「超機動戦記ローゼンガンダム 第二十五話 アリスガンダム、起動」

 

「遂にこの時がやってきた。アリスの支配による機械的な世界を受け入れずに抵抗し、戦ってきた
我々も、ようやく打倒アリスを果たす日が近くなってきた。」
ここはモスクワ基地、大集会場。壇上ではべジータが熱弁を振るっている。あいつ、何気にああいうの得意だよ
なぁ・・・前世はきっと王子とか王様だったんじゃないかと思ってしまう。
他のメイデンの面子といえば、珍しく真面目に話を聞いている。いつもは、雛苺が居眠りしてたり
水銀燈はサボって医療室で寝てたり。真紅なんかお茶の時間とか言って食堂にいた時もあったな。
「今、我々が此処に存在するのは、我々に意思を残して散っていった者達のお陰だと思う!
各レジスタンス・・・ここまでたくさんの辛い別れがあったろう。」
べジータがしばらく言葉を止める。恐らく、ラディッツとナッパ。その他諸々の勇者達を思い浮かべているのだろう。
メイデンのメンバーは目をそれぞれが思うところありといった顔をしている。
真紅を守り、そしてその意思を託して散っていった薔薇水晶。
自分の信念を曲げず、一般人を守り壮絶な最後を遂げた蒼星石。
そして、メイデン立ち上げ期から今までを築き上げてきた勇者達。
「我々は、散っていった勇者達を忘れてはならない!そして、勇者達の為に勝たなくてはならない!
これから先、例えば俺が死しても誰かが前に進め!決して立ち止まるな!その先に、人類の正しき未来が
あるはずだ!我々はその礎となろう!最後に・・・今日までに戦死した幾人もの勇者に祈りを・・・黙祷!」
べジータが目を瞑り胸に手を当てる。その会場にいる人全員がその行為をする。それぞれが、祈りながら。
「行くぞ!ポーランドを奪えばアリスの本拠地のドイツはもう目の前だ!」
そして、最後に号令をかけた。

 

 


「槐、奴等がポーランドへ侵攻するようだよ。さすがにこれは見過ごさないだろう?あそこを奪われたら
喉元に剣をつきつけられるものだよ。」
白崎が言うが槐はそうか、と答えて機体をいじくっていた。
「まぁまぁ。何か策があるんでしょう。落ち着きましょうよ。何せアリスは絶対にして神ですから。
僕らが負けるわけわりませんよ♪」
梅岡が相も変わらず笑顔なのに気持ち悪い顔を浮かべる。
「・・・よし・・・アリス。調子はどうだ・・・?」
槐がその機体に話しかける。すると、その機体は人間の言葉を返す。
「悪くないな。さすがはお父様の弟子だ。いい腕をしている。」
スピーカー越しではあるが、その声の主はその機体・・・即ちアリスガンダムから聞こえていた。
「へぇ。今までは少しカタコトだったのに随分流暢になったもんだね。」
白崎が感心したように言う。
「お父様?ああ、ローゼンの事か。成る程ね、君を作ったのはローゼンだものね。先生、納得がいったよ。」
梅岡は一人で嬉しそうだ。
「白崎、梅岡。ポーランドへ向かうぞ。私もスペリオルで出る。アリス、貴方もウォーミングアップがてら
来て貰いたいのだが・・・」
「ああ、私も行こう。私に逆らう愚か者ドモをこの目で見てみぬとな。」
アリスがそう言うとガンダムの眼部が不気味に光った。

 

 


「総員、第一戦闘配備!ブリッジ遮蔽!オールウェポンロック解除!みんな、そろそろ戦闘区域に入る。
大事な戦いだ。必ず勝つぞ!!」
「当然なのだわ。何事も出だしが肝心というのだわ。」
「そうねぇ。まぁ、ちゃっちゃーっと片付けるわぁ。」
「翠星石、まだガーデナーシザーは慣れてないだろう?無理はしちゃいけないぞ?」
「分かってるですぅ。雪華綺晶もお節介焼きですねぇ。」
「うい、雛だって頑張るのぉ~!」
「カナだって負けないかしら!!」
メイデンのクルーそれぞれが意気込みを声に出す。
「よし・・・柏葉!各機出撃だ!」
「了解です!真紅機、発進どうぞ。」
「分かったわ。真紅、ガンダム出るのだわ!」
サクラダから次々に機体が出撃していく。

 

 

「さて・・・我々も出るとしようか。アリス。君はどうする?」
ディアーズのデッキで槐がアリスに話しかける。
「無論、私も出る。そして、私の手でローゼンガンダムとやらを葬り去る!」
「それは頼もしい・・・それでは出ようか。白崎、梅岡!」
「分かってるよ。白崎、ラプラス。出るよ。」
「梅岡、プラム。いきま~~~す!」
白兎と赤い機体が出撃していく。
「ふふっ・・・それじゃあ私も行こうか。ALICE、いいな?槐、スペリオル出るぞ!」
槐の作った人工知能ALICEを搭載したスペリオルガンダムが出撃する。そして・・・
「ふっ・・・アリスだ。アリスガンダム、出撃する・・・」
遂に神が戦場に舞い降りるのだった。

 

 

「そこ!」
シンクがツインテールを振るいZローンの中枢部をえぐる様に攻撃する。右手からビームサーベルで突進してきた
バーズを回避し、それも撃破する。
「さぁ、みんな!頑張るかしら!追撃のカノン!!」
カナリアがレジスタンス全体に精神向上音波を奏でる。
「えーい!落ちるのー!!」
ヒナイチゴの有線式ビーム砲が唸りをあげZローンを周囲を囲み、一斉に砲撃する。動きが止まったところに
改めて威力の高いビームライフルを放ち、撃墜する。
「もらったです!」
スイセイセキがガーデナシザーでバーズを真っ二つに切断する。雪華綺晶と水銀燈にみっちり接近戦を
しごかれ、JUMに機体をチューンしてもらっただけあり、なかなかの動きだ。
しかし、そのスイセイセキを兎の形のビットが取り囲む。
「!?ラプラス!?こんなもんスイセイセキには通用しんですよ!」
ガーデナーシザーを背部に収容に、GSを取り出しビットを落としていく。
「おやおや、緑のお嬢さん。今日は見慣れないモノを持ってますね。そう、確か甘ちゃんの武器でしたっけ?」
「ラプラス・・・てめーだけは許さんですよ・・・」
「ほぉ、怖い怖い。で?どう許さないのですかねぇ?」
スイセイセキはビットを撃墜し終えると再び鋏に持ち帰る。
「てめーの蒼星石の形見でぶったぎってやらんと気がすまんです!!」
スイセイセキのガーデナシザーとラプラスのビームサーベルが激しくぶつかり合った。

 

 


漆黒の機体が漆黒の翼をはためかせながら、爆炎の中を飛んでいる。
「邪魔よぉ、おばかさぁん。」
その天使か、或いは悪魔か。Zローンのコクピットに魔剣を冠する剣、ダインスレイブを突き立てる。
「これはこれは、いつぞやの天使さんじゃないですか。」
そして、それに対峙するのは紅き魔槍ゲイボルグを持つ赤き機体。
「おばかさん、私は天使じゃないって言ってるでしょぉ?変態教師さん。」
「僕だって教師だけど変態じゃないよ♪」
充分変態だとは思うがここはスルー。
「で?何の用なのぉ?ああ、JUMには近づけさせないわよぉ。ま、用がないなら・・・死んでねぇ。」
スイギントウが一気に距離をつめ剣を薙ぐ。プラムはそれを槍で受ける。
「今回僕が用があるのは君なんだよ、天使さん。」
「私ですってぇ?残念ね、私ぃ、あなたみたいな男は嫌いなのぉ。」
空中で火花が散る。プラムはホーミングミサイルを放つが、スイギントウのフェザーファンネルに相殺される。
「そ、ほら桜田って優しいだろ?だからさ・・・君をボロボロにして人質にしたらさ、先生の言う事聞くと思うんだ♪」
水銀燈の背筋に寒気が走る。負ける、とかではなく・・・心底気持ち悪さからでだ。
「あなたぁ、随分イカレてるわねぇ。」
「イカれてるのは君達さ。何でアリスの素晴らしさが分からない?君らが感化するから僕の桜田が
反アリスなんて馬鹿げた事してるんだよ!」
再び水銀燈の背筋に寒気が走る。こいつ、マジでやばい。
「そっ・・・でもそれは無理・・・貴方が私に勝つなんて・・・」
漆黒の翼を展開し、ダインスレイブを構える。
「ありえないもの!!」
交差する機体が再び火花を散らした。

 

 

「沈めえええ!!」
キラキショウが背部のV・S・B・Rを放つ。超高速のビームはアリスのMS数機を貫通していく。
さらにキラキショウが進んでいくと、進路に5条のビームが降り注いだ。
「!?槐か!?」
雪華綺晶がその元を凝視する。そこにはあの憎きガンダムがいた。
「久しぶりだな雪華綺晶。」
「ああ、待ちわびたぞ・・・貴様をこの手で殺れる時をな!」
キラキショウがサーベルを持ちスペリオルに向かっていく。
「ふっ、出会い頭それか・・・ALICE。私を守るんだ。そして、やつを殺せ。」
スペリオルの目の色が変化する。ALICEが起動した証だ。ALICEはキラキショウの攻撃を信じられない
反応で回避し、ビームスマートライフルを向け、放つ。
「!?なんとぉおお!!」
キラキショウが機体を右に動かし回避する。しかし、スペリオルの剣撃が襲い掛かる。
「くっ・・・ALICE・・・これほどか!」
ビームサーベルを切り結び、後退しライフルで牽制する。スペリオルは回避しながら2つの背部ビームカノン
を放ち、すかさず大腿部ビームカノンを放つ。スペリオルから放たれる蒼い弾丸はどれも一瞬遅ければ
その体を蒸発させてしまう精度だった。
「はははっ、どうした雪華綺晶?逃げてるだけでは私は討てぬぞ?」
「抜かせ。自分では操縦もできん男が・・・何度も言う。私はお前を殺すまで死なない・・・」
キラキショウがV・S・B・Rを、スペリオルは合計5門の銃口を向ける。再びポーランドの空に閃光が走った。

 

 


水銀燈達が相手のエースを抑えてるお陰か、かなりレジスタンスは優位に戦いを進めていた。
「もう少しなのー!頑張るのー!」
雛苺がビームライフルをバーズに向けて放つ、その瞬間だった。
「きゃあああああーーーーー!!!」
ヒナイチゴの周辺にビームの雨が降り注ぐ。いくらか防御はしたようだが、あらゆる所を削られたヒナイチゴは
炎をあげて墜落していく。
「雛苺!?金糸雀!!」
巴がとっさに声をあげる。そして、金糸雀が急いで落ちていくヒナイチゴを追いかけ、何とかキャッチし帰還する。
「ヒナ?ヒナ?しっかりするかしら!」
金糸雀が呼びかける。通信の雛苺は生きてはいるものの、所々血にまみれ、危険な状態だった。
「雛苺・・・どこ・・・敵は・・・どこ・・・!?」
シンクがレーダーを外を交互に見渡す。あるべきはずの機体の反応がない。
しかし・・・次の瞬間その機体は姿を現し、シンクの眼前に迫っていた。
「!?っっっあああ!!」
真紅は可能な限りの反射神経で振り下ろされる何かにその右手をぶつけていた。火花が散りお互いが
後退する。そして、見た。その振り下ろされたのは庭師の鋏だった。
「そ・・・そんな・・・・」
その機体は白い天使のような翼を持っていた。庭師の鋏、そして如雨露を持っていた。背部には8つの有線
式ビーム砲。恐らく、腰には2振りの鞭を、内部には音波兵器を持っているだろう。
さっきまで見えなかったのは、消えていたから。キラキショウのインビシブルだ・・・即ち・・・
「貴方は・・・いったい・・・」
「私はアリス。この世の神にして、ローゼンの最高傑作。貴方達のガンダムの集大成。」

 

 

次回予告 遂にその姿を現したアリス。その姿はまさにローゼンガンダムの全てを持ったモノだった。
思わぬ敵の出現に勝敗は。そして、巴が語る雛苺との出会いとは・・・
次回、超機動戦記ローゼンガンダム 荒野の出会い その出会いから、二人ははじまった・・・

 

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最終更新:2006年07月23日 00:07