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「超機動戦記ローゼンガンダム 第三十一話 失われし時へのレクイエム」


「白崎、梅岡。そろそろだ・・・行くぞ・・・」
槐がスペリオルへ搭乗し、システムを起動させる。
「分かってるよ。しかし、僕らがここまで手こずるなんてねぇ・・・」
「ふふっ、いいじゃない。先生は逆に楽しみだよ。満ち溢れた希望を潰すのはこれ以上ない快感さ♪」
白崎と梅岡もそれぞれラプラス、プラムに搭乗する。
「アリス、お前も大丈夫か?」
「問題ない。貴様らが死のうと私は一人で彼奴等を討ち果たし、再びお父様が望んだ世界を作る。」
デッキで待ち構えているアリスガンダムから少女のような声が聞こえる。
「はははっ、それは頼もしい・・・」
「何なら、お前達は艦内にいても構わない。人間など脆いものだからな。私には至高の音に聞こえる
音が奴らには地獄からの誘いへ聞こえるらしい・・・ふふふっ・・・」
「成る程、音波兵器かい?確かに、以前「うなだれ兵士のマーチ」で行動不能になってたからね。」
白崎が言う。しかし、アリスはそんな白崎に笑いを飛ばす。
「はははははっ、白崎。お前も案外甘いのだな。私が奏でるのは「破壊のシンフォニー」だ。
何でも、人間の精神を破壊するそうだぞ。あんなに美しい音なのに・・・」
破壊のシンフォニー。以前リファイン機のカナリアが奏でようとしたが、真紅によって阻止され
お蔵入りになっていた曲目である。その音は人間にとって最悪な音。精神の弱い者は
精神が死を選んでしまうという、禁忌。
「ふふふっ、面白いね・・・苦痛に歪んだ桜田の顔・・・嗚呼、僕はこの時まで我慢した甲斐があったよ・・・
じゃあ、行こうか・・・梅岡、プラム!出ますよ!」
「まぁ、恐らくこれで奴らとは最後になるだろう。せっかくだから、僕も出るよ。白崎、ラプラス。出るよ。」
「槐、奴らを滅ぼした後、再び私はお父様の世界を作り上げる。その力を貸すがいい。アリス、出る!」
ディアーズからすでに3機が出撃する。槐はふっとほくそえんだ。
「まぁ、せいぜい役に立ってくれよ、梅岡。白崎。そして・・・踊れ、アリス・・・ふっはははははは!!」


一方、メイデンも出撃を控えていた。
「水銀燈、RG001スイギントウ!出るわよぉ~!」
「水銀燈!その・・・気をつけて・・・」
「ふふ、その言葉だけで充分よぉ・・・・JUMこそ、気をつけてね・・・・」
漆黒の翼を羽ばたかせ、黒い機体が出撃する。
「雪華綺晶、ローゼンガンダム7号機、出るぞ!」
「雪華綺晶。あんまり熱くなるなよ?お前はやっぱり冷静に華麗に・・・な。」
「はははっ、それはいいな。なぁに、任せろJUM。やってみせるさ・・・」
眼部に薔薇をつけた白の機体が出撃する。
「金糸雀、ガンダム2号機出るかしらー!」
「金糸雀。思いっきり聞かせてくれよ。お前の『音楽』をさ。」
「任せるかしら~!今日は世界中にカナの音を聞かせてあげるかしら~!」
彼女に敵を撃つ武器はない。ただ、自分を守り、音を響かせるだけ。黄色の機体が出撃する。
「JUM!翠星石には何か言う事はねーですか!?」
「ああ、気をつけて。何度も言うけど・・・翠星石は翠星石だからな?」
「おめーに言われなくてもわーってるですよ!ま、聞いておいてやるですぅ・・・ありがとです。翠星石、出るです!」
自分自身とも言える庭師の如雨露と今は亡き、半身の庭師の鋏を持った緑の機体が出撃する。
「真紅・・・その・・・」
「大丈夫よ、JUM。貴方の想いはここにあるのだわ。それが今の真紅の宝物・・・そして守るべき物。
私は誇り高いメイデンの一人・・・そして、幸せな貴方の・・・・幼馴染・・・
真紅、ローゼンガンダム5号機シンク、出るのだわ!!!」
不恰好なほどに美しい紫の右腕を持つ赤き機体が出撃する。ここに、決戦は始まった・・・
「行くぞ!砲弾装填!目標敵機!サクラダはこれより戦闘に入るぞ!!」


ベルリンの空に銃弾が飛び交う。その銃弾に貫かれた機体は光をあげる。
「ふっ、愚かな人間よ・・・この至高のメロディに踊り狂え。はーっはっはっはっはっは!!」
アリスがいきなり音波兵器を発動させる。「破壊のシンフォニー」。人間を死にも至らしめる最凶の音。
「うぐっ・・・・これ・・・は・・ぐぅ!!」
一気にレジスタンスを襲う音。意思の弱い者は一瞬で精神をやられ、アリスの人工知能に撃たれていった。
「ぐ・・・か・・・なりあ・・・・・」
JUMが耳を押さえながら言う。しかし、耳を押さえても脳を直接刺激する音に吐き気を催す。
「破壊の・・・シンフォニー・・・?アリス・・・かしら・・・・うっ・・・・」
金糸雀がコクピットで頭を抱える。アリスの発する音が金糸雀の脳に怨嗟の声を叩き込む。
「あうっ・・・ぐあう・・・イヤ・・・怖い・・・うぐ・・・はっ・・・」
金糸雀が歯を食いしばりながら前を見る。そして、驚愕する。全く動けないレジスタンスの機体が撃ち落されて
行く。この音で、みんなが死んでいく・・・イヤだ・・・それはイヤだ・・・音は人を殺すものじゃない・・・
「ダメかしら・・・カナは・・・カナはもう負けない・・・かしら・・・」
金糸雀が拳を必死で握りこむ。爪が喰い込み血が滲み出る。それでも、金糸雀は平常を保とうとする。
「もうイヤかしら・・・カナの力がないせいで・・・仲間が死ぬのは・・・薔薇水晶みたいなのはイヤ・・・イヤ!!」
金糸雀が音波システムを起動させる。曲目は決まってる。機体のデータにはない曲。しかし、その音は金糸雀
自身に詰まっていた。自分の思うがまま、感じるまま、願うまま、そして楽しむまま・・・音を楽しむのが『音楽』


思えば、カナがバイオリンを始めたのは両親がくれたからだった。とても綺麗な音だった。それ以来、
ずっと音と共にあった。パパは言った。「世界は音に満ち溢れている」って。だから、どんな時もカナは
音と一緒にいた。楽しい時は楽しい音と。悲しい時は悲しい音と。だから、パパとママが死んでもカナは
音と一緒にいた・・・そうすればパパとママと一緒にいる気がしたから。それから一緒にいてくれたみっちゃんも
カナの音が好きって言ってくれた。だから、カナは嬉しくてまた音を奏でた。みんなみんな・・・カナの音は
好きだって言ってくれた。だから、カナは音を奏で続ける。それが、カナの生きる意味。
「みんな・・・頑張るかしら・・・こんな音に負けたらいけないかしら・・・カナが・・・カナが追っ払うかしら・・・」
この戦いで、たくさんの命が散っていった。その人たちが過ごすはずだった、失われた時間。
カナは、その時間を追悼する。だから・・・力を貸して欲しい。今度生まれてきたときは、その失われた
時間の分まで幸せに過ごせるように・・・
「さぁ、みんな!カナの音を聞くかしらーーーーー!!!」
その旋律はまるで、夢見るように・・・
「失われた時へのレクイエム!!!」
金糸雀自身ともいえる楽曲。その音は、戦場を、ドイツを、ヨーロッパを、そして世界を包み込む。
「これは・・・優しい音・・・恐怖が消えていく・・・いける・・・まだ戦えるのだわ・・・」
「ふんっ、こんぐれー役にたたねーと金糸雀はダメダメですぅ・・・でも・・・何で涙が出るですか・・・」
「ふふっ、さすがは金糸雀だな。こんな曲を即興で作り上げるなんて常人には無理だ。」
「いい音ね・・・めぐの歌もこんな風に優しかったわぁ。」
その音は破壊のシンフォニーに毒された心を完全に癒していく。
「さぁさぁ、アリス覚悟するかしら!カナが本当の音楽を教えてあげるかしら!!」


「はぁあ!」
金糸雀の音で調子を取り戻した水銀燈は眼前の機体にダインスレイブを突き立てる。
次の機体が襲い掛かる。しかし、それを物ともせずその背中の翼で一気に屠り去る。
「ふふふっ、こんにちは天使さん?」
スイギントウに2条のビームが降り注ぐ。水銀燈はそれをかわし、その主を見る。
「あらぁ、変態教師じゃなぁい。なぁに?殺されにきたのかしらぁ?」
ダインスレイブを向ける。しかし、梅岡は不気味に笑った。
「ははははっ、僕は思うんだ。天使という高貴な存在。その死に行く顔は最美なんじゃないかってね。
ふふっ、天使さん・・・・僕をイカせておくれよぉおおおお!!」
「狂ってるわねぇ・・・いいわよ。逝かせてあげるわぁ・・・おばかさん。」


「君の相手は僕みたいだねぇ?」
兎、ラプラスが高出力ビームライフルをスイセイセキに向けて放つ。
「よく分かってるじゃねぇですか!今日こそぶった切ってやるですよ!」
スイセイセキはそれを回避し、その大きな庭師の鋏で切りかかる。ラプラスはそれをサーベルで受ける。
「ふふふっ、面白い。実に面白いね・・・僕はひょっとしたらこんな展開を求めて蒼星石を殺したのかもなぁ。」
白崎が笑い声をあげながら言う。
「ふ、ふざけるなですぅ!!!」
空に閃光と光が散りばめられる。
「今のこの世界は楽しいよ、翠星石。僕の好みだ。平和だなんてのはツマラナイ。実にね。」
ラプラスが後退し、お馴染みのラ・ビットを放つ。スイセイセキもビットに狙いを定め
ライフルモードのGSで撃墜していく。
「そんなに平和がつまらないなら、あの世で戦い続けろですぅ!!」


「失せろ!」
キラキショウが襲い掛かってくる敵機をサーベルで切り裂く。
「槐・・・・どこだ!?」
辺りを見回す。彼女の狙いはただ一人。槐だ。
「っ!?」
警告アラートが鳴り響く。雪華綺晶は瞬時に機体を移動させる。その刹那、5条のビームが
その場所に降り注いだ。
「来たか・・・槐!!」
雪華綺晶はその敵を見据える。多数の銃器を装備したガンダムタイプ。その目は怪しく光っている。
「やはり、私狙いか・・・はははは、これも宿命か・・・」
「薔薇水晶の仇、討たせてもらうぞ槐!」
キラキショウがサーベルを向ける。しかし、槐は笑いをあげた。
「はーっはっはっはっは!果たして私は薔薇水晶だけの仇かな?」
「!?どういうことだ!」
打ち合うサーベルが光を上げる。
「冥土の土産に聞かせてやろうか・・・もっとも、貴様が最後まで生きていられればな!やれ、ALICE!」
「そうかい!ならば、全て聞いた後に片道切符をくれてやる。もちろん・・・地獄巡りのな!」
キラキショウのV・S・B・Rが吠える。対してスペリオルも5門の砲身を熱く燃やした。


「馬鹿な・・・人間如きの音が・・・?」
アリスは空中でその身を漂わせていた。周りには誰もいない。いや、誰も近寄れないのだろう。
「残念だったわね、アリス。貴方はその人間如きに作られた事を忘れたの?」
そう、真紅の機体を駆りアリスに向かっていく一人の少女以外は。
「5号機か・・・変わらず生意気な事だ・・・どうやら死の恐怖が味わいたいようだな!」
アリスが背中の白銀の翼を広げる。シンクがサーベルを抜き、アリスに切りかかる。
アリスはガーデナーシザーでシンクの斬撃を受け止め、逆腕でGSの狙いをつける。
「やれやれ、そういえば全機の特徴があったのだわ。厄介ね、貴方。」
シンクは後方に下がる。アリスはそのままGSをフルパワーで放つ。襲い掛かるビームの雨をシンクは回避する。
「ふん・・・足掻け人間。人間が神に勝つなど有り得ぬのだからな・・・」
ヒナイチゴの倍の8つの有線ビーム砲がシンクを襲う。しかし、シンクはそれすらも軌道を読み回避していく。
「驕りね、アリス・・・・お仕置きをしてあげるのだわ・・・」
再びサーベルで切りかかるシンク。ベルリンに4つの激戦が始まった。


次回予告 アリスの音は金糸雀の音に完全にかき消された。各所で行われる激しい戦いを余所に
各軍のエースが激突する。その一つ、魔剣と魔槍がぶつかり合ってた。
次回、超機動戦記ローゼンガンダム 片翼の天使 その身は傷つこうとも、翼は彼女の証

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