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愛の保守劇場 ノリノリのりっち

第一話 事の発端

 ジュン君が引きこもってしまった。何でも趣味をからかわれたらしいけど、ジュン君のこと友達に自慢しちゃったお姉ちゃんのせいかしら?
 でも、お裁縫ってそんなに恥ずかしいとは思わないんだけど……ああっ、もしかしたら友達に話したとき、ついノリで「女装癖もある」って言っちゃったのがまずかったのかしら。てへっ。
 でもジュン君、顔はキレイだし体格も結構きゃしゃだから似合うと思うのよね。

 と、い・う・わ・け・でー、ジュンくーん。お着替えしましょうねー。
「な、なにをするやめろー」

「うう、屈辱だ……」
 やっぱり。よく似合ってるわよぅー。
 でも制服のサイズがぴったりって、お姉ちゃんなんか複雑……。
 ひょっとして、お姉ちゃん太ってるのかしら?
「知るかよ。もういいだろ……」
 あ、そうだ。
「なんだよ、まだ何かする気かよ……」
 こんなに可愛いんだもの、みんなに見てもらいましょう。
「いやだーー!」
 みんなどんな反応するかしら?


真紅ちゃん
「胸には何を詰めてるの?」
ヒナちゃんカナちゃん
「「かわいいのー(かしらー)」」
翠星石ちゃん
「か、可愛くなんてねーです! 見とれてなんかねーですよ!」
蒼星石ちゃん
「そういう格好も似合うんだね。自信なくすなぁ」
水銀燈ちゃん
「メイクしてもっとキレイにしてあげるわぁ」
薔薇水晶ちゃん
「お、お持ち帰り……」
巴ちゃん
「似合ってるわよ……ぽっ」
めぐちゃん
「病気も治りそうなくらい可愛いですね」
みっちゃんさん
「まさちゅーせっちゅー! ねえ、この服も着てみない!?」

 ……っていう感じになると思うんだけど、どう思う?
「絶対無い。だからやめろ。やめてください」
 だめよぅ、見せるって決めちゃったんだから。それにもう電話しちゃったし。
「た、助けてーー!」


 で、実際に見せてみたんだけど……
全員「キモっ」(み「……ゴクリ」)
 どうしてかしらねー。こんなに可愛いのに……。
「ううっ……もう学校に行けない……近所も歩けない……」
 はっ。お姉ちゃん気付いちゃったわ!
「なんだよ……」
 ムダ毛よぅ! 処理しなかったからああ言われたのよぅ。やっぱり服着せただけじゃダメなのね。
「違う、絶対違う!」
 そうよぅ! お姉ちゃんがそうだって言ったらそうなのよぅ!
 という訳で、剃り剃りしましょうねー?
「い、いやだー! 誰かー! 助けてー!」

 ああ、やっぱりジュン君は可愛いわー。
 今度はメイクもちゃんとして、今度こそみんなにキレイって言わせるわよぅ。
「シクシク……」
 メイクが落ちちゃうから泣いちゃめっめよぅ。じゃ、電話電話、と……。
「やめてーーー!」



第二話 あの頃僕らは白かった

 前回以来、ジュン君は私を見ると逃げ出してしまう。家の中でも部屋に鍵をかけて閉じこもってしまうのだ。しかし食事は私が作るし部屋の鍵は外から開けられるタイプなので実はあまり意味が無かったりする。
 今二階で物音がした。おそらくジュン君が遅めのお昼ご飯を食べに来るのだろう。
「わ、お前なんでいるんだよ!」
 あら、ひどいわジュン君。は! ひょっとしてコレは反抗期!?
「違うよ! 今日お前学校だろ!」
 パジャマ姿で怒鳴るジュン君、可愛い。お姉ちゃん、ジュン君が心配で学校なんて行けないわよぅ。
 でも、とりあえずはご飯よね。ジュン君、何食べたい?
「シリアル食うからいらない。それより聞きたいんだけど」
 家族のスキンシップね。お姉ちゃんなんでも答えちゃうわよぅ。
「うるさい。なんで僕の服がなくなってるんだよ! スカートばっかりになってるし、いつの間にやったんだよ!」
 だって、女装したジュン君かわいかったんだもん♪ いつやったかはヒミツ。女の子は秘密を持って美しくなるのよ。
 だからジュン君もパジャマなんか脱いで、お着替えしましょうよぅ。
「い・や・だ! 何で着替えてないと思ってるんだ。お前の変態趣味に僕を巻き込むな!」
 変態だなんて、お姉ちゃん悲しい。そんな悪い子にはお仕置きよぅ。
 さてここに取り出しましたるはピンクのふりふりワンピース。某社会人が趣味で見定めた逸品。
「待て。色々待て」
 もう、何?
「どこに隠してた。あとそれをどうするつもりだ?」
 どこに隠してたかは女の子のヒミツ。どうするかは……ジュン君に着せるのよーー!!
「やっぱりかーー!」
 ――――
ぴんぽーん
 ジュンちゃんを着替えさせた時、チャイムが鳴った。


 あら、お客さんかしら?
「さっさと縄を解け」
 もう、だめよぅ。女の子がそんな乱暴な言葉遣いをしちゃ。せっかく可愛いんだから♪
「僕は男だ! さっさと解け!」
 着替えさせて椅子に縛り付けたジュンちゃんはほっといてお客さんのところに行かなきゃ……あら、巴ちゃん?
「プリントを届けにきました」
 あ、ありがとう。どう? よかったらお茶でも。
「いえ、プリントを届けに来ただけですので……」
 遠慮しちゃだめよぅ。ジュンちゃんもいるし、一緒にお茶しましょう?
「ジュン……ちゃん?」
 首をかしげる巴ちゃんを連れてリビングへごー。ふふ、可愛いって言ってくれるかな?
「……桜田君?」
「見るな……頼むから僕を見ないでくれ……」
 ふふ、驚いてるわ。ああ、嫉妬したりしたらダメよ?
「これ、今日のプリント」
「……ありがとう、柏葉……」
「それと、言いにくいんだけど……来るのは日替わりで、明日は多分別の子が」
 あら? ジュンちゃんテーブルに頭突きしたりして、変なの。
「私には何も出来ないけど、桜田君、強く生きてね……」
 お茶を飲み終わると巴ちゃんは帰るというので玄関までお見送り。
 ねえ、ジュンちゃんどうだった? 可愛いでしょ?
「えっと、あの服なら髪はショートではなくロングの方が似合うと思います」
 は、そうね。さすが巴ちゃん。こうなったらすぐにウィッグ買って来なくっちゃ! ありがとう!
「いえ、どういたしまして……桜田君、ごめんなさい……」
 楽しみだわー、ロングヘアのジュンちゃん♪
「た、助けてくれー!」



第三話 使うものと仕えるもの

 お化粧をしてウイッグもつけて、最後に全体的に調和を取るために細かくいじる。うん、やっぱり可愛い。変身して妹となった弟は私よりキレイでなんか嫉妬してしまう。
「……」
 あら? どうしたのジュンちゃん。なにか気に入らない?
「女装はもう諦めた……。でも何なんだよコレは!」
 なにって……おかしいところなんて無いわよぅ。変な子ねぇ。
「この服は何だって聞いてるんだよ!」
 エプロンドレス。通称メイド服よぅ。今人気なんでしょ? お姉ちゃんも「おかえりなさいませお嬢様」とか言われてみたいわぁ。
「何がお嬢様だ。所帯じみたお前なんかババアで十分……」
 ジュンちゃーん。何か言ったかなぁ?
「い、いえ! 何でもありません」
 何か失礼な言葉が聞こえた気がしたが無視しよう。
「どこで手に入れたんだよ、こんなの」
 勿論ヒミツ。想像はつくと思うが可愛い服を集めるのが好きな社会人が知り合いに居るのだ。が、ジュンちゃんにそんなことを教える必要もあるまい。
 それじゃ、ホワイトプリムをつけて、できあがりー♪
「こんなの、絶対人に見せられない……」
 もーう、ジュンちゃんったら恥ずかしがり屋さんなんだから。でも大丈夫。こういうときにはお約束というものがあるのよぅ。

ぴんぽーん

 ほら来た♪
「いやだぁぁぁーーー!」


 いらっしゃーい。
「こんにちわ」
 あら真紅ちゃん。プリント届けに来てくれたの?
「それだけじゃないのだわ。巴から話を聞いたのよ」
 っていう事は、ジュンちゃんを見に来たのかしら。
「その通りなのだわ。さあ、紅茶を淹れて頂戴……って、ジュン?」
「うう、そうだよ……。さあ笑え、存分に笑え!」
「ジュ、ジュン……」
 笑うわけなんて無いわよぅ、すっごく可愛いのに。ねえ、真紅ちゃん?
「え、ええ、その通りだわ。笑ったりなんかしないわよ、ジュン。そんなことより……その言葉遣いはレディーとしていただけないのだわ。直しなさい」
 あらあら、真紅ちゃんが睨んだらジュンちゃん怯えちゃった。
「こ、これでいいのかよ……コホン。お客様、紅茶をどうぞ」
「……のり、のり!」
 どうしたの、真紅ちゃん?
「このメイド、レンタルはしているのかしら?」
 二泊三日で三万円です♪
「はい、ちょうどよ」
 ありがとうございまーす。
「さあ来るのだわ、ジュン。この真紅が立派なメイドに鍛えてあげる。その過程でナニか役得があってもそれは自然なことなのだわ」
「い、嫌だーー!」
 あっという間に連れ去られちゃった。
 翌々日、真紅ちゃんに引きずられて帰ってきたジュンちゃんは精根尽き果てておりましたとさ♪



第四話 苦労人とアレな人

 うふふ、今日のジュンちゃんは「お色気ナース」よ。
「もう女装とかじゃなくて単なるコスプレじゃないかこれ」
 可愛いからいいじゃない。ああ、写真撮りたいわー。
「ふざけるな。絶対ダメだ」
 ちぇー。じゃあ、さっき教えたあの台詞、言って。
「い・や・だ」
 言ってくれなきゃ、お姉ちゃん写真撮っちゃうわよ?
「わ、わかったよ……。くそぅ、……おちゅーしゃしまーす」
 だめよぅ! ちゃんとポーズとって、もっとしっかりと!
「こ……こうか? おちゅーしゃしまーす♪」
 わぁ、ジュンちゃんも結構ノリノリね。ちなみにこの部屋には隠しカメラがあって、その映像は衣装を提供してくれているとある人物の元に送られているんだけど勿論そのことは教えない。
「ナースにおまかせ☆」
 吹っ切れたのかしら? なんだか楽しそう。
「楽しそうねぇ」
 あら水銀燈ちゃん、いらっしゃい♪
「な、すす水銀燈! い、いつから……」
「こんにちわぁ。ポーズとってたあたりよぉ。ところで……」
 こちらを見てニヤリと笑う水銀燈ちゃん。なんか悪党笑いが似合うわね。なぁに?
「真紅から聞いたんだけどぉ、貸し出ししてるんでしょ? ナースさんを一人借りたいのよぉ」
 どうぞどうぞ。
「どこに連れて行く気だあー!」


 夜になって水銀燈ちゃんに連れられて帰ってきたジュンちゃんは目に涙を浮かべていた。
 何があったの? ひょっとしていじめられたの? だとしたらお姉ちゃん許さないわ!
 だけどジュンちゃんは泣いてばっかりで答えてくれない。途方に暮れていると困った顔をしている水銀燈ちゃんが教えてくれた。
「めぐにセクハラされたのよぉ。いきなりスカートめくって『あら、こっちは女の子用じゃないんだ』って……」
 し、しまった! そうよね、やるならきっちりやらなきゃ。中途半端はよくないわよね!
「そう……なのかしらぁ?」
 そうよぅ! こうしちゃ居られないけど、もうお店閉まってるだろうし……明日朝一番で買ってこなくちゃ! 水銀燈ちゃん、めぐちゃんに御礼言っておいてね!
「い、いいのかしらぁ……。とりあえずジュン、ごめんねぇ?」
「ううっ……、グスっ……、ヒック……」
 水銀燈ちゃんはジュンちゃんに謝っているけど気にする必要はない。むしろ感謝してるわ!
 さあ、明日に向かって特訓よぅ!
「優しかった姉ちゃんは何処に行ったんだーー!」
 お姉ちゃんはここにいるわよぅ♪

 なお銀ちゃんの協力もあって、ランジェリーだけは許してもらいました。
「ちぇー」



第五話 記録するものされるもの

「こんにちわかしらー。プリントかしらー」
 あら金糸雀ちゃん、いらっしゃーい。
 彼女は衣装の提供者と共に暮らしている子だ。ジュンちゃんの着替えシーンやらなにやらはこの子も見ているだろう。ああ、ジュンちゃんを呼ばなきゃ。
「ちょっと待って欲しいかしら。話があるかしら」
 あら、なあに?
「みっちゃんが見ているだけじゃなくてまさちゅーせっちゅしたいっていってたからレンタルしたいかしら」
 うーん、でもジュンちゃん今自己嫌悪の真っ最中で……。ほら、ミニスカポリスの衣装で頭抱えちゃってるのよう。ああ、でも悩むジュンちゃん可愛いわ。
「何させたのかしら……?」
 えー、ちょっとポーズとってもらって「逮捕しちゃうぞっ」って言わせただけよぅ。
「……さすがに同情するかしら」
 そんなわけでね、今はちょっと……
「報酬は勿論あるかしら。各種の衣装とみっちゃんの家でのお着替え映像の提供でどうかしら?」
 ジュンちゃーん。ちょーっとこっち来てー。
「うわああああああああ!」
「……心の中で謝るかしら。ジュン、ごめんなさい」
 申し訳なさそうに袖を掴む金糸雀ちゃんを振り払うなんて出来ないジュンちゃんはとぼとぼと歩いていく。ああ、ドナドナが聞こえるわ。ジュンちゃん! 無事に帰ってきてねー!
「うるせぇぇぇーーー!」


 ピンクハウスに包まれて帰ってきたジュンちゃんはただいまを言うなりソファーに倒れこんでしまった。金糸雀ちゃん、何があったの?
「大変だったかしら……。暴走したみっちゃんのまさちゅーせっちゅが……」
 疲れた顔の金糸雀ちゃん、お疲れ様。ああ、でもわかるわー。だってこんなに可愛いんですもの、お姉ちゃんも暴走したくなっちゃう。
「ジュンも途中からノリノリになって……ふと気付けばジュンの貞操の危機だったかしら」
 とりあえず二人がかりで何とかみっちゃんさんを取り押さえたとの事。でもまさちゅーせっちゅの嵐はとどまる事が無く、完全に消耗してしまったらしい。でも金糸雀ちゃんは嬉しそうね。
「ジュンとツーショットの写真とってもらったかしら!」
 そう言ってプリントした写真を見せてくれる。そこにはサマードレスを着たジュンちゃんとドレスで飾った金糸雀ちゃんが満面の笑みを浮かべている。よかったわねー。お姉ちゃん、ちょっとうらやましいわ。
「あとこれ、約束のブツかしら」
 そう言って差し出された紙袋を受け取る。中身は勿論……キャッ、恥ずかしくてお姉ちゃん言えないっ。
 あ、金糸雀ちゃん。よかったらご飯食べていく?
「そうさせて欲しいかしら。なんかみっちゃん、今夜はアッチから帰って来そうにないかしら……」
 じゃあ、きょうはぷりぷりハートのオムライスね。お姉ちゃん頑張っちゃうわ!
 ジュンちゃーん、手伝ってー。
「……僕は、僕はぁーーー!」
 ジュンちゃーん。お料理は女の子の必須科目よぅー。こっち来てちゃんとお勉強しましょうねー♪



第六話 お嬢様と兎

 本物のメイドさんが紅茶を淹れてくれた。ご丁寧にどうも。
「ニルギリのファーストフラッシュですわ。気に入っていただければよろしいのですが」
 とっても美味しいわ。柑橘系の香りがするけどどうやってるの?
「まあ、お気づきになられたのですね。フルーツティーですわ。作り方は……」
 ふんふんなるほど。ジュンちゃんもちゃんと聞かなきゃ。ぶすくれてちゃダメよぅ。
「何で僕が……」
 日の当たるテラスでティータイムなんて本物のお嬢様は違うわぁ。
「お嬢様方、スコーンをお持ちいたしましたぞ」
 あら、ありがとうございます。ってジュンちゃん、紅茶を噴出すなんてはしたないわよ。
「いや、おかしいだろ」
 おかしいって、何が? きらきーちゃん、わかる?
「? いえ、私には……」
 執事さんも無言で首を振る。そんな私たちの反応が気に入らないのか、ジュンちゃんが声を荒げる。
「明らかに変だって! なんで兎がタキシード着てるんだよ!」
 あら、チャーミングでいいじゃない。凛々しいしとっても素敵だわぁ。
「ラプラスは当家自慢の執事ですわ」
「お褒めに預かり光栄です。それよりジュン様」
 名指しで呼ばれたジュンちゃんが「へ?」というふうに首をひねる。どうしたのかしら?
「どうやら私のせいでお召し物を汚されてしまわれたご様子……どうでしょう、御召し変えなされては?」
「それはいい案ですわ、ラプラス」
 そうね、お姉ちゃんもとってもいい案だと思うわ。
「では早速……」
「お待ちなさい。男性のあなたに手伝われるには抵抗があるでしょう。ここは私がお手伝いいたします」
 きらきーちゃん心強いわ。うん、ここはお任せ。兎さんはおねえちゃんとお話しましょう。
「ではそうさせて頂きます」
 じゃ、きらきーちゃんよろしくねー。ジュンちゃーん、わがまま言っちゃめっめーよーぅ。
「お任せください。必ずやジュン様にふさわしいものをご用意いたしますわ」
「いやだーーー! 絶対イジられるーーー!」


 ジュンちゃんが連れて行かれ、しばし兎さんとおしゃべり。いろいろと博識なんですね。尊敬しちゃいます。
「はっはっはっ。それほどでもございませんぞ」
 屋敷の方が騒がしくなってきた。そしてその音はだんだん大きくなってくる。そろそろかしら?
「そのようですな。彼女がどのようになるのか……非常に楽しみでございます」
 ええ、本当に。
 やがてこのテラスに通じる窓が開き、鼻血の跡と恍惚とした表情が可愛いきらきーちゃんがあらわれた。
「さあ、ご覧ください。これが生まれ変わった彼女ですわ!」
「これは……」
 きらきーちゃんが横に動くとそこに現れたのは二人のメイドさん。そして彼女たちに両腕を捕まえられたバニーガール。胸は詰め物だろうか。見た感じじゃニセモノとはわからないけど特殊メイクの応用かな?
「うう……」
 ずれた眼鏡と赤みが差した頬は興奮の証ね。あらあら、下半身をもぞもぞさせちゃって。お姉ちゃん、なんだか変な気分になっちゃう。
「抵抗なさるので、彼女たちにも手伝っていただきました。大丈夫、口の堅さは保証いたしますわ」
 横のメイドさんも顔が赤いわね。ひょっとしてジュンちゃんのあまりの可愛さにあてられちゃったのかしら?
 時間が経つとジュンちゃんもだんだん余裕が出てきたようで自分の胸を玩んでいた。でもただでさえ扇情的な格好なのに、そうやって周りを挑発すると凄い事になっちゃうわよ?
「むはー!! バニーさんですぞーー! もう辛抱たまりませんぞーーー!」
 あら兎さんが発情しちゃったわ。きらきーちゃんと顔を見合わせて苦笑する。
「むはーー!!!」
 逃げ回るジュンちゃんと追いかける兎さんの声をBGMにティータイムの再開。あ、そちらのメイドさん達もよろしければご一緒にどうかしら?
「は、はぁ……」
「でも……」
「うほほーい!」
「獣姦は絶対いやー!」
 ああ、お紅茶おいしいわー♪



第七話 茶飲み友達と若奥様

「うん、美味しいよ」
「そうですねぇ。とってもフルーティーですぅ」
「喜んでいただけて何よりだよ……ハァ……」
 きらきーちゃんのところで教わったフルーツティーが褒められたのに複雑な顔でため息をつくジュンちゃん。ホントにおいしいわぁ。
「それにしても……綺麗になったね。うん、翠星石ともども食べちゃいたいくらいに……」
「ホントですぅ。前に見たときは制服着ただけでえらくキモかったですけど、ちゃんとメイクしたりすれば可愛くなるですね。あと蒼星石は自重しろですぅ」
「……嬉しくないよ。いろんな意味で……」
 お茶を飲みながら褒める二人に、ジュンちゃんはうなだれながら答える。でも放っとかれるのは悲しいから混ざっちゃおう。二人とも、今日のジュンちゃんの格好はどぉ?
 今日はゆったりとしたカーディガンに薄手のタートルネック。下はこれまたゆったりとしたロングスカートで清楚な感じに決めている。
「今日は普通の服だからあんまり抵抗は無いや」
 ここのところコスプレ続きだったものねぇ。
「でもなんかオバサン臭い気がするですぅ」
「それは言いすぎじゃないかな。僕は、なんか上品な若奥様風でいいと思うけど……」
 ガチャッ。
 蒼星石ちゃんが言い終わるか否かというところでいきなり扉が開いた。
「聞き捨てならない……」
 あら薔薇水晶ちゃん。
「……永遠の若奥様は私のための言葉……。ジュン、勝負……」
 あら、ライバル出現!? ……燃える展開だわ! ジュンちゃん、負けちゃダメよ!
「イ、イヤァァァーーー!」


 渋っていたジュンちゃんだけど、私たちにけしかけられて勝負を決意したみたい。それでこそ私の妹よぅ♪
「僕は弟だ!」
「ジュン……勝負……」
 では勝負の方法を翠星石ちゃん、どうぞ!
「では、翠星石が指定したものを近所のお店で買ってくるですぅ。店の指定はしませんです。上手なお買い物勝負……時間と安さがキーポイントですよ」
 それぞれにメモを受け取り、蒼星石ちゃんが合図をする。
「よーい、ドン!」
 かくして二人の女性のプライド「僕は男だ!」と若奥様の称号をかけた勝負は始まった。
 この調子で外に出してればヒキコモリなんてすぐに治るわよね。それはそうと、どっちが勝つかしら?
「薔薇水晶じゃないかな。若奥様って言葉には並々ならぬこだわりがありそうだし」
「ジュンだと思うです。あいつはああ見えて負けず嫌いですよ」
 お姉ちゃんもジュンちゃんだと思うわ。それにほらあの子ってツンデレだし、いやよいやよも好きのうち。あれで結構気に入ってると思うのよぅ。
「ありえねーと思うですぅ……。あとツンデレは翠星石の専売特許ですぅ」
 そんなことを話していると玄関の方から音が。もう帰ってきたのかしら?
 玄関に向かうと沈んでる二人が居た。
「ジュンが……」
「……」
 何があったのかしら。ついてきた二人も真剣な顔になる。
「ジュンが…………ナンパされた」
 話を聞くと同じ店にたどり着いたときにジュンちゃんがナンパされ、危ういところで逃げたらしい。
 勝負は薔薇水晶ちゃんの「ナンパされなかった私の負け」という言葉で勝敗が決した。
 やったぁ♪ ジュンちゃん、勝ったわよぅ♪
「もう……お婿にいけない……」
 大げさねぇ、候補はいっぱい居るわよぅ♪


「翠星石、蒼星石、ちょっと……」「?」「?」



番外編 スタートライン

「……?」
 その人の横顔に見覚えがあるような気がして私は立ち止まる。しかし、すぐに気のせいだと思い直した。
 ゆったりとした服に身を包み、長い髪をなびかせて歩く女性の顔は、私が知っている女友達の中には無い。どちらかと言うと中性的な雰囲気でメンズの服を着ていれば男性と思うかもしれない。
 だが、そのメイクは目を見張るものがあった。ナチュラルメイクというほど薄くはないが決して下品にはならず、見る者に不思議な印象を与えるその技術は中学生のものではない。雑誌を真似た程度で出来るようなものには到底思えなかった。
 だからだろうか、気になった私が彼女のあとをつけてしまったのは。
 彼女が入っていったのは私もよく利用するスーパーマーケットだった。彼女はメモをしきりに確認しながら店内へと入っていく。私も続いて入ろうとしたとき、知った顔が私に声をかけてきた。
「……桑田さん?」
 薔薇水晶さん。何を考えてるのかわからない人で、正直私は彼女が苦手だ。声をかけられたことに驚きながらもそんなそぶりは見せないよう、落ち着いて返事をする。
「あ、薔薇水晶さん。あなたも買い物?」
「うん……。勝負」
 勝負? 相変わらず過程を飛ばす人だ。誰とどんな勝負をしているのかを聞くと驚くような答えが返ってきた。
「……ジュン。何の勝負かは……ヒミツ」
 ジュンって……桜田君? どういうことだろう。私が質問しようとすると彼女は「あっ……」と声を出し、小走りで駆け出した。その方向を見ると先ほどの女性が男性に声をかけられている。
 あれぐらい可愛ければナンパもよくされるのだろう。しかしそれにしては断る様子が遠目にも不慣れに見えた。結局薔薇水晶さんが駆けつけ、男を追い払って事なきを得たようだ。
 ひょっとして知り合いなのだろうか。聞いてみたかったのだが女性は急に駆け出してその場を離れ、薔薇水晶さんも私には目もくれずに彼女を追いかける。
(明日学校で聞けばいいか……)
 彼女は苦手だがちょっと聞くぐらいならかまわないだろう。ついでに桜田君のことも聞いてみよう。あのドレスをデザインしたのが男子だと聞いてちょっと気味悪くも思ったが実際に着てみたいとも思うし。


 翌日、薔薇水晶さんに昨日のことを尋ねてみたが見事に答えるのを拒否された。桜田君に関しても完全拒否。
 他の桜田君と仲のいい人たちに聞いても結果は同じ。私が聞いて回っているという情報が流れているのか、柏葉さんなんかは声をかける前に逃げられてしまった。
 これはおかしい。とりあえずは柏葉さんを捕まえよう。押して押して押しまくれば落ちる。彼女はそういう人間だ。問い詰めれば何か吐くだろう。
 逃げる彼女を女子トイレで追い詰めた。話してもらうために詰め寄ると彼女はうつむいて微かに震えだした。
 やりすぎたかもしれない。謝ろうと思い顔を近づけたら下から顎を貫くような感覚が……。

 その時のことを私は覚えていない。柏葉さんはいきなり倒れこんだ私を介抱してくれたというが、どう考えても彼女が怪しい。しかし真紅さんならともかく、彼女の細腕で人を一撃で昏倒させることが出来るとは思えない。
 柏葉さんにどうして自分たちに桜田君の事を聞こうとするのか尋ねられた。実はあのドレスが着てみたいのだと答えると彼女は意外そうな顔をした後、見たことのない顔で心底楽しそうに笑った。
 彼女曰く、桜田君はお姉さんに女装させられているらしい。それと私が昨日見た女性は多分桜田君だろうという事。
 最初に自分が行ったときに見て、後々行くであろう彼女たちにはあまり驚かないよう先に伝えておいたらエスカレートしてしまったらしい。
 数日後、思い立った私は桜田家を訪れることにした。彼女が嘘をついているとも思わないが実際に見なければにわかには信用できないし、建前を抜きにすれば単に見てみたかった。
「はーい」
 ドアを開けて出てきたのはやけに所帯じみた女性。彼女が桜田君のお姉さんだろう。桜田君に会いにきたことを告げると中に通される。
 リビングに居たのはすまし顔で中華まんを頬張る真紅さんとチャイナ服を着た昨日の女性だった。魅惑のスリットから覗く足が妙に艶かしい。
 微笑みながら蒸篭を持って私に椅子を勧める彼女は昨日よりも何か洗練されているような気がする。物腰やしぐさが「らしい」のだ。
 これが……桜田君?
 私もまた戸惑いながら素直にお皿の用意された席に座る。その私の前に桜田君(?)は蒸篭から取り出した中華まんを置いた。


 戻ってきたお姉さんも交えての飲茶タイム。
 情けない話だが私は完全に萎縮していた。
 自分のプライドにかけて敗北など認めるつもりは無いが、それでも女性として自分が勝っているとは思えない。彼女が淹れたというチャイと手作りらしい中華まんがとても美味しいのがそれに拍車をかける。
 彼の足を組み替えるときの動きなど私もドキッとさせられる。って言うか下着が見えたんですけど……トランクスじゃないの? お稲荷さんがはみ出て……。
 柏葉さんの話では嫌々女装させられているはずなのだが私には彼自身が楽しんでいるように見えて仕方が無い。
 お姉さんはそんな彼を見て「やっと自分に似合ってるって認めたのよぅ♪」と、とても嬉しそうだ。
 隣に座る真紅さんは牽制の意味を込めているのか、時折こちらを見ているがやけに落ち着いている。
 何かがおかしい。いや、なにかではなく全てがおかしい。何より女装した彼にときめきを感じる私が一番おかしい。
 しかし、何か吹っ切れたのであろう桜田君の顔はとても生き生きとしている。

 その顔を見た私は、もしかしたらこれが彼の本当の姿なのかもしれないと思い始めた。

 
 彼が男物の服を着るのが間違いで、私が「男子が女子のドレスを考えるなんて気持ち悪い」と考えるのも間違いで。
 男がどうとか女がどうとか、そんな括りには全く意味が無くて
 むしろそれは人間の可能性を狭めてしまうだけのものなんじゃないだろうか。
 だったらそんなものにとらわれる必要はない。
 そう、たった今私の中に生まれたこの思いは、決して間違いなんかじゃない――。

 胸に熱いものがこみ上げてきた私はお礼の言葉もそこそこに桜田家を辞去した。
 楚々とした桜田君――いいえ、ジュンさんの見送りを受けて確信する。
 今の私に必要なのは彼女謹製のドレスではない。あれは彼女が着るべきもの。まずは画材屋へ行こう。この思いを表現する手段として私は絵を選ぶ。さあ早く帰って練習だ。

 私が大手サークルを率いてやおい旋風を巻き起こすのは語られることの無い話。まずは基本の梅×Jで……。



最終話 いつでも微笑みを

 今日はゴスロリ……なんだけど、なんか違う気がするのよね……。なんなんだろう?
「お姉ちゃん、どうしたの?」
 以前の一件(若奥様対決)以来何か吹っ切れたらしいジュンちゃんが首をかしげて私に質問する。
 黒をベースに白のレースをあしらったドレス。そして袖口やスカートの裾に連ねた十字架のマーク。互い違いに逆十字が入っている。
 スッゴク可愛い。可愛いんだけど、やっぱり何か違うのよねぇ……。うーん……。
 そう、何かが足りない? うーん、それすらもわからない。ここはやはりプロに聞くべきかしら。
 この衣装だけはあまり乗り気ではなかった某パタンナに電話をかけようとしたときチャイムの音が鳴る。出てみると雛ちゃんが居た。
「こんにちわなのー」
 いらっしゃーい。
「いらっしゃい、雛苺」
 ゴスロリで笑顔を浮かべるジュンちゃんを見て雛ちゃんが首をひねる。
「えっとー、ジュン?」
「なあに、雛苺?」
「ヒナね、ジュンはどんなジュンでもジュンだと思うの。だけど、男の子のジュンが一番好きなのー」
 がーん。はっ! そ、そうよね。ジュン君男の子だもんね。やっぱり男の子の格好するほうがいいわよね!
 お姉ちゃん目が覚めたわ。雛ちゃん、協力して! ジュン君を元に戻すわよぅ!
「了解、なのー」
 がんばろー!
「えい、えい、おー!」
「え? え? あの?」
 目標に向かって盛り上がる私と雛ちゃん。
 一方、置いてけぼりにされたジュンちゃんはわけがわからない様子だった。


 とは言うものの、元々女装に乗り気じゃなかった「ジュンちゃん」はすぐ「ジュン君」に戻った。しかし女装やコスプレ姿で町を歩き回っていたことに気付いてしまい、いっそう引きこもるようになってしまった。
「ジューン、あーそーぼー」
 真紅ちゃんたちとも話そうとはしない。辛うじて雛ちゃんの相手はするものの、極力部屋から出ようとはしないしお姉ちゃんの相手もあまりしてくれない。お姉ちゃん寂しいわ……。は! もしかしてこれが反抗期ってやつ!?
 そして雛ちゃんがジュン君を部屋から出すことに成功した数日後、不吉なニュースがテレビから流れる。
「昨日、中学校教師の梅岡氏が何者かに棒状の凶器で激しく殴打され、病院に搬送されるという……」
 怖いわねぇ。
「怖いのー」
「……」
 今日も三人で夕食を食べ、団欒のお時間。思えばこんなこと、もうずっと無かったわね……。
 あ、雛ちゃん、もう遅いからそろそろお帰りなさいな。
「はーい。ジュン、また明日ね」
「……待てよ」
「うゆ?」
「危ないだろ……。だから、その、今日から送って行ってやる」
「……」
 ……。
「ど、どうしたんだよ」
「嬉しいの……。ジューーン!」
「わわ、だ、抱きつくな!」
 ジュン君に抱きついてはしゃぐ雛ちゃん。お姉ちゃんも抱きつきたいけどさすがにお邪魔ね。
 雛ちゃんを送って行くジュン君をお見送りして一息。多分もう大丈夫ね。雛ちゃんがついててくれれば一人で閉じこもっちゃうことはないと思う。

 そしてジュン君が学校に復帰し、当事者公認で二股交際を始めるのは少し未来のお話。

 fin.    「巴さん」に続く……?


みっちゃんかなちゃんの簡単すぎる解説

「みっちゃーん」
「どうしたの、カナ?」
「のりはどうしてゴスロリジュンを見て『なんか違う』って言ってたのかしら?」
「実はね、ゴスロリって言うのは着こなしが難しいのよ。可愛さはなるべく人工的に、それに無機質な感じや退廃的な雰囲気も無きゃいけないの。可愛さだけを考えるなら単なるロリータファッションにするべきだわ」
「じゃあのりの違和感ってそれかしら?」
「そうよ。ゴスロリが似合うのは、たとえば原作の水銀燈ちゃんね。黙ってれば無機質だし、言動やらなにやらは割と退廃的だし。ジュンちゃんやカナはそういうものが足りないわ」
「だからみっちゃんは撮影会のときもゴスロリを着せなかったのかしら?」
「ええ。ジュンちゃんやカナに似合うのは天使系や甘ロリといった愛らしい系統のロリータファッションよ。そっちにしとけば雛苺ちゃんもメロメロだっただろうし女装解除なんてしなかっただろうにそれをあの子は……」
「何かみっちゃんが怖くなってきたからこの辺でお開きかしらー! 予告編もよろしくかしらー」
「カナー!」
「きゃあああああ!みっちゃん、ほっぺがまさちゅーせっちゅで摩擦熱ー!」


嘘予告

 封印された記憶が今よみがえる……。
「ふふふふふふふふふ……来た奇多きた北キタァァァァっっっっ!!!!」
 彼女の指先は止まらない。そう、それは魔法のごとく幾つもの物語を紡ぎ出す。


「やっぱり基本にして究極は梅×Jね!」
「やめろぉぉぉ!!!」
 後ろを顧みることは無い。屍には目もくれず。ただ、前へ。


「野菜王子が嫌がるJを無理やり……いえ、ここはやはり女装していた蒼星石とJの禁断の恋……」
 背後から迫るシザーマンの恐怖。ニゲロー!
「あはははははははははははははは……、チョンパー!!!!」


 彼女の行く道を阻止せんと立ち上がる乙女たち。
「行くわよ。桜田君と雛苺、そして私の楽園を壊させはしない」
「僕は女の子だからね。男の子じゃないからね!」
「両腕の骨をヘシ折って、二度と下らないものを書けないようにしてやるのだわ」
「……もう変人はこりごりよぉ…………」


 敵だらけの彼女の元に馳せ参ずる最低の男たち。
「すばらしい才能です! これはみんなに見てもらわなくちゃいけないな!」
「私とジュン様のカラミもお願いしますぞ!」
「梅岡先生にラプラスさん……二人とも、ありがとうございます!」


 果たして彼女は薔薇乙女+1を打ち砕き、その願いを果たせるか!?
 沈黙を守る狂王めぐ、そして暴走女王のりは!?


 愛の保守劇場第三期 「由奈ちゃんがんばるっ」
「私は、やおい世界の神になる!!」



 こんなもん間違っても書きませんのでご安心ください書いちゃってます……。

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