これからも言う運命なのだろうか?
そんな事を考えてる内に家へと着いたのでそこで2人と別れた。

一息着くかと思いソファーに腰掛けた所に電話が来た。
全く・・・時を考えてほしい。
そんな事考えてもしょうがないので電話をとる。

「もしもし?」
「あ、もしもし。こちらサイヤ保険のものですが。」
「はい何でしょうか?」
「いえー事故の件についてお話がありまして・・・。」

そう言えばばらしーちゃんの怪我に必死になりすぎて
保険やらなんやらの事を忘れていた。

「はい、なんでしょうか?」
「えーそちらの方に支払われる損害賠償、慰謝料についての話なのですが・・・。」

ふと考える。
そういえばあの時、事故にあった時にばらしーちゃんは走って飛び出して
車に轢かれてしまった。ならこちらが相手の車の損害を払ってもしょうがない状況なのだが・・。

「あの・・・こちらが払う事は?」
「え、ありませんよ?」
「ですがこちらが飛び出して・・・。」
「歩行者信号の方は青信号だと加害者の方に聞きましたが・・?」

あー成る程、青信号だったわけか。
って事はそれで走っただけなのにばらしーちゃんは轢かれた訳か。
少し怒りが込みあがって来て拳を握り締める。
しかし怒ってもしょうがないので深呼吸して落ち着く。

まぁしかし、歩行者信号が青だったというのを証言してるのは
加害者の方だというし嘘をついたりする人では無いと言う事だ。
凄く悪い人という訳では無くて良かった・・。

「成る程・・そういう訳ですか。」
「はい、なので明日にでも加害者の娘さんと
 私らとで少しお話をしたいのですが・・・。」

・・・娘?

「娘とは?」
「ええ、実は運転手だったコリンヌ・フォッセーさんは死亡されてしまって・・・。」

なんと・・・。
あの事故の際に轢いてしまった本人が死亡してしまったのか・・。
何やら複雑な心境に包まれる。

「・・・そういう事ですか。」
「はい、娘さんはまだ入院中なので明日病院の方で話をしたいのですが・・。」
「わかりました、では何時に・・?」
「では正午に病院玄関で・・・。」
「わかりました、あなたの名前は?」
「ベジータです。」

・・・ベジータ?

「ベジータ?」
「Yes,Iam。」

「あなたなのですか?」
「やっと気付いたのか雪華嬢。」

敬語で喋ってた口調とはうって変わりタメ口となる。
しかし、高校の時のベジータとは・・・。

「星に帰ったと聞いたのですが・・。」
「冗談にしてはキツいぜ、今は保険会社でバリバリ働いてるぜ。
 元々明日の見舞いも俺が行く予定だったんだがな。
 事故当日に駆けつけれなくすなまい。」
「いえ・・・謝ることじゃないですよ。」

思わず電話越しなのに頭を軽く下げてしまう。
しかし相変わらず優しい人だ。

「じゃああなたなら待ち合わせ時間も早くでいいですか?」
「勿論、朝5時でも駆けつけてやるぜ。」
「ほんとに・・・有難うございますわ。」
「へ、気にするな。病院の面会開始時間の9時でいいかい?待ち合わせは。」
「ええ、それで結構です。」
「それではまた明日な、体調を崩すなよ。」

電話が切れる。
コードレスの電話機なので充電器にと戻しに行く。
しかしベジータとは・・・。正直驚いたな。

冷蔵庫に入ってるウイダーゼリーを取りにいきながら考える。
食欲が無いのでこれで充分だ。
冷蔵庫を開けウイダー取って蓋開けて飲む。
この間5秒、そして10秒チャージと書いてるせいなのか
何故か10秒ほど目をつぶってしまう。
10秒ほど立つと冷蔵庫を閉め、ごみを捨てる。
そして和室に行き母に祈りをささげた後パジャマに着替える。
着替え上からのびる電球の紐を取り引っ張って電機を消す。
目をつぶる前に色々考える。
そして最後にありがとうと思った後目をつぶり布団を被った。

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