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超機動戦記ローゼンガンダム 第八話 からたちの歌


「どうだ?まだ編成には時間がかかりそうなのか?」
「ああ、まぁメイデンほど力のあるところは無難に遊撃になりそうだがな。都市に置いとくのは勿体無い。
ま、これからさらに忙しくなるんだ。ゆっくり休むのがいいだろう。」
ミーティングルームの通信で話しているのはJUMとべジータだった。
「そうだな・・・前回はどっかの誰かが乱入したおかげでーー」
「おおっとぉ!?会議にでなくては。それじゃあな、JUM。蒼嬢によろしくな。」
バチコーンと下手なウインクをしてベジータは回線を閉じた。
「やれやれ・・・てなわけで僕らはまだ時間ありそうだけど・・・どうしたい?」
「どうも何も・・・次に備えて休むといいのだわ。」
真紅が紅茶を飲みながら言う。
「翠星石も賛成ですぅ~。今度戦いが始まったら休み無しで過労死なんて真っ平御免ですぅ。」
「僕も・・・特に提案はないかな・・・」
翠星石と蒼星石も特にないようだ。ほかの面々もそんな感じだ。しかし・・・
「だったらぁ・・・私少し行きたいところあるんだけどいいかしらぁ?」
そう言ったのは水銀燈だった。


「水銀燈がこんなトコ来たがるなんて意外ですぅ。もっと派手に遊ぶのかと思ってたです。」
水銀燈の頼みでやって来たのは東北の山奥だった。さすがにこんな山奥にはドッグがないので
最寄のドッグに艦を停泊させて車で来たわけだが。
「なかなか綺麗なトコなのだわ。JUM紅茶を淹れて頂戴。」
「うん、風流だね・・・JUM君、僕は日本茶貰っていいかな?」
「お前らな・・・全く・・・」
JUMが備えつきのポットで紅茶と日本茶を淹れ始める。
「JUM、ここは山道で揺れるからうっかりこぼさないようにね。」
車の運転をしてくれている雪華綺晶が言う。薔薇水晶は雛苺と金糸雀の抱きつかれたまま
少し寝苦しそうにお昼寝中だ。
「それで・・・僕も結構意外だけど水銀燈はここに何の用があるんだ?」
真紅と蒼星石にお茶を渡しながらJUMが言う。
「ん?そうねぇ・・・それは・・・見えてきたわよぉ。」
水銀燈が指を指す。その先には一つの病院があった。雪華綺晶が病院の付近に車を泊める。
「さて、私はここで薔薇水晶達と待機しているよ。まぁ、寝ているが・・・どうも病院が苦手でね。」
雪華綺晶が言う。
「つゆーか、僕達は付いて行かないでもいいんじゃ・・・・」
水銀燈に付いていきながらJUMボソッとが言う。
「そうね・・・でも興味はあるでしょう?水銀燈が何の用か・・・いいじゃない。来るなとは言ってないのだわ。」
真紅がJUMに向けて言う。水銀燈は気にせず病院へ入っていった。


JUM達が病室に入ろうとする。ドアにかけてあるプレートには「柿崎めぐ」とかかれてあった。
「はぁい、めぐ。元気にしてたかしらぁ?」
水銀燈が中に入るとJUM達も一緒に入る。室内に居たのは長い黒髪の少女でどこか儚い感じを思わせる。
そのめぐと呼ばれた少女は水銀燈を確認するとベッドの上でにっこりと微笑んだ。
「この子達はメイデンの仲間よぉ~。せっかくだからめぐにも紹介しようと思ってねぇ。」
水銀燈がJUM達を紹介していく。真紅の紹介のときに余計な事をいい軽く喧嘩になりかけたが。
その中で、JUMはめぐという少女に違和感を感じた。何かがおかしい・・・
「ふふ、めぐぅ?ちゃんと先生達の言う事聞いてたぁ?あまり困らせたらダメよぉ?」
水銀燈の言葉にコクリと頷くめぐ。JUMはそこでようやく違和感に気づいた。
「水銀燈・・・もしかしてその子、声が・・・?」
「ええ、そうよぉ・・・戦乱でちょっとねぇ・・・でも大したことないわぁ。ね、めぐ?」
JUMの言葉に水銀燈が返す。するとめぐは机においてあったスケッチブックを取ると字を書き出した。
『声がでなくても、文字がかける。気持ちは伝わるよ。』
めぐはJUM達にスケブを見せながら微笑んだ。
「そう言う事よぉ。私達には声なんて問題じゃないもの・・・めぐが生きてるだけで・・・それだけでいいのぉ。」
水銀燈は椅子に座るとお見舞い品のリンゴを剥きながら話してくれた。


私はねぇ、戦災孤児だったのよぉ。アリスの乱でねぇ、親を失って孤児院に拾われたのぉ。
そこでめぐに出会ったの。きっと似たもの同士、惹かれあったんでしょうねぇ。私はその時理不尽に親を
奪われた事で世の中全てが気に入らないって感じだったなぁ。めぐもそうだったのよぉ?今はこんな大人しくて
私は清楚です、みたいな顔してるけどぉ。全てを失った私とめぐはお互いを手に入れたわぁ。
親友を、そして姉妹を。それ以来私達はめっきり大人しくなったの。不思議なもので心が
落ち着くと孤児院のみんなまで愛しくなっちゃったわぁ。ああ、みんな仲間なんだって・・・家族なんだって。
でもねぇ・・・戦いは終わらなかったわぁ。戦火の炎はついに人里から離れた私達の孤児院にまで
飛んできたのぉ。飛び交う銃弾は家族を、燃え盛る炎は家を、そして戦いは再び全てを奪っていったわぁ・・・
そんな中で私はめぐと一緒に逃げたわぁ。でも、子供が逃げれる所なんて知れてる。
崩れ去る孤児院に、私とめぐは埋もれちゃったのぉ・・・でも、何日かたった後、救助作業にきた
レジスタンスが助けてくれたわぁ。奇跡的に私とめぐは生きていたのぉ・・・いい間違い。私とめぐしか・・・
生きてなかったわぁ。生きてはいたけど、私もめぐも深い傷を負ったわぁ。体にも心にも。
私は・・・今はもう傷跡はないけど腹部が結構やばかったらしいわぁ。
めぐは・・・見ての通りよぉ。当時はもっとひどかったらしいけどぉ。傷は消えたけど声だけは戻らなかったわぁ。
それから私はメイデンに入ったのぉ・・・私達みたいな子を出さないために・・・


「・・・水銀燈にそんな事があったですか・・・何で今まで話さなかったですか?」
「まぁ、メイデンのメンバーだって同じようなもんでしょう?取り立てて不幸自慢するほどじゃないわぁ。」
水銀燈が剥いたリンゴをシャリっといい音を立てながら食べる。
「・・・さて、私達はそろそろお暇するのだわ。水銀燈、あなたはもう少しいるといいのだわ。」
真紅がJUM達を促して部屋を出て行く。そして、部屋の前に真紅は張り付いた。
「真紅・・・何をしているの?」
そんな真紅に蒼星石が言う。
「ははぁ~ん、分かったですぅ。確かにそれは興味あるですぅ♪」
翠星石も同じように張り付く。すると中から声が聞こえてきた。
「え?仲間をどう思ってるかですってぇ?そうねぇ・・・真紅はあのまま五月蝿い貧乳ねぇ。」
水銀燈の声に真紅が拳を振り合げて中に入ろうとする。
「でもぉ・・・あの子ほど背中を預けられる子いないわぁ・・・翠星石はおばかさんで、蒼星石は少し堅物
だけど、仲間を思いやる気持ちは誰よりも強いわぁ。今日は来なかったけど他のメンバーもとっても
いい子ばかりだわぁ・・・ふふ・・・何だか孤児院を思い出しちゃうわぁ・・・だから、今度こそ守るわぁ。」
ドアに張り付いていた真紅と翠星石が離れる。
「ふふっ、無粋だったね。ほら、行こう?」
蒼星石が促す。みんなもそれに続いて病室を後にした。


『水銀燈、JUMさんは?』
「JUM?ふふ、そうねぇ・・・見た感じは頼りなさそうでしょう?でも、あれでいい男なのよぉ?」
『そうなんだ。好きなの?』
めぐの質問に少しだけ、ほんの少しだけ水銀燈は顔を赤くすると言った。
「そうねぇ・・・好きよぉ。きっと・・・」
『ふふ・・・水銀燈は可愛いね。』
すると水銀燈はますます顔を赤くした。
「全く、めぐったら、いつの間に私をからかえる身分になったのかしらぁ?」
水銀燈がめぐのおでこを小突く。めぐは嬉しそうに笑うと少しだけ眠そうにする。
「あら・・・そろそろ眠る?私もお暇しようかしらぁ。」
『うん・・・でも、今日は私が眠るまで側に居て欲しいな。』
水銀燈はその文字を見ると優しく微笑むと椅子に座りめぐの手を握った。
『歌・・・歌って欲しいな。』
「ふふ、まるで子守唄ねぇ・・・いいわよぉ。お休み、めぐ。」
水銀燈はめぐの髪を撫でると、優しい声で歌いだした。
♪からたちのとげは痛いよ   青い青い針のとげだよ  ♪


「そう、水銀燈にそんな事が。」
一足先に車に戻った真紅たちは雪華綺晶や昼寝から起きた薔薇水晶達に今日のことを話した。
「銀ちゃん・・・何で今まで・・・話してくれなかった・・・んだろう?」
「うゆ・・・雛達水銀燈に信用されてなかったの?」
「水銀燈も水臭いかしら・・・」
落ち込む三人。しかし、翠星石がそれを否定する。
「それはちげーですよ。逆を言えば水銀燈は翠星石達を認めたから話してくれたですよ。
だから、やっぱり今日のことはよかったですよ。」
「そうだね・・・辛い事はあまり話したくないもの。それを水銀燈は話してくれたんだもん。」
蒼星石もそれに同意する。程なくして水銀燈が戻ってきた。その水銀燈に真紅が近づいていく。
「おまたせぇ。あらぁ?真紅どうしーーー」
次の瞬間に真紅は水銀燈に抱きついた。そして、しばらく抱きしめた後離れる。
「え・・・え・・?な、なによぉ?真紅ぅ?」
「何でもないのだわ。ただ、抱きしめたくなっただけだわ。」
真紅はそういうと照れ隠しなのかそっぽを向いて言った。こうして彼女らは少し絆を深めると
再び戦いに赴くのだった。


艦に戻ると巴が報告を入れて来る。
「桜田君、SAIYAから通信が入ってたよ。」
「ああ、つないでくれ。」
通信が繋がる。するとべジータが映し出される。
「JUM、編成が決まったぞ。やはりメイデンは遊撃だな。日本中を飛び回り隙あらば他の地域を
攻撃に出てもらうらしい。」
「ま、そうだろうな。しかしまぁ、随分適当だなぁ。」
「仕方なかろう。とりあえずメイデンの戦力に期待してるってこと・・・!?JUM!早速だぞ。
アリスがセンダイシティを攻めそうらしい!急行してくれ!」
「センダイだな。分かった!それじゃあまたな!」
JUMは通信を閉じると巴に艦内放送を開かせる。
「これよりメイデンはセンダイシティでアリスを迎え撃つ!各員、抜かるなよ!」
こうして、メイデンは新たな戦場へ飛び立っていく。


次回予告 センダイシティを攻めるアリス軍。その指揮隊長は何とJUMの学生時代の教師、梅岡だった。
新型の隊長機を乗りこなし本人は全く意図しない精神攻撃でJUMを苦しめる梅岡。果たして戦いの行方は。
次回、超機動戦記ローゼンガンダム トラウマ 倒すべき敵 打ち倒せ薔薇水晶!

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