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~文化祭§そして~

 劇は終わり、鳴り止まない拍手に包まれクラスはステージから抜け出した。
 隣を次に演じるクラスとすれ違ったが、何も言えなかった。
 達成感と心地よい疲労感に包まれ皆は記念写真を取りに運動場に集合した。
 担任はボロ泣きである。「泣いちゃダメだよ皆…化粧、崩れちゃう…」
 と、言ったのりはもう泣きだしそうである。
「悔しいわぁ。絶対、泣かないと…思ってたのにぃ」
 水銀燈までしゃくっている。
「じゃ、撮りまーす」
 と、カメラマンの声。
 ほら、主役二人はセンターでしょ、と声がかかる。
 二人は互いに顔を見合わせ照れ笑いを浮かべながら一番前の席に座る。
「はい、いちたすいちは?」
「2!」
 その時の皆の顔は今年一番の笑顔が咲いた。

 そしてこの日はクラスの打ち上げとなった。
 もうそれがしきたりで担任も子供のように騒ぎながらジュースを飲んだりお菓子を食べたり写真を撮ったり。
 中でもみっちゃんは凄いはりきりようだ。
「ね、蒼星石ちゃんは?」
 雛苺から奪ったポッキーを目の前でむざむざと食べ誇る姿は先程までのシンデレラとは到底思えない。
「あれ?そういえば、いませんね」
 みっちゃんに言われて初めて気が付いた。
 翠星石は辺りをきょろきょろ見回して言う。
 ――あ…。
「き、きっとトイレでも行ってるですよ。にしても遅ぇですね。特別に翠星石が様子を見てきてやるです」
「じゃ、私も…」
「い、いいですよ!翠星石一人で十分です!おめぇは写真でも撮ってろですぅ!」
「そ、そう?」
「んじゃ行ってくるです」
 本当は今すぐにでも走りたいが如何せん皆が見ている。
 静々と教室から出ると猛ダッシュで走りだした。

 ――いるとしたら、どこに…!?あぁもう!めんどくさがってドレスのままだから走りにくいです!
 ガバッと裾を持ち上げ、一層、加速する。
 ――人目につきにくいと言ったら体育館の裏しかない!
 女の感というのは凄いもので確かに二人はいた。
 これ以上踏み出せばばれてしまうくらい近づいたが声は途切れ途切れにしか聞こえない。
「…ずっ……すき…いえなく…」
「…僕…好き……で……」
「…ほんと………うれし……」
「…くも………れしい……」

 目だけで覗くとめぐは泣いていた。
 蒼星石がめぐの頬に手をかけ段々と顔を近付けて…。

「だめですっ!」
 気付いたら飛び出していた。
 めぐから蒼星石を隠すように抱き締め、叫んでいた。
「蒼星石の恋人は姉である翠星石が決めるです…だから、だからおめぇではダメです!もっと、もっと蒼星石のコト、わかってる奴じゃねぇと…」
 言いながら泣いていた。
 悔しかった。蒼星石を取られるかと思うと悔しかった。
「す、翠星石?」
「何ですか蒼星石!姉に対して文句でもあるですか!?」
「何か勘違いしてない?」
 あくまで冷静な声で蒼星石は言う。
「勘違いぃ?そんなもん……………勘違い?」
 その時、めぐが「あ」と小さく言った後、
「ゴミ取れた」
 と、目を擦りながら言った。
「とりあえず、一から説明するです」
 と、翠星石は蒼星石に向かって言った。
 蒼星石の話はこうだ。
  めぐは小さい頃から病室で見ていたアメフトの試合が大好きだった。
  しかし、アメフトは彼女のイメージではない。
  生の試合を見に行きたいが普通の子は引いてしまう、だからといってあの熱気の中、一人で行くのも恥ずかしい。
  そこで僕の趣味がスポーツ観戦であることを知り、一緒に行こうと誘われたのをOKしたとこで彼女の目にゴミが入り、僕が覗き込もうとしたとこに君が来た。

「把握したかい?」
「把握したです」
 翠星石は話を聞いている最中で真っ赤になり始めしまいには俯いてしまった。 ――じゃあ全部杞憂だったですか!
「じゃあ蒼星石。またチケット取ったら言うわね」
「待つです!」
 走りだしためぐを翠星石が呼び止める。
「何?」
「す、翠星石も行ってやるです。アメフトには少し興味があったです!」
 ふふ、と笑ってめぐは頷いた。
「わかったわ。そういうことにしてあげる」
 大体、翠星石のシスコン振りには慣れているし、そういう意味で蒼星石の事を好きだというのも感付いている。
「じゃ、私、先に教室行ってるね」
 と言ってめぐは今度こそ行ってしまった。
「じゃあ僕達も行こうか」
「はいで…っ!」
「どうしたの?」
「足、くじぃちまったみたいです。ケンケンすれば…」
 さっき飛び出した時に思わず挫いてしまったのだろう。
「ヒールのある靴じゃしにくいでしょ。ほら、背中乗りなよ」
 と言って、背中を差し出す蒼星石。
「わりぃです」
 翠星石はドレスの裾をなるたけひろがらないように支え蒼星石に乗っかった。

「足、大丈夫?」
「いてぇですが、ひどくはねぇから大丈夫です」
 そう、とだけ呟いて蒼星石は歩き続ける。
 あんなに緊張した触れ合いが今では嘘のように心地いい。
 頭を背に保たれかけても何も言わない。
「好きです…」


 ぴたりと蒼星石の足が止まる。
 トス、と水道の蛇口近くで下ろされた。
 勿論立てないので足を伸ばして座る形になる
「今、何て言った?」
「へ?だから好きって…!」
 今気付いたらしい。
 翠星石は顔を真っ赤に染め上げ両手で隠す。
 ――馬鹿です!翠星石は史上最大の馬鹿です!金雀糸より馬鹿です!!
「ねぇ」
 見えてはいないが近いとこに蒼星石の顔があることが分かった。
「顔見せて」
 ぐっと強い力で両手を開いてこじ開けられれば自然と蒼星石と視線が絡んで。
「そうせ…」
「もっかい言って」
 整った唇がそう言う。
 周りが暗くてよく見えないせいだろうか。妹の顔がこんなに真剣に見えたのは初めてだった。
「蒼星石は…意地悪、です」
「意地悪でもいいから、もっかい言って?」
 薄く笑う口元はいかにも楽しげだった。
「好き、です」
 届くか届かないかくらいの声でそう伝えた。
「うん。僕も、好きだよ」
 と言って、ゆるく抱き締められた。
 それだけで涙が出そうだった。
「ファーストキスは終わっちゃったからセカンドキスは恋人として…」
 二人の距離は徐々に近づいき…。
 距離は0となった。

「そういえば何で勘違いしたの?あの距離じゃ声、あんまり聞こえなかったんじゃない?」
「水銀燈が『めぐは蒼星石に告白するのよぉ』って聞いたです」
「ふーん」
「そういえば何で劇で口にち、ちゅうをしたですか?」
「水銀燈が『手じゃなくて口になったからぁ』って聞いたんだよ」
「ふーん」
「文句は?」
「言えねぇです」
「そうだね。ただいまー」
「ただいまです」
 教室のドアを開けながら二人は言った。
「もう、どこ行ってたの!?待ってたのに…ってあら?足、どうしたの?」
 みっちゃんがぷーと頬を膨らませて怒っていたが蒼星石が翠星石をおんぶしているのを見て疑問符を浮かべる。。
「すまねぇです。足をくじぃちまったんです」
「、主役二人のツーショットが欲しかったんだけど、大丈夫?」
「そのくれぇなら大丈夫です。ほら、撮るですよ」
「はいはい、お姫様」
「っ、姫とか呼ぶな…ですぅ」
「二人ともいくよーはい、チーズ!」






 懐かしいなぁ

 何見てるです?

 ほら、十年前の文化祭の写真。あの時に僕達、結ばれたんだよ

 うわ、懐かしいもの取り出してきたですね

 僕達はこれからもずっと一緒だよ、お姫さま。

 はい、王子様


 END.
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