※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

ただいま、テスト一週間前。
僕、蒼星石は、真紅と一緒に図書室でテスト勉強が終わって、一人で帰宅中。
翠星石は先に帰ったんだ。
翠星石は、余裕みたい。彼女が言うには、
「翠星石の溢れる才能を持ってすれば、テストなんてちょちょいのちょいです。
 前日にちょっとすれば、楽勝ですよ」
しかしながら、中間テストでは、赤点ギリギリの低空飛行。
中間テスト前に言っていた、「勉強なんてしなくとも」から、
「前日に勉強すれば」に変わっただけマシかな。
そんなことを考えていると、ふいに後ろから声がかかった。
ジ「よう、蒼星石」
ジュン君だ。彼とは、中学の時から同じクラスだけどあんまり話をしたことはない。
だけど、僕が大好きな人。
きっかけは、多分、ジュン君も覚えていないだろうささいなことだけど。
ジ「翠星石は一緒じゃないのか?」
蒼「うん。姉さんはテスト勉強なんて前日だけで十分なんだって。」
ちょっと残念。
せっかく二人っきりなのに翠星石のことを言わなくても。
別に恋人同士じゃないから仕方がないと言えば仕方がないんだけど。
ジ「ふ~ん。ま、せいぜい赤点を取らないように頑張って欲しいものだな。
  ……あ、これなんだけどさ、
  お前らが使ってた机に忘れてあったものなんだけど……
  蒼星石のか?」
ジュン君は、ポケットから赤色のシャープペンシルがを差し出す。
かすれた印刷。メッキがはげて薄い金色になった金具部分。
細部からよく使い込まれていることがわかる。
 
蒼「………」
僕はちょっと迷った。でも……
蒼「うん。僕の。ありがとう」
ジュン君がわざわざ持って来てくれたから、
ジュン君と接点が持てたみたいで、嬉しかった。
ジ「見つかってよかったよ」
ジュン君は、恥ずかしそうにそういって視線を外した。
彼と僕の間でしばらく沈黙が流れた。
沈黙はジュン君が破った。
ジ「……じゃあな。僕コッチだから。」
そういって、ジュン君が僕から遠ざかる。
駄目。僕はもう少しジュン君とお話したい。
声をかけるんだ。蒼星石。
僕自身にそう言い聞かせたけど、声は出なかった。
自分が情けなくなる。せっかく話すきっかけがあったのに。
泣けてくる。
 
ジ「あ、そうだ」
ジュン君が振り返る。
ジュン君は僕を見て、少し心配そうな顔を浮かべた。
ジ「……どうした?なんか顔色わるいぞ。」
僕が後悔してるのが、顔に出たのだろう。
やっぱり、ジュン君はやさしい。
蒼「いや、大丈夫だよ。それより、どうしたのジュン君」
僕は笑顔を心がけながら答える。
そもそも、ジュン君が声をかけてくれたから、もう笑顔になってると思うけど。
ジ「あのさ、蒼星石と真紅、一緒に勉強してるよな。
  僕も図書室で一緒に勉強して、いいか?」
意外な申し出だった。彼はかなり勉強ができる。
僕と真紅も一応は勉強できるほうだけど、
中学生の時から、一人でやっていたし。
蒼「うん。大歓迎だけど、でも、どうして?
  別に教えれるようなことなんかないと思うけど。」
僕は、一緒にいられるならどうでもいいけど、と思ったけど尋ねてみた。
ジ「真紅は英語ペラペラだし、蒼星石は生物とか得意だろ?
  その辺りを聞きたいなって思ってな」
たしかに、真紅は英語100点とったし、僕も生物は98点だった。
蒼「うん。いいよ。僕もジュン君にわからないとこ聞いてもいい?」
中学のときから、ジュン君は数学はほとんど100点だったし。
ジ「ああ、かまわない。それじゃ、明日また図書館で」
蒼「うん。バイバイ」
その後、フワフワ浮かんでるようで、
しばらく顔がにやけっぱなしだった。
翠星石に茶化されるのが嫌だったから
家に着く前には、口元を引き締めたけど。
 
次の日の放課後、僕が図書館に行くとすでにジュン君が席を確保していた。
ジ「あれ、真紅は?」
蒼「今日は英会話スクールの日なんだって」
真紅の通っていた中学校は英語の先生がずいぶんいい先生だったらしい。
それで、真紅は英語が好きになったと聞いている。
僕はジュン君と二人っきりってことで、真紅の先生に感謝をささげたいくらいだ。
逆にちょっと、緊張、不安の部分もあるけれども。
プリント、教科書とかを広げて、勉強を始める。
しばらくすると、消しゴムが転げ落ちた。
僕が消しゴムを取ろうと手を伸ばすと、
ジュン君の手に当たって、二人とも赤くなる。
なんて、ベタな妄想を考えてた。
こんな調子じゃだめだと頭を振る。
急に、肩にツンツンと突っつく感触があって、「ひゃぁ」と声を上げてしまった。
ジュン君が突っついてきたんだ。
ジ「ごめん、問題考えてる時に邪魔して」
蒼「いや、こっちこそ、声あげてごめん。それで?」
ジ「ああ、ここなんだけどさ……」
その後、普通に勉強を教えあって、今日の勉強会は終了した。
でも、僕はジュン君とお話できて幸せだった。
二人での帰り道、分かれる間際に、ジュン君は連絡先の交換を提案した。
土日にちょっと聞きたいことがあった時のために、とジュン君は言っていた。
昨日と同じく、しばらく顔がにやけっぱなしになった
月曜日もこんな風に過ごせるかなと思っていたけど、そうではなかった。
僕の恐れていたことが現実になってしまった。
 
月曜日の3時間目の体育の後、ジュン君から貰ったペンがなくなっていた。
カバンをひっくり返して、机の周りを探したけれども、ペンは見つからなかった。
別にペンはモノであって、ペン自身はどうでもいい。
でも、ペンを通してやっとできたジュン君とのつながりも切れてしまったように思えた。
つながりをなくしたことを非難されているような気がして、
何故か痛くて、泣きたくなった。
一人、屋上でご飯を食べていると、真紅が話しかけてきた。
真紅の手には、ジュン君から貰ったペンが握られていた。
紅「用件を率直に言うわ。何故、私のペンを取ったのか?
  理由をお話なさい」
そう。僕は、真紅のシャープペンシルを自分のものだと偽って、
ジュン君から受け取った。
だから、あの時、
僕はちょっと迷った。でも……
ジュン君と話すきっかけが欲しくて、それで受け取った。
悪いことだとは分かっていた。
けれども、僕は、ジュン君と……。
紅「もう一度、言うわ。理由をお話なさい」
言うべきか、言わざるべきか、迷った。
けれども、正直に言うことにした。
蒼「ジュン君が、真紅がなくしたペンを拾って、
  僕に届けてくれたんだ。
  ………ジュン君とお話したかったんだ。
  僕……その……彼のこと好きだから。
  だから、つながりができたらと思って……ペンを貰った。
  本当は返すつもりだったんだ。
  でも、ジュン君とのつながりが切れてしまうみたいに思えて。
  ごめんなさい」
自分でもバカらしい理由だなと思う。
言い訳までしてみっともない。
真紅に笑われるかも知れない。
その前にこんな話、信じてくれないかもしれない。
そう思ったけれど、僕の話を
真紅は笑わずに聞いてくれた。
紅「そう。反省しているならいいわ。
  私にも、ペンを無くしたという落ち度があるわけだし。
  あなたも、少しはものを取られる気持ち分かったかしら?」
蒼「うん。ごめんなさい。」
僕はもう一度頭を下げた。
紅「で、ジュンにはこの事を言うのかしら?」
僕はまた、迷った。
この事が知られたら、ジュン君に嫌われるかもしれない。
でも、……
蒼「言うよ。
  隠し事したまま、お話するのって落ち着かない。
  今回のことでよく分かったよ」
紅「そう。今日中に言ってしまいなさい。
  今日、私は、用事があって
  すぐ帰らなければならないのだけれども、ちゃんと言うのよ」
彼女は僕の目を見据えてそういうと、屋上を後にした。
 
放課後、図書室に行くとジュン君は前と同じ席で待っていた。
でも、前と比べて、僕の気持ちは沈んでいる。
笑顔を心がけなきゃ。
それに、ちゃんとジュン君には言わなきゃいけないならないことがある。
……ただ、ここでは人目が多すぎるので、帰るときにしようと思う。
ノートと、プリントを、広げる。
 
僕とジュン君は、真面目に勉強をしている、といいたいのだけれども、
僕は、ジュン君に言わなきゃいけないことで頭がいっぱいで勉強どころでない。
こんな調子じゃ駄目だ。
蒼「ごめん。ちょっとトイレ」
トイレで一人になって、少し気持ちを落ち着かせようとする。
頭では、いわなきゃならないと分かってる。
でも、心はジュン君に嫌われることを恐がっている。
僕は、勝手だ。自分で嫌われるようなことをしておきながら、
逃げようとしている。
自己嫌悪、今の僕の気持ちに一番ぴったりの言葉だ。
気持ちは逆に慌しく騒ぎ立ってけど、
あまり、長いこと時間を潰すわけにはいかない。
僕は図書室に戻った。
その後、教科書を見ながら、ペンをノートに走らせた。
けれど、頭には全然、内容が入ってこない。
結局、そんな状態のまま、下校時間となった。
 
僕は、ジュン君と二人、歩いている。
もうすぐ、ジュン君と別れる場所に来る。
僕は、まだジュン君に告げれていない。
駄目だ。こんな調子じゃどっちにしても、
ジュン君に嫌われる。そんなのいやだ。
だったら、少しでも確率のあるほうに……。
そう思って、ようやく声を絞り出す。
蒼「あの」
ジュン君は少し微笑んだ。
ジ「ごめん。僕、言いたいことがあるんだ。
  僕から先に行ってもいいか?」
蒼「え……うん。どうぞ」
ジュン君は、少し目を上に泳がせながら、話始めた。
ジ「あのさ、僕が拾ったペン、見せて欲しいんだ」
僕の心臓が、急激に動き出した。
頭に鼓動が響く。
蒼「その……ジュン君……実はね……」
ジュン君は僕の言葉を遮る。
ジ「いいから、筆箱出して?」
ジュン君は、僕から視線を外しながら言う。
もしかしたら、ジュン君はあのペンが僕のものでないことを
もう、知っているのかもしれない。
だから、軽蔑の意味で視線を外して、
僕のこと、嫌いになっていて……。
泣きたい。
僕は、筆箱を取り出して、蓋を開いた。
涙が溢れそう。
蒼「実はね……あのペンは……」
そういって、僕は目をこすった。
涙が出てきたからではなくって、
筆箱にあの赤いシャープペンシルが入っていたからだ。
蒼「え……なんで……」
ジ「トイレに行った時に筆箱に入れておいた。」
恥ずかしそうにこっちを見ながら、ジュン君は言った。
蒼「でも、ペンは本当は真紅のペンで、僕のじゃないんだ……」
ジ「真紅から話は聞いている。
  それは蒼星石のモノだ」
僕は、赤いペンを手に取った。
かすれた印刷。メッキがはげて薄い金色になった金具部分。
細部からよく使い込まれていることがわかる。
間違いなく、真紅の赤いペンだ。
ジ「真紅が、正直に言えば蒼星石に渡しなさい、って言ってから。
  僕は、蒼星石のこと信じてたから、前もって入れておいた。
  僕に言うべきことで頭がいっぱいだから、気付かないだろうしな。」
蒼「でも、なんで僕が言う前から、ペンを見せろって言ったの?」
僕が、嘘をついてたことをちゃんと聞いてから
筆箱を見てみろなら、話はわかるけれど。
ジ「あの、って僕に話をしようとしただろ?
  もう、それで十分だよ。よく頑張ったな」
ジュン君は、僕の頭を撫でながら、
少し、恥ずかしそうに微笑みながら言った。
涙が溢れた。
僕はジュン君に抱きついた。
ジュン君は無言で優しく抱きしめてくれた。
|