※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

芳しい香り。
立ち上る湯気。
素肌に感じる湯の暖かさ。

そうここは温泉。
温泉。後ろには雪華綺晶。
きらきー。

…なんで一緒に温泉入ってるんだっけ。
こんなときは便利な回想モードだ。


昨日─
いつも通りの学校の帰り道。
明日から始まる連休に心を躍らせながらの普通の帰り道。
なはずだった。

「あの、ジュン様」
「ん?」

もう自宅が見えるほどのところで誰かに声を掛けられる。この声は─

「雪華綺晶か?」
「は、はい…」
「どうしたんだ?雪華綺晶の家は学校から正反対だろ?」
「えっと…その…」
「?」

なんだろう、そんな顔を真っ赤にして上目遣いで。うん、顔は可愛すぎる。

「そ、その…私と温泉行きませんか!」

「なんだって?」
「だ、だから…私と…明日からの連休に温泉…宿に」
「温泉、宿?」

温泉?宿?温泉宿っていうからには…とまり?

「えっと、なんで、僕?」
「あ、あの、本当はばらしーちゃんと行く予定だったのですが、急に都合が…」
「ならまた今度都合のあった時に…」
「け、けどもう貸切で予約も入れてあるので…」
「男と泊まりで温泉とかさ、ちょっと」
「ジュ、ジュン様は信頼できるお方です!」
「いやけどさ…」
「ダメ…でしょうか?」






だからそんな上目遣い(ry
断れませんでした。

そこ(↑)から一気に温泉旅行当日の夕方ごろに宿について部屋に入ったあたりまで回想をスキップして(手抜きではない)

「わぁ…綺麗な景色ですよ」
「というか 同 室 なんだ」
「あ、最初はばらしーちゃんとの予定でしたので」
「うん、まー…適当に仕切りでも置けばいいか…」

まあそんな間違いを犯す気は毛頭ないけどね。ないよ?うん。

「それよりジュン様、早速温泉に入りにいきませんか?」
「ん、温泉宿の醍醐味っていってらやっぱ温泉だからな、行って見るか」
「はい、晩御飯の前に一回入りましょう」

とういわけで温泉へ。

「私はこっちですね」
「男湯はこっちか、じゃあまた後でな」
「はい」

【男】という暖簾がかかった脱衣所に入る。
脱衣所の広さからも結構広い温泉だって分かる。ていうか貸切だから自分以外誰もいないのか。
これはこれで寂しいものがある。やっぱり温泉といえば江戸っ子なおっちゃんと一緒に(ry
さあ入るか。

温泉への引き戸を引く。

ガラガラーと

「へえ、広いなぁ」
「わぁ…すごい…」

あれ?

「………」
「………」

混浴ktkr

「き、雪華綺晶!!?」
「え、え?ジュン様!?」
「ごご、ご、ごめん!!すぐ出て─」
「あの、待ってください!」
「行くから─って、え?」
「あ、あの、その…折角ですから…一緒に…」

一緒に?一緒に入れって?それは…

「わ、私…ジュン様と入りたいです…」



だから上目遣いはやめろとなんど(ry
一緒に入ることになりました。


回想モード終了

今僕と雪華綺晶は背中合わせの状態で温泉に浸かっている。
宿自体お嬢様パワーで貸切なので僕たち以外だれもいない。静かだ。
自分の高まる胸の鼓動が聞こえるくらい静かだ。

「………」

トン─

不意に背中に何かが触れた。肩越しに後ろを見ると雪華綺晶と僕の背中が触れ合っている。

「雪華綺晶…?」
「…ジュン様」

背中越しの声。

「…なに?」
「………その」

触れ合う背中を通じて雪華綺晶の胸の鼓動が伝わる。
僕の鼓動も伝わってるのだろうか。

「…ごめんなさい、なんでもありません」
「…そうか」

この貸切の宿からも、彼女のやわらかい肌からも


違いを感じる。


温泉から上がった僕たちは部屋に戻り、女将さんが運んでくれた夕食を食べることにした。

「ジュン様、おいしそうですよ」
「本当だな…色々あるし」
「この地方の特産品を使った料理のようですね」

二人でこの料理はおいしいとか、この料理の材料はなんだろうかと
他愛もない話をしながら夕食は進んだ。

「そうだ、聞きたかったんだけど…」

会話が途切れたところで、ずっと気になっていたいことを聞いてみる。

「なんでしょうか?」
「なんでさ、僕なの?一緒に来るの」
「だからばらしーちゃんが…」
「薔薇水晶がダメでも水銀燈たちがいるだろ?」
「………」

俯く雪華綺晶。
「雪華綺晶?」

再び顔を上げた彼女は、僕の目をみて

「ジュン様と、来たかったからです」
「…………そうか」

気持ちは分かっているのに、何もいえない。
自信なんてこれっぽっちもないから。

夕飯のあと再び温泉に入った僕たちはそろそろ寝ることにした。

「それじゃ、そろそろ寝ようか」
「はい」
「僕はこっちの方で寝るから─」
「あの…一緒に寝ませんか?」
思わず噴出しそうになる。
「それはまずいんじゃ…」

「恥ずかしいのですが…私、一人じゃ眠れないんです」

………

「じゃあ布団並べて」
「一緒の…お布団じゃないと…」

…………


結局再び僕が折れる形となった。


「狭くない?」
「大丈夫です…ごめんなさい、我侭いって…」
「いや、別にいいって」


…静かだ。吐息も聞こえない。雪華綺晶は寝たのかな…?
少し目線を動かし横を見る。

「あ…」

雪華綺晶もこちらを見ていたのか目線が合う。

「………えっと」
「……ジュン様」
ぎゅ─

不意に僕の手が握られる。暖かい。

「私の…気持ち…気付いてますか?」
「…そこまで、鈍感じゃないよ」
「では…なぜ答えてくれないのですか…?」
「それは…」
「…私では、至りませんか…?
「違う、僕は…自信がないよ…雪華綺晶と釣りあう男になれるか…」
「………」
「生まれも、育ちも違う。…僕なんかとは…」

「私は、ジュン様の声が好きです。」
「え…?」
「どんなに辛くても、悲しくても…ジュン様の声を聞くと元気になれます。」

「ジュン様の縫ってくれたお洋服を着ると、ジュン様が傍にいてくれるような気がして、心が落ち着きます。」

「ジュン様の優しさに触れるたび、この気持ちは強くなっていきます。」

「ジュン様の声が、指が、心が、私を癒してくれます。満たしてくれます。」

「身分だとか、そんなものはどうでもいいんです…私は、桜田ジュンという人を、愛しています…」
「雪華綺晶、僕は─」

口に触れるやわらかい感触

「───」

「今は、まだいいです…だけど、いつか…」

「─うん…いつか…」

雪華綺晶の手を握り返す。


いつか



いつか、お嬢様という身分や育ちの偏見を捨てて、対等に、雪華綺晶を見ることができるだろうか。
彼女を、愛せるだろうか。

終わり

|