「あー・・・暑い・・・」
夏の強い日差しが差し込む教室、自分の席に座りぼやく。
今日は幸い晴れているは、梅雨の雨のおかげで毎日じめじめとした暑さが続き非常に不愉快な日が続いた。

「ま、どっちかっていうと今日みたいな暑さのほうがいいんじゃない?」
後ろの席の笹塚が言う。

「ま、今日はじめじめっていうより晴れてカラッとした暑さだからな・・・」
「そうそう、それに次の時間が終わればプールだし」
そうだ、今日の四時間目の体育は念願のプールだ。
先週まではこの暑いなかサッカーなんてやらされてたからな・・・

「あー、楽しみだなー、女子の水着」
「・・・結局お前はそれが楽しみなのかよ」
去年のプールで女子のほうをジロジロみて文句言われたの忘れてるのか?
・・・ま、いいか・・・次の時間は・・・美術か。

「次美術だし、そろそろいこうぜ」
「あ、俺ちょっと職員室よってくわ、プリントだしてこなきゃ」
「ん、じゃあ僕は先にいってるからな」
「ああ」

美術室にはまだ半分も人が集まってなかった。
美術の時間は教室とは席順が違う。僕の席は運良く窓際だ、前のほうだけど。

「よ、薔薇水晶」
「あ・・・ジュン・・・」
既に隣の席に座っている女子生徒、薔薇水晶に声をかける。

「なにしてたんだ?」
「・・・ぼーっとしてた」
・・・相変わらずなかなか不思議なやつだ。
眼帯をしていな右目でじーっとこちらを見つめてくる。

「なんだよ?」
「・・・次のプール、楽しみだね」
「え、あ、ああ、そうだな」
あんまりプールとかでははしゃぎそうなタイプではないから以外だ。
その後薔薇水晶と他愛もない話をしているうちに美術の先生がくる。

今日の授業は人物模写、隣の席の人とお互いに書くことに。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
・・・けっこう恥ずかしいな、こうジロジロ見られるのは。

コロン

「あ・・・」
間違った部分を消そうとしたのか、薔薇水晶が消しゴムをとろうとしたが誤って机から落としてしまった。
先生から配られた鉛筆を机におき、消しゴムをとろうと席を立ち屈む薔薇水晶。
消しゴムに気を取られ後ろから歩いてくる笹塚に気付かなかった。
同じく笹塚も他の人の絵に気を取られて薔薇水晶にきづかなかった。
「おい、危な─」

ドン─

「うわ!?」
「きゃ・・・」

ぽてっ、と可愛らしい音を立てて尻餅をつく薔薇水晶。
今、ちらっと見えた、黒っていうか、紺色のものは・・・あ、いや、そんな場合じゃなくて!
「おい、二人ともなにしてんだよ」
「ご、ごめん薔薇水晶さん!」
「・・・ううん、平気」

んしょ・・・と何事もなく立ち上がる薔薇水晶。特に怪我とかはないようだ。
「まったく、二人とももう少し周りを見ろよ」
「・・・うん」
「ああ、すまん」


授業も終了間近になり皆落ち着かなくなってきた。次の時間がプールだから仕方ないかもな。
「よし、やっと終わった」
「・・・私も・・・終わった」
「ああ、じゃあ一緒に提出してくるよ」
「・・・ありがとう」
先生に絵を提出し、鉛筆などの道具を元の位置に戻す。
「出してきたぞ・・・次はプールか」
「うん・・・早く入りたいな・・・」
「プールには入りたいけどいちいち更衣室いって着替えるの面倒だよ」
「・・・私・・・もう水着きてあるの」
「え?朝から?」

ってことはさっき見えたのは・・・なんだ、水着か・・・
「・・・残念?」
「─!?な、なにがだ!?」
「・・・さあ?」
・・・ばれてる?ばれてるのか?

水着着替え、プールサイドに集合する面々。

「おい、みろ!雛苺さん!」
「おおー!でけえ!」
「ちょwwwwwww真紅カワイソスwwwwwww」
「うはwwww恥ずかしがる蒼の子テラモエスwwwwwww」
「おい、翠星石にぼこられるぞ、うかつなこというなよ」
「きらきー(゚∀゚)!」
「銀様ktkrwwwww」

・・・こいつらは・・・そういえば薔薇水晶は・・・ってこれじゃ僕もあいつらと同じじゃないか!
「お、おいおい、見ろよ桜田」
「なんだよ笹─!」

6の4と書かれた紺色のスクール水着。

・・・薔薇水晶さん、なんですかその格好は?

「キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!」
「キタ━━(゚∀゚)⌒Y⌒(。A。)⌒Y⌒(゚∀゚)⌒Y⌒(。A。)⌒Y⌒(゚∀゚)━━!!! 」
「キタワァ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!☆」
「キキキターキ━━ (*`Д´)=○)Д゚) ´Д゚)・;' タァ━━!!」
「キタキタキタキタキタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡(゚∀゚≡(゚∀゚≡(゚∀゚)≡゚∀゚)≡゚∀゚)≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!!!!!!!!!」
「+ 激しくキタ━━|(゚U゚)|━|/゚U゚|━| /゚U|━| /゚|━| |━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━!!!!! +」
「キタ━━━(´∀`)´・ω・`);゚Д゚)・∀・) ̄ー ̄)´_ゝ`)゚皿゚)∵)TΔT)ΦдΦ)#-_-)~ハ~)゚з゚)ё)≧。≦)°.Å)゙・Ω・)^σ^)=゚ω゚)ノ━━━!!」

・・・スクール水着は破壊力抜群らしい。
当の本人は自分が騒ぎの原因だと知らないのか、?マークが頭上に出てそうな顔をしている。


体育の先生がなんとか騒ぎをとめ、授業開始の鐘がなって十分後、ようやく体操が始まった。
体育委員の掛け声に合わせて準備運動を進めていく。
─ちらっと女子のほうをみる。・・・ていうか男子のほとんどは女子のほう見てるから別に怪しまれはしないさ。

綺麗に整列している女子の後ろの方で、一人だけちょっと浮いてるスク水の薔薇水晶。
・・・本当になに考えてるんだろう・・・他の女子みたいに可愛い水着とか着てこないのかな・・・

っていや、別に薔薇水晶の可愛い水着姿を見たいわけじゃなくて、どっちかというと水銀燈みたいなきわどいのを・・・

「桜田?もう体操終わったぞ?」
・・・いつの間にか男子も女子も既にプールに入ってるじゃないですか先生。
「お前がぼーっとしてたんだろう。シャワー浴びてから入れよ。」
「はい。」


シャワーを浴び、この・・・なんだっけ?腰までつかる冷たい奴。まあいいやこれ通って・・・

「・・・ジュン」
「っと、薔薇水晶?まだプール入ってなかったのか?」
「うん・・・ジュンを待ってた」
「別に待ってなくても─ま、いいか。それじゃはやく入ろうぜ。」
「・・・うん♪」
なんかいつになく機嫌よさそうだな。プールに入れるのがそんなにうれしいんだろうか。


「ぷはぁ・・・やっぱこう暑い日だと気持ち良いな」
「うん・・・格別」

プール中央のあたりでは皆思い思いに泳いだりボールで遊んだり、深いほうでは潜水勝負とかしてるみたいだ。
浅い方では温泉みたいに水に使ってるだけの人とかプールサイドで水遊びしてる人とか。
僕はゆったり泳ぐためプールの端のほう、水深が浅い場所で泳いでいる。

「んー・・・・・」

薔薇水晶もあまりがんばって泳いだりする気は無いのか、ぷかぷか浮かんでたりするだけだ。
「しかしそう髪長いとさ、乾かしたりするの大変じゃないか?」
「うん・・・まあね・・・プールの後は当分縛ったりはしないかも・・・」
「へえ・・・」


「そういえばなんでスクール水着?」
「・・・これしかなかったから」


そんなこんなで軽く泳いだりしながら終了時間まですごした。


プールの後の更衣室
「なあ、桜田ってさ」
「ん?なに笹塚?」
「・・・スク水フェチ?」
「・・・違う」
「けど今日ずっと薔薇水晶さんと話してたじゃないか!」
「いやそれは」
「大丈夫!俺もフェチだ!」
「桜田!俺もだぜ!」
「僕もだよ!」
「お前は一人じゃないぞ!」
「だからちがーう!」


なんでお前らそんなに輝いてるんだ


体育の授業が終わり昼休みになった。校舎のあちこちが活気に満ちてる。
僕は飯は静かに食べる派なのでいつも人気がない校舎裏のベンチでご飯を食べている。
今日の昼飯は購買の焼きそばにから揚げだ。
ここの学校の購買は近くの惣菜屋が売りに来てくれてるためおいしいと評判だ。

「ふう、うまかった・・・まだ30分も時間あるな」
少しゆっくりしていくかな・・・



そう思った矢先、誰か近づいてくる気配がした。
だれだ・・・?
目を開けてその気配を確認する。


「誰────」


「・・・どうしたの、ジュン?」




「あ、いや、なんでもない・・・」
「・・・?」
薔薇水晶だ。だけどいつもと違う。髪飾りを外し髪を下ろしている薔薇水晶。

髪を下ろしているだけでこうも雰囲気が変わるものなのか。

それに・・・髪は完全には乾いてないのかすこししっとりとしている。

・・・なんか、艶っぽい、




「ジュン・・・?」
「え、ああ、なに?」
「どうしたの・・・ぼーっとしてるよ?」

薔薇水晶が顔をかしげる。

・・・すごく、可愛い。

「いや、なんでもないってば・・・それよりどうしてここに?」
「・・・ここにくればジュンと会えると思ったから」

少し顔を赤らめている。

・・・やばい、だから可愛いって。

「えっと、会ってそれで・・・何のよう?」

「・・・一緒にいたかっただけ」

それ以降僕も彼女もしゃべらない。
ただこの沈黙は、気まずいっていうより、こそばゆい。


「・・・ね、ジュン」

薔薇水晶が口を開く。

「・・・なに?」




こっちをじっと見つめる。

「あのね・・・私ね・・・」

「・・・うん」

「────」




─図書委員の薔薇水晶さん、職員室○○先生まで・・・・・・

「・・・呼ばれてるよ」
「・・・うん」

・・・・・・・ふう

「僕はこのまま教室戻るから」
「うん・・・それじゃ・・・職員室いってくるね」

「─なあ」
「・・・なに?」
「今日、さ・・・一緒に帰らないか?」

彼女は一瞬目を丸くして・・・そのあと、はにかんで。

「・・・・・うん♪」


─今まで気付かなかったけど

こうしてみると、やっぱり可愛いな、薔薇水晶は。

うん、すごく可愛い。今の笑顔を独占したいとさえ思ってしまうぐらいに。


これからの学校生活、なんだか楽しみになってきた。

終わり




その後、帰り道にて
「・・・ところで」
「ん?なんだ?」
「・・・スクール水着、欲情した?」



「なんだって?」
「だから・・・欲情した?」
「・・・ないって」
「そう・・・」
「いきなり何を言い出」
「けどジュンのコレクションの中にスク水物の・・・」

ちょっと待て。

「・・・なんで知ってる!!?」
「・・・さあ」

少し駆け出し、くるっと一回転。

ふふっと笑って。

「何でだろうね♪」


・・・彼女には一生かなわない気がする。

今度こそ終わり。

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最終更新:2006年07月19日 20:04